お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~風薫る唄と運命の喇叭:8

まだ続いています(爆死)。
あと少しなんですが、一度に入りきらないんで。

………ジャンプ感想明日じゃだめですか?(死ね)







「………沖田?」
 真選組がサリエルと対峙している別の道を使ってエレベーターに乗り込んだ桂は、遠く聞こえた叫びに顔を上げた。見開かれた眼はすぐに伏せられ、唇を噛む。
 あの咆哮だけで、何が起こったのか全て悟る。
 どうせだったら………と浮かんだ悪い期待を、頭を振って追い払った。それは、冗談でも思ってはいけないことだ。彼女の想いを、踏みにじることだ。
 それが儚いものだと、希望とすら言えないものであることを、左眼に映るものが教えている。
 エレベーターが小さな金属音を立てる。表示は地下二階。開いた扉をくぐり、ためらうことなく歩みを進める。敵襲も、迷うことも予想してなかった。それはないと、確信していた。
 阻むつもりなら、とっくにミカエルは動いている。
 まっすぐに桂はその場所へと向かった。
 コンクリートがむき出しの、広い空間。そこを、どこから持ってきたのかたくさんのコードが埋め尽くしている。目黒研究所の、オートマタ≪零号≫の玉座を思い出す。
 コードが繋がれる先に、大きな卵があった。
 表面を渦巻く血と闇色の霊気が見え、脈だつそれは、正確には卵ではないのかも知れない。けれど、桂にとってそれはまさしく卵と呼ぶに相応しいものだった。
 その前に立つ。
 殻は透けているのか、中にいるものが自分を見つめているのが判る。薄い膜を通して、桂の左眼が桂を見つめている。
 卵の鼓動が、左眼の脈動と一致する。

「………………晋助。」

 呼ぶ声は、か細く震えていた。
 それでも、それに応えるように殻が震え、ひび割れ、砂山を崩すように霧散する。
 ゆっくりと身体を持ち上げる青白い裸身。細い。血色が悪い。あれから九年、陽の光などまともに浴びてこなかったのだろう。後悔と罪悪感が、桂の中から沸き上がる。長い前髪。頬は痩せこけているが、髪の長さは記憶と大して変わらない。まさか、卵の中にいる彼の髪を切ってやったわけでもあるまい。
 視線が上がる。しだれ柳のような前髪の隙間から、その瞳が桂を捉える。
 右の、深い緑の瞳と。
 左の、血を凝らせたような紅い球体。そこに浮かぶ、≪666≫の数字。
 一度だけ目を閉じて。
 桂は刀を抜いた。


「お、おいおい………。」
 頬が引きつる。笑いこっちゃない。けれど、笑わずにはいられない。
 ≪虎鉄Z=2≫の幅広の刃で振るわれる爪を受けた。もう一撃。身をそらしてそれをかわす。鋭い爪の先が近藤の頬を抉る。
 動きが速い。それは元から知っていた。剣道で試合う時、小柄な体躯を生かした素早い打ち込みに近藤は苦戦させられたのだ。けれど今のスピードはその比ではない。そして、あの時とは違う変則的な攻撃に苦戦させられる。当たり前だ、今のこいつは竹刀ではなく己の爪で襲いかかってくるのだから。
「総悟、とっととオメー正気に戻れぇぇっ!」
 土方の怒号が響く。沖田はそれに聞こえた様子もなく、近藤の顔面目掛けて爪を突き出す。
 そう。いつの間にか近藤らに襲いかかるのは、サリエルではなく沖田になっていた。
 サリエルはもうこの場にいない。沖田の攻撃を受け、退却している。ひょっとしたらどこかに潜んでいるかも知れないが、今それは近藤の知ったことではない。
「総悟っ。お前、どうしちゃったんだっ!」
 左手を受け流し、呼びかける。
 沖田は応えない。右手を薙ぎ払う。近藤は後ろに飛び退るが、爪は隊服と大胸筋を切り裂いた。痛みに足がもつれる。そこを更に沖田が踏み込む。
 その眼が。
 口端が。
 愉悦に歪む。
「………………のぉぉぉっ!!」
 沖田の左手の爪が、右肩と胸を貫いた。その腕を、≪虎鉄≫を投げ捨てた右手で掴む。霊力が人並みの近藤でも実体を持たない幽鬼を斬れるように、そして霊力と身体能力を増幅させる装置を組み込んだ刀だが、今の近藤にはそんなもの必要ない。
 今必要なのは。悪ガキを懲らしめる拳。
「いい加減に、しろぉぉぉぉぉぉっ!!」
 左手で殴りつけた。腕を掴まれ、身動きを取れない沖田の顎にそれは当たった。小さな身体が傾ぐ。近藤の身体から、爪が抜ける。
「いつまで好き勝手暴れてるんだ、正気に戻れっ。お前はそんな、ワケもなく暴れるような子じゃないだろぉぉぉっ!?」
 怒鳴りつけ。そして目眩によろめいた。肩と胸の傷から溢れる血が、身体を塗らす。息が苦しい。左手で傷口を押さえるが、その程度で収まる出血ではない。
 足に力を込め、倒れるのだけは防ぐ。ぼんやりとする眼に移るのは、起き上がり、顎の血を拭き取り、舐める沖田の姿。
 その顔が………狂喜を孕んで笑う。
「総悟………。」
 近藤の顔が歪む。
 沖田はゆっくりと、最期の瞬間をわざと長引かせるように腕を持ち上げた。その眼が一瞬、緊張に引き締められる。
「総悟ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 名を呼び、≪村麻紗≫を振り下ろしたのは土方だった。飛び退った沖田と立ち尽くす近藤の間に割り込み、表裏一体の波紋の刃を向ける。
「………オメーがいつまでも暴走するなら、こっちだって手を抜いてやらねぇ。悪く思うな、俺は近藤さんみてーに、素手の方が強いワケじゃねーんだ。」
 その言葉に対し、沖田は口端を歪めただけだった。舌打ち一つと同時に、土方は駆け出す。沖田が身構え、袈裟懸けに払った爪を半身になってかわし、上段から刀を振り下ろす。
 沖田は左手の爪で受けた。突き出そうとする右手を蹴り上げる。揺らぐ身体を更に刀で押しきりバランスを崩させる。隙のできた背中に、刃を振り下ろした。
 峰を向けて。
 近藤は息を飲んだ。峰打ちとはいえ、激しく打ち据えられてはたまったもんじゃない。が、倒れるかと思った身体は床に手をつき、曲げた腕を伸ばす反動で立ち上がった。人とは思えない動きに土方は追いつけなかった。
 頭突きを胸部に思いっきり食らう。よろめいた所に右腕のが振り下ろされた。反射的に突き出した刀は爪に絡められ、折れた。
「トシ、総悟ーーーーっ!!」
 振り下ろされる左手が。
 息を飲み、刀を引き寄せる土方の動きが。
 スローモーションで見える。駆け寄ろうにも、血の流れすぎた近藤にはその力が残ってはいない。
 誰か。
 呼びかける対象は判らなかった。無我夢中だった。伊東や桂のように熱心に神の存在を信じているわけでもない。この祈りを聞き入れるものなどいないだろう。それでも、近藤は祈った。
 そして。
 折れた≪村麻紗≫からふわり、と、それは立ち上った。
 淡く白い光。同じように白い法衣。沖田と同じ薄茶の短い髪が揺れ、細い腕が沖田を抱きしめる。
 その人を、近藤も土方も知っていた。
『だめよ、総ちゃん。』
 柔らかく澄んだ声音。慈しみに満ちた眼差し。
 沖田の動きがぴたりと止まる。鋭い爪が縮み、歪んだ表情が穏やかなものになり。
 左胸の烙印が薄まり、消える。
 眠るように沖田はまぶたを閉じ、抱きしめる腕に体重を預ける。
 奇跡、だと思った。
 信じられない光景だった。
「………ミツバ………………?」
 土方の声に応えるように、既にこの世を去ったはずの沖田の姉は振り向き微笑んだ。


 信じられなかった。
 祝詞は省略形ではなく正式なものを唱えた。陰陽道から取り入れた歩法と神刀≪フツノミタマ≫による祓いの舞は幾百幾千も繰り返したもので、間違いようもないほど身体に染みついている。穢れを祓う呪具も、正しく使ったはずだ。身体中に染みついた死の穢れと、先にお通に憑いた化け物を祓った消耗は、それで打ち消されるはずだった。
 それなのに。
「どうして………。」
 彼に取り憑いた≪獣≫が、落ちない。
 彼はニタリと嗤った。その表情に、九年前、当時の≪獣≫の幼い姿が重なる。
 爪が振り下ろされる。桂はそれを刀で受けた。強い力で押し切られそうになる。
 祝詞を唱えなければ。そう思った。祓魔の光は魔に属する≪獣≫の力を抑えるはずだ。そこまでいかなくとも、目つぶしにはなる。
 それでも。
 彼を攻撃するのは嫌だ。
「………くぅっ!!」
 爪が両肩に食い込む。痛みに堪え、受け流そうとするがその前にもう片方の腕が動いた。
 腹部を斬り裂かれる。≪フツノミタマ≫を握る手から力が抜け、押さえていた爪が肩の肉を抉る。
 倒れそうになる身体を、彼の手が支えた。
「しんすけ………。」
 見上げる顔を、≪獣の烙印≫を刻んだ左眼が覗き込む。
 その視線を正面から受け止め、小さく囁いた。
「………………すまない。」
 お前を護れなくて。





                               ~続く~
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by wakame81 | 2008-05-13 23:14 | 小説:ギンタマン  

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