人気ブログランキング | 話題のタグを見る

お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

星は何処~9月7日

エリー誕生日。
どうでもいいんですが、エリザベス視点で書くとどうも乙女チックになるのですが。中身おっさんなのに。なんで???





 去年から一年間の間に、エリザベスの主人を取り巻く状況はだいぶ変わったと思う。
「かーつらぁぁぁぁっ!」
 具体的には、むかつくカスどものうち一人の接近である。前から桂の周りをちょろちょろしてはバズーカをぶっ放す小煩いガキだったが、先年末の共闘以来、その距離が縮まった。捕り物でもなく隠れ屋の周りをうろつき、家にあがり、そして先日は、事もあろうに桂に触れていた。
 実際の距離が縮まれば、目にする秘密にも増える。
 今まで正体の知られることの無かった変装の、いくつかを見破られるようになった。それを黙認するときのほうが多いのだが、今日はそんな気分ではなかったらしい。街中を連れ立って歩いていた桂とエリザベスを見たとたん、奴はバズーカを構えた。
「ふん、甘いぞ芋侍っ!」
 桂の反応は我が主人ながら見事だった。飛んできた一発を軽々とかわし、んまい棒を叩きつける。二つの煙が吹き飛ばされたら今度は閃光弾だ。同時に逃亡に入った足は軽い。とても、動きづらい女ものの小袖姿とは思えない。
「………ちっ、待ちやがれぃっ!」
 だがカスもしつこかった。だいたいの当たりをつけてバズーカを撃つ。それがあながち的外れな狙いでもないから厄介だ。
 桂はひらりと屋根の上に乗った。エリザベスも後に続く。美しい菊の大輪をあしらったすそを翻しながら走る姿はとても美しい。うざい砲撃はまだ続いているが。
「エリザベス。」
 合図を受けてエリザベスは振り返った。走りながらぱっくりと口を開ける。その中からにょっきり突き出したのは、バズーカの砲口。
「てーーーーっ!」
 打ち出す。狙いは適当、ただし沖田の前方にくるように。
 ぼんっ。
 音を立てて砲弾が弾け、中からむくむくと巨大エリザベス風船が姿を現す。仕込んだ自動空気入れによって膨らみ続けるそれは沖田の行く手を阻んだ。次の瞬間、パンっと風船が弾ける。沖田の刀が陽を受けてきらめく、のを見たのは一瞬で、中からあふれた催涙ガスに沖田は飲まれた。
 桂は一度立ち止まった。もうもうと立ち上るガスへと目をやり、右手をあげ人差し指と中指を立てる。
「バイビー。」
 ガスにまみれて沖田それを見ていないことに、エリザベスは感謝した。見れば、きっとあのガキはムカつきのあまり桂に追いすがろうとしただろう。


 エリザベスの誕生日デートは、こうして失敗に終わった。美しい女装姿だったが、沖田が見咎めるつもりなら正体を隠すこともできないし、他の狗に見られて変装のレパートリーを減らしたくはない。
「怪我はないか、エリザベス。」
 一度隠れ屋の一つに戻り、桂はいつもの羽織姿に戻った。ふるふると首を振ると、ふんわりとやわらかい笑みを浮かべる。
「それは何よりだ。だが沖田も、よりによって今日に職務にまじめにならずとも良いだろうに。」
 なぁ?と相槌をもとめられる。エリザベスはこくんと頷いた。
 単なる偶然とはとても思えなかった。小賢しいガキはエリザベスの誕生日が今日だと知って、邪魔をしたに違いない。だからこそ、一時しのぎのこの場所も、沖田の知らない場所を選んだのだ。
「さて。この格好ではでーとにも差支えが出るな。「お登瀬」でのぱーてぃーまでまだ時間があるが、どうする? やはり、ウッチー殿のところに行くか?」
 エリザベスはかぶりを振った。
『どうせだったら、稽古をつけてくれませんか?』
「稽古を?」
 こくりと頷く。丸く見開かれた瞳は、やがて細められた。
「かまわんぞ。だが、誕生日にも鍛錬を欠かさんとは、さすがはエリザベスだ。銀時あたりにお前の爪の垢でも飲ませてやりたいくらいだ。」
 だが、いいのか? 確認の問いに再度頷いた。

 強くなりたい。
 この人のそばにいるために。
 ただ護られて、弱点になるのはいやだ。
 今日という日だからこそ、この願いを叶えてください。

「判った。」
 桂は微笑んで、エリザベスを撫でる。白ふわに触れて蕩けそうな眼に、嬉しさがこみ上げるのは自分のほう。だってそれは、愛されている証拠。
「では行くか、てうわっ?」
 ぎゅむ、と抱きしめた。細いこの人の背中に届かせるのが大変な、自分の短い手が恨めしい。
 けれど桂はあやすように、エリザベスの広い背中をぽんぽんと叩いてくれる。

 そばにいることを許される、それが何よりの贈り物。




                        ~Fin~

by wakame81 | 2008-09-07 10:02 | 小説:星は何処  

<< 第227訓。 洞爺湖サミット。 >>