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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

君想ふ唄~8月12日~

一ヶ月遅れを承知で、新八誕生日。
原作の進行状況とからめてみました。176~177訓の間とお思いください。
長谷川さんがよく判らないので、とりあえず壊してみる(爆)。







  わかっていたけど、今年の誕生日は最悪だった。

  8月12日を含めて沿岸警備の仕事が入った時点で、今年はろくな誕生日にならないことはわかっていた。
 銀さんも神楽ちゃんも、たかが誕生日で、僕が仕事を休むことを赦さないだろうし、久しぶりのまとまった仕事を休むつもりは僕にもなかった。
 お通ちゃんのコンサートが重ならなかったことが、唯一の救いだろう。
  ひょんなことから竜宮城に行けることになって喜んだのも、ぬか喜びというか、まさかあの時は、こんなことになるなんて思わなかったんだ。
「まさか、竜宮の侵略にあったあげく、捕虜にされるなんて………。」
 縛られて歩きながら、僕は何度目かの溜め息をついた。
「あらダメよ新ちゃん、溜め息をついちゃ。幸せが逃げてっちゃうわ。」
「もうとっくに逃げてってます。」
 こんな状態になっても、姉上は前向きだ。
「こんな時こそ、笑わなきゃ。暗い顔をしていると、心もどんどん暗くなっていって、肝心な時に体が動かなくなってしまうわ。ほら、笑いなさい。長谷川さんみたいに。」
 その長谷川さんは、姉上の右前、縛られた僕らの先頭に亀梨さんと二人で並んで引っ立てられながら。
「ハツ~もしお前に子供が産まれたら俺の泰の字をとって…」
 とか言いながら、虚空を見つめてへらへら笑っている。
「って、すっかりあっちの世界に逝っちゃってるじゃないですかあっ。長谷川さんんんっ戻ってきてくださいいいっ。」
「男の子だったら泰一郎とか、女の子なら泰子かなぁ………。」
 僕の必死の叫びは、けれど長谷川さんには届かなかった。
「長谷川さんっ。逝っちゃってる場合じゃないですからっ。てかあんたそう言えば自殺しようとしたって、いったい何があったんですかハツさんがらみですかやっぱりそうなんですかっ?」
「新八くん、静かにしたまえ。」
  話に入ってきたのは、九兵衛さんだった。
「あまり興奮しすぎると、体力を消耗する。捕虜になった時は、慌てず騒がず脱出の機会を探るのが、こおり鬼の戦術の基本だろう。」
「そんなはっきり脱出するなんて言わないでくださいバレますから。あと、これはこおり鬼じゃないです、マジモンの戦争ですから。」
「そうか。」
 思わず返したツッコミに、少し恥ずかしそうに、九兵衛さんはうつむく。あれ。なんか、ダメージ受けてない?
「新ちゃん、せっかく注意してくれたのにその言い方はないでしょう?」
「姉上………。」
 確かに言い過ぎたかもしれない。そう思い僕は、九兵衛さんの方を向いて謝ろうとする。
 が。
「仕方ないネ。今の新八に、誰かを気遣う余裕なんてないアル。」
 謝罪を口にする前に、僕の隣にいた神楽ちゃんが、縛られた両手をあげ、僕をびしっと指差してきた。ていうか、人を指さすの失礼だからね、神楽ちゃん。
「新八は今絶望のどん底にいるアル。ここから脱出して江戸に帰っても、待っているのはシワシワのヨボヨボのお通ちゃんアル。」
「敢えて考えないようにしてたこと指摘するなあああっ。」
 お通ちゃんのスケジュールは大まかに知ってる。(ストーカーって訳じゃない、公式ファンクラブの会長として、いつどこでコンサートをやるかを知ってるだけ)。
 江戸を離れてのツアーはしばらくないから、当然竜宮の侵略に巻き込まれてる可能性は高い訳で。
  つまり、あの煙に巻き込まれてる可能性が高い訳で。
「いやだあああそんなシワクチャのお通ちゃんなんていやだあああっ。」
 あのきれいな肌がしわくちゃになって、きれいな眼がくぼんで落ち込んで、きれいな髪がすっかり白髪になって、飛び跳ねるような振り付けで歌う体が腰から曲がってしまうお通ちゃんの姿をつい思い浮かべてしまい、僕は思わず絶叫する。ていうか、何想像たくましくしてるんだ僕!!
「新八もまだまだ青いアル。」
「そうねぇ。」
 そんな僕に、神楽ちゃんと姉上は冷静な視線を向ける。
「年と共にいずれ老いていくのが人というもの。化粧やアンチエイジングでそれを先延ばしにできるとはいえ、必ずやってくるのが老いというものよ。」
「新八は、好きな女の子が歳食ったくらいで幻滅するような、そんなタマだったアルか。女の子が歳を取るのを受け止める器もないアルか。」
「そ、そんなつもりじゃっ。」
 二人になじられて、思わず僕は否定する。
「や、だって、そりゃお通ちゃんが普通に歳を取っていくのは、僕は受け入れられるよっ? だけど今回のは、心の準備ってものがっ。」
「ひどい男アル………。」
「新ちゃん。私、姉として恥ずかしいわ。女を年齢で差別するような子に育つなんて………お父様も草葉の陰で泣いているわ。」
「何もそこまで貶めなくてもいいじゃないですかぁぁっ。ていうかせっかくの誕生日なのに、なんでここまでぼろくそに言われなくちゃいけないんですか僕はっ?」
「そうか、新一郎くんは今日が誕生日じゃったか。」
 いつもより全然、張りも何もない声は、僕らの後ろから聞こえてきた。
「それはめでたいのぅ。どれ、奮発して55円あげよう。と、と。おや、財布はどこじゃ?」
 最後尾で両手で刀を杖代わりにしてついて来ていた桂さんは、縛られた両手のまま袖の中を探ろうとする。当然、両手をまとめて縛られてるから、そんなことはできないのだけれど。
「ていうか、55円ってさっきと5円しかあがってないじゃないですか。奮発してそれなんですか。」
「何を言う。5円はご縁に結びついてな、とても縁起がいいと………誰が言っとったんじゃろ?」
「5円玉に描かれてる人じゃないかのう。」
「いや、5円玉に人は描かれてませんから。」
 いつも桂さんの訳のわからない言動は銀さんがツッコミ入れてくれるけれど、二人仲良く爺になった今、二人そろってボケ倒してくれる。………このメンバーでツッコミって僕だけ?
「しかし、いい日に生まれたのぅ。」
 状況を把握してないのか、のんびりと桂さんはそう言った。

 ………あれ。

「何かいい日アルか?」
「確か、あやつと二日違いじゃった………誰じゃったかのう。そうじゃ、紳助くんじゃ。」
 桂さんは顔を空に向け、眼を細める。
「相方の竜助くんは、今頃どうしとるかのぅ………。」
「いやヘキサゴン司会者は違いますから。」
「そうじゃ、違うぞしんちゃんの方じゃぞ。ピーマンをネタにおねいさんをナンパする小僧じゃぞ。」
「すぐ裸になる幼稚園児も違いますからっ。てかあんたらそれ本人に聞かれたら殺されますよ。」

『新八くんは今日が誕生日なのか。そうか………いい日だな。』
『何か、あるんですか?』
『あ、いや………あいつと二日違いだからついそう思ってしまっただけだ。すまない。それと、誕生日おめでとう。』

 そう。
 去年も同じやりとりをしたんだ。
 『あいつ』っていうのが誰か聞いて、しんしん&ろんろんで大江戸テレビの人形劇三国志に出ていた人とかとごっちゃにされたことも。
 その後で銀さんが、嵐を呼ぶ園児だと、さらに訳のわからない訂正をしたことも。

「殺されるかのう。」
「さぁのぅ。」
「てか、あいつとは誰じゃ?」
「知らん。てかお前が誰じゃ?」
「お前こそ誰じゃ?」
 また爺のやりとりを始めてしまった二人だけれど、なんだか僕は安心してしまった。
 見た目も中身も爺になってしまったけれど。
 でも、二人は何も変わっていない。
 だから、恐れる事なんて何もないんだと。

「それより糖がたらんのう。飯はまだかいの婆さんや?」
「うら若き乙女に向かって婆さんとかいう口はこれかしら?」
「お妙ちゃん、銀時さんのほっぺたが常人の3倍に伸びているんだが。」
「これがゴム人間というものアルかっ。ヅラも伸びるアルか?」
「ふはひゃひゃひ、はひゅ………はひゅ?」
「泰三ジュニアなんかもいいなー………。」
「あのー皆さん、一応我々最大のピンチなんですが………。」
「黙って歩け地球人どもぉぉぉぉぉぉっっっ。」


 ………やっぱり、ダメかもしれない。   





                             ~Fin~

by wakame81 | 2007-09-11 13:30 | 小説:君想ふ唄  

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