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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

君想ふ唄~9月4日~

二週間遅れの近藤誕生日。3Zです(爆)。





 銀魂高校3年Z組の朝は、騒動から始まる。
 それは、朝一から早弁をする神楽への志村弟のツッコミだったり、神楽とキャサリンの陰険な争いだったり、教室内の物すべてをぶちこわしかねない神楽と沖田の決闘だったり、沖田の土方への暗殺行為だったりするのだが。
「お妙さ~~~んっ!」どげし。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?」
 今日は、風紀委員長近藤勲の熱烈アタックが、その口火を切った。
 ルパンダイブさながらに飛びつこうとした近藤をカウンターの右ストレートが迎える。勢いよく近藤は吹き飛び、後ろにいた山崎を巻き込んで机と机の間に倒れ込んだ。
「って、何で俺ぇぇぇぇぇっ?」
「山崎だからでさぁ。」
「まぁ、ザキだからな。」
「俺っていったい………ぶぎゅっ。」
 下敷きにされたまま己の存在について問いかけた山崎の頭を無意識に潰して、近藤は立ち上がる。
「さすがはお妙さん! 今日もいいパンチですな!」
 にこやかな笑顔が向けられた先では。
「お妙、あいかわらず容赦がないわね。」
「ストーカーはサーチ&デストロイが基本よ、おりょうちゃん。家庭内害虫と同じ。一匹見つけたら30匹はいるんだから、さっさと退治して数を減らさないと。」
「ストーカーとは大変な事ねぇ。同情しちゃうわ。」
「それほどでもないわよ。老け専で、この世界だと教師相手の禁断でただれた昼ドラ並みの展開しか待っていない阿音ちゃんに比べたら。」
「教師相手、っていうのが燃えるんじゃない。うまく落とせば成績も内申書も思いのままよ?」
「あんたらこの世界が学園物だって事わかってんの?」
 女たちの黒い会話が繰り広げられていた。
「そう、学園物! 酸いも甘いも噛み分けた本編での大人のやりとりではなく、ういういしく甘酸っぱい青春ラブロマンスの世界ですぞお妙さん! てことで」がんっ。
 英語辞書が近藤のあごにクリーンヒットする。
 さすがに倒れ込んだ近藤に、沖田の冷ややかな視線が飛んだ。
「ダメでさぁ近藤さん。女の子のかわいいおしゃべりに口挟むのは無粋ってもんでさ。」
「おめぇはあれがかわいいって思えるのか総吾………。」
「かわいーじゃないかトシ!」
「うわ、復活した。」
「女の子っていうのは女の子っていうだけでかわいい存在なんだ! ましてやそれがお妙さんなら尚更!!」ざくざくっ。
 今度はシャーペンが飛んできた。しかも、別方向からもう一本。
「うるさいアルっ!! 人が夏休みの宿題で忙しいときに、ジャマするなアル!!」
 教卓の前の席では、珍しく早弁最中ではない神楽が憤慨して立ち上がっていた。
 好奇心に眉をひそめた沖田が、近寄って神楽と向かい合った桂の机の上を覗く。
「って今更宿題かい。チャイナの脳内は時差ぼけかい?」
「夏休みの宿題は、9月1日にやるものアル。」
「神楽ちゃん、今日は4日だから。しかも、昨日だって授業あったから。」
「地学の授業はなかったアルよ。眼鏡のくせにそれもわかんねーのかだからオメーは駄眼鏡なんだよボケ。」
「何その酷い言われよう。しかも、夏休みのお天気日記って、小学生?」
「今時小学生でもこんな自由研究しねーぜぃ。」
「ふっふっふ。これはただのお天気日記じゃないアル。ちゃんと、天気図つきネ!」
「………それが自作ならまだしも、天気予報から引っ張ってきた物じゃない。しかも、ネットから落としてきたのバレバレだよ、アドレス書いてあるもの。」
「ヅラの努力のたまものに、ケチつける気アルか新八。」
「しかも人にやらせてるし!! 桂君も嫌なら断ろうよ!!」
「今年はちゃんと夏休み初日から天気図をだうんろーどしたからな、継続は力なりと言うが、苦労した。」
「ダメじゃねぇかい桂ぁ。そういうときは、こっそり去年一昨年のモノを混ぜんのが基本でさぁ。」
「そうなのか?」
「それ、神楽ちゃんへの嫌がらせなの、先生への嫌がらせなの!?」
 教卓前の席は、あっという間に漫才カルテットと化した。
「仲いいですねー。やっぱ、二年続けて同じクラスっていうのは違うんですかね。」
「現実逃避してる場合じゃねーぞ、山崎。」
 お妙から投げつけられた方のシャーペンは、どうやら急所に刺さったらしい。
 倒れ伏してぴくぴくと痙攣したまま復活しない近藤を突っつきながら、土方が呟く。
「これってやっぱ、保健室いきですかね。」
「保健委員がアレだから、それも難しいんじゃねぇの。」
「うぉーい、いつまで騒いでんだ、夏休みぼけもいい加減にしなさいコノヤローども。」
 かったるそうな声と共に、担任・坂田銀八が教室に入ってきた。
 教卓に近い、前の入り口から入ってこなかったのは、そこで、『引き戸を開いた先生に落とそうという黒板消しのイタズラ』よろしく、猿飛あやめが挟まっていたからだろう。


 はっきり言って、この時期の授業は授業にならない。
 夏休み明け三日目。うち一日は始業式だけで終わったから、授業をやる日としては二日目。
 宿題や課題やらの提出などで、あっという間に50分の授業は終わる。
 まして。
 二週間後には、文化祭を控えた高校だ。追い込みで忙しい生徒たちにとって、授業時間はいい休憩時間となり、先生たちもそれをあまりとやかく言わない。
 理解がありすぎるのか、ゆとり教育なのか。
 仮にも進学校としては、それでいいのか不安が残るところだけれど。


 そして放課後。
「あーかったりぃ。」
 授業中にもひたすら爆睡をかました沖田が、大あくびを隠そうともせずぼやいた。
「なんで、実行委員でもないのに会議に出なくちゃならねぇんでさ。」
「毎年文化祭は、実行委員と合同で見回りに当たってるだろ。その打ち合わせだ。」
 去年も見回りしたろ、と、自販機で買ったコーヒーを飲み干しながら土方が答える。
「それにしても、なんでうちの学校には紙コップ式の自販機がねぇんだ。マヨ入れるのに、どれだけ苦労してると思ってんだ。」
「わざわざ半分飲んでからマヨぶっこんでシェイクするのは土方さんぐらいでさぁ。」
「捨てるのはもったいないだろ。」
「いっそ捨てられた方が、コーヒー農家だって幸せでさぁ。」
 あー眠ぃ。
 あくび連発。
「………総吾。会議じゃ寝るなよ。」
「ばれねぇようにアイマスクするから平気でさ。」
「寝るなっつってんだろーがぁぁぁっ! 一応風紀委員の代表なんだから、その辺自覚しろぉぉぉっ!」
 鞄を握りしめ怒鳴る土方。どこ吹く風の沖田に対し、追いかけっこが始まるかと思いきや。
「………止めねぇな。」
「………止めに来ねぇでさ。」
 いつもはその前に「トシーーー総吾ーーーやめてーーーっ風紀委員にまた苦情来るカラーーーっ」と止めに入るストッパーが、今日は虚空を見つめてほうっとしていた。
「やっぱ、アレですかねぃ。」
「アレだろうな。まったく、相手にされねぇのはいつものことだろうがよ。」
「お月様の日………。」
「お前サイトの傾向考えてるっ!? アレだから、あの馬鹿が近藤さんに求めてるのは、姫ポジじゃなくて父性だからっ。」
(サイトの根底に関わるお見苦しい発言がありましたことを、お詫びいたします。)
「そうかぁぁぁっ!!」
 不意に近藤が大声を上げた。
 ぎゃーぎゃー騒いでいた土方と沖田は、ぴたっと動きを止める。
「あの日だったんですねお妙さんっ! だから、今日という日にも変わらずじゃなくて関わらずつれない態度をっ! 大変な日だというのにぶしつけで申し訳ないっ!」
「………近藤さん、アンタそれ本人が聞いたら絶対ぶっ殺されっぞ。」
 一人で勝手に復活し、盛り上がる近藤の耳に、土方の静かなツッコミはもちろん届いていなかった。


 会議室の前でそんな騒ぎを繰り広げた訳なので、開始しょっぱなから風紀委員に対する苦情と不信感もりだくさんな内容になった会議だったが、それでもつつがなく終わることができた。………土方の左隣からあがる寝息に、会議の間中冷たい視線が注がれまくっていたが。
「あー近藤君。」
 そんなわけで、会議終了後、文化祭実行委員顧問から呼び止められたのも、どうせまた苦情だろうと思ったわけで。
「お前のクラスのアレは、どうにかならんのかね?」
「………は?」
 まさか、苦情の内容が3Zのことだろうとは、思いも寄らなかった。
「アレ………ですか?」
 何のことだろうと、近藤は首をかしげる。後ろでは、ありすぎる心当たりを、土方と沖田が指折り数えていた。
「あの長髪の生徒だ。確か、桂と言ったか。」
「はぁ。」
「あの長髪は校則違反なんだが、そこらへんちゃんと取り締まっているのか?」
「注意は、促しております。」
「言って聞くようなタマじゃねぇですけどー。」
「総吾。」
 土方が、小声で沖田を諌めた。その土方からも、不穏な空気が漏れ出ているのを、近藤は背中で感じる。
「注意だけじゃ手ぬるい。だから、あの生徒は未だに髪を切らんのではないか?」
 努力がたりんと言われ、色めき立つ沖田を土方が抑える。
「我々の努力が足りないのは確かです。しかし、無理強いをするわけにもいきませんので。」
「第一、なんで松平………センセイじゃなくて、アンタがそれを言うんでさぁ。」
 睨みつけられてもひるまず、沖田が口を挟む。今度は土方も、沖田を止めなかった。
「顧問でなくとも、我が校の生徒である以上校則違反を放っておけるわけがないだろう。」
 それに、と顧問は言葉を潜めた。
「今度の文化祭では、大物芸能人がゲストとして来る。まだ極秘だが、マスコミがそれをかぎつけてやって来ないとは限らない。その時に、我が校の乱れた風紀がマスコミに知られては困るのだ。」
 本人にそのつもりはなくても、学校の体面のみを気にしていると取れそうな台詞に、三人はうんざりした。それを顔に出したのは、沖田だけだったが。
「いいか、文化祭当日までに、あの髪をどうにかしろ。言って聞かないなら、実力行使をするくらいの気概を見せてみろ。」
 それを言い置いて、顧問は去っていく。
 もし振り向いたら、沖田がものすごい顔であっかんべーをしているのが、目に映っただろう。
「………何様のつもりだ………っ。」
 低く、土方が吐き捨てた。
「大きな行事だからって、顧問の自分も偉くなったような気がしてるだけでさ。あんなのまともに相手する方がバカですぜ、近藤さん。」
「だがなぁ………。」
 ふぅっと、近藤は息を吐き出す。
「実際に、桂は髪を切ってこないんだ。俺の怠慢だと思われても、仕方ないだろうな。」
 自分はいい。
 けれど、土方や沖田や山崎までが、委員の仕事をさぼってるとは思われたくない。
「近藤さん。アンタはよくやってるよ。切ってこないのはアイツなんだ。」
「そうでさぁ。二年の時だって、担任に何度言われても切らなかった桂ですぜ。今更近藤さんや銀八に何言われたって、切ってこねぇでさ。」
「………銀八のあれは、注意っつーよりからかってるだけの気がするけどな。」
 ひょっとして、担任のアイツがからかうから、桂もみんなもなぁなぁですませてるんじゃねーのか。そう、土方が呟く。
「かといってなぁ………。」
 言っても聞かない。それは確かだ。
 しかし、実力行使は気が引ける。
 風紀委員総出で桂を押さえ込んで髪を切るなんて、それこそいじめの図ではないか。
「ま、そんなこと言っててもしょうがないでさぁ。」
「そうだぜ近藤さん。飯でも食いにいかねぇか。山崎がガストの席を押さえてるから………。」
「山崎ならあそこで、ミントンやってますぜ。」
「何っ? ………山崎ぃぃぃそこから動くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 二階の廊下の窓から土方は叫び、さすがに飛び降りれないので廊下を走っていった。
「ま、平日のガストなんだから、わざわざ押さえなくても座れんでしょ。行きやしょ、近藤さん。」
「あぁ………。」
 促されて、近藤は歩き出す。が、階段にさしかかったところで、足を止めた。
「近藤さん?」
「悪ぃ。やっぱり先に行っててくれ。忘れ物をしたんでな。」
「………早く来てくだせーよー。」
 気づいているのかいないのか。
 いつもと変わらないマイペースな顔でそういう沖田に手を振って、近藤は階段を上がっていった。




                                  ~続く~

by wakame81 | 2007-09-18 10:14 | 小説:君想ふ唄  

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