お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

そのとき、世界が動いた

リク小説「万桂+高杉。紅桜前」

エロメスの話のあたりです。それにしても、万桂じゃなくて万&桂なあたりが(苦笑)






「………ふむ、なかなか辛辣な意見でござるな。」
 電話向こうの相手は、万斉の立てた戦略のとりあえずの結果と、それに対する批評家とやらの意見を伝えた。思ったよりも長くはなったが、それだけの注目を集めたということだ。世間の反応もけちをつけることしか能のない連中の言葉も、予想通り。
 万斉が興味のあるのは、彼女の意思のみ。
「それで、お主はどう感じたでござるか?」
『確かに、批評家の人たちの言うこともわかる妖怪大戦争。猫耳ブームに安易に乗っかっただけだって、ぱっと見だったらそう思うものんたんといっしょ。』
「では、拙者の作戦に乗ったことを後悔していると?」
『まさか。』
 歌姫、寺門通はきっぱりと答えた。
『最初はまず、注目を集めることんとんからりとんからり。それはちゃんと、成功してるものっぺらぼう。あとは、これがただのブームへの便乗か、それとも私にしか出せない味を出していくか、それは私がこれからすることヨーグルトサンデー。』
 聡い娘だ。万斉の戦略を正しく理解し、そして自分のなすべきことをしっかりと理解している。
 歌い手は彼女の天職だが、ただの芸能人にしておくには惜しいと思う。
「お主がそれを判っているのなら、大丈夫でござるな。」
 演出を志すものとして、得難い素材。
 芸術家つんぽとしてではない、もうひとつの顔が表に浮かび上がりそうになる。お通は目の前にはいないが、浮かぶ感情を隠そうと右手が口元を隠す。
「拙者は近いうちに江戸を離れねばならぬ。その間のことは、一人でできるな?」
『一人じゃないヨーロレイヒ。』
 受話器越しの少女の声が笑った。
『お母さん、お父ちゃん、それにファンのみんながついててくれるからいおんハート。』
「………そうでござるか。」
 笑い声を口からもらす。
 それから、二、三事務的な確認を取って、ケータイを切った。立ち上がり、三味線を担ぎ、歩き出す。
 大気はやっと、熱を孕まなくなった。降り注ぐ陽射しは肌を焦がすこともなくなり、涼しい風が髪を揺らす。街を行く者の顔にも生気が戻った。
 大通りへと繋がる道。かきわけるまではいかなくとも、人の通りは多い。すれ違う者達が奏でる、ささやかな音は響きあう和音でないにもかかわらず、集い溶け合って一つのうねりとなる。
 その中で。
 一際大きく響く旋律を聴いた。
 冬の森に漂う風を思わせる、龍笛の音。低く、短調のメロディーを爪弾く弦。雅楽、民謡、或いは演歌のような、古めかしさを感じさせる旋律。
「………これは。」
 万斉には聞き覚えのある音色だった。以前耳にした、徒花の華やかさが鳴りを潜めている。いや、これが本来の音か。
 興味をそそられて足を進める。
 目指す音は、向かいから来る僧行の男から発せられていた。その姿は紛れもなく、彼の者だ。
 予期せぬ遭遇に、万斉の腕が震えた。沸き起こる人斬りの血を押さえ、さりげない風を装って近づく。
 あと数歩、というところで、突然その体が傾いだ。
「むっ?」
 駆け寄って支えたのは、条件反射だ。抱きかかえて思い出す、華奢な肩。細い体は意識を失ったようにぐったりと崩れ、笠の下から艶やかな黒髪がこぼれる。
 何かの罠か。
 仰向けに起こし、顔を覗き込んで万斉は絶句した。
「ぬ”---、ぬ”---………。」
 思いっきり不気味な呼吸音。青白い顔はまるで白昼の幽霊のよう。けれど、何より万斉が驚いたのは、かさかさに乾くほどに開ききった眼。
 いきなり倒れた僧と、それを抱えて立ち尽くす黒衣の男に、周囲の奇異の視線が集まる。
「えーーー、と?」
 どうしたものか、と首を傾げる。こんなに困惑させられたのは、彼の主たる紅い鬼に続いて二人目のことだった。


 音は不気味だが息は規則正しい。呼吸とともに上下するのは胸ではなく腹、ということは、腹式呼吸なのだろう。とりあえず、ただ眠っているだけだろうと判断する。
 見開かれた眼は気になったが、乾燥防止のために濡れたハンカチを眼の上においてやると、気持ちよさそうに彼は息を吐いた。
「………さて。」
 つんぽ名義で泊まっているホテルに運び、ベッドに寝かせてやって万斉は肩をすくめた。
 ≪狂乱の貴公子≫桂小太郎。本人であることは間違いない。魂の音色は以前出会った時と同じだし、懐を検めると爆薬やら煙幕やらがわんさか転がり落ちてきた。今時、こんなものを持ち歩いているのは桂を措いて他にいない。
 だが。
「これが、≪狂乱の貴公子≫か………?」
 ベッドに腰掛け、顔を覗き込む。
 半分眠りながら街を歩き、ホテルに連れ込まれさらに体をまさぐられても起きる様子がない。あの戦争を生き延びた英雄、岡田似蔵を軽々と退けた≪白夜叉≫の背を護った男とは、とても思えない。
「………それにしても。」
 す、と万斉は手を動かした。
 左側でゆるく結わいた黒髪。白いシーツの上にそれはゆるやかに艶を描いている。鴉の濡れ羽とはこのような髪をいうのだろう。その漆黒の絹糸に触れようとした、その時。
 指先から髪が逃げた。黒の僧衣が眼の端で翻る。その影を追い、そして眼を細めた。
「………貴様は。」
 手の届かないベッド端で、先ほどまで深く眠っていたはずの桂が姿勢を低くし、身構えている。その手が懐をさまよい、そして柳眉を寄せた。
「貴様、河上万斉だな。この俺をかどわかして何のつもりだ。」
「いや、かどわかしたわけではなく。」
 万斉は鷹揚に両手を挙げてみせた。
「通りで倒れた主を偶然見つけたのでな。病院に連れて行くわけにもいかぬし、かといって衆目にさらしたままにもできぬ。そこで、拙者が寝泊りしているこのホテルに連れてきただけでござるよ。」
「ではなぜ、爆弾やんまい棒を没収した?」
「そんなものを懐に入れたままでは、寝返りを打ったときに危ないではないか?」
「ふむ。」
 桂の眼がわずかに中央に寄る。
「成る程な。そういうことであったか。」
 やけにあっさりと、桂は万斉の言葉を信じた。
「しかし、この俺が意識を失うとはいったい………?」
「眠っていたようであったが。」
「あ。」
 何か納得したように、桂は手を叩いた。
「そういえば今朝まで、書き込みをしていたんだった。」
「徹夜か?」
「うむ、三日ほどな。」
 何しろ、五千件の書き込みをしなければ死ぬと言われてな。
 おおよそ信じられないことを言われ、万斉は面食らった。何か、からかわれているのかそれとも騙されているのか。攘夷党最大派閥の党首の言葉は、奥深く真意を捉えづらい。
「兎にも角にも、俺はお前の世話になったようだな。礼を言う。」
「いや、共に攘夷を志すものゆえ。当然のことであろう?」
「そうか。」
 何をどう納得したのか、桂は頷く。
「それでは、いつかお前が危機に陥っているときは、力になろう。今日のところはひとまず、もう少し世話になるぞ。」
 言うなり桂は、袈裟を脱ぎ始めた。黒い法衣も身から落とし、手早く簡単にたたむ。そして、「おやすみなさい」とベッドに寝っ転がった。
「桂殿?」
「もうしばらく、床を借りるぞ。」
 そう言って布団を引っ被る。少しして、「ぬ”-、ぬ”-」と先ほどの寝息が聞こえ始めた。
「………やれやれ。」
 肩をすくめ、その寝顔を見つめる。………寝顔、でいいのだろう。目蓋は相変わらず開かれたままだが。
「とんだ党首様でござるな。」
 こうも簡単に、万斉に気を許してみせるのは、共に攘夷を志すものという言葉を信じたからか。
 かつて共に戦った、紅い鬼の決断を、知らないがためか。
「無防備に男に隙を見せるようでは、ぺろりと喰われても文句は言えぬでござるよ。」
 そう呟き、ベッドに両手をつく。
 寝息を立てる唇目掛け、そっと身を屈めた。


『奴等は必ず、桂小太郎ともう一人の男の首を要求する。』
 それは、宇宙海賊春雨との交渉のすべてを任されたときに告げられた言葉だった。
「あの馬鹿、春雨相手に派手にやらかしたらしいからなぁ。海賊共にしてみたら、面目丸つぶれってとこだろ。」
「晋助。」
 ククっと喉を震わせる主を、万斉はまじまじと見つめた。
「もしそうなった場合、どうするつもりでござるか。」
「構やしねーよ、首二つ、高く売りつけてやれ。≪狂乱の貴公子≫と≪白夜叉≫の首だ、どんな値をつけても高すぎるってこたぁねぇだろう。」
「いいのでござるか?」
「何がだ?」
 問いかける内容がまったくわからないとでも言うように、高杉は目を瞬かせる。
「桂も≪白夜叉≫も、かつての戦友でござろう。」
「それが?」
「その首を、差し出すと?」
 にやにやと、高杉は笑みを浮かべた。煙管をくわえ軽く吸い、そして紫煙を吐き出す。
「さぞかし見物だろうなぁ。奴等の首二つが並ぶところは。」
 そう簡単に、取れるもんじゃねぇからなぁ。
 その、もれた呟きに万斉は眉を寄せた。
 桂小太郎が、高杉の中で大きな割合を占めることは知っている。その名を口にするとき、荒々しい彼の音がかすかに和らぐのだ。

 ちょうど、今のように。

「やれやれ。思い通りにならぬ懸想の相手は首を取る、か?」
「首だけなら口付けても文句は言わねぇだろうなぁ。」
 喉を震わせて、笑う。
 その音は荒削りの舞踏のように、揺るぎなくそして柔らかくなろうとはしなかった。


「止めておけ。」
 落とされようとした口付けは、寸でのところで手のひらに邪魔された。いつの間にか結ばれた瞳孔は、至近距離で万斉を捉える。
「匿う礼を、欲しいだけなのだが。」
「これを受けぬことが、俺からの礼だ。」
 腕を伸ばし、万斉の顔を遠ざける。そして今一度、自分も身を起こした。
「お前の危機には力になる、と約束したからな。」
「口付けることが危機、と?」
「そうだ。」
 唇でゆるやかに弧を描き、桂は告げる。
「お前も高杉の仲間なら、奴に斬られたくはないだろう。」
 そのとき奏でられた音色は、今まで聞いたことがないほど美しく。
「成る程、な。理解した。」

 歴史を動かすだろうこの稀有な素材を、欲しいと思った。





                            ~Fin~ 
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by wakame81 | 2008-07-19 05:11 | 小説。  

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