お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

三足の烏が翼をひろげ:肆

鳳仙×(vs)桂だったのに、書き上がってみたら高桂になってしまったのは、タイトルが思いっきり語りまくっています(爆)。








 あの男は確かに覇王なのだと感じる。隠そうと思っても、溢れ出る闘気は離れたここまで届く。いや、隠す気などないのだろうが。
「来たな。」
「………さっさと行け。」
 向けられた言葉に、『エリザベス』は桂を見る。つぶらな、作り物の眼は心のうちを語ろうとはしない。
 やりきれない何かを押し隠すように夜王の来る方向へ向き、再度促す。
「行け。どうせ別行動を取らねば、あれは動かせないだろう。」
「気づいてたか。」
「当たり前だ。」
「方向音痴のくせに。」
「うるさい。さっさと行け。」
 水をかき分ける音が、遠ざかっていく。桂は振り返らなかった。たとえ作り物の眼でも、笑っているだろうそれを見たくはなかったから。
 分岐点から『エリザベス』は姿を消した。体内時計でそれを推し量ってから、先へと進む。足が重い。一人になった途端これか、と嗤いがこぼれる。
 どれくらい、進んだだろうか。
「そこまでだ。」
 かけられた声に、足を止める。逃げる獲物の捕獲とはいえ、後ろから襲いかかるようなことはしない。戦闘民族の血ゆえか、この男の覇王としての器か。
「やはり、内通者がいたようだな。何者だ。其奴は今、どこにいる。」
 桂は答えない。夜王も期待していなかったようだ。背後で、笑うように空気が揺れる。
「まぁよい。貴様を捕らえてから、ゆっくりと探すとしよう。」
「生憎だが。」
 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。
「二度も貴様に捕まる気はない。」
 言い切り、振り返りざまに手にしていたものを放った。適当に投げたそれは壁に当たり、轟音を上げて爆発した。
 瞬時に走り出す。夜王にとってこんな爆発など、足止めにもならない。案の定下水を跳ね飛ばす勢いで追ってきた。数十メートルあった距離が、あっという間に詰められようとする。
「甘いわぁぁぁっ!!」
「知っているっ。」
 二個目の爆弾を放る。夜王はそれを素手で弾き飛ばした。触れた瞬間起きた爆発にも、構う素振りすらない。三個目も、同じく弾かれた。
 四個目を放り、眼を閉じる。同じように弾かれようとしたそれは、太陽よりも強い閃光を放つ。夜王の呻き声が響いた。少なくとも眼を灼くことには成功したようだ。
 今のうちだ。手探りで追う夜王のスピードはこれで落ちたはずだ。重い体と足を引きずり、懐から小瓶を出して走る。
(………もう少し。)
「小癪なぁぁぁぁっ!!」
 予想(というか希望)より早く、夜王の声が迫ってきた。背後に迫る空気が渦巻き、まるで竜巻のようだ。空になった小瓶を捨て、爆弾を叩きつける。
 発火した火種が、水の上に撒かれた重油に飛び火した。途端、炎が通路全体を覆う。夜王の体はそれにもろに包み込まれた。そこへさらに、爆弾を投げ入れる。
(もう少しだ。)
 夜王に与えたダメージなど、小さなものだろう。確かめることもせずに逃亡を続ける。歯を食いしばる。これだけの手を打っても、逃げることが精一杯なのだ。
 はっと身をかがめる。傘によって起こされた風圧が、すぐ上の壁を破壊した。降ってきたがれきの一つが頭を打ち、一瞬意識が遠のきそうになる。
「どうした。これで終わりか。」
 夜王がゆっくりと近づいてくる。ふらつきそうになる体を意地で支え、足を動かす。投げつけた爆弾は牽制の役割すらはたさず、片手で弾かれる。
 足が重い。身体中がきしむ。頭がくらくらする。足止めの手段などもうない。残っていた爆弾を放るが、足止めというより荷を軽くする程度の意味しかもたない。それでも。
「諦める気は、ないようだな。」
 夜王の嗤いが空気を震わす。桂にもはや手などないことを、気づいているのだ。
「良いだろう。力尽き果てるまで、逃げ回るがよい。どれだけ足掻こうとも、貴様にもはや逃げ切るすべなどない。」
 獲物を嬲るように、ゆっくりと足音が追いかけてくる。それでも、桂は走った。殆ど歩くようなスピードになりながらも、走り続け。
 そして、その場所で立ち止まった。
 崩れ落ちそうになる体を、壁にもたれさせて支える。
「これで、終いか。」
 夜王の声が、高くなった天井にこだまする。逃げる力すら失せた、そう思っている声だ。
 ゆっくりと、振り返る。左手は壁づたいに上へ伸びる突起を握る。
 まっすぐに向けた眼を見て、夜王の眼は見開かれた。絶望したものと、錯覚していたのだろう。なすすべが、桂にはないのだと。
 それは概ね正しい。けれどたった一つ、決定的な間違いがあった。
 桂にすべはなくとも、彼奴にはある。
「生憎だったな。」
 その声は、遠くから響く音に掻き消された。夜王の顔が強ばる。聞こえたのだろう、上から降ってくる、大量の水の音が。
「貴様ぁぁぁぁぁあっ!!」
 最後の力を振り絞って、上へと続くはしごを登る。血相を変えた夜王が迫る。伸ばされた腕に、最後の爆弾を叩きつける。それが破裂した次の瞬間、破壊された水門から降り注いだ水が、夜王を襲った。次いで、桂にも。
 袖を引きぢぎり、突起ごと手に巻き付ける。体をできるだけ、壁に密着させる。濁流に飲まれた夜王がどうなったかなど、気にかける余裕もなかった。


 何百段あったのだろう。数えることも放棄して、ただひたすら登った。度重なるダメージと疲労で、何度も手を滑らせて落ちそうになった。それでもついに、伸ばされた手は終わりを掴む。
 巨大なマンホールの端に、人が出入りするための入り口がある。そこは開けられていた。桂は体を這い上がらせる。
 そこは、地下吉原の南端だった。壁沿いに、大小様々の鉄パイプが張り巡らされている。うち一つが、地上へと通じているのは既に調べてあるとおりだ。
 ゆっくりと、辺りの気配を探る。周囲は暗い。街全体の、ネオンが落とされている。ところどころが薄ぼんやりと照らされているから、停電ではないだろう。今は、夜と朝の狭間なのだ。眠らない街が唯一まどろむ時間、追っ手どころか猫の子一匹いない。
 息を吐いて、己の姿を顧みる。丈の合わない衣に、武器は手になじまない刀が一本のみ。身体中のダメージは応急手当すらする余裕もなかった。これだけの苦労と引き替えにして得た情報はないに等しい。
 せっかく、掴んだあの馬鹿の足取りだったのに。
 それでも。
「貸しだ、とは思わんからな。」
 奴が動いているのは確かだ。ぞのしっぽを必ず捕まえてやる。何を企んでいても、止めてみせる。その命を、絶ち斬って。
 目を閉じて、空を仰ぐ。閉ざされた世界にも、完備された空調が風を運ぶ。
 そこに、紫煙の残り香が鼻をくすぐった、気がした。


 春雨幹部と天導衆の接触は、滞りなく行われた。
 場を取り持つはずの隻眼の男は代理を立てて姿を見せず、地上の倉庫街で≪攘夷の暁≫とやりあったと、鳳仙は後から聞いた。
「何を、企んでいる。」
 後日、わざわざ使いを出してまで男を呼び寄せる自分が、不思議でならない。
 男は相変わらず、出された膳にも酒にも手を付けようとしない。
「鬼兵隊が動いていることを、感づかれたからな。俺自ら囮にしねぇと、もう一度襲撃を受けただろうさ。」
 煙管をふかしながら、男は笑う。嘲るような響きの中に、確かに得意そうな音を鳳仙は感じ取った。
 鳳仙自身にも憶えがある。日輪の美しさを下衆な男共が讃えるのを聞いたときの、自身の声だ。
「そこまで鼻が高いか。未だ敗北を認めようとしない、哀れな負け犬に過ぎん存在が。」
「その負け犬に、むざむざ逃げられたのは誰だぃ?」
 その言葉に、確信した。
 巨大な傘が唸る。はべっていた女達の悲鳴があがり、衝撃で膳や酒瓶が壁に叩きつけられる。空気を切り裂きながら凶器を鼻先に突きつけられ、けれど男は微動だにしなかった。平然と眼を細め、紫煙を吐き出す。
「………貴様か。」
「何がだ?」
 嗤う翠玉の裡は昏く、鳳仙はそこに炎を見た。
 それが、日輪や≪攘夷の暁≫とは違う、けれどもう一つの太陽だと気づいたのは、一年以上も後のことになる。





                       ~Fin~
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by wakame81 | 2009-05-16 02:39 | 小説。  

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