お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

≪太陽≫の花は真実を照らすか~審理編:前

参考文献「タクティカル・ジャッジメント」by師走トオル先生。富士見ミステリー文庫より発売中。
ぶっちゃけ、「タクティカル~」のほうが面白いです。←当たり前だ 
ただし、こっちのペテン弁護士とヘボ探偵(互いの呼び名)は、銀桂とゆーより銀&高ですが(笑)。





 裁判の傍聴というものにこれほど人が集まるとは、正直新八は思っていなかった。
 大きな事件の裁判について、ニュースで取り上げているのは時々見る。その様子を描いた絵では、確かに椅子を埋め尽くすほど見学者がいたのも見ているし、裁判傍聴体験が学校によっては行われていることも聞いたことがある。
 けれどこれは、大きな事件じゃない(人死んでるけど)。まして、本裁判ではなく予備審問に過ぎない。第一平日である。
 なのに、空席を見つけるのが困難なほど、人がここにいるのが信じられない。
 唇を噛んで俯く。まるで、姉が見世物にされているような感覚を覚える。
「あっちがちょうど二つ空いているな。」
 手を引かれ、顔を上げた。弁護側の席よりの、後ろから数えたほうが早いところに確かに空席がある。
「あそこにしよう。………新八くん?」
「あ、いえ。」
 気を取り直して引かれるままに桂の後を追う。先を越されることなく辿りついてからやっと、桂が自分の手をずっと握っていたことに気がついた。
「少し遠いが………どうした?」
「あわわわわいえそのすいません手ぇぇぇっ。」
「手? あぁ。」
 同様など微塵も見せず、桂は手を離した。
「ここまでくれば、もうはぐれないだろう。」
「え?」
「迷子防止だ。今日は混んでいるからな。」
 一人でうろたえたのが馬鹿みたいだ。自己嫌悪に陥りながら、新八は背負っていたカバンを下ろそうとして桂の言葉にふと引っかかりを覚えた。
「混んでます? やっぱり。」
「あぁ。予備審問にしてはな。」
 お手手つなぎ事件でぶっ飛んだ思考が、また沈み始める。桂はそんな新八にかまうことなく、さっさと腰を下ろした。
「ついていたな。」
「え?」
 桂の顔を見ると、「座らんのか?」と問われた。腰を下ろしてから、改めて口を開く。
「ついてるって、何がですか?」
「この人の多さだ。銀時の口八丁に会場が飲まれてくれれば、裁判官の判断をこっちに有利に持ってきやすい。もっとも、相手もプロだしそう簡単にはいくまいが。」
 思わずその白い顔を見つめる。
 新八が戸惑い嫌悪したこの人の数を、桂は武器として見ている。その捕らえ方に舌を巻いた。
 桂はじっと、被告席を見ている。新八たちからは後姿になる、ポニーテールに髪を結わいた姉の姿。と、その隣にスーツをびしっと着込んだ白髪頭。時々姉のほうを向いて、何か話している。審理の方針についてだろうか。
「今日も、メガネなんですね。」
 初日に裸眼の銀時を見ているせいか、あれから何度かメガネ姿の銀時を見てはいるが、なんとなく違和感が拭えない。
「ねぇ桂さん、坂田さんって。」
 新八の言葉は、廷吏の「静粛に!」という声によって遮られた。
「松方ヒ●キ裁判長が入廷します。全員、起立!」
 さっと、銀時や原告席の検察官達、書記官らが立ち上がった。少し遅れて姉の妙も立ち上がる。傍聴席でも桂をはじめ、何割かの人間が立った。それに促されるようにして傍聴の経験がないのだろう残りの者も立つ。新八も、背筋を伸ばして立った。
 現れたのは、丸い顔に眉の太い、貫禄を感じさせる裁判官だった。法廷内をぐるりと見廻し、「着席。」と告げる。
「松方殿か。運が良かったな。」
 席に着いた桂が、小声で新八にささやいた。
「え?」
「松方殿の判決は公正だと定評がある。検察が歯牙殿なのは少々厳しいが、向こうの言うことをただ鵜呑みにするような無能で腐った輩でないなら大丈夫だ。」
 とりあえずは恵まれたということか。新八はゆっくりと息を吐き出して、姉の後姿を見つめる。
「これより、被告人・志村妙の殺人罪に関する予備審問を開始する。検察側、被告側、ともによろしいか?」
 裁判長の言葉に、銀時も歯牙も肯定の答えを返した。
「それでは、審理を開始する。まず、被告人・志村妙。」
 名を呼ばれ、妙が立ち上がる。
「貴方の本名と本籍地を答えなさい。」
「はい。志村妙、二十歳。本籍は東京です。」
「よろしい。」
 被告人当人か否かを確かめる人定質問を終え、松方は妙に座るよう命じた。次いで歯牙の名を呼び立たせた。
 歯牙は、桂ほどではないが長い黒髪を背中でまとめた、怜悧なイメージのハンサムな男だった。銀時や桂同様、彼も若い。検察庁の若きホープの一人だ、と前に桂が言っていた。
「この審問の目的は、被告人・志村妙に対する殺人容疑を確立することにあります。まずその点を充分に理解いただきたい。」
 歯牙は自信たっぷりな笑みを浮かべて法廷内を見渡す。そして、通りのいい声で演説するように起訴状を朗読し始めた。
「被告人・志村妙は平成二十年九月十六日午後七時四十二分、金加瀬金融会社社長・金加瀬太郎から呼び出され、同日八時半に彼の事務所を訪れた。そしてその席で金加瀬氏と彼の会社の社員・難波小吾氏から父の借金について売春を強要され、抵抗して二人を殴打。さらに、金加瀬氏の前頭部を事務所内にあった壷で殴り、彼を殺害して借用書を盗んで逃走。素手での殴打からさらに凶器を使っての犯行から殺意があったと見なします。これは強盗殺人に値するものと思われます。」
 妙は、まっすぐに歯牙の方を向いていた。おそらく睨んでいるのだろう。自分がやったのではないという意思をこめて。
「それでは証人を喚問したいと思います。最初の証人は、この事件を担当した小銭形刑事です。」
 呼ばれ、サングラスをかけた凛々しい顔つきのハードボイルドな男が入廷した。松方は彼を見て、形式にのっとった宣誓を促す。
「あなたは、真実だけを述べることを誓いますか?」
「誓います。」
「ところでそのサングラスを外すことはできないのか?」
「すみません、ハードボイルドなもので。」
「なら仕方ない。検察側は尋問を開始せよ。」
 歯牙は口端を持ち上げる。
「証人は、名前と職業を述べてください。」
「小銭形平次、職業はハードボイルドです。」
「法廷侮辱罪を適用しましょうか?」
「職業は警察官です。」
 歯牙に目を細めて睨まれ、小銭形は心持ち小さくなった。
「小銭形刑事。あなたはこの事件を担当し、被告人を実際に逮捕した。そうですね?」
「そうです。」
「では、どういう経緯で被告人を逮捕したのか、お聞かせください。」
 小銭形はサングラスの奥で、まなざしを遠くする。
「あれは、月の綺麗な夜だった………。俺はいつもの通り、バーでマスターを相手に今日のハードボイルドな出来事を思い返しながら、カミュをちびりちびりと味わっていた………。

『マスター、いつものを頼む。二つな。』
『へい、旦那。二杯って、後からどなたかでもお出でになるんで?』
『来てくれると、いいがな。』
(小銭形、片方のグラスを持ち、もう片方のグラスにあわせる。)
『いい奴はみんな死ぬ。友よ………。』


「本法廷に関わりのない証言は控えてください。」
 冷たい声で歯牙は言い放った。
「いや、ここからがハードボイルドになっていくところでして。」
「法廷侮辱罪を適用しましょうか?」
 小銭形はシュンと縮こまる。
「あの夜、交番で待機をしていたら、人が死んでいるとの通報がありました。急いで現場に駆けつけると、奥の書斎で被害者二人が倒れているのを発見しました。室内は荒らされ、いろんな書類が散らばっていました。金加瀬氏のそばには、割れた陶器のかけらも散乱していました。応援を呼んで現場検証を行ったあと、私は状況を整理するために一度バーに戻り、鑑識の結果を待つことにしました。」
「それで、その後どうなりました。」
「バーで私は、同僚から被害者を強姦未遂で訴える女性が現れたと報告を受けました。それが被告人だったのですが、私は彼女と話をし、売春を強要する被害者らを殴り倒して逃げたという供述を得て、彼女を」
「異議あり!」
 いきなり銀時の声が鈍い音とともに法廷内に響いた。新八はぎょっと被告席を見る。机の上に手を置いて立ち上がった銀時は、小銭形を鋭く見据え口を開いた。
「被告人は被害者のテリトリーともいえる彼の事務所で、無体を働かれそうになっていたのです。それに必死で抵抗し、逃げおおせたことに対して『殴り倒した』とは乱暴な表現ではないでしょうかっ!」
 法廷内がかすかにざわめく。銀時はさらに続けた。
「被告人の行動は、正当防衛の範ちゅう内と思われます。それを、さも暴力を振るったように言うのはそれこそ言葉の暴力というものではないでしょうかっ!」
「裁判長。被告人が我が身を守るための防衛手段であったことは確かですが、実際に供述書にも『殴り倒した』と彼女ははっきりと証言しています。これは言葉の暴力なのではありません。厳然たる事実です。」
「事実なら全てを正しく証言していただく必要があると思います! 『殴り倒した』との前に、『防衛手段として』の一言を付け加えるべきかと!」
「………異議を認める。証人はそのように発言しなさい。」
 法廷内がどよめいた。新八は大きく息を吐き出す。いつの間にか握り締めていた両の手に目をやって、力を緩める。
「はい。防衛手段として殴り倒して逃げたという供述を得て、彼女を逮捕しました。」
「逮捕した時の彼女はどのようでしたか?」
「一瞬固まって、それからもの凄い抵抗をしました。手錠をはめているのに引きちぎるかの勢いでした。」
「それは、本気であれば人一人殴り殺すことも可能なくらいに?」
「異議あり!」
 再び銀時が机を叩く。
「それは憶測を求める質問です。そして、この証人は監察医ではなく一介の刑事です。この質問に根拠ある答えを出すことは難しいと思います!」
「異議を認める。検察側は質問を変えるように。」
 二度も横やりを入れられながらも、歯牙の表情は変わることはなかった。「判りました」とうなづき、小銭形へと向き直る。
「現場検証の結果を教えてください。」
「先ほど言ったとおりに現場は荒らされていました。机の引き出しから書棚から引っ掻き回され、書類が散らばっていました。」
「何かなくなったものはありましたか?」
「はい。被告人の父親名義の借用書のコピーがなくなっていました。」
「コピーということは、原本はあったのですね?」
「はい。鍵つきの書棚の中に。」
「その鍵は、どこにありましたか?」
「応接室に冷蔵庫があって、その中でした。そこにあったから、おそらく被告人は見つけることができなかたのかと」
「異議あり! 憶測だけでの発言は控えていただきたい!」
 三度の横やり。小銭形は眉尻を下げて歯牙を見る。歯牙は黙ったままだ。
「わざとか。」
「え?」
 桂の小さな呟きに新八が聞きとがめている間に松方は異議を認め、新たな質問を促す。
「では、現場の聞き込みの結果を教えてください。」
 問われ、小銭形は下のラーメン屋店主がどたばたとした物音を聞いたと証言したことや、客の一人が非常階段を下りる志村妙を見たということを告げた。
「ありがとうございます。以上で質問を終わります。」
「それでは被告側、反対尋問をどうぞ。」
「はい。」




                             ~続く~
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by wakame81 | 2008-10-03 22:22 | 小説。  

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