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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

君想ふ唄~GrandFinale~君と出会った奇跡を:2

ちなみに。
桂、神楽、沖田が同じクラスで、坂本が副担任。
新八は別クラスで、一年の時に神楽、妙、沖田と同じクラス。幾松ちゃんは保健室の先生。
銀八は、桂たちや新八とはまた別のクラスの副担任。





 どこの学校でもそうだと思うが、銀魂高校にはロングホームルームなるものがある。
 その時間何をするかはクラスの自由で決められ、自習するなり校外学習に出るなり七月の球技大会や秋の文化祭の準備に明け暮れるなり遊ぶなり焼き芋大会をするなり、とにかくクラス全体で活動すれば何をしても良いことになっている。
 木曜日の四限、ちょうど体育館を使う許可を手に入れた新八たちG組は、ネットで半分に仕切られた体育館のもう半分に神楽や桂の姿を見た。
「グーとパーでわかれましょ!!」
「やったーっ。」
「ほほーう、敵同士だなぁチャイナぁ。」
「フッ。丁度いい機会アル。今日こそ決着をつけてやるネ。行くアルよヅラぁ!」
「………だから俺はヅラじゃない。」
 G組は球技大会を見据えての、四チームに分かれてのバスケだ。自分の番ではないのをいいことに新八が見ていると、F組は賑やかに二チームに分かれた。
 数人がバレー用のコートの外側に立ち、あとは皆コートの中に入る。沖田と桂がバレーボールを持った坂本を挟むようにして、コート中央に立った。少し背の高い桂を見上げるようにして沖田が何かを言う。桂はそれに答えようとはしなかった。
「ヅラーーーっ! 負けたらケツ叩き100回アルよーーーっ!!」
 沖田の後ろから、神楽の声援(?)が飛ぶ。
「お、いいなぁそれ。俺も混ぜろや桂ぁ。」
「あっはっはーヅラはもてもてじゃのー。」
「良いから早く始めてください。」
 桂に促され、坂本はボールを放る。勢いをつけて高く飛び上がった沖田の、さらに数センチ上で桂の指がボールを弾いた。F組だけでなく新八らG組からも、それを見て歓声が上がる。
「おい、すげーなアイツ。」
「あの沖田さんに競り勝った?」
 新八も目を見張った。沖田の運動神経のよさは、学年中に知れ渡っている。身長差があるとはいえ、それに勝つとは。
「偉いアル、ヅラっ!」
 ボールを確保した神楽が桂の背中をどんと叩いた。桂はそれに答えない。少しだけ顔を膨らませた後、神楽の顔が邪悪に歪んだ。
「そーゆーわけで、死ねやぁぁドエスぅぅぅぅぅぅっっっ!!」
「甘いぜチャイナぁ。」
 神楽の投げたボールがうなりを上げて沖田を襲う。沖田はそれを、近くにいたクラスメイトを楯にして避けた。「ぐへっ」と呻き声を上げて崩れ落ちるクラスメイト。
「ってドッチボールかよっ!!」
 まさかとは思っていたが、思わず新八は声を上げた。神楽と沖田がいてこの競技とは、恐るべしF組。
 倒れた生徒はコート外に運び出された。保健室行かなくていいのかなぁと気になった新八だったが、そこへ声をかけられる。
「僕たちの番だよ、行こう新八君。」
「あ、うん。」
 ゼッケンをつけてコートに入る。松平の笛が鳴って、試合が始まった。
 よそ見をすると雷よりも怖いヤジ(てーか何故かバズーカ)が飛んでくるため、試合に集中せざるを得なかった。
 その集中が途切れたのは、前半終了間近のことだった。F組のコートで、鈍い音と共に悲鳴が上がったからだ。
「ヅラぁぁっ、大丈夫アルかヅラぁぁぁっ!!」
 神楽が泣きそうな声を上げて、外野に倒れている桂に駆け寄っている。
「あーあ、何味方倒してんでぃ。」
「うっさい、お前が避けるからアルっ! ヅラぁしっかりするネ、安心しろ傷は浅いぞぉぉぉっ!! 眠ると死ぬぞぉぉぉっ!!」
「あー、揺らしちゃあかんぜよ神楽坂ちゃん。頭打っちゅうからな。」
 坂本が神楽を制し、桂をそっと抱き上げた。意識を失ってはいなかったらしく、桂にも「おー、暴れるな落ちるぜよー」と話しかけている。
「そんじゃ落先生、ちっくと保健室行ってくるぜよ。」
 頭と影の薄い正担任にそう告げ、坂本は体育館を出て行った。後を頼まれた落は生徒達に励ますように声をかけながら試合を続けようとしている。
「よぉーーーーーーしっ! こうなったらヅラの弔い合戦ネっ。覚悟するヨロシっ!!」
「てーか仇はてめーだろぃ。」
 神楽が立ち直ったことで、F組は雰囲気を取り戻したようだった。それでも新八は、坂本の出て行ったドアを見つめる。
「………大丈夫かなぁ。」
「そうだねぇ心配だねぇ。」
 すぐ後ろで、渋く太い声がした。我に返って振り返ると、目の前にはサングラスをかけた強面の顔。
「試合中ぼーっとするような子はお仕置きだよぉ?」
「えっ、ちょっ!!」
 弁解をする間もなく、新八の目の前で松っちゃん砲が炸裂した。


 ボロボロになった身体を引きずって保健室まで辿りつく。主の幾松は、苦笑しながら新八を迎えてくれた。
「今日は何かあったの? さっきから怪我人が続々運ばれてくるんだけど。」
「あーその、F組がLHLでドッチボールを。」
 答えると、幾松は肩をすくめた。
「確か、神楽ちゃんがいるクラスだよね。良い度胸してるわね………。」
「僕も思いました。」
 新八を椅子に座らせると、幾松は向かいに座って擦り傷だらけの顔に、直接傷には触れないように手を当てた。四方から眺め見て、傷の様子を確かめる。
「頭は?」
「打ってません。」
「そう。」
 幾松の手は頭にも触れられた。念のためだろう、触診して痛みの有無を確かめると、ピンセットとコットンを取り出す。コットンを消毒液に浸して、傷口に触れる。
「っ。」
「しみるけど、我慢してね。」
 そう言いながら肩や肘の傷も消毒し、絆創膏や酷いところは包帯で蓋をする。
「他、気持ち悪いとかは?」
「それはないです。」
「そう。ならいいけど、どうする? 念のため、少し休んでいく?」
 幾松に促され、新八はベッドへと目をやった。休みたいと思ったわけではない。視線は手前の空いているベッドを素通りして、奥のカーテンへと向かう。
「志村くん?」
「あ、その。」
 呼ばれて眼を泳がせた。心配するのは別に悪いことじゃない。そう思い直し、幾松へと尋ねる。
「桂くんは、大丈夫ですか?」
 きょとん、と眼を丸くした後、幾松は微笑んだ。
「大丈夫よ。頭は打ってるけど、意識が遠のいたわけでもないし、気分不快とかもないしね。大事を取って今は休ませてるだけ。」
 先生としては、病院に行って欲しいんだけど。
 そう苦笑する幾松の視線を追った。奥のカーテンへ向けられた眼差しに導かれるように新八は忍び足で歩み寄る。カーテンの隙間から覗くと、冷えピタシートと氷枕で頭を冷やして寝ている桂が見えた。
 眼を閉じて、眠っているようにも見える。その顔が、青白いことに息を飲んだ。
「大丈夫。もし何かあったら、強制的に病院に連れて行くから。」
 幾松を振り返り、もう一度桂の方へと向く。側によって顔を覗き込みたいが、そうすると起こしてしまいそうなので止めた。
 そこへ、次の生徒が運ばれてきた。白衣を翻して手当に向かう幾松の後ろ姿を見ながら、邪魔にならないように部屋の隅へと寄る。
「これはまた、派手にすりむいたね。」
「酷いですよ。委員長いないから、誰もあの二人止められるのがいなくて。」
 これは阿鼻叫喚になってそうだ。新八は再び、カーテンへと視線を向ける。
 ぼんやりとしている間に、チャイムが鳴った。昼休みだ。そう思った途端、急に身体が空腹を訴えだした。
 少し考えた末、口を開く。
「先生。今日ここで、お昼食べていいですか?」
「うん? いいよ。」
 二つ返事で許可をくれる。新八は頭を下げて、保健室を飛び出した。




                            ~続く~

by wakame81 | 2008-07-08 22:30 | 小説:君想ふ唄  

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