お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~雨の欠片とまなうらの光:6~

沖田編、前編。
珍しい人がゲスト出演。





 眼を閉じれば、
 浮かぶ景色がある。



 ぼんやりと、天井を見上げる。部屋は暗く、そして外は静かで。今が夜中であることを、教えてくる。
 今まで見ていたのが夢か、あの夜の光景が夢か、判らない。
「………えーと?」
 呟いた声は子供のモノではなく。あの暴走が、現実なのだと悟った。
 身体を動かし、右手を持ち上げようとする。身体の節々に鈍い痛みが走り、沖田は顔をしかめた。
 馴染みのある感覚。姉の治癒術を受けた後、いつもこんな、筋肉痛に似た痛みを覚えた。
 顔の前に手をかざす。
 思い出す。この手が、近藤を斬り裂いた。
「………まいったなー………。」
 姉に引き取られてからしばらく、沖田はよくかんしゃくを起こした。苛立ちが頭の中を真っ赤に染め、何でもいいから壊したくなる。その衝動を抑えてくれたのはいつも姉で。
『大丈夫。大丈夫よ総ちゃん。』
 そう言って抱きしめてくれた腕の暖かさを、今でもありありと思い出せる。
 それが、姉の命を縮めていたことに、沖田は今気づいたのだ。


「まだ一人で出歩いていいとは許可が下りてないぞ。」
 ふらふらと歩き出した沖田の後を、伊東直属の監察の篠原が小言を言いながらついてくる。
「うるっせーですぜ。もう傷治ってんだから、いいじゃねぇですかぃ。」
「何日も昏睡状態だったんだぞ。当分は安静にしろと、先生から言われている。」
「あ、道理で腹減ってるワケだ。売店行ってなんか買ってきてくだせぇ。」
「いきなり食べて胃が受け付けるわけないだろうっ。当分は点滴だ。第一今やっているワケがないだろう。何時だと思ってるんだ?」
「何時ですかぃ?」
「夜中の十時過ぎだ。」
 呆れたような物言いに、沖田は廊下のカーテンを少しだけ開けた。外は暗く、水滴が音もなくガラスを塗らしている。
 篠原の言うことは正論だった。今気分的に食べたいと思った激辛カレーパンなどは、身体が受け付けないだろう。けれど、その裏の真意に沖田は気づいた。
 篠原の言う「先生」は、ドクターではない。
「ま、当然だよなぁ。」
「何がだ?」
 独りごちる言葉を聞きとがめた篠原に、へらへらと笑ってみせた。
 あんな力を持つ化け物だというのなら、伊東が監視をつけるのも当たり前だ。力を暴走させ、ただ破壊衝動のままに暴力を振るい、近藤を傷つけた。しかも、≪結社≫に取ってはかつて切り札だったものだ。そりゃ、警戒するだろう。

 それを知っていたから、桂も。

「………ははっ。」
「何がおかしい。」
「いや、ただの思い出し笑いでさぁ。味音痴ヤローがいっつも缶コーヒーにマヨ混ぜるんですが、そいつを近藤さんが間違って飲んだこと思い出しやしてね?」
 適当にでっち上げると、篠原は顔をしかめた。土方のマヨ狂いは組の中でも厄介なモノとして扱われている。
「ま、それはさておき。自販機でなんか買うくらいはいいでしょう? コーヒーとか。」
「………それを思い出した矢先に、よくコーヒーなんか飲む気になれるな。」
「んじゃ、ポカリでもいいでさぁ。奢ってくだせぇ篠原さん。」
 篠原はため息をついて、廊下の隅にある自販機の方へと向いた。沖田には、背を向ける格好になる。
 不用心だなぁ。
 そう口の中で呟いて、右手に霊気を集中させる。篠原が振り向く前に光を纏った一撃を後頭部に食らわせてやる。
「不用心だなぁ。」
 意識を失った身体が床に崩れるのを見て、もう一度呟いた。
 本気を出せば、彼の頭を粉々にすることだってできた。
 自分はそういう、化け物だ。


 傘をパクってくるんだった。
 警察としてはあまりにも危なすぎる感想を抱きながら、夜の街を歩く。
 雨は激しそうじゃなかったし、今の季節なら寒くないだろうというのは全くの誤算だった。濡れた身体に降り注ぐ雨は、少しずつ体温を奪っていく。傘もかっぱもなく、ただ病院の管頭衣のみではそれを防ぐ術もない。
 まぁいっか。
 そう結論づけて、雨の中ぼんやりと灯るネオンを避けるようにして歩いた。
 どうせ、どこにも居場所なんてないんだ。
 真選組が、近藤の側がそうだと思っていた。自分には才能があったし、近藤始め隊のみんなにかわいがられた。姉が設立に協力したこの場所に、いていいのだと思っていた。
 ………それは、錯覚だった。
 ずっと、心の奥底にあった不安と焦りは、きっとここから来ていたのだ。近藤やみんなのくれる笑顔だけじゃ足りなくて。確証がほしくて、なくした記憶を探そうとした。それを桂が握っていると知って、ヤツに食ってかかった。教えてくれないことを、恨んだりもした。
 桂は何も語ろうとしなかった。
 こうなることを、判っていたから?
「………そりゃ、言わねーよなぁ。」
 あの場所は、砂上の楼閣だった。それを自分で崩してしまった。
 もう、あの場所にはいられない。そしてあそこ以外に、自分に行くところなんてない。
 足から力が抜けていく。路地裏の壁にもたれかかる。
 このまま朽ち果ててしまえばいい。そう願い、眼を閉じようとしたとき。
「どうしたのっ?」
 響いた声に、顔を上げた。


 現れた、ぽっちゃりした青年は力尽きた沖田を抱え、コンビニのバックヤードに連れ込んだ。ばさばさと、沖田の上にバスタオルが積み重ねられる。
「ごめんね。着替えとか何もなくて。とにかく身体拭きなよ。それと、何飲みたい? インスタントしかないけど、コーヒーでもミルクティーでもなんでもあるから。」
「………いらねぇ。」
「ダメだ、何か飲んであったまらないと。何でもいいならミルクティーでいいかい?」
 青年は有無を言わさず、ちゃぶ台の上のマグカップにミルクティーの粉を放り込んだ。ポットからお湯を注ぎ、かき混ぜる。
「ちゃんと飲むんだよ。」
 そう言うと青年は、表へと出る。その後ろ姿を見送ってから、頭にかぶせられたタオルを手にした。
「………なんでぃ。」
 小さく呟く。
 朽ちたいと思った矢先に、これだ。余計なお節介をされた。青年だけではない、もう一人いたグラサンの店員も、沖田を見て顔をしかめたモノの部外者を追い出そうとはしなかった。なんなんだここは。
 どうせ、ここも自分の居場所になり得ないんだから、こんなところにいる意味はない。とっとと出て行こう。
 そう、思うのに。
 手は勝手に、バスタオルを顔に押しつける。ふかふかではなく、石鹸のいい匂いなんて全然しない。それでも、手がこいつを離そうとしない。
「………えぇいっ。」
 勢いをつけて、バスタオルを投げ捨てる。その視界の端に、テーブルの上のマグカップが目に入った。
 知らず、喉が鳴る。甘く柔らかいミルクティーの匂いと、温かそうな湯気に、思わず手が伸びる。
 少しだけ手を引っ込めて抵抗したが、結局抗えず、そっと口をつけた。
 甘ったるい味が口の中に広がる。温もりを通り越して熱いものが、喉を通り越して身体の中へと染み渡っていく。そうすると、身体が激しく飢えを訴え始めた。一度だけ口を離して息を吹きかけ、そして口に含む。
 口の中が火傷する、と考えたのは一瞬のことで。あとは構わずカップを空ける。
「………甘ぇ。」
 呟きと共にもらした息が、かすかに熱い。
 飢えがこれだけで満たされるはずもなく、もう少しいいだろうとミルクティーの袋に手を伸ばそうとした時だった。
「止めてくれっ!」
 あの青年の悲鳴が聞こえる。そして感じる、空気の変化。少しだけミルクティーに目を落とし、舌打ちをして沖田は立ち上がった。
 バックヤードから覗いて、眼を瞬かせる。熊みたいにでかい白い犬が二頭、レジの前にいたからだ。つぶらな瞳と丸い眉が、どこかで見たような感覚を沖田に与える。気配から、ベツモノだとは思うが。
 でか犬の間に立つようにして、男が一人。青年と、レジを挟んで向かい合っている。グラサンの店員は品出しの途中だったのだろう、弁当コーナーの奥でハラハラと二人を見守っている。
「こんなところで狛犬なんか出さないでくれっ。店の邪魔になるだろっ?」
「若、此奴らは若の帰りを待ち望んでいるんじゃ。我が侭言わんと、戻ってこい。」
 狛犬の前に立つ、顔の左側に傷痕を持つ男に、青年は声を荒げた。
「そんなことあるはずないっ。狛犬に懐かれてるのは京次郎さんだろうっ? 僕なんかじゃないっ。」
「狛犬は代々二頭と決まっている。狛犬使いも、だから二人と決められとるんじゃ。若がいなけりゃ、わし一人ではこいつらを動かせん。」
「僕がいたって同じだよ、こいつら僕の言うことなんか聞かないんだぞっ。」
「そんなことはない、試してみれば」
「試したってずっとそうだったろうっ?」
 男のの言葉が遮られる。
「あの家で、みんなが僕のこと何て言ってるか、知らないわけじゃないぞ。狛犬使いの才能のない、分家のお前にも劣る負け犬だってねっ。」
 青年の拳が、身体が震える。下を向き、咆えるように、彼は叫んだ。
「あの家に、僕の居場所なんてないんだっ!」

 目眩がした。
 血を吐くようなその言葉に、眼を伏せる。食いしばりそうになる歯をそっと開き、詰まりそうな息を逃がす。
 歯根が震えるのは、寒さのせいだけじゃない。

「そんなわけがないじゃろう。」
 困り果てたように、男は言った。胸の前で組んでいた腕を解く。
「今、東京中が大変なことになっとるんじゃ。若の力が要る、どうしてでも帰ってきてもらわにゃならんのじゃ。」
 狛犬が腰を浮かせた。青年の肩が震え、一歩後ずさる。
「それくらい、若は必要とされとるんじゃ。だから、」
「そんなの、そっちの勝手な言い分だよなぁ。」
 口を挟んでから、沖田は首をかしげた。青年の、男の視線がこっちに向けられる。びしょ濡れの管頭衣にバスタオルを羽織ったままの姿で、バックヤードから一歩踏み出す。
 深く考えるな。
 成り行きってやつだ。
「そっちの都合なんざ知りやせんが、騒ぎは余所でやってくだせぇ。後でおでん奢ってもらう約束なんで。魔死呂威の狛犬使いさんよぉ。」
 口にした名に顔色を変えたのは、青年の方だった。男は沖田をじろりと見つめ、そして視線をずらす。青年へ。店内へ。成り行きを見守っているグラサンの店員へ。
「………仕方ないのぅ。カタギの連中巻き込むんは仁義にもとる。」
 男は両手を上げ、狛犬達の首筋を撫でた。ふるっと身体を震わせ、犬達は身体を縮める。小さな柴犬ほどの大きさまで。
「今日は帰りやす、若。だが、アンタにはおじきの血が流れとる。それを忘れんでくれ。」
 そういうと男は、グラサンの店員に向き直り、「お騒がせしやした」と頭を下げる。そして、もう一度沖田に目をやった。
 その鋭い目が、さらに細められる。品定めをされている気がしたが、かまわず大あくびをしてみせる。
 眼を瞬かせた後男は沖田に一礼し、店を去る。その後ろ姿を見送る三人に、重い沈黙が降りた。




                          ~続く~
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by wakame81 | 2008-06-22 22:56 | 小説:ギンタマン  

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