お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

≪太陽≫の花は真実を照らすか~判決編:後

言い訳編はあとから出すとして、ひとつ感想。
3Z公式ノベルで散々大崎氏のこと言いましたが、桂君への扱い以外は撤回させてください。ミステリーってやっぱり難しいー。








「異議ありぃぃぃっ!!」
 どよめく場内と「静粛に!」と制止する声を裂くように、歯牙が叫んだ。反論を聞こうと場は静まりかえる。
「弁護人は証人を根拠もないのに貶めようとしています!!」
「根拠は、これから説明しますよ。」
 口端を持ち上げてそう言い、銀時は封筒から紙の束を取り出した。
「これは、難波幾松さんの義弟であり、被害者と同じく被告人に不埒なマネをして返り討ちにあった難波小吾氏の供述調書です。昨日、私の助手が面会して参りました。」
「異議あり! 難波氏の証言がいるのなら、その面会した弁護人の助手とやらを喚問するべきです!」
 ぎろっと、銀時は歯牙を睨みつけた。妙が銀時へと振り向く。新八も息を呑んだ。歯牙も怯んだように身をのけぞらす。他に気づいたものはいなかったようだ。
 噛み殺すのかと思った。それほどの、威圧感は一瞬でゆらぐ。
「必要なのは、私の助手の証言ではなくこの供述調書です。裁判長、ご覧ください。」
 異議を軽く投げ捨て、松方へ書類を差し出す。受け取った松方はざっと目を通し、すべて見抜こうとするように大きな目を銀時へと向けた。
「ここに書かれていることは真実か。」
「弁護士バッジに誓って。」
 恭しく誓う。唇を噛みながら、歯牙が割り込んだ。
「裁判長。それには何が書かれているのですか。」
 松方は歯牙を見、幾松を見やり、銀時を一瞥し、そして歯牙へ再度向き直った。
「難波幾松には、金加瀬太郎に多大な借金があると。」
「なっ。」
 俯いたままの幾松を、歯牙は凝視した。何か言いたそうに口を開き、すぐに閉じ、そしてまた声を上げる。
「しかし、被害者は金融会社の社長です。借金がある人物など、他にもたくさんいる! まさか被告側は、それだけの理由で彼女を殺人者呼ばわりしたわけではないでしょうね!」
「それだけじゃねーですよ?」
 銀時はニヤリと笑った。
「もうすぐ、検察庁から負債者のリストが届きます。それと見比べれば、すぐに判りますよ。」
 折りよく、扉が開かれた。リストはまっすぐ松方に届けられ、検められる。
 端から端まで目を通した松方は、眉をひそめて銀時を呼んだ。
「これには、難波幾松婦人の名が認められないが。」
 また、会場がどよめく。はっ、と我に返った松方が注意を呼びかけ、静まるまでかなりの時間を必要とした。
「負債者リストに名がなければ、彼女に借金があったという証拠にはなりません! 裁判長、これは被告側の審理霍乱を目的とした悪質な中傷だと検察側は判断します!」
「中傷ではありません。ラーメン屋北斗心軒の常連からも、同様の証言を得ています。借金をかたに、出前を何度も無料でさせられたとか。何人かの方は、本日法廷にお越しいただいております。」
 ざわめく傍聴席を、松方も歯牙も見やった。誰もがあたりを見回すだけで、立ち上がろうとはしない。けれどよく目を凝らして探すと、不自然に幾松から目をそらす者を見つける。
「………しかし、借金があったのならリストに名がないのはおかしいではないですか!」
「このリストは、被害者本人が作成したものではありません。警察が、存在する借用書を元に作ったものです。つまり、彼女の借用書は存在しなかったのです。」
「それは、金融会社としてはおかしいではないですか!」
「そう、おかしいです。借用書の破棄を目的に犯行を行ったと、検察側が主張している被告人の父のものですらあったのに。」
 銀時は、視線を歯牙から幾松へと向けた。少し身をかがめ、覗き込むようにして問う。
「あなたは、出前の食器を取りに事務所へ行き、そこで意識なく倒れている被害者と義弟を見つけた。救急車を呼ぶべきだったと、あなたも判っていたでしょう。けれど、借金をかさにきて無理難題を押し付けられたことを思い出し、ふと魔が差した。」
 低い声が法廷内に響き渡る。歯牙も、松方も、傍聴席の皆も、幾松本人すら遮ろうとはしなかった。
「二人が気絶している間に、あなたは自分の借用書を奪おうとした。書棚の鍵がどこにあるか、何度も出前にきたあなたは知っていたのでしょう。ですが、その途中に被害者が意識を取り戻した。反射的になのか、それとも被害者に咎められたのかは判りません。ですが、これだけは確かだ。あなたは咄嗟に手近なところにあった壷をつかみ、被害者を殴り殺した。」
 幾松はうつむいたまま答えない。何も言わず、顔を上げて何かを訴えようともしない。
 その様子に、法廷内が少しずつざわめき始める。細波のようなそれを気にすることなく、銀時は言葉を続ける。
「その後我に返ったあなたは、テーブルの上にあった借用書を、捜査を混乱させるつもりで隠した。そうなのですね?」
「異議あり!」
 銀時の言葉を止めたのは歯牙の声だった。眉を吊り上げ、端正な顔をゆがめ、なお反論しようとしている。
「証拠はっ! 被告側の言うことは証拠も何もない、ただのでっちあげです!」
「証拠はあります。先ほどの、壷ですよ。」
 銀時は笑みを浮かべたまま、松方を見上げる。
「裁判長。被告側は、難波幾松婦人の指紋と壷の内側から見つかった指紋の照合を、要請します。」
「異議ありっ!」
 歯牙が叫ぶ。が、具体的な反論を続けられない。二、三度口をパクパクさせた後、「被告側の要求は不当なものであり」とまで叫ぶ。その叫びを、大きくはない、けれど強い声が遮った。
「異議はありません。」
 それまでうつむいていた幾松が、顔を上げていた。歯牙を、松方を、銀時を見てきっぱりと告げる。

「その、弁護士さんの言うとおりです。私が殺しました。」

 法廷内は、騒然としかけた。
「静粛に!! 従わない場合は退廷を命じます!!」
 松方がそう叫んでもどよめきは収まらず、実際に数人が廷吏によってつまみ出され、やっと場は静まりかえる。
「難波さん。本当のことか? 嘘でしたら止めるが良い。たとえ被告人に同情してのものでも、偽証であれば偽証罪が適用されるぞ。」
「嘘じゃありません。あの子には、申し訳ないことをしました。」
 目を細めて、幾松は笑った。うつむいていた時の顔が嘘のような、晴れ晴れした笑みだった。が。
「ごめんね? あんたには、本当に悪いことしたね。」
 そう、妙に向けた顔は、そして。
「弁護士さん。あんたの助手は、怖い人だね。」
 銀時に向けた顔は、どこか泣きそうで。
「あたしはやっぱり、殺人者としての自分を許せなかったよ。あの人の、言うとおりに。」
 彼女のせいで姉が大変な目にあったというのに、新八こそ申し訳ない気持ちになった。


「桂さんっ!」
 妙とともに、控え室に駆け込む。毛布を引っかぶったまま桂は「ぬ”~」と不気味ないびきをかいていたが、引っぺがすとばっと体を起こした。
「む、新八君。どうした。」
「やりましたよ、勝訴です!! 姉上が社長や難波さんに怪我させたことも、罪に問わないって!」
「そうか。」
 言って桂は、小さく笑った。寝起きのぼさぼさの頭だったが、それはとてもきれいで、思わず新八は見惚れる。
「こ、これも桂さんや坂田さんのおかげです。ありがとうございます!!」
「そう礼を言われるようなことはしていないよ。俺たちはただ、法の僕として真実を明らかにしたにすぎない。」
 その言葉に、幾松の姿を思い出す。
「あ、でも。」
「どうした?」
 首をかしげ問われるが、胸のうちのことを明かす気にはなれず、「過剰防衛はくるかと思ったんですけど」と誤魔化す。
「女子を力づくでどうこうしようという輩など、殴られて当然だろう。いや、むしろ甘いな。」
「そうですよねぇ。幾松さんに罪を犯させてしまったのだから、私ももう二三発殴って息の根止めてもよかったかしらって。」
「姉上、それだとマジであんたが犯罪者ですから。」
 今までの苦労はなんだったのかと、新八はため息をつく。
「時に、銀時は?」
「あら、そういえば。」
 三人は廊下に出てみた。法廷を出たところまでは、銀時も一緒だったはずなのに。
「どこかで糖分でも摂取しているのだろう。血糖値が危険なくせに、馬鹿なやつだ。」
「あはははは、僕探して」「お妙さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんんんっ!」
 きますね、と続けるはずだった言葉は、走ってきた近藤の大声で遮られる。
「おめでとうございます!! 俺は、俺は、あなたの無実を信じてましたぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うっせーよ検察側の証人になってたくせにふざけんな。」
「まぁまぁお妙殿。検察と警察の結びつきは硬いのに、お妙殿に有利な証言をするだけでも大変なのだ。そこらへんは、察してやってくれ。まぁゴリラは人語は解さないからバナナでも差し入れてやればいいだろう。」
「ちょっ、何でそこでゴリラ扱いーーーっ!」
 賑やかなやりとりに苦笑する。桂に、銀時を探してくると耳打ちして、新八はその場を離れた。


 人のほとんど通らない、廊下の突き当たりに銀時はいた。背広の後姿に声をかけようとして、物々しい空気に新八は口を押さえる。
「おめー、いつ来たんだよ。俺の仕事には興味ねーんじゃなかったの?」
「テメェにゃ興味ねぇよ。俺はヅラの仕事の首尾を身に来ただけさ。」
 銀時に向かい合い、口元をひずめているのは高杉だった。新八を坂田弁護士事務所に案内してくれたときとは全く違う、ねめつけるような顔で銀時と向かい合っている。
「ヅラの仕事じゃなくて、銀さんの仕事でしょーが。」
「言うようになったなぁ、銀時。」
 高杉はククっと喉を震わす。
「高杉。」
 暗い笑い声を、銀時は低い声で遮った。
「おめー、何でヅラを巻き込んだ。」
「必要だっただろ? ヅラの助けが。テメェこそ、何であそこでヅラを証言台に立たせなかった。そうすりゃ、もっと楽だったろうによぉ。」
「ざけんなっ!」
 壁を殴りつける音が、空気を震わせた。新八は肩をすくめ、目をつぶる。
「ヅラを、アイツらのとこに引きずりだそうってのかよっ!? アイツが、どんな目にあったか、おめーは忘れたってのかっ?」
 それまでニヤニヤと笑っていた高杉の顔から笑みが消えた。銀時につめより、睨みあげる。
「テメェこそ忘れんじゃねぇ。ヅラの居場所はテメェなんざの隣じゃねぇんだ。法曹界に戻すつもりもねぇくせに、事務所に入り浸らせて仕事手伝わせてんじゃねぇ。」
「アイツが勝手にやってんだよ。俺は頼んでねぇ。」
「へーぇ?」
 新八は迷った。このままにしておいていいのか、誰か、桂を呼んでくるべきではないのか。
 自分で割り込むには、あまりにも空気がぴりぴりと張り詰めている。それが一番手っ取り早いのに、それだけができない。
 高杉は手を上げた。銀時の顔から、メガネを外す。
「法廷に立つたびに、コイツつけてる奴が、『頼んでねぇ』だ?」
「テメっ、返せっ!」
「返してやるよ、今はな。」
 一歩下がってメガネを突き出した。握りつぶしてもおかしくないほど殺気だっているのに、そのメガネだけは丁寧に扱っている。
「だがな。いずれ返してもらうぜ。先生にも俺にも、ヅラは必要なんだ。逃げ出したテメェ以上になぁ。」
 喉を震わせて笑い、高杉はきびすを返す。去っていく背中を見送っていた銀時が、不意に「よぉ」と声を上げた。
「見てたんだろ? ぱっつぁん。」
「え、あ、はいっ。」
 飛び上がった後、おずおずと角から顔を出す。さっきまでの押し潰すような気配は鳴りを潜めていたが、銀時はひどい顔をしていた。レンズの奥の死んだような目も、にへらと笑った口も、もじゃもじゃの頭も、力を抜いたような姿勢も今まで見てきた通りでどこがどうとは言えなかったが、とにかくひどい顔だと思った。
「銀さん。」
「役どころ忘れてっぞーぱちー。」
「えっと、坂田さん。」
「ん?」
 一見新八の言葉を促すようにしながら、銀時の顔にはありありと、突っ込まないでと書いてあった。「あの、その、」と言葉を一度濁してから新八は、
「ありがとうございました。」
 と頭を下げてごまかす。
「ん。」
 わしゃわしゃわしゃ、と押しつぶすように頭を掻き回される。おそらくひどい顔を収めようとしてるのだろう、銀時の気が済むまで、新八はされるがままにしていた。




                                 ~Fin~
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by wakame81 | 2008-10-05 13:25 | 小説。  

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