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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Ignite

さきに桂花投稿の方をやってしまって申し訳ありませぬ。これだけはやっておきたかったし、やらなきゃいけないと思ったし、いずれ沖田が超えなきゃいけない壁だと思いましたので。

沖→桂→。
R15ですよー。ついにRつけちゃいましたよ桂花で(爆)。や、ギンタマン第六章とかこれくらいのことしてるかもですが。

桂花美人さまへと飛んで、八月お題:花火よりお楽しみください。
サイト公開は終了なさいました。ありがとうございました!







 江戸では一時期、花火に対して厳しい規制を敷いた時期があった。原因はもちろん桂や高杉ら過激派テロリストで、その頃真選組は花火師の商売道具や運動会の祝砲から家族で楽しむための手持ち花火まで花火と名のつくものを片っ端から取り締まる羽目になった。
 今ではその規制は解かれ、さすがに打ち上げ花火などの大きなものは監視が入るが、子供が親と一緒に花火を楽しむことはできる。
 沖田がそのことを思い出したのは、警らの途中でコンビニで花火を買う親子連れを見たからだ。
 沖田とて花火は好きだ。そして規制時期には仕事が増えて酷い目にあった。
 だからこそ、仕返しと、ちょっとの茶目っ気のつもりだった。最近隠れ家にバズーカを打ち込んでないのもあった。
 花火セットを大量に買い込み、ねずみ花火を大量に自作する(よい子はマネをしてはいけません)。それを、深夜に桂の家に火をつけて投げ込む。派手な音があがり、煙がもくもくと舞い上がるのが障子越しに見えた。
 驚いた顔が見たい。ただそれだけだった。
「!!」
 次の瞬間、殺気を感じる。
 油断と驚きに僅かに対処が遅れた。障子を突き破っての初撃を咄嗟に鞘で受けたがそれごと薙ぎ払われる。たたらを踏んだところへ二撃目、ここで完全に火のついた沖田が抜き身の剣で流す。が、あの細い体とは思えない力を捌ききれず、体勢を今度こそ崩す。三撃目は足へきた。掬うように蹴られ、倒れこむ。そこに馬乗りにされ刃が振り下ろされた。
 不充分な体勢だったがまだ掴んでいた刀を振り上げる。それより早く切っ先が沖田の喉を突く、はずだった。
「………………沖田………っ!?」
 切っ先は紙一重で止められる。逆に沖田の刀が桂の左肩を薙いだ。薄鼠の夏羽織と紺の小袖が切り裂かれ、血が闇に舞う。
 桂の顔がかすかにゆがむ。が、切っ先を突きつけた手はぶれず、視線だけがすばやく辺りに巡らされる。
「………誰もいねぇよ。俺だけでさぁ。」
 何かを警戒している、と悟った沖田はそう答えた。まとう空気を張り詰めさせたまま、桂の眼がきょとんと瞬く。
「だが、あの花火は。」
「あ、あれ俺。」
 二、三度の瞬きの後。
「………んの馬鹿者がぁっ!!」
 鋭い叱責とともに、沖田の頬が鳴った。
「紛らわしい真似をしおってっ。夜中に花火だとっ? ふざけるな、いったい今何時だと思っているっ。近所迷惑だとは思わぬのかっ?」
「アンタの声の方が近所迷惑でさぁ。」
「屁理屈をこねるなぁっ!」
 もう一発殴られる。痛ってぇとつぶやく沖田の胸倉を掴んだままの桂の後ろに、むくっと白くて丸い物体が立ち上がった。
『大丈夫ですか、桂さん。』
 「攘夷がJOY」と書かれたハチマキに鎧兜、左手には刀、口からはバズーカの砲口と完全武装の白ペンギンが右手のプラカードを桂に見せる。桂は鋭い視線を沖田から外さずに答える。
「エリザベスか。大事無い。馬鹿が一人、悪戯をやらかしただけだ。………奴ではない。」
『桂さん、血が。止血をしないと。』
「いや、薄皮一枚かすっただけだ。後でいい。」
『ですが。』
「エリザベス。平気だから家の中へ戻れ。この馬鹿に説教を食らわせたら俺もすぐに戻る。」
 低く、震える声。いつも白ペンギンにかけていた声音とは違う。白ペンギンは少しの間ためらった後、『救急箱用意しておきます』と退いた。
「………で。一体何のつもりだ。」
 普段穏やかな琥珀が燃えている。胸倉を掴んだ手が震えている。食いしばった口元も小さく痙攣し、体全体が強張っているように見える。
「………や、何となく驚くかなーって。」
「驚くかなだとっ!?」
 三度殴られた。手にさらに力が入り、半ば締め付けられて沖田は顔をしかめる。
「ふざけるな、貴様ただそれだけのためにあんなことをしたのかっ? あんな、ねずみ花火など非常識なっ。大体貴様は昔からそうだ、面白半分に悪戯を思いついては実行して、周りがどれだけの迷惑を被ったと思っているっ。ねずみ花火だけじゃないぞ、いきなりへび花火放り込んだ時だってどれだけ煙がでて大変なことになったと思っ」「桂かつら。」
 肩から滑る黒髪を引っ張った。がくんと馬乗りの体勢が崩れる。ぱっと地に突こうとした手は左で、肩の傷から走る痛みに体を支えきれず桂は地に崩れ落ちる。
 逆に体を起こして位置を入れ替え、沖田は桂を組み敷いた。右手首を捕らえ、左肩の傷を押すように抑える。
「人んちに花火放り込むの、俺ぁ今回が初めてだぜぃ。土方さんちにもしたことねーや。」
 桂が葉を食いしばる。その唇が、細かく震えている。
「アンタ、誰のこと言ってんでさぁ?」
 答えはなかった。
 舌打ちをして、眼を覆う前髪を払う。そして息を呑んだ。
 琥珀の瞳が揺れている。燃えるように、いや。水面が揺らぐように。
 その眼に口を寄せる。一瞬見開かれた瞳が逃げるように閉ざされ、舌に触れたのは瞼だけだったがそれは塩辛く濡れていた。
 滴を追うように舌を横へ這わせ、耳たぶをかじる。その意図に気づいた桂が身を震わせた。
「やめろっ。」
「何でぃ今更。三発も殴ってくれたんだ、これくらいはいいだろぃ。」
「それは貴様が馬鹿なことをしたからだろうっ。」
「いーじゃねーかぃカワイイ子供のイタズラってことで。」
「可愛い子供はこんなことをせんっ。やめろ、エリザベスに気づかれ」
 言葉途中で口をふさぐ。唇に歯を立て、肩の傷を抉るように爪を立てる。沖田の体を引き剥がそうとする腕がそれで力を弱めたことを確かめてから、口を離して囁いてやる。
「アンタが黙ってりゃぁすぐに終わりまさぁ。」


 最終的に桂は沖田を受け入れた。
 己を引き抜いた沖田の下で、震える体を見下ろす。白い顔は背けられ、さらに隠すように腕で覆われている。
 初めてだった。
 桂が抵抗したのも。僅かだけれど声を漏らしたのも。痛み以上に顔を歪ませたのも。
 泣いたのも。
 いつも見下ろすような態度で、仕方ないと言わんばかりに抗いもせず受け入れて、縋ることも嫌がることもしない桂が。
 それは確かに、見返してやりたかった沖田の望んでいたものだけれど。
 心は一向に満たされないまま、沖田は桂の腕を掴む。
「なぁ。」
 引き剥がして顔を覗く。眼は濡れ、唇は血をにじませていたが、強い眼差しが沖田を見返す。
「アンタ、さっき俺を誰と間違えたんでぃ?」
「貴様に関係ない。」
 その答えに舌を打つ。腕をひねり上げようとして、殺気に身を引いた。
 空を切ってプラカードが振り回される。「死ね芋侍」と滴るような筆遣いで書かれたハチマキの白ペンギンが、眼を血走らせて桂をかばうように立ち塞がった。
 下衣を下ろしたままだった沖田は距離をとりながら身を整えた。刀は桂の向こう、だが仮にも真選組切り込み隊長が白ペンギンに負けるわけにはいかない。
「かまわん、エリザベス。」
 一触即発の二人を止めたのは、かすれた、けれど落ち着いた桂の声だった。
「こんなことは大したことじゃない。タチの悪い犬に噛まれただけだ。」
 手を伸ばして桂が沖田の刀を拾う。それを持ち主に向けて放り投げる。
「気が済んだのなら、帰れ。」
 強い琥珀の眼差し。先ほどの揺らぎは微塵も感じさせない。舌打ちをして沖田は刀を鞘に納める。
 白ペンギンの殺気は収まろうとはしなかったが、背を向けた沖田に向かってこようとはしなかった。

 明日になれば、いつもと変わらぬ桂に戻るだろう。見下したような眼で芋侍と呼び、けれど手を伸ばせば抗わずに受け入れる。
 けれど、その取り澄ました顔を崩すことは、できた。
(今度こそ。)
 次こそは、自分の手で。



                                  ~Fin~

by wakame81 | 2008-08-23 02:07 | 小説:桂花美人投稿  

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