お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

踊り場から望む風景

毎回まいかい、タイトルつけるのに悩みます。先生の命日から、もう3週間過ぎてたとかそんな馬鹿な(爆)。

先生追悼といいつつ、銀桂と子供たちメインだったり。オビワン編の後日談的な話だったり。そして、カーニバルオンアイスの、浅田のエキシビションみて思いついたネタだったり(笑)。そして本当は、沖桂で書きたかったのだけれど、脳内桂さんが沖田を素直にほめてくれなさそうだったので、こうなりました。








「ただいまヨー」
「ただいま戻りましたー」
 帰宅を告げる声が、歌い出しそうな勢いで投げかけられた。眠そうな顔を読みかけのジャンプから上げた銀時は、続けて聞こえた声にやっぱりな、と頭をかく。
「ほら、ヅラも早く上がるアル」
「ヅラじゃない桂だ。お邪魔します」
「すみません桂さん、持ってもらっちゃって」
「いや、どういたしまして」
「じゃぁ僕、台所にこれ置いてきますね」
「あい判った」
 二人分の足音に、何やらがさがさという音が重なる。まるで、紙袋の中で何かが踊るような。
 ひょっとして、という期待は、ふすまが開いた途端に、無惨にも踏みにじられた。
「ふべらっ」
「なんで全部酢昆布なんだよ」
 座布団を投げつければ、駄菓子屋の紙袋と中のものが散らばった。どれもこれも赤い小さな小箱で、十円チョコもペロペロキャンディもチューインガムもありゃしない。新八がいながら、何をやっているのか。
「あーっ、銀ちゃん何するアルか、私の酢昆布っ!」
「うっせー、たかるならもっと腹にたまるもんたかれや。いちご牛乳とか」
「そんなの腹にちっともたまらないアル。すぐ出て終わりネ」
「たまるだろーが、ほら、腹にたぷたぷと」
「水っ腹のことかぁぁぁっ」
「ちょっと二人とも、ちゃんと拾ってくださいよっ」
 お茶を入れて戻ってきた新八の鶴の一声で、神楽は散らばった酢昆布を拾いにかかる。もちろん、桂も銀時も手伝わせてのことだ。いや、桂は自主的にだったが。
「つーか、何で全部酢昆布なんだよいやマジで。まんじゅうとかケーキとか、手土産だったらもっとあんだろ」
「今日は来る予定ではなかったのでな。何分準備というものが」
「神楽には酢昆布買ってやったくせにかよ?」
「リーダーの頼みとあらば、仕方あるまい」
 ふふん、と神楽が勝ち誇った笑みを浮かべる。男を手玉に取る悪女ぶるつもりが、どう見てもガキ大将の表情でしかないが。
「新八ももうちょっとフォロー入れろや。何のためにそのメガネがついてると思ってんだよ」
「少なくとも僕らにだけ買い出し行かせて、自分はのんびりジャンプ読んでるような人のお土産買うためじゃないですよっ」
「銀時。新八くんの言うとおりだぞ」
 あ、余計なスイッチ入った。つい、打ってしまった舌打ちはどうやら聞こえなかったらしく、滔々と桂は説教を始める。
「ちゃんと留守番をしているのならともかく、ソファに寝そべってだらだらしているなど、子供たちに申し訳ないと思わないのか。せめて、玄関まで来て出迎えるくらいの労いはしてやらないか。あと、姿勢も悪い。そうやって猫背などしていると、将来背が縮んでも知らんからな。そもそも貴様がそうやってだらだらして動かんから、糖分摂取が過多にならんように、新八くんも気を使って、甘味を買わぬようにしてくれたというのに、礼も言わんとは何事だ」
「長ぇよ」
 べしっとそのおでこを叩く。
 何はともあれ、酢昆布は無事に拾われ、新八が入れてくれたお茶で一息つくことになった。無論、茶受けは酢昆布である。
「つーか、どこのおばあちゃんち……?」
「よいではないか、健康的で」
「銀ちゃんは酢昆布のよさが判ってないアル。酢昆布を笑うものは酢昆布に泣くアルよ」
「泣かねーよ、むしろ今酢昆布しかないことに泣きてーよ」
 さすがの新八も、これをお茶受けというのはちょっとアレらしい。さりげなく、神楽に自分の皿を分けてやっている。
「そうだ。新八くんには個別に土産があったのだ」
「え、いいんですか?」
「ちょ、何で新八だけっ?」
「そーヨヅラ、リーダーの私を差し置いて、どーゆーことネ」
「すまぬ、リーダー。リーダーへの土産はまた後日」
「あとお前、いい加減神楽甘やかすのやめろ」
 甘やかしてなどいないが?と、首を傾げながら、桂は袖に手を突っ込んだ。
「先日は、まかでみあんなっつ?とやらをありがとう」
「あ、それでですか……って、」
 嬉しそうに細めていた新八の目が、取り出されたものに丸くなる。
「これ、何ですか?」
「甘いものだったので、党の皆で分けさせてもらった。たくさん食して銀時のようになるのもどうかと思ってな」
「おいそりゃどーゆー意味だコラ」
「その際に、事の経緯を説明したら、皆いたく感激してだな。ぜひ新八くんに聞きたいことがある、伝えたいことがある、と手紙を」
 手渡された、紙の束(手紙と言うよりもはやメモの束)に、新八は戸惑いながら目を走らせる、こと数秒。
「……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 そんな叫びと共に、紙束はテーブルの上に思い切りたたきつけられた。
「新八くん、どうした。銃で腹を撃たれた訳でもあるまいに」
「誰も殉職してませんっ。てかどーゆーことですか桂さん、事の経緯って何を説明したんですかぁぁぁっ」
 またもや散らばった紙を、銀時は拾いあげた。一枚を読んで、はぁ?と眉を寄せる。
「新八くん、チェリー卒業おめでとう、一生無理かと思ってたので、我が事のように嬉しいです、だぁ?」
「こっちはゴムつけるとき手間取りませんでしたかだって。銀ちゃん、ゴムって輪ゴムアルか?」
「ちょ、神楽見ちゃいけませんっ」
 慌てて取り上げる。見れば新八は、両方の理由で顔を真っ赤にしていた。
「一生無理とか失礼なこと言わないでくださいっ。てか、何でそーゆーことに話がなってるんですかぁぁぁぁぁっ」
「うむ。新八くんがこのたびめでたく、大人の階段を上ったと」
「なんでそんな曖昧な誤解されやすい説明をしたぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「大人の階段を上ったのは事実ではないか。皆まで言わずとも、みんな判ってくれたぞ」
「全くこれっぽっちも何一つ判ってくれてませんよっ」
「だが、新八くんががんばったことは、皆知っている」
 されるがままに首根っこ捕まれてがくがく揺さぶられていた桂の手が、ゆるりと上がる。目を血走らせた新八の頭に添えられ、ぽんぽんと、やわらかく叩く。
「よく、がんばった」
 空気を読まないその態度に、鼻フックデストロイヤーが炸裂したのも、自業自得だろう、きっと。


「ホントお前、空気読めよ」
 冷蔵庫の中を覗きながら、銀時はため息をつく。せっかくなくなった卵がまた補充されているのを見て、吐き出した息も二倍に膨れ上がった。
「何故だ。あそこは、新八くんを労うところだっただろう」
「全然ねぎらってねーよ、むしろ小馬鹿にしてたよ」
「そんなはずはないのだが」
 桂は首をひねりながら、研いでいた米に水を張った。きっかり五合、神楽がいるので当然一食分である。本人は足りない足りないと喚くが。
「ちゃんと、労っていただろう?」
「ねぎらうっつーなら頭撫でんのはやめてやれや。大人になったとか言いながらそれって、完全バカにしてたぞ?」
「そうか?」
 判ってないらしい。首をひねりたいのはこっちの方だ、新八の機嫌を取ってやらなきゃいけないのに、何だって肉とか買ってこないのだ。だったらケーキでも焼こうかなーと思ったら、生クリームもないし。どうしろというのだ。
「蕎麦とかどうだ?」
「そりゃおめーが食いたいモンだろーが」
 仕方ない、魚の干物を焼いて、野菜と芋はたっぷり使って煮物にして、味噌汁に溶き卵でも入れてゴージャス感を出そう。明日の卵かけられご飯の回避のためにも。
 米を研ぎ終わってしまえば、桂の出番はない。銀時に言われるままおとなしく、壁際に下がる。
「しかし新八くんも、頼もしくなるのはいいがお前に似るのは少し考え物だな」
「何言ってんだよ、こーんなイイ男に似るんならむしろ本望じゃねぇの?」
「お前のちゃらんぽらんなところは、ちゃんと反面教師にしているようだが。照れ隠しに人をどつくところが似るとは思わなかった」
「いやあれ照れ隠しじゃないから」
「ふぉろーせんとも良いぞ。判っておる」
「だからー」
 振り向いて、言葉を失う。
 ゆったりと腕を組んで壁にもたれる様、やわらかく細められたまなざし、差す西日に、わずかに金色を帯びて照り返す長い髪に、思わず目を見張った。
「それとも、余計なことだったろうか」
「……は?」
 何がだ、と。尋ね返した声がひりつく。
 桂の問いかけは、時折こんな風に、あちこちへと跳ねる。自分の聞き分けのない頭でもあるまいに。
「話を聞いてな、嬉しかったのだ。だからつい、党の皆に話してしまったのだが」
「新八が、大人の階段のぼったーって?」
 小さく、桂はうなづく。
「お前の後を見失わずに追って、お前をちゃんと、支えてくれた」
 それは囁くような声音だったのに、はっきりと、銀時の耳に届いた。潜められた声は深みを増し、ますますあのひとを思い出させる。
「孔雀姫との騒動の時も、思ったがな。一人ですべて背負おうとするお前の荷を、共に支えてくれる。俺には、できなかったことだ」
 笑みすら浮かべて、そう告げる。
「俺は、背中合わせでいても、いや背中合わせだったからこそ、お前を見失った。あの子らは、違う」
 やわらかなまなざしの向けられた先は、銀時を通り越して子供たちへと注がれている。それを理解していても、錯覚してしまいそうだ。
「良い子らに、育ったな」
「……あー」
 頭を振って、まぼろしを追い出した。深く息を吐いて顔を上げれば、そこにいるのは嫌みなほどまっすぐな、黒い髪を持った男だ。あのひと、じゃぁない。
「それで頭ぽんぽんってどーなの完っ璧ガキ扱いじゃん。そこがバカにしてるってーんだよ」
「仕方あるまい」
 小さな笑い声と共に、桂は答える。
「どれだけ大人になろうと、お前や俺にとって、リーダーや新八くんがかわいい子だということに変わりはなかろう?」

(どれだけ大きくなっても、親にとって子供は、いとしい我が子であることに、変わりはないんだよ)

 その言葉を。
 桂が、知っているはずはない。それは、自分とあのひとと、二人きりでいたときに、口にされたものなのだから。
 だから。
「おめーの子じゃねーだろーが。んなこと言ってんと、ハゲ散らかしたおっさんにシメられんぞ」
 これは幻だ。そう、自分に言い聞かせるように、目の前の頭をベアクローする勢いでかき回した。
「銀時、痛い痛い痛い」
「うっせーヅラ、暴れっとヅラ落ちんぞ」
「ヅラじゃない桂だ」
 手に触れる髪は、強いほどまっすぐで、なめらかで、そして黒い。それに、ひそやかに息を吐き出す。
「……なぁヅラ」
「ヅラじゃない桂だと言っているだろ。あと痛い」
「今度の日曜、空いてる?」
 言ってから、しまったと口を曲げる。押しつけていた頭がかすかに上を向いて、まぁるくなった琥珀が黒絹の間から覗く。
「勿論だ」
 さっきまでの、静かな、慈しむものではない。もっときらきらした光をたたえて、細められた琥珀に。
 赤くなる頬をごまかすように、手の中の頭を思い切り床へと押しつけた。
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by wakame81 | 2012-11-17 01:22 | つれづれ。  

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