お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

いまだ夜は明けず

旧暦10月27日は、史実の松陰先生の命日でした。
ということで、追悼記念話です。………一日遅れですが(爆)。いや、これは「次の日」の話だからいーんだい。

去年の追悼話の、「始まりの夜」の続きになります。ひとりぼっちの銀さんと、お登瀬さんのお話





 深酒をした。
 テーブルの上にあふれるビール缶の山から、乾いたアルコールの匂いが鼻についた。迎え酒もいらないほど飲んだ胃にこの匂いはキいた。腹の奥から不快感がこみ上がってきて、トイレへ向かおうと動かした体はソファから落ちる。世界が回っている。
 溢れそうなものを口をふさいで堪え、這いながらトイレへとたどり着いた。便器に向かって全部ぶちまける。半分近くこぼれた気がするけれど、気のせいにして床に転がった。口の中が酸っぱい。匂いに再び口内中の穴という穴から唾液が溢れ出てきて、再び銀時は便器にしがみつく。
 それを何度か繰り返して、やっとムカムカが収まった。部屋が天井ごと回るのもなくなったので、ゆっくりと体を起こす。立ち上がるとまた目眩がしたので、這ったまま洗面所へと向かった。洗面台によじ登って水を出す。コップを探すのも面倒だったので、手で水をすくって口をゆすいだ。
 やっと少しだけすっきりして、台にもたれて座り込む。気分がだるい。体が、頭が重い。腕も脚も何もかもが。
「あー………………。」
 息を吐いた。朝の光が雨戸の隙間からもれる。雀が鳴いてる。自動車のエンジン、裏の家のテレビの音、ゴミ出ししてるらしいおばさん達の声が、途切れとぎれに聞こえてくる。朝ご飯らしい味噌汁の匂いが鼻をついた。さすがに食欲は湧いてこないが、吐き気もなく銀時はゆっくりと息を吐く。
「惜しいこと、したなー………。」
 追い出すの、もっと後にすればよかった。
 こんなに外には人の気配がするのに、この部屋には誰もいない。


 そのまま洗面所で一眠りして、開店前のスナックお登瀬に飯をせびりにいったのは、午後も過ぎたころ。昼寝から起きていたお登瀬は露骨に眉をしかめたけれど、結局店には入れてくれた。
「まったく、この忙しい時に。」
「忙しいって、客いねーじゃん。」
「当たり前だろ。まだ店開けてないんだ。その前にやることがたくさんあるんだよ。」
 コンロへの火入れ、肴の仕込み、おすすめメニューのお品書き、予約の確認と準備と、お登瀬は指を折って数える。それを一人でやんなきゃいけない、そう愚痴るお登瀬が、まだ銀時に怒っていることはありありと判った。
 手伝おっかとは口に出せなかった。そんなことを言えば、お登瀬は尚更怒る。この店のホステスでもあった彼女を追い出しておいて、その仕事まで奪おうとしているみたいだ。そのつもりはない、なんて言えない。そんなの言い訳だ。
 どん、と音を立てて目の前に茶漬けが出された。梅干しがてんこもりになっている。
「おい、これ。」
「フン。甘党のアンタにゃそいつは辛いだろ。悔しかったら全部食ってみな。」
 憎まれ口の中にあたたかいものを感じて、銀時は茶碗に口をつける。梅干しの酸っぱさが移ったお茶が、喉から腹の奥へとゆっくり染み渡っていく。美味い。
 どうせ酔いつぶれるならここでできればよかった。彼女にしたことさえなければ、そうしただろう。彼女と、彼らと、できれば五人で。
 いや、本当は。
 一人で超えるには、昨日の夜は寒すぎた。女を買わなかったのは意地というより、そんな姿を冥土のあいつに見せるのが怖かっただけだ。酒で紛らすのはきっと目くそ鼻くそってことなんだろうけれど。
 一息にかっこんでむせた。お登瀬が汚いねぇと顔をしかめて台ふきを側に置く。咳が落ち着いてから飛ばした飯粒をつまんで口に運び、こぼれたお茶を拭く。
「おや、全部食ったのかい。」
 空っぽの茶碗にお登瀬は目を丸くした。口元を手でぬぐって茶碗を差し出す。
「おかわりー。今度は梅干しじゃなくてあんこ入れてくんない?」
「二日酔いでよくそんなもん食う気になるね。生憎あんこなんてないよ。」
 そう言ってお登瀬が飯をよそっている間、銀時は勝手にテレビをつけた。ちょうどニュースの時間だ。適当にチャンネルを回してニュースか幼児向けの番組しかやってないのを見て、リモコンを放り出す。
 時計を見た。天気予報を流すまでにはまだ時間がある。
 梅干しが倍になったお茶漬けが置かれ、それに手を伸ばした時だった。
『次のニュースです。未だ続いている江戸の厳戒態勢ですが、各星の大使館はさらに人員を強化する模様です。戌威星だけではなく、茶斗蘭星、猩々星の軍隊が、先ほど出動し街の要所を封鎖しております。』
「限界態勢だぁ? んなもんいつからやってんだよ。」
 戦争は終わり、残党狩りも落ち着いたはずだ。だからこそ、お登瀬の指しだした手を取る気になったのだ。
「なんだい、ニュース何も見てなかったのかい?」
 書き途中だったお品書きに手を伸ばしながらお登瀬が尋ねてくる。梅干しの酸っぱさに口をすぼめ、銀時は答えた。
「昨日の夜から死んでたもんでー。」
「呆れた奴だねぇ。昨日の夜からだよ。」
「へー?」
「何でも、テロがあったとかで。天人の大使館に襲撃かけるなんざ、命知らずがいたもんだねぇ。」
 お登瀬は眉をひそめて言う。その命知らずに何となく覚えがあるような、これってデジャビュ?と銀時が考えていた時だった。
『≪狂乱の貴公子≫と名乗った犯人は犯行予告を出しており、大使館側は攘夷浪士の残党と見て操作を続けています。』
 手から箸がぽろりと落ちた。
「銀時?」
 お登瀬が名を呼んでも銀時は応えなかった。鬱陶しくなった髪を切って外から見えるようになった耳には、ただテレビの声だけが届く。
『京でも昨夜、天人の豪商の屋敷を狙ったテロがあったという情報があり、大使館関係者は戌威星大使館襲撃犯との関連を調べています。』
 画面は切り替わり、街ゆく人へのインタビューを映し出す。若い娘も子連れの母親も中年男も、皆一様に「怖いですねぇ」と口にしている。老若男女関係なく同じような反応で、言わされてるのではないかとすら思えた。
 お登瀬は新しい箸を銀時の前に置き、床に転がった奴を拾って奥へと引っ込んだ。
「お品書きが進みゃしないよ。」
 そう愚痴をこぼし、仕込み途中の肴の様子を見る。鰯の南蛮漬けはまだ味が染みこみきってないし、煮こごりの粗熱も取れてはいない。枝豆をゆでるにはまだ早いし、あとは…と厨房の中で動き回っていると、からりと引き戸が開けられる音がした。フロアを覗くと、そこでは淡々と明日のお天気と血の雨予報を若い女の声で流すテレビと、ほとんど口のつけられていないお茶漬けが残されていた。


 建物の多いかぶき町では、二階に登ったくらいでは広い範囲を見渡すことはできない。見通しの悪い玄関にしばらく佇んでから、ふと屋根の上を見上げる。そこに登れば、あるいは、という思いを首を振って追い出し、引き戸に手をかけた。
 中は暗い。銀時が出かけたままだ。当たり前だ、ここにいた従業員とは結局ケンカ別れしてしまった。
 戸をくぐって後ろ手に閉め、そのままドアにもたれかかる。足の先から力は抜け、ずるずると土間にしゃがみこんだ。
「あいつら………。」
 呟いて、顔を両腕に埋める。
 喜びは確かにある。殺しても死なないと判ってた。自分で命を絶とうとするか、銀時自身が手を下さなければ死ぬことはないと知っていた。それでも、それが事実となって顕れれば、もしかしてという不安は拭われる。
 けれど。
「諦めたんじゃ、なかったのかよ………。」
 自分がいなければ或いはと、そう願ったのに。
 そのために、側を離れたのに。
「いつまで続けんだよ………。」
 戦うことを。破壊することを。死へと誘うことを。
 誰よりもきれいなその身を血で汚すことを。
「もう止めろよ、ヅラも晋助も。」
 その祈りは、誰に届けば聞き入れてくれるのか、銀時は知らないまま呟いた。


 捕らえられることのなかった≪狂乱の貴公子≫と≪紅蓮鬼≫に第一級指名手配がなされたのは、年が明けてからのことだった。同時に、対テロリスト武装組織・真選組が設立された。
 銀時が新しい家族を得て、そして彼と再会するのはもう少し後の話。




                       ~Fin~
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by wakame81 | 2008-10-28 23:38 | 小説。  

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