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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

貴き石を抱いて眠れ~8月12日

ポメラがまた文字化けました-。orz うう、3Zもうすぐ終わりそうなとこまで来てたのにー。この前みたいにほとんど書き直しじゃないからいいけど、2年の11月ってなんか呪われてるのか?

気を取り直して、新八誕生日アップです。ここまで、前に書いてあったのでした。いつ書いたろう……9月頭にはできてたよなぁ(爆)。ちなみに、エヅラ子編の前に書きました

誕生日石はカリブヤン。瑪瑙の一種です。キーワードは、「円滑な対人関係」。









「暑いのに、大変ですね。しかもこんな黒服で」
「仕方あるめぇ。これがうちの制服なんだからな」
「あはは。こういう時、和装は楽だなって思いますよ。そういえば、この前近藤さんが見せに来てくれた夏服、あれはどうしたんですか?」
「……夏服って、まさかこのジャケットの、袖の無ぇやつか?」
「そうです、それ」
「……ありゃぁ、総悟が勝手に作りやがったやつで、正式に決まってねぇんだ」
「そうなんですか。あれなんか涼しそうなのに」
「どこからどう見ても、チンピラ以外のナニモンでもねーだろ」
「あはは……まぁ、ワイルドですよね」
「気を使わなくていいぞ。正直にチンピラって言ってかまわねぇ」
「あっ、でも、早くちゃんとした夏の制服が決まるといいですねっ」
「俺は、これでもかまわねぇんだけどな」
「え。だって、暑そうじゃないですか」
「暑いが、色がいい。なにものにも染まらない、なにものにもなびかない、覚悟の色だ」
「そっか……そうですね」
「それじゃ、俺はもう行く。お前も暑いからって、変なテロリストにかまってんじゃねーぞ」


 街中で彼らとばったり会うのは、そう珍しいことではない。街中で、奴らとばったり逢ってしまうのも、よくあることだ。そしてもちろん、その両方が同時に発生するのだって、ありえるわけで。
「……大丈夫、ですよ。もう行っちゃいました」
 押し込められたポリバケツのふたが小さく開いて、その声だけがかけられた。下から押し上げて緊急隠れ先から顔を出す。
 大丈夫、奴らの気配はすでに遠い。
「うむ。すまないな新八くん」
「いえ、どういたしまして」
「すまないついでに、ちょっと引っ張りあげてはもらえないだろうか」
「はい?」
 きょと、と目を瞬かせた新八は、ふたを開けてそして思い切り顔を引きつらせた。
「ちょっ、何ですかこの、人形の関節外して突っ込んでみましたみたいな体勢はぁぁっ」
「新八くん。みたいな、ではない。肩とかはちゃんと外してるぞ」
「なお悪いわっぁぁぁ」
 大きくなる途中の手が桂の肩を掴む。ぐにゃりとした感触に新八は顔をしかめたが、それでも力を入れて引っ張りあげてくれた。
「大丈夫ですか?」
「平気だ、これくらいすぐにはめられる」
 実演してみせると、ぼきばきべきと鈍い音が鳴った。慣れているし、別段痛いというほどのものでもないが、何故か新八が眉をよせて痛そうな顔になる。
「ほら、平気だったろう」
「とてもそうは思えない音でしたけど」
「そうか。驚かせてしまったな」
「いえ、どういたしまして」
「だが、侍たるものこの程度で恐れていてはならん。後学のために、もう一度見てみるか」
「いいですまた今度お願いしますからっ」
 再度肩を外そうとした桂を、慌てて新八が止める。素直に引き下がると、掴んだ夏羽織の袖にもたれかかるように、新八は息を大きく吐いた。うなだれた頭の下から、首筋が覗いた。
「汗だらけだぞ、新八君」
「まぁ、暑いですからね」
 それだけではない汗の理由を、桂は知っている。ばれたら言い逃れできずに一緒に逮捕されるリスクを背負って、鬼の副長を向こうに回したのだ。大人の志士でも不安と恐怖は抑えきれないだろう。
「本当なら銀時に合わす顔がなくなる、といったところなのだろうが」
「何ですか?」
「いや」
 手ぬぐいで汗を拭っていた新八は、こぼした言葉を聞き咎めた。曖昧な返事に、聡い少年は小さく眉を寄せる。
「仲がよいな、と思ってな」
 誤魔化すわけでもないが、続けた言葉は予想もしなかったことなのだろう、新八は目を瞬かせた。
「鬼の副長があんな声音で誇りを語るなど、そうはあるまい」
 奴の部下であるならともかく、新八は一般人に過ぎないというのに。
 それを告げると、新八は上擦った声を上げた。
「いやそれはたまたま、そういうのを語りたい時だったとか、そういうんじゃないんですかっ? それとも、たまたま口を滑らせちゃったりとか」
「そういや奴等の局中法度とやらの中に、新八君には親切にすべしというのがあるそうではないか」
「それはアレですよっ。姉上狙いで近藤さんが付け加えたやつでっ」
「沖田も、お前には負けないと言っていたな、そういえば」
「はい?」
「土方を相手にする時とは違って、正々堂々とけりをつけると言っていたな。だから安心するがいい」
「ちょっと、何のことなんですかぁぁぁっ。何で沖田さんが僕をっ?」
「さぁ?」
 そういや、これは秘密にしておいた方がいいのだろうか。そう思い直してそこで口をつぐむと、新八はますます慌てて桂の袖に取り縋った。
「ちょっ、冗談じゃありませんよっ。僕はそんな、沖田さんと何か張り合う気なんてこれっぽっちもありませんからっ。あ、他の誰かとなら張り合うとかじゃなくて、ケンカしたくないっていうか、いやそうじゃなくてっ」
「うむ」
 ぽんぽん。二回、軽く頭を叩いてやる。まとまる前に流れ出ていた言葉を止めて、きょと、と目を瞬かせるさまは、誰かに似ていた。
(あぁ、そうだ)
 師に、いろいろな言葉を伝えたくて必死だった自分や彼奴と、きっと同じ顔をしているのだ。銀時はそんな風に何かを必死になって訴えるような奴ではなかった。それとも、自分の知らないところでそういう顔を師に見せたこともあったのだろうかと思うと、口元が緩むのを抑えきれなくなる。
 新八自身にも、笑みを向けてやりたいと思うから、尚更のことだ。
「お前自身が仲悪しくなりたくはないと思い、実際に仲が良いのならそれに越したことはない。たとえ、相手が芋侍だとしてもだ」
「……え。」
 もう一度、頭を叩いてやる。少なくとも咎めてはいないことを感じ取ったのだろう、新八はやがてゆっくりと息を吐いた。
 以前の桂だったら、こんな風に寛い気持ちにはなれなかっただろう。それを変えたのは、銀時と、何より目の前の少年の力だ。


「しかし思想が偏りすぎるのも良くないな。新八君が芋びいきだとしたら雇い主の銀時には我々攘夷派として立ってもらうのがバランスが良いと思うのだが」
「そういうことは銀さんに言ってください。たぶん、蹴り出されると思うけど」





                                   ~Fin~

by wakame81 | 2010-12-18 10:30 | 小説:貴き石を抱いて眠れ  

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