お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

橘かおる朝風に:後

そういや今朝、テレ朝9時半から東ちづる嬢がタイムリーにも京タケノコ掘ってました。参考になりました-。







 それから三日。小太郎は何故か、銀時を避け続けた。仲直りしたくないわけじゃないのは、晋助も知っている。どうして、と尋ねると、今考えてるとだけしか答えてくれなかった。
 そして今日は、タケノコ掘りの日である。
「って、どこにもないじゃん。親竹だけじゃん。」
 銀時や初めて参加する子達は、高く青く伸びた竹しか見えない竹林で、不思議そうに当たりを見渡している。そんな子達を、松陽はこっちですよと手招きした。
「ほら、ここをご覧なさい。」
 指し示された地面には、細いひびが走っている。その中に、親指の先ほどの焦げ茶色のとんがりが、隠れている。
「これが、タケノコです。」
「これ、取っていいんですか?」
「えぇ。」
 松陽は頷くと、手にしていた細長い鍬、のようなもので、周りを掘り始めた。柄と同じくらいの長さと細さの刃をもつそれは、タケノコ掘り専用の道具で。
「ちなみに、ほり、と言います。」
「そのまんまじゃん。」
 ツッコミはさておき、松陽はタケノコの周りを掘り進めた。タケノコそのものには土が覆い被さったまま、やがてまっすぐに掘っていた刃を斜めに向ける。地の底を掻き切るように動かす。
「こうやって、タケノコの地下茎を切るのです。絡み合ってますから、慎重にね。」
 少しの間そうしてから、そっとほりを持ち上げた。その刃の先に、大きなタケノコが引っかかっている。
「すげーっ。」
「うわ、おおきいーっ。」
「焦ると、途中で折ってしまいますからね。初めての子は最初は難しいでしょうが、落ち着いてやってください。坂が急になってますから、あまり遠くへは行ってはいけませんよ。それでは、みんな頑張ってください。」
「「「「はーーーいっ!」」」」
 学友達は一斉に散っていく。一人で行く者、仲の良い何人かで固まっている者、それぞれだ。晋助も、今日は取り巻き達を連れてタケノコを探した。
「見つけた………て、何だ草か。」
「高杉くーん、こっちにもないよー。」
 竹林は広い。タケノコはそう簡単には見つからない。あっという間に見つけてみせた松陽を、やっぱりすごいと思う。
「ていうか、なんでタケノコほりなんか………ってごめん高杉くんっ。」
 小さくぼやいていた取り巻きの一人は、晋助に睨まれ慌てて謝る。
「お前、先生のなさることに文句でもあるのか?」
「ないよ、俺はないよっ。ないんだけどっ。」
 ばつの悪そうな顔で、その子は顔を背けた。言い訳するようにぶつぶつと呟く。
「ただ、母上があまりいい顔しないから。」
「うん、うちもそう。」
「僕んちもだよ。まるで百姓みたいなまねって。」
 それは、晋助の家も同じだった。去年のタケノコほりも、潮干狩りも魚取りもアケビ取りも、侍のそれも上士の高杉家次期当主のやることではない、と不機嫌に怒る。けれど、それをムダだと晋助は思っていない。
 小太郎に、もっと遊ぶように言うのと、きっと同じことなのだ。
 その小太郎は、どうしているだろ。晋助は竹林の中を見渡す。
 すぐに見つかった。年少の子達に、ほりの使い方を実践して見せている。が、掘り出されたタケノコは途中で折れていた。笑い声が起こるが、すぐに止んでしまう。
 銀時は側にいない。探すと、松陽から少し離れたところにいた。松陽は銀時のほうをちらちらと見ながら、同じく年少の子達を見てあげている。と、銀時が何かを言って、その側から離れた。
「高杉くん?」
 取り巻き達が名を呼ぶが、答えず銀時を目で追う。白い頭は地面を向いて、タケノコを探しているようだ。けれど、晋助には別のようにも見える。
 銀時は竹林の中をうろうろとさまよっている。そのうち、周りに誰もいないところまでいって、それからしゃがみ込んだ。
「ねー、高杉くん。こっちにタケノコ見つけたよ。」
「お前ら、勝手にほってろ。」
「え、高杉くんっ?」
「どこ行くんだよ、ほらないのっ?」
 すがる声を無視して、大股で竹林を突っ切る。こつこつと地面を堀っくり返していた銀時は、近寄ってきた晋助を見上げた。透明な、何にも興味なんてもっていないような眼だ。
「なに、高杉くん。」
「なに、じゃない。何やってんだお前。」
「何やってって、タケノコほり。うわ、でっかいの取れた。」
 晋助と話す間も手を止めなかった銀時は、掘り出したタケノコを珍しそうに見る。
「でもなんか、固そうだなタケノコって。ま、食えりゃいっか。」
「何で、一人でほってんだ。」
「なんでって?」
 銀時はほりたてを籠の中に入れると、また新しいのを探し始めた。歩き出そうとする体を、腕を引いて止める。
「小太郎と、なんでいっしょじゃないんだ。」
「なんでって。」
 晋助の後ろが騒がしくなる。小さく名を呼ぶ声から、取り巻き達が追いついてきたのだと知れた。
「きらいだーって、言われたし。」
「仲なおりしようって思わないのかよ。」
 銀時は、眼を瞬かせて晋助の顔を見た。それから視線を後ろへとずらす。
「取り巻きつれて、それ言いに来たわけ?」
「つれてきたんじゃない、勝手についてきたんだ。」
 赤茶の瞳が、晋助へと戻される。そして、にた、と細められた。
「ふーん、わざわざ。」
「わざわざじゃないっ。なんで小太郎とケンカした、なんでこいのぼりいらないって言ったっ。」
「なんでって、いらねーもん。」
 絶句する晋助の腕が、泥だらけの手で払われる。
「だいたいお前らこそなんだよ。人のこと、いちいちかまいにきて。」
「かまいにって、俺はお前のことなんかどーでもいいんだよっ。」
「じゃぁなんで、今ここに文句言いにきてんの。第一高杉くん、あいつが俺にかまうの、いやなんじゃなかったの?」
 言葉につまった。確かに小太郎が銀時を誘うたびに、つまらなく思っていたのは事実だ。けれどそれを、銀時が気づいてるとは思わなかった。
「だってお前、時々すっげー眼で俺のこと見るじゃん?」
 息を飲み、そして歯を食いしばる。細められた赤茶が、晋助の顔を見下ろして笑う。
「だったら、ヅラくんとケンカしてる今は、つごういーんじゃないの?」
 その襟をぐいっと掴んで引き寄せる。むかつく瞳を自分と同じところまで引きずり下ろし、睨みつけた。
「でも小太郎は、お前と仲なおりしたがってる。」
「でも何も言ってこねーよ?」
「それは、今考えてるからだっ。」
「考えてるって、何を。」
 即答できなかった。銀時は息を吐いて、襟を掴む指に自分の手をかける。ほどこうとされているのが判って、余計に力を込めた。
「………俺、タケノコ取らなきゃなんだけど。」
「なんで、いらないんだ。こいのぼりも、小太郎も。」
 銀時の口元から笑いが消えた。赤茶の瞳が、まあるく見開かれる。透明な、不思議そうな色をしていた。何を言われてるのか判らないように、それは二、三度瞬いた。
「本当なんでお前らってさ、俺にかまうわけ? お前も、ヅラくんも。」
 あいつも。
 音なく零された言葉を、落とすことなく拾い上げる。
「俺にかまって、何のトクがあんの。俺をリッパなサムライにしたら、どっかからゴホウビ出んの。だれかにほめられんの。」
 晋助は、信じられなかった。松陽に眼をかけられたい子供なんて、いっぱいいる。小太郎を慕う子だっている。何より、立派な侍になりたいと願うのは、晋助だけじゃない。
 なのに銀時は、それをいらないと言う。
「………なんで、お前はいらないんだよ。侍に、なりたくないのかっ?」
 銀時は答えなかった。はぐらかそうとしてるのではない、答えをまだ持っていないのだと、さまよった瞳が語る。
「先生に拾われて、何とも思ってないのかよっ?」
「そりゃ、食わせてくれて、寝るところもくれるのはありがたいけどさ。でも、おかしいじゃん。んなことしたって、なんのトクもないじゃん。むしろソンするばっかじゃねぇの?」
「なんでお前拾ったのがソンなんだよ。」
「だって。」
 銀時はそこで初めて口ごもる。視線が横へ逃げて、もう一度晋助を振り払おうと手が上がる。晋助は手にさらに力を込めた。布ごしにも、食い込む自分の爪が痛い。
 けれど、誰が逃がすものか。
「………ふつうねーじゃん。こんな、エタイのしれないヤツなんて。」
 小さなその声に、晋助は目を見開いた。それを見止め、銀時はニヤリと笑う。
「お前だって、そうだろ? こんな白いもじゃもじゃ頭の、うす汚れたガキなんてって。それが、高杉くんの大好きなヅラくんやセンセーにくっついてんだぞ。むかついて、当たり前だろ? あいつら何考えてんだって思うだろ?」
 銀時の指が三度手にかかる。今度は力負けし、襟を掴む指が一本いっぽん外される。
「他のヤツらだって、そう思ってるよ。ばかみたいだって。」
 せいせいしたとばかりに衣をはらう手を、もう一度掴んだ。
「先生は、ばかじゃない。」
「あ?」
「ばかじゃない。とりけせ、銀時っ。」
「ばかじゃないって。」
 銀時のもう片方の手が、もう一度振り払おうと動く。その前に、その手首を捕まえる。
「少なくとも先生は、お前拾ったご自分をばかだなんて思ってない。お前拾って、ソンしたとも思ってないっ。」
「や、だからそーいうのが」
「そうでなかったら、お前のために甘いものなんて用意しないっ。」
 銀時の口がぽかんと開かれた。赤茶の瞳が、瞬きすら忘れたかのように晋助をじっと見つめる。
「小太郎だって、ばかだけど、お前かまうのソンだなんて思わない。」
「あ、ヅラくんはばかだって思うんだ。」
「お前だってっ!」
 噛みつくように叫ぶ。気づいてないなら、今ここでばらしてやる。

「小太郎にヅラってあだ名つけてんじゃないかっ。」
 他の誰も、晋助にも松陽にも、塾生のだれにも、そんな風に呼ぶ名を決めないくせに。       
「そ、れは」
 銀時のくちびるが震える。
 言い訳できるものならしてみろ。ヅラ呼びは、もう銀時だけのものじゃない。晋助にも、塾の年長組にも広がっている。そう呼ばない子たちも、真っ赤になって否定する小太郎と銀時のやりとりを見て顔を崩す。
 そこまでしておいて。小太郎をいらないと言えるなら言ってみろ。
 銀時は一度、息を吸い込んだ。眼を軽く閉じて、ゆっくりと吐き出す。
「それは。」
 その声から、動揺が消えていた。
「イヤガラセだよ、アイツへの。そうしたら、おこって俺にかまわなくなんだろ?」
「な………っ?」
「あーでも高杉くんが親しく見えるっつーんなら、よび方変えよっか? 桂くんとか。」
 目の前が、真っ赤になる。銀時のことなど殆ど知らない。けれど、強く感じる。
 嫌がらせ、なんかじゃない。「ヅラじゃない桂だ」と怒る小太郎を見て笑う顔は、あれは意地悪からじゃない。
「ふざっけんなぁっ!」
 掴んでいた手を離した。銀時が逃げる前に左手で襟を掴み、右拳を振り上げる。それが振り下ろされるのを、響いた悲鳴が止めた。自分たちのケンカに怯えた学友か、違う。
「せんせいーーーっ、桂くんがっ。」
「桂くんが、ガケからおちちゃったぁぁっ!」


 崖、というのは大げさな表現で、実際は急勾配の坂だった。助け出された小太郎は足首をひねってはいたが他に怪我はなく、銀時にタケノコを三つ差し出した。
「………何、コレ。」
「やる。」
 面食らってつい受け取ってしまった体の銀時に、小太郎はにっこり笑う。
「仲なおりしよう、銀時。こいのぼりは、たしかに俺のおしつけだった。だから、タケノコをやる。」
「なんでタケノコ? みんなでほりに行ったから?」
「それもある。それと、タケノコはとっても大きくなる。一年で、天をつくくらいに大きくなる。それくらい、大きくなれ。」
 まっすぐにそう言われ、銀時は言葉を失ったようだ。あの銀時を黙らせた自覚があるのかないのか、桂は続ける。
「俺は、銀時に立派な侍になってほしい。だから、勉強もやってほしいし、こいのぼりだって本当は銀時にあげたい。今年はがまんするけど。」
「来年またよこすのかよ。」
「うん。だから、銀時が今はいやでも、侍になる努力はしてほしい。これから先やっぱり侍になりたいって思ったら、きっと役に立つから。」
 すがすがしい眼だった。この季節の、雨の後のおひさまの光のようにきらきらしていた。
 銀時は、顔を背ける。細められた眼は眩しそうだった。
「………何で、お前は俺をサムライにしたいの。」
「決まってる。銀時ならなれるからだ!」
 幼なじみのひいき目から見ても、答えになってない答えだった。同じ事を晋助が言えば、また銀時は透明な眼で意味を尋ねるか、笑っただろう。
 けれど銀時はそっぽを向いたまま、頭をぼりぼりと掻いて何も答えない。その顔は、真っ赤になっていた。
 小太郎によそよそしく桂と呼ぶなと言われ、苦し紛れに「じゃぁヅラで。」と言った、あの時の顔だった。


「うわ、まっ黒だ。」
「イイ服汚したらかーちゃんにしかられるってか?」
 筆を洗っていたら後ろから銀時が覗き込む。からかうような言葉に晋助はムッとし、けれど怒らずにぼそりと呟いた。
「ていうか、ヅラの方がうるさい。」
「あーそうだよな。うるさいっつーよりウザいよな。」
 あれから、小太郎抜きで銀時と話をするときが増えた。小太郎は相変わらず、銀時を他の子と一緒に構い倒している。勿論、晋助の世話を焼くのも忘れない。必然的に、その小太郎へのグチをこぼしあうのが増えた気がする。
「俺、今日かみの毛ぼさぼさだって言われた。」
「うっわ、晋ちゃんので言われてたら俺なんてどーしよ。」
「晋ちゃん言うな。同い年だろ。お前だって、銀ちゃんとか言われたらムカツクだろっ。」
「えーそうでもないー。」
「お前本当にムカツクな。こうしてやるっ。」
 筆をすすいでいた桶を、銀時に向かってぶちまける。悲鳴を上げて銀時は飛び退った。
「おっめー何すんだよっ。ぞうりぬれちまったじゃねーか。」
「俺のことヘンなあだ名で呼ぶからだ。」
「いーじゃん晋ちゃんかわいーじゃん。それともお杉のほうがよかった?」
「俺は映画評論家じゃねーっ。」
 逃げる銀時を追いかける。井戸のところをぐるぐる回ってから銀時はまた家の壁の側まで走った。追う晋助の顔に、たらいの水がぶっかけられる。
「ぶっ………、何しやがる銀時っ。」
「お返しー。こーゆーのは倍返しじゃなきゃ。」
「倍どころか三倍じゃねーかっ。」
「おい、晋助も銀時も何遊んでるんだっ。」
「「げ、ヅラだ。」」
「ヅラじゃない、桂だーーーっ!」
 追いかけっこに小太郎も乱入する。
 上がる悲鳴と笑い声の上で、古めかしい鯉のぼりが風に泳いでいた。






                                    ~Fin~
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by wakame81 | 2009-04-27 00:18 | 小説。  

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