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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

sonatina~op2~

桂マイナーcpアンソロ、6月シティのコタ誕で発行しました。当分は、記事全部にバナーをはっつけておこうと思います。



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音大パロは、人間関係がどろどろしてなくて書くのが気楽なのですが、そうすると高桂が恋愛関係じゃないという。お互いが大事なのは、変わらないのですが。
そしてもちろん総受け風味という。
ちなみに、攘夷4が四年生のころかと思われマス。近藤と土方と万斉と山崎も同い年、沖田と新八と神威はひとつ下、神楽がさらにその下です。






 月曜日になろうとする深夜の住宅街は、酔って騒ぐ奴などいないだろう。特に、大学生が一人で住むには広すぎる一軒家は、さっきまでの騒ぎのギャップか余計に静まりかえる。両親の長期出張という理由があるにしても、実は寂しがりの桂がよく我慢していられるとこういうとき思う。
「つまみもねーからな、言っとくけど」
「だろうとは思った」
「あ、ケーキは先生が死守して、お前の分冷蔵庫に入れてあっから」
「ケーキはもういい。そうだ、食べるか?」
 桂がカバンから取り出してきたのは、あんパンとクッキーの包みだ。人の形をしたクッキーはご丁寧に、首と胴体がすべて離れている。
「いらねーよ銀時じゃあるまいし。しかし、お前にしちゃ珍しいもの持ってるな」
「もらったのだ。沖田と、あとファゴットの……駄目だ、名前が思い出せん。ほら、松平先生の弟子の」
「そういやいたな、何だか地味な奴が。じゃねぇよ、何でその二人の名前が出てくるんだ?」
「ケーキバイキング中に、来たのだ。近藤と土方と一緒に」
 ビールのプルトップを開けようとしていた手が滑った。弾いた爪が、密かに痛い。
「……あの店にか?」
 行った事はないが万斉曰く、オシャレ系で今話題の女子会とやらでよく使われる店、だったはずだが。どうせ、志村妙目当てだろうと思うが、さすがの高杉も呆れを通り越して尊敬しそうになる。いや、しないが。
「あぁ。近藤はすぐに、お妙殿に連れ出されてしまったが。あと土方は、ケーキを奢ってくれたぞ。マヨネーズまみれでリーダーに突き返されたが」
「確かに、それに比べりゃまだマシなほうか」
「コンサートの裏方は体力を使うし休む間もないだろう、とな。クッキーはショウガの味が強かったが、まぁ食べられないことはなかったぞ」
「食ったのかよ」
「一つだけだ。クッキーもあんパンも、銀時のような甘味の好きな奴に食べられた方が幸せだろう」
 卓袱台の上に散らばったつまみの残骸を寄せて、空いた空間にあんパンとクッキーが鎮座する。コップに先生からの酒を注いでやったが、桂はまだカバンの中をごそごそ漁っている。
「おい、何やってんだ」
「他にももらったものがあるのだ。生ものだったら困るだろう」
「へぇ、誰にだ?」
「えっと、これは新八君からと、お妙殿から託されたものだ」
 四角く平べったい包装紙を外すと、中から出てきたのは案の定志村新八が心酔しているアイドルのCDだった。
「お前興味ねーだろ、こういうのは」
「あまり聞くジャンルではないが、いろいろと勉強になるぞ」
 続いて出てきたのは、飾り気も何もない封筒だった。中は、そばの割引券、それも束になるほど。
「これは、確か神威からだったかな」
「は?」
「ついでだからこれで自分に奢れと言われた。リーダーは激怒していたが」
 そりゃそうだろう、《天災》兄妹の何がタチ悪いかというと、寄ると触ると周囲を巻き込む大げんかをやらかすことだ。ケーキ屋で鉢合わせたのなら、さぞ迷惑をかけただろう。ひょっとしたら出禁食らったかもしれない。
「お妙殿と九兵衛殿が止めてくれたから、さすがにそこまでは行かなかったが」
 それから、品の良い封筒がもう一つ。どこかで見たような趣味のラッピングに、まさかと気が重くなる。
「……万斉か?」
「そうだ。よく判ったな」
「これもケーキ屋でか?」
「いや、帰りがけに会ってな、送ってもらった」
「何やってんだ彼奴……」
 中身は、高名なジャズピアニストのコンサートチケットだ。まだ諦めてなかったのかと、高杉は呆れたように笑う。
 他にも、女子達からもらったものはお菓子が多かった。暗黒物質は即座に捨てさせて、他のものはさてどうするか。まぁ女子からの友情の贈り物だ、銀時に押しつけるのも悪いだろうと、とりあえず冷蔵庫に片付ける。
「あ、ちなみにこれが銀時かららしーけど」
「どうせ、ジャンプだろう。開けずとも判っている」
「といいつつ開けるんだな」
 発売日付は明日だった。すっげー苦労して捜したんだぞ、というドヤ顔は、どうやらここから来ていたらしい。
「とすると、こっちが坂本か」
「確か、そうだったかな」
 中身は案の定、ふわもこの猫のぬいぐるみだった。仮にも成人男子への誕生日プレゼントかと障気を疑いたくなるが、桂の反応は今までで一番によかった。目を少女漫画のようにキラキラさせて、抱きしめて、肉球の有無を確かめて見つけたそれをふにふにと堪能している。
 気づけば、卓袱台の上はプレゼントの山で覆われていた。
 ……最初は、自分一人だけだった。
 高名な音楽家の子、サラブレッドとして高杉は小さな頃からちやほやされたし、取り巻きの子供も多かった。一方で桂は、面倒見はいいもののマイペースな言動から周囲から浮く事がよくある子供だった。
 高杉が本当にトモダチだと思ったのは、その桂一人だったし、桂と一番仲がいいのも高杉だった。桂の誕生日を祝うのは、自分の特権にも思っていた。
 そこへ、先生に連れられた銀時が加わって。高校で距離を取った高杉の代わりに、坂本が輪に入ってきて。大学に入って、その輪はさらに広がった。
 ぬいぐるみの肉球をふにふにと楽しむ桂を少し遠くに感じるものの、それに苛立つ時期は通り過ぎた。二人で、世界一の奏者になる。子供の無邪気な夢は今はそれぞれが行く道の、遥か後ろで蜃気楼のように淡く在る。
 しばらく肉球を楽しんでいた桂が、やおら顔を上げた。夢のような時間の名残を宿した目で、高杉を見つめる。
「それで、お前からは?」
 二人で作った小さな輪にこれだけ人が入り込んできても、まだ望むか。安堵とも苦笑ともしれない息を吐いて、高杉は剥き出しのCDを差し出す。ラベルも何も貼っていないそれを桂は試すがえす眺めて、聞いても良いかと尋ねてきた。
「いいけど」
「ありがとう」
 デッキに入れ、イヤホンを取り出す。寝こけている坂本への配慮だろうが、僅かに高杉は笑みを浮かべた。
 いやに真剣な顔で、桂はCDに耳を傾ける。その口元からやがて、メロディが流れてきた。妙に音程がずれているのだけれど、相変わらずそんな調子で大丈夫か未来の音楽の先生は。
「良い曲だな。チェロの独奏か。……で、作曲者は誰だ?」
「俺だけど」
「何だって?」
 高杉はちらりと部屋のドアに眼を向けた。ここでタイミング良く銀時が帰ってきたら、何をどうからかわれるかたまったものではない。
「さすがだな、晋助。俺は好きだぞ、このメロディ」
 そりゃそうだろう、とは言わず、ビールを煽る。気はすでに抜けていたが、いつもほど不味くは感じなかった。
「これは、独奏だけか? 伴奏は?」
「作ってねーよ」
「そうなのか? 一週間で作るなら、お前の誕生日に合わせてやってもよいぞ」
 ……危うく、咽せるところだった。ほぼ空になった缶を一度置いて、向かい合う白い顔を見つめる。
 高杉の反応の意味を掴み損ねただろう桂は、ただきょと、と首を傾げる。どの面下げてそれを言うか、とは口にしない。腹を立てるほどのことでもない。自分はもう、桂が伴奏でないとイヤだと駄々をこねる子供ではない。
「……ま、考えとくさ」
「あぁ」
 ビールを完全に空にして、最後の一本のプルトップを開ける。桂もやっと、注がれて放っておかれたコップを手に持った。
「ま、おめでとう」
「ありがとう」
 ぶつけ合えば、ぺこん、と間抜けな音が小さく鳴った。
 まるで、自分たちそのもののように。




                                     ~Fin~

by wakame81 | 2011-06-28 01:00 | 小説:音大パロ  

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