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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

天高く、行軍歌は流れ:中

前後編のはずが、前・中・後になってしまいました(爆)。体育祭はしゃぎすぎ。ちなみに前編はこちらです。





 夜中まで雨は降り続いたものの、翌朝、体育祭当日は晴天に見舞われた。
「てるてる坊主のおかげじゃのーっ」
 自分のクラスどころか他のクラスにまでてるてる坊主作りを強要した黒もじゃはご満悦だ。さすがだ、と桂も思わざるを得ない。
 坂本の晴れ男っぷりは今も健在のようだ。
 朝のHR後、それぞれ自分の椅子を選手控え席に運ぶ。トラックはまだぬかるみが残っていて、汚れたら大変だ、と思った。
 そこへ。
「おい桂ぁっ!」
 大声を上げてこちらへ向かってくる姿に、首をかしげた。隣にいた神楽は眼を瞬かせたあと、桂に持たせた自分の椅子を受け取る。
「お前、なんなんだあの白ペンギンはっ?」
 風紀委員の腕章をつけた土方が指さす先を見る。と、家族席のところで一際目立つ白くて丸いものが、シートを敷いていた。
「あぁ、ちゃんとシートを持ってきたんだな。偉いぞエリザベス」
「偉いぞエリザベス。じゃねぇっ! なんなんだアイツはっ。お前のペットだろっ」
「そうだが」
「学校はペット持ち込み禁止だぞっ!」
 桂と神楽は首をかしげる。
「じゃぁ定春もダメアルか。なのになんで、ヅラにだけ文句言うアル。さてはお前ヅラのことー」
「アレは勝手に学校に住み着いてる犬っつー設定だろっ! 何だったら繋いで檻に入れとくかコルァっ」
「ひどいっ。あんなジンジクムガイな子に何てことするアルかっ!」
「アイツのどこが人畜無害だってんだぁぁぁっ!」
 身長差20cmを物ともせず睨みあう。桂はため息をついて、二人の間に入った。
「土方。定春殿はちょっと大きいだけの、ただの白ふわな肉球動物だろう。そこまで目くじら立てずとも」
「そんな可愛らしいシロモンじゃねーだろっ。百歩譲ってあの犬のことは置いとくとしても、白ペンギンはオメーの責任だろっ。とっとと連れて帰れっ」
「だって、ペットも家族と言うだろう? なんで今日まで駄目なんだ」
「周囲怯えさせてるだろっ、よそ様に迷惑かけてんだろっ!」
 再度、家族席の方を見やる。全校生徒の家族や周辺の中高生まで、たくさんの人でごった返しているが、エリザベスのところだけぽっかりと人混みが空いている。
「大きいシートを持ってきたんだろう。汚れたら大変だからな」
「そーゆーことじゃねーだろっ。だいたい、何で連れてきたんだっ」
「だって、坂本先生は許可をくれたぞ」
「何じゃそりゃぁぁっ!」
 土方はあんぐりと口を開いた。と、次の瞬間バッとその場から飛び退る。
「おっと危ねぇ土方さん。すいやせん、手ぇすべっちまいやした」
 風紀委員の見回りからいつの間にか戻ってきていた沖田が、空振りした椅子を構え直す。
「総悟っ。オメーっ!」
「こっちは今んとこ異常なしでさぁ。風紀副委員長が足滑らせて骨折する以外は」
「これから骨折さすってことかぁぁぁっ!」
 じりじりと、椅子を間にして睨みあう二人を無視して桂は点呼をとる。沖田以外のクラス全員が、椅子も含めて到着していることを確かめ、落に知らせる。
 校庭の時計の針は、九時十五分を指そうとしている。
「二人とも、もう開会式始まるぞ」
「何っ?」
「ほーら土方さん、こんなとこで遊んでねぇでとっととマヨ組に帰ってくだせぇ」
「お前のせいだろーがっ!」
 そんなこんなで、体育祭は始まった。


 色別対抗リレーの選手以外の生徒は、100メートル走、コンボリレー、個人種目のどれかに出なくてはならない。これらが三学年分と、各学年男女に分かれての団体競技、学年合同女子のみの綱引き、学年合同男子のみの騎馬戦が、銀魂高校の体育祭の主な競技だ。その他に、部活対抗リレーや応援合戦、色別対抗綱引き、バトン部の演技などが、プログラムに組まれる。
 二年男子100メートル走を終えて、桂は学ランに着替えた。大丈夫、テーピングしたから足は痛くない。応援席に戻り、トラックの中を見て眼を細める。
 今は一年女子による団体競技の、追いかけ玉入れが行われている。自チームの色のかごを持ち、玉を入れられないようにトラック内を逃げるのは、二年の体育祭実行委員で、つまり黄色組は神楽である。
「出ずっぱりだな」
 さっきの100メートル走も、一位の旗もちをしていた。自分のエントリーしている競技だけではない、実行委員として神楽はいろんな競技に関わってる。
「おーおー。張り切っちゃってまぁ」
 沖田がひょっこりと桂の隣にやってきた。右手をかざすようにして、飛び回ってる神楽を見る。
「まるでサルだなぁ。てーかこの後アイツリレーだろぃ、大丈夫かよ」
「すっかり夢中のようだな」
 笛がなった。選手は陣地内に戻り、真ん中にかご持ち達が集まる。審判の号令にあわせて、かごの中の玉を放り投げ、数える。
「よく憶えてるんだな」
「何が?」
「リーダーの出る競技」
 言われた沖田はしゃっくりのような声を上げて桂を見た。変なことを言ったかと眼を瞬かせると、ムッと口を尖らせる。
「別に、たまたまだぜぃ」
「そうか」
 こくり、と頷いて、トラックに眼を戻した。黄色組のかごはあっという間に空っぽになって、神楽がかごを逆さまに持ち上げている。その隣では、青組がまだ玉を放り投げていた。
「好きなんだな」
 ぽつりと呟くと、さっきよりも引きつった声が上がる。
「好きって」
「リーダーは体育祭が好きなんだな、と思ったのだが。違うか?」
 沖田はぷいっとそっぽを向きながら、「知らね」と呟く。
「だって、あんなに生き生きしている。生き生きしてるのはいつもだが、それに輪をかけて」
「ふーん」
 気のない返事に、思い過ごしだろうかと首をかしげる。そして続けられた言葉に、目を丸くした。
「てめーだって、よく見てんじゃねーかぃ」
 沖田の横顔を、ついまじまじと見つめてしまった。続く言葉を待ったが彼は明後日の方を向いたままで、眼を瞬かせた後桂はトラックの方へと向いた。対戦チームが入れ替わって、黄色組は神楽に誘導されてフィールド外へ出ている。
 逃げ切った、満足した笑顔を見ていると、さっきの沖田の言葉が思い返されて、なんだかくすぐったい気持ちになる。
「なーににやけてんでぃ」
「うわっ?」
 束ねた髪を引っ張られる。掴んだ手をふりほどこうと暴れると、援団の先輩から、何を遊んでる、さっさと来い、と怒られた。
 追いかけ玉入れは黄色組の圧勝に終わった。戻ってきた女子達は、割れんばかりの拍手に迎えられる。それから、三年生の個人種目を経て、次は二年生の男女混合コンボリレーの番となった。
 コンボリレーとはつまり障害物リレーである。それも、走る順番ごとに障害物が変わってくる。何も障害のない第一、第二走者からバトンをもらった第三走者はハードル走をやらされ、第四走者は平均台を渡らせられる。障害物を次々と並べなくてはいけないから、実行委員も大変である。
 先頭が第八走者まで回ったときだった。
 トラックにおかれた封筒を拾った選手たちが、次々とレーンを離れる。うち一人、白組の志村新八がこっちへとやってきた。
「桂さんっ。一緒に来てくださいっ!」
「え?」
 鳴り物を鳴らしていた桂の手が掴まれる。訳も分からず引っ張られ、反射的に足を踏みとどまった。
「何してるんですか、早く来てくださいよっ!」
「いや、来いってどこへ」
「駆け落ちかい、ひゅーひゅー」
「違いますっ!」
 心のこもらない声でヤジを飛ばす沖田に怒鳴り、新八は持っていた紙を見せた。そこには、「髪の長い人(他チームのみ)」とある。
「他に心当たりなんてないんです。お願いします、白組のためにっ!」
「ほほーう?」
 割って入ったのは、援団の先輩たちだった。
「白組の有利と判って、そう簡単に渡すと思ってるのか?」
「え、でもっ」
 紙にはそう、と続ける新八の言葉を、先輩たちは聞いてはくれない。
「わざわざ他チームと指定する意味判ってんのかぁぁぁっ!」
「どうしても桂を連れて行きたかったら、俺たちを倒してからにするんだなぁっ!」
「ひぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」
 まるでカバディのように壁を作る先輩たちを他人事のように見ていると、後ろから手を引っ張られた。振り返ると、見慣れた黒もじゃが眼に入る。
「坂本先生」
「こっちじゃ、ヅラ」
 手を引かれるままについていき、ぽいっと放り出されたのは新八の目の前で。
「え。」
「え。」
 眼をぱちくりさせた新八は、はっと顔を引き締めると桂の腕を掴んで走り出した。
「おぉ、駆け落ちみたいじゃ。と」
「「「このバカ本ぉぉぉっ!!」」」
 後ろから阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえる。状況が判らないまま桂は新八に連れられ、チェックポイントに飛び込む。
「やったトップだっ! 桂さんのおかげですっ!」
「え? あぁ。?」
 白組の次の走者がバトンをもらって走っていくのを、息を整えながら眺めていると。
「くぉぉらヅラぁぁぁぁ」
 おどろおどろしい声に肩をすくめた。新八と二人、恐る恐る振り返る。猫か鬼のように、髪の毛を逆立てた神楽がそこに立っていた。
「どーしてのこのこ新八についてきちゃったアルかっ! 白なんかに逆転されちゃったアルよっ! これで負けたらどーしてくれるネっ!」
「いやその、坂本先生が」
「モジャが何ネ、それで泣き寝入りしたアルかっ! そーゆーのが悪い男をつけあがらせるアルっ!」
「神楽ちゃん、悪い男ってどういう意味? まさか僕のことじゃないよね?」
「駄眼鏡は黙ってるアルっ!」
 新八を一喝し、神楽は桂のほっぺたをぐにぐにと引っ張る。まずいことをした、とやっと判ってきたのでされるがままになる。
 第九走者の神楽がそんなんだったので黄色組のバトンリレーは大幅に遅れ、コンボリレーは最下位に終わった。



                            ~続く~

by wakame81 | 2008-12-06 01:11 | 小説:3Z  

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