お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

鴉の濡れ羽:後

バトル中につき流血注意。
というか、ぜんぜん「×」になってないーーーすみません!!






 川下り部隊のほうからなんか大砲の音が聞こえる。一瞬焦ったが、次に味方の歓声が響いたのを耳にして銀時は息をついた。
 どうやら桂の思惑どおりにことが進んだらしい。
「てことは、銀さんもそろそろこっち終わりにしちゃっていいよね?」
 自分は充分、与えられた役割を果たしたはずだ。敵の一部隊は銀時の猛攻で突き崩され、足場の悪い山中で翻弄され壊滅した。そろそろ桂の部隊に合流してもいいだろう。てか疲れた。やっぱり一人はしんどい。
「さーてっと、ヅラはどっち……っ?」
 背中の毛が粟立った。それを感じる前に横へと飛び退る。次の瞬間鋭い風とともに鉄の棒が銀時のたっていた地面を叩き割った。
「おいおいおい、なんつー馬鹿力だよ。」
 冷や汗が伝い落ちる。
 深緑の巨大な身体、鬼のようないかつい顔、突き出した二本の角っぽいものに獅子のようなたてがみ。そいつはゆっくりと身体を上げて銀時を見、ニタァと笑った。
「もしもーし、もう夜明けますよ。空だいぶ白んでますよ。もうすぐ日も昇りますよ、今日いい天気ですよ。つーかお化け出んの遅くないですか?」
「クックック、恐怖に錯乱したか。無理もないわ。」
 音を立てて鉄棒が振られる。それに巻き起こされた風が小石を舞い上げ、銀時の顔を打つ。
「こんな辺境の星の猿どもにしてはよくやったが、それもここまで。我が鉄棒、月破の錆にしてくれるわ。」
「げっぱって何。げっぷの一種ですか、つーか武器に名前つけてんの、そいつは斬魄刀ですかコノヤロー。」
「フン。どうやら状況を把握しておらんようだな。いいだろう、宇宙最強の荼吉尼族の力、見せてくれるわっ!」
 言うなり大男は鉄棒を振り回しながら突っ込んできた。
「うぉわっ?」
 慌ててよける。的を外れた鉄棒はそこにあった木を粉々に砕いた。木切れが弾け、幹を折られて木はゆっくりと音を立てて倒れる。素早く後ろを取った銀時は、荼吉尼が振り向く前に下段から斬りかかる。こちらを向きかけた胴体に刃を打ちつけた、がそれには構わず鉄棒が唸る。後方に飛んだが間に合わず、ガードした腕ごと木に叩きつけられた。
「っつぁ~~~、なんつー馬鹿力だよ。」
 内臓は辛うじて護った。が、腕が痺れている。直撃を食らった左は少し動かすだけでも激痛が走った。これは折れたか。
「貴様のような軟弱な剣で、我が肉体を傷つけられるか。」
 荼吉尼はゆったりと楽な姿勢をとっている。銀時が起き上がるのを待つつもりのようだ。
「ここで我と出会ったのが貴様の不運。先に逝って仲間を迎えるがよい。」
「先に逝くつもりもねーし、逝ったところで後から来る仲間もいねーよ。うちの大将強ぇーんだぞ?」
「大した自信だが、残念だったな。我の仲間が貴様らの本隊に向かっている。今頃蹴散らされているころだろうよ。」
「………んだと。」
 一瞬にして血が冷えた気がした。
「我も貴様を相手にしている場合ではないのだ。首がたった一つでは、稼ぎにもならん。貴様と戦うのもつまらなくはないが、早々に仲間と合流させてもらうぞ。」
「あーそうしろや。合流は早いほうがいいよなぁ。」
 視線を地に落とし、立ち上がる。左腕が悲鳴を上げる、が、構ってなどいられない。
「おめーこそ、先に逝って待ってろや。俺がお仲間を送り届けてやるよ。」
 顔を上げて走る。荼吉尼は目を見開いた。鉄棒が大きく振り下ろされる、当たればただではすまない一撃、だがこんな大振りにわざわざ当たりにいくわけあるか。
 鉄棒が地を抉った。それを飛び越え顔面に迫る。武器を振り上げようとした腕を踏みつけ、こめかみに刃を叩きつけた。


 山の地形と桂の急襲ルートを思い出しながら走る。一歩進むごとに痛みが左腕を貫き、思考を邪魔する。次第にめんどくさくなって、もう勘頼みで山を駆けた。
 どうやら糖分の神様は銀時の味方をしてくれたらしい。前方から戦いの喧騒が聞こえてくる。砲声はない、鬼兵隊じゃない。
「ヅラぁぁぁぁぁっ!!」
 なだらかな傾斜を見下ろす崖の上に出た。眼下を見下ろせば、対峙する仲間と天人軍。その先頭に桂と、さっき倒した荼吉尼と同じ種族の兵。
 何がどうなったのか、戦いは二人の一騎打ちに持ち込まれたらしい。
 銀時は降りるところを探した。あれはまずい、自分以上の馬鹿力だ。膂力で自分に劣る桂には相性の悪い相手だ。死ぬとは思わない、けど自分が傍にいないと。苦戦して勝った瞬間、狙い撃ちにされかねない。
「よぉ銀時。」
 呼ぶ声に振り返る。黒い短い髪に洋風の軍服、鬼兵隊総督高杉がそこにいた。部下の砲兵隊と、坂本まで引き連れて。
「ひでぇナリだなぁ、≪白夜叉≫ともあろうもんが。おい、やれ。」
 高杉の合図で彼の部下は崖の上に砲車を並べる。狙いを天人軍に向けて。
「高杉、おめー。」
「金時~~~っ、無事じゃったか~~~っ!」
「うっわ暑苦しい抱きつくな毛玉、てかイデイデイデェェェっ!」
「んん? おんし左腕へごなことになっちゅうぞ?」
「折れてんだよ判ったら離れろバカ本触んじゃねぇっ!」
 蹴りを入れてひっぺがす。部下に指示を出していた高杉は、二人を冷めた目で見やった。
「つーかお前ら怪我人は?」
「心配ないぜよ、三四郎くんが責任もって面倒みてくれてるからのー。」
「三郎だろ、テメェいい加減名前覚えてやれ。」
 高杉は視線を眼下へと戻す。銀時と坂本も、そちらを見た。
「晋坊、なんぼヅラでもちっくとやばくないか?」
「晋坊言うな。そこの間抜けみてーにドジ踏まなきゃなんとかなるだろーよ。どうせ誰もいねぇからって手ぇ抜いたんだろ?」
「抜いてませんー。これでも銀さん必死でしたー。つかおめーら知らないだろーけどアレと同じ奴銀さん倒してきたんだからね?」
「そのつもりがなくても傍に誰もいねぇ時のテメェは腑抜けてんだよ。つか荼吉尼以外の奴にそこまでやられたんなら俺は許さねぇぞ。先生に師事しといてなんてザマだ。」
「晋坊も心配性じゃのー。よかったな金時、ぞうをもんだちらえて。」
「「黙れ馬鹿もじゃ。」」
 黒もじゃ頭を二人して殴りつけて、高杉は桂を見る。
「この一騎打ちは勝つさ。勝たなきゃなんねぇ。問題はその後の天人どもの攻撃だ。奴らは荼吉尼が勝つと思い込んでる。ヅラが勝ったその瞬間、こっちから砲撃を仕掛けて奴らの士気を殺いでやるさ。」
 口の端を持ち上げる、その横顔を見つめた。少し昏い笑み。坂本が合流してからは、もっと普通に笑ってたはずなのに。
 高杉も、桂も。
 空が赤みを帯びる。銀時の羽織も紅く染めたそれは青色と溶け合って、淡い紅色に世界は染まる。空を東へと視線を走らせるにつれ二つの色は薄くなっていき、地平線はほのかな白に、そして金色に縁取られる。
 夜が明ける。
 桂が駆けた。荼吉尼へ一直線に走る。荼吉尼は棍棒を振り上げた。身をかがめてかわすが、風圧で細い身体が揺らぐ。そこへ重い一撃が振り下ろされる。桂はそれもかわした。が、着地が甘い。たたらを踏み、もう一度後ろへ飛び退る。
 味方から心配そうな声があがった。銀時も唇を噛む。荼吉尼の攻撃は一つ一つが重過ぎて、巻き起こる風だけでも充分な脅威だ。ましてや桂の体重では踏ん張りきれない。
 肩を上下させ息を整える桂に、今度は荼吉尼が襲い掛かった。まるで戦車のような突進。地響きを立てながら向かってくる荼吉尼に、けれど桂はよけようとはしなかった。これまでの戦いで疲れきったのか、もう走る力すらないのか。
 唸る棍棒の間合いに入る瞬間、桂は動いた。身をかがめ、一瞬で荼吉尼の側を走りすぎる。このぎりぎりで動くとは思ってなかったのだろう、油断していた荼吉尼は空を薙いだ棍棒を戻して振り返ろうとして、左足から血を噴出してバランスを崩す。足に力を込めて身体を立て直した時にはもう遅かった。
 顔面に飛び上がった桂の刀が、荼吉尼の片目を貫く。短い脇差に力を込めて、刃が柄まで押し込まれた。眼球の裏には脳がある。これで決着がついた。
 桂はなおも刀を振るった。刃を荼吉尼の首筋に押し当て、全体重をかけて押し倒す。彼の胴よりも太い首が押し切られる。それを切っ先に突き刺して、掲げた。
 片目に脇差を突き刺したままの首から、事切れた胴体から、血がほとばしって桂を濡らす。艶やかな髪も白い顔も深緑の戦装束も、赤黒く染まる。
 空も大地もそこにいるものすべてが静まり返った。一瞬送れて、轟音が鳴り響く。高杉だ。
 まさかの宇宙三大戦闘民族の敗北と、畳み掛けるような砲撃に天人軍は浮き足立ち、鬼兵隊の攻撃から逃れるように逃げていく。桂の部隊も後を追おうとしたが、桂に止められて立ち止まった。
 代わりに、歓声が山を満たした。


 細身の優男が屈強な荼吉尼の傭兵を一騎打ちで倒した。≪狂乱の貴公子≫の活躍は尾ひれをつけて日本中を駆け巡るだろう。伝説を、侍の抵抗の証として歴史に、人々の心に刻みこむために。
 いつか、本気になった天人にことごとく滅ぼされるまで。
「それが、≪狂乱の貴公子≫ってもんさ。」
 そう笑って高杉は崖を降りる。
「それしか、道はないんろうな。あいとにとって。」
 坂本はかすかに目を細めた。眩しそうな、泣きそうな顔だった。
 ようやっと顔をのぞかせた太陽が、光を過ぎた戦場に投げかける。血にぬれた黒髪が、それを受けて光沢を放つ。血にまみれべたついたはずの髪を翻して高杉を、坂本を、銀時を見た桂の顔が、かすかにほころぶ。
 それを見て銀時は、顔をゆがませた。

 美しい黒髪が水や髪油によって青みがかった光沢を持つ、それを濡れ烏色という。
 鴉の濡れ羽。
 おろしやの言葉でそれは、「絶望の果て」を意味する。




                       ~Fin~
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by wakame81 | 2008-08-17 16:44 | 小説。  

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