お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

橘かおる朝風に:上

やっとこ上がりました。
リク小説「村塾時代で、銀コタ←晋助。晋助視点でケンカする銀コタ。」
ばってんとかやじるしとか、だいぶ関係ない話になりました(爆)。ちなみに、銀時が拾われてから半年あとの設定です。7歳8歳くらい?







「銀時なんかきらいだっ。」
 講義が終わって遊びに行く話をしていた学友達は、その声に振り返った。注目されてるとも知らず小太郎は銀時の手から持たせていた布のかたまりを引ったくり、背を向けて走り出す。
 最初に動いたのは晋助だった。後を追おうとして、足を止める。
「行きなさい。」
 一緒にいた師にそう背中を押され、学び舎から飛び出す。
 学友達の中で一、二を争う足の速さを誇る晋助だが、相手は一番を争うもう一人だ。最初についた差は簡単には縮まらないと思っていた。が、それはもう簡単に、追いつくことができた。
 足を止めて、胸を押さえる。ペース配分なんて考えずに思いっきり走ったものだから、心臓が痛い。鬼ごっこでもこんな風に走ったことはなかったと思う。何年ぶりだろうか。
 小太郎はこっちに背を向けたまま、じっと俯いている。小さな腕は大きな布のかたまりを抱え、まるでそれに突っ伏しているようだ。
「ヅラ、」
「ヅラじゃない桂だっ!」
 名を呼んだ途端、青い鱗と丸いぎょろ眼の描かれたその布でぶん殴られた。


 小太郎の世話焼きは、今に始まったことではない。
 学友の殆ど全員が、論語や漢詩の解釈を見てもらったり、そろばんの課題を一緒にやってもらったり、当番の掃除を手伝ってもらったり、果ては忘れた墨を貸してもらったりしている。晋助に至っては家が近所で松陽に師事する前からの付き合いということもあってか、身だしなみから弁当をよく噛んで食べてるかまで世話を焼こうとする。
 今、最も矛先を向けられてるのは銀時だった。朝登塾してから暗くなってそれぞれ家に帰るまで、それこそ講義中以外はつきっきりで構おうとしていた。
 それが、その朝は違った。
「おはようございます先生っ!」うございます松陽先生っ。」
「はい、おはよう。小太郎、晋助。」
 誰よりも早く登塾しての朝の挨拶は、今日も小太郎に一歩及ばなかった。黒髪を高いところで束ねた後ろ頭を、口を尖らせて見つめる。と、松陽の向こうで朝っぱらから眠たそうな顔の銀時と目が合った。ほっぺたにまだ飯粒がついてる。
 小太郎もそれに気づいた筈だった。朝からしゃんとしろだの、そんなだらしない格好で出てくるなだの(ちなみにここは学び舎と続きの、松陽と銀時の家の台所である)、小言が飛ぶと思った。
「行こう、晋助。」
「え、ちょっ。」
 踵を返した小太郎に、袖を後ろに引っ張られる。
「先生、さきに教室に行ってますねっ。」
「おい待てよっ。」
 教室に行っても当然誰もいない。先生はこっちにいるし、この前お借りした本についていろいろ聞きたかったし第一に話し足りない。なのに小太郎は、ずんずんと袖を引っ張って先に行こうとする。
「いいですよ、晋助。また後で。」
 松陽が柔らかく笑うので、やっと晋助も小太郎の方へと体を向ける。その刹那、銀時がぷいっと顔を背けるのを、目の端に捉えた。


 教室での席は、誰がいうでもないが何となく決まっている。
 小太郎は一番前の一番廊下側、入ってきた先生が何かを抱えていたときすぐに手伝える場所だ。晋助は一番前、論語を語る師をよく眺められる場所に。そして銀時は、一番後ろで他の席からも少し離れて、もたれかかるように講義を聞いている。或いは眠っている。目が届かないとでも思ってるのだろうが、松陽は勿論お見通しである。
「………以上のような威圧的な外交を受け、幕府は開国の意志を明らかにしました。それに対し、朝廷や各地の大名は、激しい反発の声を上げたのです。それらの多くは、天人の武力を知らぬまま、ただ折れた幕府を臆病者となじるものでした。けれど、中にはその力を、力の示す意志を知るからこその反発もあったのです。その一例が、練昭公を藩主に抱いた水戸藩でした。」
 少し低くて、深くて、温かみのある先生の声に耳を傾ける。
 この声が好きだ。流れるように語り、部屋を見渡しながら時々くれるまなざしが好きだ。
 これが、論語の授業ならよかったと晋助は思う。そうなら予習ができる。理解するのに必死にならなくてもよく、その声音だけを追っていけるのに。
「練昭公の思想の根幹となった水戸学は、寛永三年に藤田霊谷が表した「正名論」の中に、その源流を見ることができます。その内容とは、」
 師のまなざしが、一点で止まる。名を呼ばれ、小太郎がはきはきとした声で答えた。
「君臣上下の名分をきびしくいじすることが、社会のちつじょを安定させるかなめとなる、です。」
「はい、その通り。」
 教室中が小さくどよめく。自分だって当てられたら答えられたのに、と晋助は口を尖らせる。そして、小太郎の視線が一瞬後ろへと向けられるのを見た。
 視線の先で、銀時はいつものように寝息を立てている。鞘に入った刀は、これもいつものように抱えられている。そういえば、何でそれを講義の間も持ったままなのか、晋助は知らない。
 口をきゅっと結んだまま、小太郎は前を向き、視線を教本へと落とす。頬についていた手を下ろし、師の声を遠くに聞きながら、晋助はその横顔を見つめる。
「晋助。」
 昼休憩になって、小太郎はまっすぐ晋助の席に来た。久しくなかった、それこそ何ヶ月ぶりのことに晋助は眼を丸くする。
「なんだよ、……小太郎。」
 一瞬、ヅラと呼びそうになった。
 小太郎がその呼び方に怒るのはいつものことだが、昨日からその度合いが激しい。前は名前で呼んでいたのに、時々つい口を滑らしそうになる。
 ヅラ呼びなんてここ半年だけなのに、いつの間にこんなになじんでいたのだろう。
「きょう、先生のお話をちゃんと聞いていなかっただろう。」
「………聞いてたよ。」
「うそをつくな。と中から、ぼーっとしてただろう。どうしたんだ、いったい。」
 どうしたもこうしたも、まさか小太郎の顔が気になってずっと見てたなんて、言えるわけがない。
「そこにすわれ。もう一度俺が、聞かせてやるから。」
 言うなり小太郎は、晋助の目の前に座り込んで教本と握り飯の包みをどんと置いた。
「昼めしは?」
「食べながらでもできるっ。」
「えー?」
 頬をふくらませながら、晋助も浮かしかけた腰を下ろした。一緒に食べようと近寄ってきた取り巻き達に、あっち行けとばかりに手を振る。
 本当に、久しぶりだ。いつもなら小太郎は、まず銀時に声をかけてそれから晋助を呼ぶ。そういや銀時は、と視線が勝手に姿を探した。教室の中には見当たらず、縁側のはじっこに白い後ろ頭を見つけた。


 午後の書道の時間も、剣術の時間も、小太郎は銀時に構おうとはしなかった。その代わり、晋助しんすけと事あるごとに晋助を呼びつけ、連れ回す。まるで、初めて塾に来た頃のようだ。
「晋助、かたづけは終わったか。」
「終わったよ。」
「今日はこれからどうするんだ。」
 問うてくる小太郎の後ろに、取り巻き達の姿がある。白髪頭は見えない。
「銀時は?」
「晋助、聞いてるのは俺だ。」
 小太郎は口を尖らせる。いつもと何だか、怒り方が違う。
「先生のところ、行こうと思って。」
「そうか、なら俺も行く。」
 断る理由もなく、二人連れだって教室を出る。廊下に出たところで、銀時と出くわした。
「あ。」
「………。」
 銀時は何も言わない。いつもの、透明な眼でただ小太郎と晋助を見つめてくる。先に動いたのは、小太郎だった。形の良い眉を吊り上げたまま、銀時の横を通り過ぎる。
「あ、おい。」
 引っ張られるまま晋助も銀時を通り越した。声は聞こえたはずなのに、小太郎はずんずんと先へ行く。晋助は一人で振り返った。今まで構われてた小太郎に無視されて、どんな顔をしてるのか見てやりたかった。が、見えるのは後ろ頭ばかりだ。
「待てよ、小太郎っ。」
 ぐいぐいと袖を引かれ、つんのめりかける。足を速めて追いついて、その横顔を覗き込む。
「何をしてる、先生はおいそがしいんだ。いつもろうかを走るお前らしくない。」
「ろうか走るなっておこるのは小太郎だろ。」
 小太郎こそ、らしくない。そんな、顔を真っ赤にして口をぎゅっとへの字にしているくせに。
 そう言ってやりたかったけれど、やめた。言ったら怒るだろうし、何より悔しかったからだ。


 運良く、来客もなく松陽は二人を迎えてくれた。小太郎は早速、書庫に入りたいとねだる。晋助にも腕を引っ張られ、松陽は苦笑しながら立ち上がった。
「二人とも、本当に本が好きですねぇ。」
「はいっ。」
 小太郎が大きな声で答える。晋助とつないでいない方の手で、松陽は黒髪を束ねた頭を撫でる。
「ちゃんと、外でも遊んでいますか?」
 大きな返事の形に口を開けたまま、小太郎はぎこちなく頷いた。撫でる手を一度止め、今度はぽんぽんと頭を叩く。
「本を読み、学ぶことも大事ですが、小太郎はもっと、たくさん遊ぶことも必要です。焦ることはありませんよ、大人になるのに近道なんてないのですから。」
「………はい。」
 小さく頷く。その頭を、もう一度撫でて松陽は小さな背中を押した。顔を上げた小太郎が書庫に駆け足で入っていくのを見届けてから、晋助へと振り返る。
「晋助は、どうですか?」
「俺は、ちゃんと遊んでますっ。」
「小太郎以外とも?」
 頷けなかった。
 松陽は笑うような息を吐き出して、晋助の前に膝をつく。
「晋助と、仲良くなりたい子もたくさんいるでしょう。ちゃんと、話しかけてますか?」
「だって。」
 口を尖らせる。取り巻き達は、親に言われたから晋助と仲良くなりたいだけだ。
「それでも、その一人ひとりの子を、晋助は小太郎ほどに知っていますか?」
 かぶりを振る。松陽の大きなてのひらが、晋助の両頬を優しく包み込む。あたたかくて、そして節々が固い。
 侍の手だ。
「親に言われたのも、親の仕事についてきて出会うのも、きっかけの一つに過ぎない。出会い方も大事でしょうが、それにこだわり過ぎると勿体ないことになりますよ。」
「はい。」
「せんせいー。」
 奥から小太郎の声がする。一度書庫の中へと顔を向けてから、松陽は行きましょうか、と晋助を促した。




                                   ~続く~
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by wakame81 | 2009-04-27 00:14 | 小説。  

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