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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

星は何処~1月8日

五日遅れでまた子誕生日(^^;)。
高桂ベースであるにも関わらずうちの党首は高また推奨なんですが、それを別角度から見たら、なんかいやーんな方向になりました(汗)。ごめんまた子ちゃん、全然祝えてないよ………。
話の完成度も、上げないとなー(汗)。

さーて、シティのおまけ本作成に入らねば。







「河上ーメシっすよ-。………何やってンすか。」
 勝手知ったる何とやらで開けると、大音量が出迎えた。壁一つを埋め尽くす大きな画面には、どこかで聞いたような音楽をバックに横向きポニーテールの少女のジョギング風景が映し出されていた。床は一面紙に覆われ、パソコンの上にはよく判らない語尾をつけた言葉が踊っている。
 部屋の主は紙の山の中からひょいと顔を上げ、「もうそんな時間でござるか」と時計を見る。
「思ったよりはかどらなかったでござる。」
「何やってンすか。」
 足下の一枚を拾い上げる。そこには、部屋を埋め尽くすアイドルの歌の歌詞が書かれていた。ただし、部屋の主が作詞したものではない。彼女のデビュー曲、に似ている。
「表の仕事でござるよ。」
 立ち上がり、背伸びをして河上万斉もといつんぽは答える。また子は眉をひそめ、別の紙を拾った。こっちは卒業文集のコピーのようだ。その中に、「てらかどつう」の名で将来の夢を語った文がある。
「お通殿のカルトクイズを作る仕事を任されていてな、そのためでござる。」
「プロデューサーはそんな仕事もするんすか?」
「番組演出の一環でござってな。お通殿の公式ファンクラブを決定するという。」
「はぁ?」
 素っ頓狂な声を出したまた子に、河上はサングラスを直して説明してくれた。
 つまり、今オタク世界で、お通のファンクラブの勢力争いが繰り広げられているという。これを話題作りのチャンスと見たもとい大きな混乱として問題視した寺門通側が、特番を組んで公式ファンクラブを決定させ、事態の沈静化を図ろう、というものらしい。
「お通殿自身は、ファンを区別するみたいで嫌だ、と乗り気ではなかったのでござるがな。これが騒ぎになってイメージダウンに繋がってもまずかろう。」
「はー………。」
 呆れてため息をついてから、また子は部屋を出た。説明しながらパソコンを落としていた万斉も、それに続く。
「公式ファンクラブなんか決めて、何が楽しいのやら。」
「楽しさ目当てでやっている訳ではないのでござるが。お通殿はアイドルでござるし、ファンの手綱を引いておかねばならぬ時期が来た、というところでござる。」
「そんなものあったって、めんどくさいだけじゃないすか。」
「アイドルには、自分を応援してくれる存在というのは必要でござる。」
「アタシだったらごめんっすね。」
 先を行くまた子は、サングラス越しの視線がわずかに冷えたことには気づかなかった。
「また子殿は、ファンクラブは不要と?」
「つーか実際めんどくさいことになってるじゃないすか。第一、好きでもないヤローにちやほやされたって嬉しくないし。」
 後を追う足音が、一瞬止まる。首をかしげたが気にするでもないと足を止めなかったまた子は、次の言葉に勢いよく振り返った。
「晋助さえいればいいと?」
「何よ。なんか文句あるっすか?」
 立ち止まったままの万斉は、じっとこちらを見ていた。黒いレンズに遮られた視線が何を語ろうとしているのかは読み取れない。が、自分がただ一人に向けた想いを、決して肯定しているのではないことだけは判った。
「アタシは、晋助さまにも誰にも、迷惑かけてないつもりっすよ。」
 あのひとのためなら命さえ捧げてもいい。岡田似蔵のように捨て駒にされるかもしれないが、今はそれでも構わないとすら思っている。少なくとも、寺門通のファン達のように、目の前が見えなくなって迷惑をかけたりはしていない、はずだ。
「晋助に、誕生日プレゼントを強請っているではないか。」
「あれはアタシじゃないっすっ!」
 確かに欲しいと思ってる。毎年くれるのが、何よりも嬉しい。言われなければ、あのひとがそれをしないことも知っている。
 けれどまた子が欲しいと態度で表したのは、最初の一度だけだ。
「あれは、桂が晋助さまにっ!」
「それが。」
 トーンは変わらないのに、凍えるほど冷たい声だった。サングラスに隠された視線が、突き刺さる。言葉を失ったまた子にゆっくりと近づきながら、万斉はさらに続けた。
「桂の企みであると、何故判らぬ。」
「………たくらみ?」
「晋助がお主に想いを返すことを、お主は望むか?」
 反射的に出た答えは肯定だった。難しいと判っていても、それを願わなかったことはない。けれど、万斉の声音は、また子に頷くことを許さなかった。
「そうやってほだされ、晋助が揺らぐ事こそ、桂の狙い。」
「ねらい………。」
「晋助を、討ち取るために。」
 そう耳元で囁いて、万斉はまた子の側を通り過ぎていく。
 後を追う気力は、残されていなかった。


 街に出ることは好きだ。
 鬼兵隊幹部≪紅い弾丸≫とはいえ、年頃の女の子であることだし、ぶらつきながらショーウィンドウを眺めたり、食べ歩いたりするのは楽しい。化粧品やアクセサリーなど、高杉がそれを見てどう思うか想像しながら買うのは何よりの気分転換になる。
 けれど、今日はそんな風に愉快にはなれなかった。
「せっかく、誕生日も近いのに………。」
 いつもなら今頃、高杉が何を用意してくれるのか、楽しみでならないのに。
 せっかく買った缶コーヒーも美味しくない。飲み途中で、ゴミ箱に突っ込む。晴れてはいるが風が冷たい。帰ろうかな。そう、思った時だった。
 大通りの向こう側、信号待ちをしている姿に目を見張った。まさかと目をこするが、間違いない。白ペンギンを連れたあの長髪は。
「桂………っ!」
 次の瞬間、桂と白ペンギンはばっと身を翻した。横断歩道から離れ、歩道を駆けていく。また子は懐に手を入れたまま走り出し、信号が変わって車の流れが途切れたのを見計らって道を渡った。
 長い髪をたなびかせた後ろ姿は、どんどん細い道へと入っていく。また子に気づいて、撒こうとしているのだ。桂の足の速さは知っている。あの、≪神童≫沖田総悟が何度も取り逃がしている男だ。
「それでもっ!」
 また子とて、足の速さでは鬼兵隊でも一、二を争う。それに、自分の武器はそれだけではない。抜きがけに拳銃をぶっ放す。うち一発が袖を掠めたが、桂のスピードは落ちない。もう一度、走りながらも今度は狙いを定めようとするまた子は、白ペンギンがいつの間にか桂の隣からいなくなっていることに気づきそびれた。
「なっ!?」
 後ろからの気配に、思わず振り返る。うなるペンギンの手を身をかがめてかわす。桂は囮か。それに気づいたまた子が、拳銃を白ペンギンに向ける。この距離でかわすのは不可能だ。
 が、トリガーが引かれる前に二丁の拳銃はまた子の手から叩き落とされた。
「そこまでだ。」
 冷ややかな声が、また子の耳を打ち据える。首筋に添えられたのは駄菓子型の煙幕か。本気であれば自分を斬り捨てることもできた、という警告に、けれどまた子は勢いよく振り返った。
「かっ、」
「動くな。」
 目のすぐ先に突きつけられたんまい棒が、立ち上がろうとするまた子を封じる。これは煙幕で、斬ることはできない。それを判っていても、それ以上動くことができない。
「まさか、一人で俺を追ってくるとはな。」
 琥珀色の眼が、じっとまた子を見据えている。同時に桂の神経は、辺り一帯にも向けられていた。これがまた子を囮にした罠ではないかと探っているのだ。
「高杉も、江戸にいるのか。」
 黙ったまま睨みつけていると、桂は「そうか」と呟いた。
「言わぬなら、身体に直接聞くしかないか。」
「何すかその言い方っ! なんかエロいこの変態っ!」
「おなごがそんな事を口にしてはいかんぞ。それに俺は、お前のような若い娘よりも、酸いも甘いも噛みしめた人妻の方が。」
「やっぱ変態じゃないすかこのスケベっ! 言っとくけどアタシは、アンタの思い通りになんかならないっすからねっ!」
「そうかそれは残念だ。それと、男はすべからく助平で変態なのだ。高杉も然り、寝床を漁ればその手の本やらその手のオモチャやらが出てくるぞ。」
「違うもん晋助さまそんなんじゃないもんっ! エロ本はともかくそんな変態チックなもん持ってないもんっ!」
「ほーう。」
 桂の眼が細められる。持ち上げられた口端がバカにしているように見え、んまい棒を突きつけられているにも関わらずまた子は立ち上がった。
「てゆーかアタシをバカにすんのもいい加減にしろっ!」
 また子の後ろにいた白ペンギンが一歩前に出る。そのことも、桂が視線で白ペンギンを制したことにも気づかず、また子は叫んだ。
「だいたい、アンタのせいっすからねっ! アタシはただ、晋助さまの側にいられるだけで、晋助さまのお役に立つだけでよかったのに、アンタは人のこと勝手に利用して、晋助さまをぐらつかせるようなこと企むから、アタシが万斉にあんなこと言われなくちゃなんなくなって、誕生日だって楽しめなくなっちゃったし………っ!」
 何も望むな、どころではない。
 好きでいることすら、否定されたのだ。想うこと自体が、高杉を破滅に追いやりかねないと、突きつけられたのだ。
 そしてその元凶は、眼に涙を溜めたまま睨みつけてくるまた子に対し、「そうか」と小さく頷いたのだ。
「気づかれてしまったか。」
 一瞬で距離を詰め、胸ぐらを引っ掴む。振りかぶった手のひらは唸る前に細い手に封じられる。
「桂っ!」
「お前がそれを気にして、高杉を想うことを止めるのなら、それでも構わん。彼奴を揺さぶる手は、まだあるのだから。」
「な………っ!」
 桂の手がまた子の右手から離れ、胸ぐらを掴む左手を解いていく。
「この程度で、諦めきれるのならな。」
 桂が一歩下がる。白ペンギンがまた子の脇を通り、踵を返した主人の後ろにつく。
 足下の二丁拳銃を拾うことも思い浮かばず、また子は去っていく後ろ姿をただ見つめた。


 江戸からのその客人が来ることを、また子は嫌ではなかった。
 いつも素っ気ない大好きな人はますますまた子を顧みることがなくなるし、二人っきりで話をしているのを見ると悔しくなった。けれど。
 いつも怖いあのひとの顔が少しだけ柔らかくなるのを見るのが好きだった。
『高杉はこのような娘が好きなのか。』
『はぁ? 何言ってやがんだテメェ。』
『違うのか?』
 きょとん、と、琥珀の眼が丸くなった。あれは、真実だって、思っていたのに。


「ほらよ。」
 ぽいっと寄越された包みを、反射的に受け取った。恐る恐る開けてみると、中から鎧を着けた白猫の小さなぬいぐるみが出てくる。
「これ………。」
 贈り主の、翠の眼を思わず見返す。いつものようにはしゃぐでないまた子に、高杉は眉をひそめた。
「何だ。いらねぇのか。」
「でしたら私が。小さな子にあげたら喜びそうです。」
「いらないわけないっすっ。嬉しいっすっ。」
 慌てて頭を振り、ぬいぐるみを抱きしめる。万斉から、冷たい視線が注がれてるのが判った。けれど。
「嬉しいっす。ありがとうございます晋助さまっ。」
 諦めるなんて、やっぱりできない。だけど高杉の破滅も見たくない。
 だから、想いは秘めたまま、このひとの側にいようと。命に代えてもこのひとを護ろうと。
 新しい歳の一歩として、そう誓った。



                              ~Fin~

by wakame81 | 2009-01-14 00:01 | 小説:星は何処  

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