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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

星は何処~GrandFinale~Knight tonight:2

水曜中には金魂編終わらせられたらいいな、たらいいなー。

メインに万斉を組み込んだはいいけれど、ポジショニングが判りません。手土産持って万事屋主人に勧誘かける、と書くと、我らが党首と同じなのですが。








 そんな訳で、主とジミーの「お頭裸」通いが始まった。一度の失敗はソウに挫折感ではなくチャレンジ精神を植え付けたようで、ヒマを見つけてはせっせと「お頭裸」に顔を出す。リーダーのコンディと鉢合わせすることも、何度かあった。
 そのうち、ソウは顔を出す時間を変えるようになっていき。
「あぁ、来たのね。」
 訪れるたびに、ズラ子はきれいな笑顔を浮かべる。営業用だけではない、少しだけ幸せそうなそれは、ソウの不機嫌とチャレンジ精神の肥やしとなった。ソウ本人に向けられるのならともかく、事もあろうに彼女はジミーの来訪を喜んでいたからだ。
「今日は茨城産の、取れたてのニンジンを仕入れたのよ。どうぞ。」
「あぁ、すいやせんねぇ。」
 ニッコリしながらお礼を言う主人は、ちっとも嬉しいと思ってない。そう語る背中を直視しないようにして、差し出されたニンジンの端っこをかじる。今夜にでも馬刺しに下ろされるのかと思うと、味わうことなんかできない。
「これからお出かけですかぃ。」
「えぇ、ちょっとお買い物にね。」
 開店時に店に行くのを止めたのは、その方がゆっくり話せると気づいたからだ。店を開く準備をしながら、片手間にソウの話を聞く方が、店であちこちに呼ばれて腰を落ち着けられないよりずっといいらしい。ついでに店に寄って、お妙に言い寄ってけんもほろろにあしらわれるコンディを慰めて帰ることも、計算の内だろう。おかげで、トシーニョの小言がつきることもないのだが。
「んじゃ、虫除けにおつきあいしやしょうか。」
 今日もそのつもりでそう申し出たのだが、ふとソウは眉をひそめて下を向いた。ズラ子の後ろに、じっとソウに向けられた視線がある。睨む、まではいかないが、どことなく疎ましがっているようだ。
「なんでぃ、坊主。」
「坊主じゃない、てる彦くんよ。」
「こんにちわ。」
 視線が和らぐことはなかったが、丁寧にその子供は頭を下げた。ソウも、片手を上げて自己紹介をする。
「今日は、この子がついてきてくれるから。」
「ふーん?」
 まじまじ、という体でソウはてる彦を見下ろす。ジミーからは見えなかったが、てる彦が判りやすく口を尖らせたところを見ると、よほど馬鹿にするような眼だったのだろう。
「子連れでも、虫除けにはちょーっと厳しいんじゃねぇですかぃ。」
 途端、てる彦の視線に険しさが増した。気づいてないのかズラ子は、「そうかしら。」と首を捻っている。
「てる君は、よくやってくれるのよ?」
「この前みたいなことになったら、どーするんでぃ。」
「大丈夫よ。」
 そう言われても、どこがどう大丈夫なのかジミーにも判らない。てる彦は、じっとソウを睨んで瞬きもしない。
「まぁ、いいや。」
 珍しいことに、折れたのはソウの方だった。
「どーせヒマだし、ついてきやすぜ。」
「ついてきても、お菓子は買ってあげないわよ。」
「そりゃ残念。」
 一見屈託のないような顔で、ソウは笑う。てる彦は笑いもせず、ズラ子の紺色の紬の袖をぎゅっと握りしめた。
 ズラ子の買い出しというのは、たいてい従業員の夜食やデザートが多い。んなもん下っ端にやらせりゃいいのにとソウがぼやいたのは記憶に新しい。が、彼女にはこれが楽しみらしく、いろいろな食材を手にとって眺めている時の顔は、とても生き生きとしている。
 お供がてる彦だけなら微笑ましい親子づれですむところを、白馬を連れた金髪王子が一緒にいるものだから、やたらと目立つ。ズラ子やソウどころかてる彦すら、好奇の視線を気にも留めないようだ。普通の感性は自分だけなのか、と嘆きたい。
「おや、こんなところで奇遇でござるな。」
 ソウのこっそりと放つ、サブリミナルな威圧感に遠巻きに眺めていた人だかりから、そんな声が響いた。見れば、頭のてっぺんから服装からサングラスに至るまで黒づくめの男が、こちらに歩いてくるところだった。
「買い出しでござるか?」
「万斉殿。」
 名を呼ぶズラ子の前に、てる彦が出る。庇うような仕草は、けれど無駄でしかなかった。ソウやズラ子よりも遙かに背の高いその男にとって、まだ子供のてる彦など障壁にしても低すぎだのだ。
「本当、奇遇ね。あなたがこんな商店街に現れるなんて。」
「何となく、こちらに来れば会えそうな気がしたのでな。天のお導き、という奴でござろうか。」
 そう言うと、万斉はズラ子の手を取ろうとした。それが叶わなかったのは、てる彦が既に手を繋ぎ合っていたからだ。万斉は困惑することもなく、おや、と呟く。
「甘えん坊さんでござるなー。」
 てる彦は答えず、ただ握った手に力を込める。
「それに、珍しいものまで連れて。」
 万斉の視線がソウへと向く。ども、と手を上げたソウの、まとう空気が微かに張り詰める。周り一面に匂わせていた威圧感が、万斉の方へと指向性を持つ。
「ほう?」
 万斉の首がことんと傾く。サングラス、というのは卑怯だと思った。ジミーの目を持ってしても、彼が何を、どう、見ているのかが読み取れない。
「随分と可愛らしい取り巻きでござる。」
「でしょう? 生憎と、肉球ではなくて蹄なのだけれど。」
 涼やかな声で笑い、「それで、」と続けられる。
「ご覧の通り、今は買い物中なのだけれど。」
「そのようでござるな。が、拙者に付き合っていただく時間を、取ってはもらえないか?」
 てる彦がズラ子にぎゅっとしがみついた。ズラ子の声は、いつもより低い。ソウが、ぎゅっと手綱を引く。参ったなぁと天を仰ぎたくなった。
 商店街で暴れ馬、なんて、いいワイドショーのネタだ。
「ちょっと難しいわね。」
「善処して欲しいものでござるが。」
「お店のコたちの頼まれものなのよ。」
「何なら、届けさせてもよいが?」
「それじゃ、あのコたちに申し訳ないでしょう? 任されといて人に押しつけるなんて。」
「なら。」
「つーか。」
 途切れそうにないやりとりに、若干低くなった声が割り込む。
「アンタ、誰でさぁ。」
 尋ねるソウに、ズラ子は振り向く。わざとらしい拗ねた声が功を奏したのか、その笑みは優しい。
「店のお得意様よ。」
「へー。で?」
 ズラ子の細長い眉が微かに垂れ下がる。
「大人のいろいろな事情があって。」
「どんな?」
「万斉殿は芸能関係のお仕事をなさっていてね、それでちょっと。」
「ちょっと、て?」
 白く長い指が伸びて、食い下がるソウの口に触れた。赤い唇が、三日月を寝かせたような形を描く。
「女の秘密に迫りすぎるのは、野暮ってものよ?」
 それで引き下がるだろうか。ジミーの不安をよそに、ソウは「判りやした」と肩をすくめる。
「まあでも、ズラ子さんとのデートをジャマされんのは俺としても不本意なんすけど。」
「デートじゃないよっ。」
 食い付いたのはてる彦だった。ズラ子の腕にしがみついたまま、ソウを睨む。それに向かい合うようにソウは前に出て、低い場所にある頭に手をおいた。
「もちろん、ボディガードのこいつはいいんですがねぃ。」
 言いながら、視線は万斉へと向けられた。てる彦もハッとして、万斉を強い目で見上げる。二人から、ズラ子を遮るように睨まれ、万斉はやれやれ、と呟いた。
「こちらとしても、大事な用事なのでごさるが。」
「かあちゃんからカレールー買って来るよう言われてるもん、そっちの方が大事だよっ。」
「……て事なんだけど?」
 三つの視線がぶつかりあう。ズラ子はというと、深い笑みを張り付けたまま、てる彦を引き寄せるだけだ。お得意様に食ってかかろうとする子供を止めようというのかそれとも庇うつもりなのか、判断がつかないまま、とにかく主のために自分も参加した方がいいのかでもどうやって?と自問しはじめた時。
「あっりゃー、奇遇じゃのー。」
 脳天気な声が、張り詰めた空気を破った。
 これまた人混みをかきわけて、一際高く頭をつき出した男が、こっちに手をふっている。ジャケットの前をはだけさせたとはいえ薄い灰色のスーツ姿は普通のサラリーマンの服装だが、雰囲気がどうも砕けすぎている。赤と黒のストライプのネクタイのためか、まとめようとしても無駄、な勢いでもじゃついた頭のためか、男自身がどんなに改まった格好をしてもラフな空気しかまとえないのか。
「今、店に行こうとしてたんじゃぁ。こがなとこで会えるらぁて! あれ、ひょっとして『来るな』ていう晋坊の嫌がらせ? アッハッハ、参ったのーっ。」
 やかましい。が、ソウも万斉も、勢いを削がれたようだ。
「おんや、バンザイ君に、えーっとおんしゃー誰じゃったかぇぁ? 待ってくれ、今当てるから!」
 眉間に指を当てて考え込み、ポンと手を打つ。
「サンドロックのパイロットの!」
「違いやす。」
「そんじゃ、魔王の許嫁の男の子!」
「それも違いまさぁ。」
「なら、緑の守護精?」
「どんどん外れてってまさぁ。」
「声ばあ聞くと、たつのこ太郎のイマジンなんやけどなー。」
「あー、ある意味正解。」
 それじゃぁ………と悩む男を遮ったのは、万斉だった。
「坂本殿まで出てきては仕方あるまい。今日は出直させてもらうでこざる。」
 それまで食い下がったにしてはあっけない引き際に、ジミーは目を瞬かせる。
「明日は店に伺わせていただく。もちろん、客としてな。」
 そう言い、一歩下がる。皆がふ、と力を抜いた瞬間、万斉はてる彦の腕の中からズラ子の手を引き抜き、その甲に唇を落とした。
「では。」
 踵を返した背中に向かって走り出そうとするてる彦を、ズラ子が引き止める。
「いいわ、てる君。」
「でもっ。」
「ただの挨拶よ。………って、何してるのかしら。」
 もう片方の手に唇をつけようとしていた男に、ズラ子の冷ややかな声が落とされる。
「んー、わしも挨拶らぁ。」
 その唇がたどり着く前に、三つのゲンコツが黒もじゃ頭に炸裂した。




                                    ~続く~

by wakame81 | 2009-07-21 23:49 | 小説:星は何処  

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