お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

天使のリング

三万ヒット御礼小説、ただしフライング、みたいな!!(爆死)(戯言シリーズの葵井巫女子ちゃん風に)

リクやらなかったので、本当にこれが御礼になっているのかどうか(苦笑)。攘夷末期銀桂で、「髪を洗う話」です。
こんだけエロいシチュなのに、えろえろしくなりません、残念!!

ここまで若布とたいりくだなを支えてくださった皆様、おいでくださった皆様、拍手をくださった皆様に、雨あられほどの感謝を込めて。
ありがとうございました!!







 まとわりつく水をかき分けて進む。その度に波が起こり、波紋が揺れ、遠慮なく立てる音が耳に届く。
 胸元まである水の中、よく動けるなーと銀時は岸辺に寝っ転がった姿勢のまま思う。衣や細袴だけではない、具足や胸当てもまだつけたままだというのに。自分で突き落としておいて、まるで他人事のように見つめる銀時の視線の先で、桂は派手な水音を立てて倒れ沈んだ。はっと身を起こす銀時の目に映るのは、丸いきれいな波をよこしてくる水面だけで、アオモや何やらで不透明な水の奥から彼が浮かび上がる様子はない。
「おいヅラっ?」
「ヅラじゃない、桂だ。」
 縁まで寄って名を呼んだ途端、ざばりと桂が立ち上がった。頭のてっぺんから水が滴って濡れた髪が顔を覆い尽くす。水をよけるように俯いた顔は隠され、まるで身投げした女の幽霊のような姿に銀時はヒッと悲鳴を上げた。
「とりあえず一通り探ってはみたが、おかしなものは別に見あたらなかった。ここまで探して見つからないなら、この淵には仕掛けられていないと思っていいだろう………どうした。」
 淡々と報告をしていた桂は、おかしな格好でしゃがみ込んだ銀時に首をかしげた。まっすぐに見つめてくる眼はいつも通り力に満ちていて、幽霊のたぐいがこんな生気にあふれているわけないとやっと銀時は息を吐いた。
「んーにゃ、別に? ごくろーさん。」
「全くだ。いきなり何も言わずに突き落としおって。天人どもの自走地雷、いや水雷?とにかくそんなものがあるなら先に言え。」
「へいへーい。すいませんね言葉足んなくて。」
 だってそんなもの、突き落とした直後に思いついた言い訳に過ぎないだなんて、誰が言えるだろう。
 だまされたなどと微塵も思っていない桂は、口から先に生まれてきたくせに、お前らしくもないとぶつぶつ文句を言っている。銀時は乾いた声で笑った。水から上がろうと伸ばされた手を押し戻す。
「つーかさ、ついでだからこのまま洗っちゃえば?」
「何をだ。」
「体だよカラダ。おめー返り血浴びたまんまじゃん。臭いから。」
「そうか?」
 桂は肩を鼻によせてくんくんと嗅ぐ。
「自分じゃよく判らん。アオモ臭いし。」
「こーゆーのは本人より周りのがよく判るもんなの。だから洗っときなさい。銀さんここで見張っててやるから。」
「見張りなら向こうを回れ。まだ北の方は見て回ってないだろう。」
「あっちはイバラキくんが行ってるだろー?たぶん。」
「多分とはなんだ多分とは。」
「いーからいーから。刀もなんも持たない時に襲われたらどーすんの。」
「俺がそれくらいで殺られるとでも思っているのか。天人どもの斥候くらい、素手でのしてくれる。」
「はいはい。」
 気の抜けた笑顔の裏でため息をつく。こいつは本当に判ってない。


 具足どころか袴、ふんどしまで全部脱いで細い身体をさらす。本当に桂は極端だ。恥じらいてものはないのかよ、と、頭を掻く。今更だ。
 銀時達が今いるのは山の中腹で、傾斜を登っていった先には仲間達が駐屯している。やっと敵の囲いを抜けてきたところで、皆疲れ切っている。どれだけ休息の時間がとれるのかは、敵の出方にかかっている。自分たちの足取りがどこまで掴まれているのか、どこからどのように追っ手を出しているのか。
 それを見極めるための偵察を、何も大将御自らやらなくてもいいと思う。自分だって先頭に立って突破口を切り開いた。誰よりも多くの敵を斬った。返り血を清める間もなく軍を率いて、兵の一人一人にねぎらいの言葉をかけて。のみならず、こんな。
「つーか、大将だったらちょろちょろしてねーでふんぞり返ってりゃいいっつーのに。」
「何か言ったか?」
 淵の中程で桂が顔を上げた。まだ枝に残る葉は多く淵に影を落としている。その中で、白い肌は色を暗くし、冷たい秋の水温と相まって血が通ってないように見える。それに痩せた。糧食も残り少ない、そんな中で上に立つこいつが腹一杯食えるわけがない。
「べっつにー?」
 ほじった耳糞をふっと吹き飛ばす。
「つかお前、寒くないの?」
「お前が言ったんだろう、ここで洗えと。」
「はいはいそーでした。隅から隅までしっかり洗いなさいよ-。」
「なんだ、お母さんみたいだな。」
 言って桂は笑った。作戦を説明、あるいは指揮するときに時折見せる自信に満ちた、あるいは挑発するような類ではないそれに、銀時はわずかに口を開ける。
「銀時?」
 惚けたのを見抜かれ、名を呼ばれる。あーそのー、と視線をそらし、頭を掻き毟ってから桂に手を伸ばした。
「来いよ。頭洗ってやるから。」
「いらん。」
「いーから来なさいっ。おめーすぐ手を抜くんだからっ。さらさらヘアーの上に胡座かいてんじゃねーよっ。」
「何だ、羨ましいのか?」
「悪かったなコンチクショーっ。」
 桂はくすくす笑いながら、岸辺へと近づいた。肩にも、腕にも、向けられた背中にも細かな傷跡がある。一番古いのは前髪に隠された、子供の頃いたずらが過ぎて大人に殴られたときのものだ。そんな傷ばかりだったらよかったのに。
 両手で水をすくって頭にかけてやる。手のひらに収まる量の水は透きとおって、黒い髪を伝い滑らかに落ちていく。濡れて重さと艶の増した髪に手をくぐらせ、頭をかき乱してやる。軽く爪を立てれば、「銀時、痛い」と声が上がった。
「はいはい、ちょっと我慢しなさいー。かゆいのやでしょー。」
「失礼な。シラミなどつかせるほど不潔にはしてないぞ。」
「嘘つけ。シラミまでいかなくても、てきとーにすますくせに。」
 手を髪の付け根から先へと滑らせる。いつもは指先から逃げる髪は、水分をまとって銀時の手にまとわりつく。水をかけ、手のひらでこすりあわせる。透明なはずの手のひらの水に、濁った赤が混じった。
「きれいに、しとけよ。」
 音に紛らせたため息は気づかれなかっただろうか。
 祈るような言葉に桂は少しだけ振り向き、白い羽織の裾を掴んだ。
「お前もな。この白を、汚すな。」
「………っ。」
 見上げてくる琥珀が銀時を捉える前に、脳天を掴んで水の中に押し込んだ。いきなり沈められ、腕の先で桂が暴れている。浮かんでくるたくさんのあぶくに息を吐いて手を離すと、勢いをつけて桂は立ち上がった。
「いきなり何をするっ。」
 叫ぶ声が裏返っている。一息に怒鳴った後鼻を押さえて咳き込む姿に声を立てて笑った。
「何って、髪洗ってやってんじゃん。洗ったら水で流さなきゃでしょ。そのタイミングくらい、読みなさい。」
 言って、もう一度頭を押さえて沈めてやった。再び立ち上がった桂は、鼻と口を押さえていた手を離して誇らしげに口を開く。
「どうだ、読んでやったぞ!」
「はいはいよくできましたー。」
「なんだその偉そうな物言いは。」
 口を尖らせながらも、銀時が髪に手を伸ばすと委ねるように目を閉じる。それにすら耐えられなくて、銀時は引っ張るように手に力を込めた。


 一度濡れた服を着るのが嫌だと駄々をこねられたので、陣まで銀時が替えを取りに行くことになった。隠れてなさいと言ったのに、この方が暖かいと白い羽織だけを羽織った桂はのんきに日なたぼっこをしている。
 そこだけ見てりゃ、馬鹿でまっすぐな小太郎のままなのに。

 一度だけ振り返った。
 白く細い身体に白い衣をまとって降り注ぐ陽の中に立つ桂の、唯一黒い髪に光る輪が浮かぶ。
 それは異国の神の使いのようで、銀時は眼を細め、口元を手で隠した。




                       ~Fin~
[PR]

by wakame81 | 2008-10-26 21:25 | 小説。  

<< 第234訓。 第129話。 >>