お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~雨の欠片とまなうらの光:3~

ギンタ編、前編。………梅雨という以上にじめじめしすぎ。

その手の描写がちょこっとあります。これくらいなら、Rつけなくてもいいですよね?(爆)







 眼を閉じれば、
 浮かぶ光景がある。



「ギンさん。」
 俯き、丸めた背中に声がかけられる。
「いちご牛乳持ってきたんですけど、飲みます?」
 おずおずと、少しためらうような声音。最近の彼らしくない、初めて出会ったときのようだと思う。
「お登瀬さんからも、差し入れもらいましたよ。おにぎりです。中身梅干しだそうですけど。」
 あんこじゃなくてすみません、と新八は続ける。その声が、どんどん細くなっていく。
「その………少し何か、食べた方が。」
「ぱっつぁん。」
 返した声に、びくりと新八が震えたのが判った。空気が、戸惑いを伝えてくる。
「そこら辺に、おいといてくれ。」
「あ、はい。」
 少しだけ間を開けて、新八は隣に腰を下ろした。彼の戸惑いは、先日明かされたギンタの正体に由来しているのではないと判る。あれで引くくらいなら、最初から万事屋にいなかっただろう。
 集中治療室は、先ほど閉ざされたまま。
 手術は成功した、とは聞かされた。けれど意識は戻らず、一般病棟に移されることもない。この、閉じられた部屋にアイツは収容されたまま、その声を聞くことができない。

 この手から、滑り落ちる。

「……ん、ギンさんっ!!」
 揺さぶられ、我に返った。そして視界が何故か引っ繰り返ってることに気がつく。
「ちょっと、ちゃんと体起こしてくださいよ。落ちますよっ。」
「あぁ?」
 傾き、備え付けのベンチから落ちそうになっていた体を、どうやら新八が支えてくれていたらしい。右手を床につき、一度体を降ろす。地べたに座り込んだまま、新八を見上げた。
「あぁ、悪ぃなぱっつぁん。」
「悪いって思うなら、もうちょっとしっかりしてくださいよっ。桂さん心配なの判るけど、これじゃギンさんがも、」
 保たない、と続けられただろう言葉を、視線で封じた。新八の顔が青ざめる。
 身のうちに猛る雷を押さえ、顔を背ける。
「………そんなんじゃ、ねーよ。」
「ギンさん?」
「帰れ、新八。」
「ギンさんっ。」
 上がる声を無視して、ベンチの上の差し入れを押しつける。
 最低なことをしている自覚はどこかにある。もう一人の自分が冷ややかに己の醜態を見つめている。それが余計に、ギンタを苛立たせる。
 もっと、いっそ。
 狂ってしまえればよかったのに。


 新八が去った後、今度は土方がやって来た。
 ≪結社≫のこと、その目的のこと、今まで桂に問いただしてきたことを、今度はギンタに向けてきた。無視をするつもりだったが、≪獣≫という単語を聞いた途端、感情が堰を切って溢れた。
 投げ飛ばして拒絶の言葉を吐きかけて。そうしてやっと一人になれる。
 じっとりと、ヒンヤリとした空気がギンタを包む。廊下は暗く、窓に水滴が打ちつけられる音がどこか遠い。先ほど壁時計が告げたのが幾時なのか、数えることもしなかったギンタには判らない。
 不意に、気配を感じて顔を上げた。人のざわめきが聞こえる。扉の向こうから。
 息を飲んで、壁際から離れる。ドアがゆっくりと動き出す。慌てて隠れようとする前に飛び出してきたのは、三人の看護婦。
「空いてる病床は?」
「六階病棟に確か空きがあったかと。」
「あそこ、呼吸器備え付けじゃなかったわよね。運ぶ準備を。夜勤者に連絡して、今から一人入るからって伝えて。」
 年配の看護婦が出す指示に、ギンタは息を大きく吐き出した。
 とりとめた。
 最悪の事態は免れた。アイツはまだ、この手の中にいる。
 ………本当に?
 背筋がぞわりと震えた。次いで感じた気配、ドアの奥からまた誰かが出てこようとしている。
 ダメだ。アイツにあわす顔なんてない。
 扉から顔を背け、ギンタは走り出した。

 これは、あの時のツケなのか。


「ヅラ。」
 しとしとと降り注ぐ雨の中立ちすくむ彼の名を呼んだ。いつもなら不本意なあだ名を訂正する彼が、この時ばかりは何も応えない。ただ、地に視線を落とすのみ。
「ヅラ。」
 もう一度、名を呼ぶ。そしてその視線の先を目で追って、深いため息をこぼした。
 あれだけ流れた血の跡は、雨に洗われて既にない。あれからまだ二日も経っていないのに、激戦の痕跡は何一つ残されていない。
 けれど、桂の眼には見えるのだろう。
 流された血。圧倒的な暴力を振るった≪獣≫。そして、鋭い爪に貫かれた幼なじみの姿が。

 何が起こったのか、ギンタには判らなかった。
 ≪結社≫幹部・四大天使筆頭ミカエルに率いられた軍によって猛攻を受け、熊野三社や周辺の術者、妖魔らからなる防衛部隊は大打撃を受けた。元より霊場熊野は広範囲にわたる土地だったから、味方の戦力は分散せざるを得ず、それは不利に働いた。
 それでも、三社の要を或いは霊滝那智を守ろうと皆が奮戦する中、一人桂だけが別行動を取った。敵の狙いがそんなものでない可能性に、彼一人だけが気づいたのだ。
 はたしてそれは、正しかった。
 最終兵器≪獣≫が投入されたのは、三社から離れたところにある、海を望む断崖に面した花窟神社。イザナミノミコトの墓所があるとされる聖地。
 ミカエルの妨害を受け、後から駆けつけたギンタには、そこで何があったのか判らない。
 ただ、見たのだ。
 意識なく倒れ伏す≪獣≫を。いるはずのない、故郷に置いてきたはずの桂の幼なじみを。そしてその左眼に浮かぶ≪666≫の数字と、彼の手に斬り裂かれた桂を。

「ヅラ。」
 三度名を呼ぶ。が、桂が応えるはずもなく。
 不意に苛立ちを感じて、ギンタは大股で桂に歩み寄った。その腕を取って体ごと振り向かせる。俯く顎を掴んで持ち上げ、力なく薄く開かれた唇に己のそれで触れた。
「………っ?」
 焦点の合わなかった瞳が大きく見開かれる。ギンタは満足して眼を閉じ、より深く口づける。唇を噛み、逃げようとする舌を追い捕らえ強く吸い上げる。濡れそぼった髪に手を絡ませ後頭部を掴み、細い身体を引き寄せる。
「………何をする馬鹿者っ!」
 鳩尾に鋭い衝撃を感じたのはその時だった。痛みに体全体がこわばったその隙に桂はギンタの腕から逃れ、次いで身を屈め拳を顎目掛けて突き上げる。
「っっってー。あにすんだよヅラぁ、ギンさん舌噛むとこだったぞ?」
「噛んでしまえこの馬鹿者、それとヅラじゃない桂だっ。」
 さっきまで生きているのかすら疑わしかった虚ろな眼に、燃えるような怒りが迸っている。眼だけではない、それは桂の身体全体から立ち上っていて。痛む顎を押さえる掌の下で、ギンタはほくそ笑んだ。
「貴様、ここがどこだか判っているのかっ? 神社の境内だぞ、神域だぞっ。こんなところで不埒な真似をする奴があるか、この痴れ者っ!」
「んなこと言ったってーギンさんは神道関係者じゃないしーていうか俺のルーツってそーゆー方面だし? それに神域ったって、今更じゃん。熊野全部神域なんだろ?」
 だったら遅いって。
 そう軽口を叩きながら立ち上がり、桂の側による。
「な、そうだろ? 決戦前夜にあーんなカッコであーんな声上げてあーんなコトしちゃったヅラくん?」
「な………っ。」
 怒りか羞恥か、桂の顔が真っ赤に染まる。けたけたと笑い、その身体を引き寄せた。頬に手を当て、唇でそっと触れる。
「銀っ。」
「あーあ。こんなに冷やしちまって。とっとと戻って、温泉入ってあったまろーぜ。それとも。」
 耳元に口を寄せ。わざと低い声で囁いてやる。
「俺があっためたげよっか?」
「………こらっ!」
 逃れようともがく身体を、さらに強く抱きしめた。………細い。今まで何度も抱いた身体だけど、ここまで儚げに感じたのは初めてだった。
 腕の中にいるのにそれは幻のように消え失せそうで。不安を押しつぶすように、腕に力を込める。
「ちょっ、苦しいぞこの馬鹿力っ!」
「ヅラ、どっちがいい?」
 失うものか。
 これは自分がやっと見つけた、自分の居場所だ。
「お前の望み通りにしてやるよ? 俺はお前のモンだから。」
「とりあえずまず離せっ、潰れるっ!」
 喚く桂に笑いかけ、腕の力を少しだけ緩める。ほぅ、と息をつくその小さな口に、もう一度唇を落とした。


 あの時。
 ただ自分が失いたくないばっかりで、桂がどんな思いだったか、それを考えようとはしなかった。
 何の霊力もない、ただの一般人の幼なじみを護れなかった後悔も。
 ≪獣≫としての力を失い、ミツバに庇護された子供に向けた感情も。
 何も聞いてやろうとせず、ただ桂が後悔のあまり壊れてしまうことだけを恐れて、彼の意識を自分に向けさせた。
 そうやって、彼を生きさせ、東京へ渡り、見失った幼なじみを共に捜す間。あの戦いで受けた傷は、時が経ても癒えることはなく。
 それを見過ごしてきたのは自分だ。だから、国技館の襲撃の時、桂は一人であのちび、現≪獣≫の元へと赴いたのだ。
「………うっわ、俺サイテー。」
 病院の片隅、閉ざされた非常口のドアにもたれかかりながら、ギンタは呟く。
 この期に及んでまだ自分は、桂を失うことだけを恐れている。「銀」と真っ直ぐに自分を呼ぶあの眼差しが、そらされることに怯えている。
「てーか、あわせる顔ねぇし。」
 それが言い訳に過ぎないことを自覚し、大きく息を吐いた。ずるずると床にしゃがみ込み、「サイテーすぎ」と呟く。
「知ってたネ、そんなこと。」
「うぉっ?」
 不意にかけられた声に飛び上がった。その拍子にドアに頭をぶつけ、後頭部を押さえて転げ回る。涙目になりながら視線を上げると、少女の空色の眼光とぶつかった。
「って、神楽?」
「そうヨ。まったく、護衛の契約結んだ主人ほったらかして何やってるアルか。」
 その言葉に、ギンタは顔を伏せた。情けない、と言われても仕方ない。ただ、ギンタにとって桂の重体がどれだけの重みを持つか、神楽は知らないはずないのに、と逆恨みのような感情が湧きあがる。
「まぁ今回は仕方ないから、酢昆布十年分で許してやるアル。」
「おめーの十年分ってどんだけだよ。」
「十年分は十年分ネ。それと、許してやる代わりにお前に仕事アル。」
「仕事だぁ?」
 ギンタは顔をしかめた。
 情けないことは判っているが、今は仕事なんか引き受けてる気分じゃない。何も、何もしたくないのに。
「ギンちゃんいつまでうじうじ腐ってるアルか。そんな風に腐ってて、また手遅れになっても知らないアル。」
「どーゆーこったよ?」
「いじいじしてるから、余計腐るネ。ヅラ護れなかったこと後悔するなら、とっとと動くヨロシ。これ、≪出雲≫の依頼アル。ひょっとしたら、ヅラのためになるかもしれないネ。」
「ヅラの………?」
 顔を上げると、神楽のまっすぐな視線に見つめられた。
 ギンタの何倍も生きてきた妖魔だが、神楽は曲がることを知らない。むしろ若さ故の無謀さにも似ている。それは、種族の格の違いからくるのではなく。神楽という存在の、強さなのだろう。
「東京の気の乱れを整えるためアル。お台場行ってギンちゃんの眷属に会ってくるヨロシ。」
 その強い眼差しに、思わずギンタは頷いた。




                             ~続く~
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by wakame81 | 2008-06-22 02:33 | 小説:ギンタマン  

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