お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Into Your Eyes:前

やっとあがりました、お待たせいたしました。
リク「沖→←桂」。この矢印すれ違いっぷりがポイントかと思われ。でもちゃんと活かせているのかは不明(爆)。





 沖田が隊服ではないこと。桂の隠れ家ではしないこと。
 その約束事がどちらから言い出されたものか、沖田は覚えていない。どちらにしても、現状には変わりがなかった。
「だいぶ食われた。痒い。」
 いくら野外とて、事後に身を整えながらの第一声が蚊に食われたことへの苦情というのはどうなんだ。ぽりぽりと掻き毟られた白い二の腕を見ながら、わざとらしく舌打ちをする。
「何だ。貴様も食われたか。やはり次からは蚊取り線香を用意するとしよう。」
「違いまさぁ。いや、刺されはしたけどなぁ。」
「そうか。掻き毟るのは程々にしておけ。」
「そりゃてめーだろぃ。」
 掻き毟る右手を押さえた。代わりに、自分の右手を患部に当てる。
「あーあ。こんなに掻き毟りやがって。」
 爪を立てる。大して伸びているわけではなかったが、ぐっと押し付けるとかすかに血がにじんだ。抉るように指を回し、傷口を掘り下げる。
 ちら、と桂の顔を見上げるが、細い眉がわずかに寄せられただけで、手を振り払うどころか痛いとも口にしない。
「………おい。」
 舌打ちと一緒に、口を開く。
「なんで、抵抗しないんでぃ。」
 尋ねてから口をつぐむ。聞く気はなかったはずだ。桂の思惑がどうであれ、触れていたぶって泣かせたい、それしか沖田の中になかったはずだ。いや。
 逸らそうとした眼を、あえて向ける。
 暗闇に色を濃くした琥珀が、きょと、と瞬いた。
「受け入れりゃ俺がほだされるってハラかぃ。」
「まさか。」
 小さな唇が、ゆっくりを弧を描く。
「貴様をほだしたところで、何の価値がある。斬り込み隊長の切っ先は、この程度でぶれるものなのか。」
「んなわけねーだろぃ。」
 腕をつかみ、強く爪を立てた。食い込んだそれを押し付けたまま下ろせば、白い肌に血がにじむ。
「山崎は篭絡しといて、俺にはそうしねぇってのかよ?」
「する、意味はないな。」
 涼しい顔で吐かれた言葉に、ぎり、と歯軋りをする。左手を細い肩に当て、突き倒した。抵抗することもなく横たわった体にのしかかり、首筋に歯を立てる。
「おい。」
 躊躇うか、抗うかと期待したが、続けられたのは非常に力の抜ける言葉。
「ここで続けるなら虫除けスプレーをだな、」
「うるせぇや。」
 碌なことを言わない口を塞ぐ。互いに瞼を閉じなかったので、至近距離に眼があう。
 琥珀に映る、自分の姿。けれどこれは、ただ自分がその中に割り込んだだけのこと。
「俺を、見ろよ。」
 口付けたままささやく。
 桂はわずかに眼を細くしただけで、それ以上応えようとしなかった。


 潜入操作先の山崎の働きが芳しくないというか、厳重な警戒で目的のものに手が出せないというので、真選組は強硬手段に出ることになった。
「つーか、いつものことだろぃ。」
『一応自重しろっつわれてんだよ。世間の目もあるしな。とにかく、近藤さんに気づかれないうちにやるぞ。』
 無線の先から土方のGOサインを得て、沖田はバズーカを構える。狙いは最近規模を大きくした商家の屋根。攘夷浪士との繋がっている疑いのあるその商家へ、沖田はためらうことなく引き金を引いた。
「かーつらぁぁぁぁっ!!」
『おい、何でそれだ。』
「そっちのほうが自然でさぁ。」
 平然と答えると、沖田は部下の何人かをつれて屋根から飛び降りる。砲撃されて慌てふためく商家の前に、堂々と立った。
「こ、これは真選組のっ?」
「いったい何の御用でございますか?」
 身なりのいい中年の男と、それよりは若い男が出てくる。二人とも笑顔は引きつっており、額に汗と筋が浮かんでいる。
「こっちに指名手配犯が逃げ込んだんでさぁ。検めさせてもらうぜぃ。」
「は、その。」
「桂ぁぁぁっ! 御用あらためであるっ! 神妙にお縄につきやがれぃっ!」
 二人を押しのけて店の中へ入る。中にいた客も前掛けをつけた店員も、ぎょっとして沖田たちを見たり、地震でもないのに机の下に隠れたり防災頭巾をかぶったり110番をしようとしている。
 慌てふためいて出てくる店員や用心棒らしいいかつい男たちを片っ端から排除して、沖田は階段を上った。どうせ、こっちは囮だ。今頃、騒ぎにまぎれて先に潜入していた山崎が、攘夷浪士どもへの資金流入の証拠をつかんでいるはず。
 だったのだが、不意に無線がノイズを発した。土方からの連絡ではない。これは、山崎に何かあったという合図。
「………ちっ、使えねぇなぁ。」
 舌打ちをして階段の途中でバズーカをぶっ放す。階下へ向かって。
「下に逃げやがったぞ、追えぇぇぇっ!」
 怒鳴りながら、今度は階段を駆け下りた。その途中でバズーカを乱射する真選組の一番隊隊長を好き好んで遮ろうという奴はほとんどいない。現に、降りきったところで立ち塞がろうとしている浪人二人の顔は、青ざめるを通り越して土色になっている。
「へーぇ、邪魔立てしようってのかぃ。」
「お、横暴だぞっ! いくら武装警察とはいえ、これはやりすぎだっ!」
「仕方ねーだろぃ、相手は国家転覆をたくらむ凶悪テロリストなんだからなぁ。」
 とりあえず、沖田を相手取ろうとした勇気(無謀ともいう)は買ってやろうと思った。バズーカを投げ捨て、刀の柄に手をかける。
 抜こうとした瞬間、爆発音とともに建物全体が鈍く揺れた。沖田や部下たちも一瞬それに気をとられたが、相手の動揺はそれ以上だった。その隙をついて、瞬くうちに二人を斬り伏せる。
 今回は、こっちで爆発物を仕掛けてはいない。すると、商家か攘夷浪士か。証拠隠滅のためとも思ったが、今しがた倒した男たちの様子が気になった。目を見開いて、まるで何が起こったのか判らないようだった。
「………まさか。」
 顎に手を当てる。思い当たった答えに、思わず口端が持ち上がる。刀を一度鞘に収め、部下たちに振り返った。
「念のためだ、てめーらここからの出入り口を全部固めろ。ありんこ一匹通すんじゃねぇぜ。」
「隊長っ?」
「俺はザキんとこに行く。」
 それだけ言い置いて、沖田は走り出す。
 証拠となりうるだろう裏帳簿の在り処そのものは、山崎は推測だがつかんでいた。ただ、そこへの見張りが厳重で、今まで手を出さなかっただけだ。そして、それがどこか、沖田も聞いてはいる。真っ直ぐに、地階のその場所へと向かう。
 沖田の予想は突拍子もないもので、たとえばそれを土方が言い出したりしたら、散々嘲笑って罵倒してけちょんけちょんにけなしただろう。爆発のことだってあの浪士どもは聞かされてなかっただけかもしれない。そう考えるのが普通だ。
 けれど、ほとんど勘で沖田は気づいた。
 何のために奴がこの場に現れるのかも判らない。その必要性があるとは思えない。少なくともこの商家と懇意にしている攘夷浪士どもは過激派で、直接繋がりがある可能性は低かったはずだ。
 だが。
 階段を降りきり、狭い地下通路を走る。突き当りの扉の前で、顔を腫らして薄茶の着物に血を滲ませた山崎が座り込んでいた。
 その手前に、倒れる三人の浪人。鼻をつく刺激臭には覚えがあった。奴の得意技、使う煙幕にこのようなものがあった。何度も食らったのだ、間違うはずがない。
「………、」
 何か言いたげに沖田を見上げ、口をかすかに開いた山崎をちらりと見る。その肩を斬った刀は、血のつき方からして倒れている男の一人が握っているもので。それを見やってから、開かれた扉の奥に目を向けた。
 薄暗い部屋。室内を照らすのは、奥に置かれたコンピューターの画面のみ。その前に立つ、背中まである長髪を垂らした男。
 名を呼ぶ前に、彼は振り向いた。
 顔の縁のみを光に白く浮かび上がらせる。その瞳は闇の中に浮かびながら、真っ直ぐな光となって沖田を射抜いた。



                                 ~続く~
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by wakame81 | 2008-08-06 09:38 | 小説。  

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