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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

ある晴れた日のように:2

そうか、1日一更新じゃなくて2更新にすればよかったのか(遅)。

3Z一年前11月の部、その2です。うーん、切りが良い所で切れない。









 まさか、枕を顔面で受け止める羽目になるとは思わなかった。ぽろっと顔から落ちる枕を手に取る余裕もなかった。吹き出し笑いを、耳が遠く拾う。
「わざわざ土下座なんてするヒマあったら、なんでもっと早くこなかったアルかっ!」
「え、早くって」
 昨日の今日なのだけれど。そう返すこともできなかった。桂の膝元から枕を取り返した神楽が、第二発を放ってきたからだ。
「そんなことより、桃カンどこアルか桃カンっ!」
「……え。」
「え。じゃないアル。みやげって言ったら桃カンに決まってるだろーガ!!」
「いや、土産じゃなくて見舞いだから。おまえやっぱ退院したら現国追試な」
「しかも桃カンなんて慎ましやかなモンを欲しがるタマかぃてめーは。むしろ鯖カンだろぃ」
「わかってんなら持ってこいアルっ。ここのご飯少ないネ、おかゆばっかでおいしくないネ!」
「あっはっはー病院食らぁてほがなものばあやきなー。我慢しちょき、神楽坂ちゃん」
「うちの神楽ちゃんがあれっぽっちで足りると思ってんのか、神楽ちゃんを空腹にさせることはこの星海坊主が許さん」
「あんたは娘なだめる側じゃないのかよ」
 喧々囂々、それまで耳が痛いほどの静寂に閉ざされた部屋が、いっぺんに音で満たされる。その中で、きょとんと神楽を見上げていた桂に、少女は蒼い目を細ませた。
「で、おみやげは?」
「え、あ。」
 忘れてた。と同時に、さっき坂本から持たされた封筒を思い出す。確か…とコートのポケットを探ってみると、確かに表書きは神楽の名前だった。とりあえず、恭しく差し出してみると。
「おおおおおお米券アルっ!」
「何だって神楽ちゃんっ!」
「ヅラ、お前やればできる子だったアルな、見直したアル!」
「そうかそうか、本当はいい子だったんだな、パピーは誤解していたぞ!!」
 妙にテンションを高くし(もじゃ二人が止めなかったら父は胴上げをやらかしそうな勢いだった)はしゃぐ父娘に、目を白黒させる。
「あの…リーダー、怒ってないのか?」
 やっと絞り出した言葉に、今度は神楽が目を瞬かせた。
「怒る? なんでアル。ヅラはこんなにいいおみやげ持ってきてくれたネ」
「いや、怪我をさせたことをだ」
 もう一度、空の瞳は瞬いた。昨日のあの空、取り返しのつかないことになったあの時の空を否応なく思い出す。
「おあいこネ」
 そして、その空はやわらかく細められた。
「私も、ヅラにケガさせたアル。だから、おあいこネ」
「だが、」
 自分のは違う。神楽を受け止めきれずにバランスを崩しただけだ。むしろ、神楽は自分に何もしていない。巻き込まれただけで。
「それに、謝るのは相手が違うアル」
 ひまわりのような笑顔だ。昨日もそう感じたことを、思い出す。目を奪われて、言われた言葉の中身を咀嚼するのに時間がかかった。
「……違う?」
「ヅラが謝らなきゃいけないのは、みんなのほうネ」
「みんな?」
 誰のことか、と問うことも思いつかなかった。瞬きも忘れて神楽を見上げる。にへ、と笑う神楽の代わりに、答えは周りから降ってきた。
「おお、そうか! あれで体育祭は中止くじゅうてしもうたからなぁ!」
「つーか、神楽一人に謝るよか大変だろ。何、うちの生徒って何人いたっけ」
「確か千人はいたんじゃねーですかぃ。土下座じゃ足らねーことだし、全員からケツバットでもされてみっか、桂ぁ?」
「ちょ、沖田君それやったらこの話R指定ついちゃうから。サイトに載っけられないから」
「なんちゃーがやないじゃぁヅラ、わしも一緒にケツバットされちゃるき!」
「うっわ見たくねぇ」
「同感でさぁ。アンタのケツバットはあんま楽しくなさそうですぜ」
「あっはっはー泣いていい?」
「こらぁっ、うるさくすると神楽ちゃんの傷に障るでしょーがっ」
 声がわんわんと頭に響いたせいか、答えを咀嚼するのに時間がかかった。ただ言葉もなく、空色の目を見上げる。
「ね?」
 空色はやわらかく細められて。
「次は、卵持ってくるヨロシ! あ、ご飯ですよも忘れんじゃねーゾ。あと、おしょうゆとーふりかけとー酢昆布とー」
 指折り数えられて、きょとんとしていると。
「「「いやそこはツッコむところだろ」」」
 何故か複数から怒られた。
 

「てことで、罰ゲームとして今から桂ドレイ強化月間だから」
 休み明けの朝のホームルームで、そう沖田はのたまった。例によって無視された担任落先生はもちろん、クラス中が「……は?」と目をぱちくりさせる中、沖田と坂本によって休み中のもろもろが説明され、桂も呆然と見ているうちにドレイ月間は開催となった。
 ただし、ドレイとか本気でやったら問題沙汰になる。ということで、ルールが決定されることとなった。

 その1。金銭、もののやりとり禁止。
 その2。犯罪ならびに校則に違反するもの禁止。
 その3。掃除当番や宿題の肩代わり禁止。ただし、手伝ってもらうのは本人納得ならOK。
 その4。コスプレOK。ただし写真を撮ること。

「……それで、ここ一週間そのかっこうなんですか……」
 お弁当を持ってうろうろしていた桂を捕まえた志村新八は、乾いた笑いとともにそう呟いた。ご愁傷様です、続けられた言葉に桂は首を傾げる。
「別に、大した苦労でもない。ただ、足はすーすーするが、スパッツは履いてよいと許可をもらったのでな」
「いや、大したことですよ」
「そうか?」
「そうですよ。僕だったらいやですもん」
「そういうものか? 一応校則を破ってはいないぞ。坂本先生がお墨付きをくれた」
「やっぱりあの人か……」
 何で新八が疲れているのか、桂には理解しがたかった。
「奴隷というからにはもっととんでもないことをさせられるのかと思ったが。罰ゲームにしても温いのではなかろうか」
「充分すぎるんじゃ……いや、桂さんが納得してるのならいいです」
「うむ。」
 うなづいて、おにぎりを口へと運ぶ。きれいな三角にむすばれたおにぎりは、ほんのりと味付けされた塩気が絶妙に美味い。
「それ、塩むすびなの? 桂さんのお手製?」
 同じくお昼を共にしている志村妙は、炒めたピーマンを箸でつまみながら尋ねた。体育祭でもお弁当に腕を振るったという彼女だが、なぜか得意料理と言っていた卵焼きはかけらも見あたらない。
「上手ねぇ、桂さん。新ちゃんみたい」
「いや、これはエリザベスが」
「マジでか」
「そういえば、この前もエリザベスさんが作ってきたって言ってたわねぇ」
 おっとりと妙は笑う。その横で、新八はぐったりと肩を落としていた。
「どうした新八君」
「そうよ、どうしたの新ちゃん? お箸止まってるわよ」
「……いえ、何でもないです」
「そうか」
 ならいいか、と桂はおにぎりの最後のひとかけらを口に含んだ。はい、と妙がお茶を出してくる。
「(もぐもぐ)……用意がいいな」
「そりゃ、こんなところでお弁当開く訳ですからね」
 新八の言葉に、くしゃみが続いた。折から吹いてきた風が、三人の肩を震わせる。日差しは暖かいが、やはり空気は冷たくなってきている。
「いつも外なのか?」
「まぁ、委員会がないときは」
「新八君は何委員会だ? 昼に集合をかける委員会もそう多くはなかったはずだが」
 もっとも、体育祭や文化祭など一時的に忙しくなる委員会もある。が、新八はまたまた肩を落として答える。
「僕じゃなくて」
「では、志村さんが?」
「いいえ、風紀委員です」
 目を瞬かせる。桂の知る限り、二人があのうっとうしい委員に所属しているはずはなかったが。
「桂さん、お茶のおかわりいかがです?」
 問う前に、妙が割り込んできた。心なしか、なんか笑顔が黒い。
「いや、大丈夫だありがとう」
「そう(はぁと) だったら、無駄口叩いてないで早く食べちゃいましょ(はぁと)」
 きょと、とする桂の袖を、新八が引く。無言で首を振られて、桂もそれ以上追求するのを何となく止めた。
「それにしても」
 神楽の話やセーラー服の風通しの良すぎる件についてひとしきり話した後、妙は桂の頭へと目をやった。
「そのポニーテール、桂さんがやったの?」
「いや、これはクラスの女子が」
「何ですって?」
 何かおかしかったろうか、と桂は考える。髪を結い上げられてヘアピンやら何やらごてごてと刺されて、自分では何がどうなっているのか判らないのだ。
「直したほうがいいだろうか。皆が言うには、まっすぐすぎてただピンを刺したりゴムで結わくだけではすぐに落っこちてきてしまうのだと」
「全然! すっごくかわいいわ! 何、F組の子桂さんの髪いじってるの?」
「何人かの希望で。毎朝、結わいてもらっている」
 これも全然罰ではない。むしろ逆、女子たちの身だしなみを整えるのは奴隷の役目だろう。そう、思うのだが。
「ずるいわぁF組の子たち。ね、私も今からF組に転入しようかしら」
「いや姉上、それムリです」
「ムリだとかいう言葉だけで物事を諦めるのは、侍として、男としてまだ未熟の証よ新ちゃん」
「いやムリなものはムリですし、ここ本編じゃないですから、侍なんていないですから」
 びしっとつっこむ弟を軽くスルーして、妙は目をうっとりとさせながら桂ににじりよる。
「ね。お化粧とかもしてみません? きっと似合うと思うのよー」
「化粧は校則違反なのだが」
「リップ塗るだけよ! あとファンデーションね、それくらいは日焼け防止、唇のケアだもの違反してないわ」
 ね!と目をきらきらさせる妙に、桂は眉尻を下げて口をつぐむ。
「せっかくそんなかわいい格好してるんですもの。お化粧したらF組の子たちも喜ぶわ」
「それは、罰ゲームの一環だろうか」
「そうよ」
「ちょ、即答ですか姉上っ」
「そうか、ならば仕方あるまい」
「いーんですか桂さんっ。てか、罰ゲームって他クラスも噛んでいいんですかっ?」
「沖田いわく、ゆくゆくは、全校生徒の奴隷化が希望だそうだ」
「どこまで行くんですかあのひとぉぉぉっ」



~続く~

by wakame81 | 2011-01-16 13:52 | 小説:3Z  

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