お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~雨の欠片とまなうらの光:1~

26日の夜勤は決定しました(泣)。

気を取り直して、ギンタマン第六章。オムニバス土方前編。





 眼を閉じれば、
 浮かぶ景色がある。



 サイレンが立て続けに鳴り響く。
 何百人、いや千を超える犠牲者を、近郊の病院だけで受け入れられるのは不可能だった。命に関わる怪我でなければその場で救急隊員が応急処置を行う。迅速な手当が必要で、そして手遅れではない犠牲者だけが、搬送されていく。
 そんな中、国技館の地下から現れたその姿に、土方も他の隊士達も息を飲んだ。
 白装束を染める、おびただしい血。汚れべたついた黒く長い髪が、それが桂だと雄弁に語る。
 そしてその桂を抱えた男の、白髪から覗く銀鼠の角。
「………≪白夜叉≫………。」
 駆けつけてきた伊東の言葉が、ぐるぐると回る頭の中に音を立てて落ちた。


 死者1265人。負傷者5303人。うち千人近くがまだ意識不明の重体、百人以上が生死の境にいる。
 黙示録の戦い以上の犠牲だった。その殆どが一般人というのが、さらに酷いもので、マスコミは連日、事態を防げなかった真選組を非難し、妖魔排斥を叫んだ。退魔師の総本山≪出雲≫からの声明はまだ出ていない。賢明だと思った。
 感情論では非難の声を抑えることはできないし、真実など明かせるはずもない。
 この惨劇が、妖魔ではなく人の手によると。
 それはそのまま、≪出雲≫やフリーの退魔師、真選組への不信に繋がる。
 闇の世界に関わるもの全てが、その存在の是非を問われる。
「………いい加減、吐きやがれよ。」
 だからこそ。
 首謀者の目的を、正体を、突き止めねばならないというのに。
 それを知り、五体満足である唯一の男は、うなだれたまま何も語ろうとはしなかった。
「迂闊だったぜ。桂にばかり目がいって、オメーを眼中に入れるのを忘れてた。だが、これからはそうもいかねぇぜ。オメーも、知ってたんだろ?」
 集中治療室の前のソファに腰を下ろしたまま、こちらを見ようともしない白髪頭に土方は舌打ちをする。
 ≪白夜叉≫。
 名前だけは、入隊時に聞いていた。桂小太郎同様、黙示録の戦いを生き延びた英雄。夜叉と渾名されるほど猛々しい武神。
 それが、この目の前の男だと?
 桂を実際に目の前にしたときや、隊設立に深く関わってくれたミツバも英雄の一人だと知ったとき以上の驚きだった。やる気のない死んだ魚のような目。気だるそうな、人を食った態度。英雄の威厳もへったくれもない。それでも、桂と並びうる力を持っていることは、幾つかの事件を通して知っていたつもりだったが。
「いつまで無視するつもりだ。あぁ?」
 胸ぐらを掴んで引き上げた。力ない体が、重い。
「≪結社≫てのは何モンなんだ。何を狙ってやがる。オメーらはそれを知って、それを防ごうとしてたよな? だったら全部吐け。あの、獣の数字とやらのこともっ。」
 途端。
 世界がぐるっと回った。投げ飛ばされたと知ったのは、背中を床に打ちつけられてからだった。
「………うるっせーな………。」
 低い声がその口から漏れる。床から見上げる土方の目に、伏せられた紅い瞳が垣間見えた。全身が粟立つ、が、恐怖を意地でねじ伏せ立ち上がる。
「うるせぇじゃねぇっ。こっちは仕事で来てんだ、知ってること全部吐きやがれっ。」
「うるせーってんだよ。」
 ギンタは地を這うような声で呟き、再びソファに腰を下ろした。
「………今は誰にも構いたくねーんだ。判ったらとっとと帰れ。」
 感情を押し殺したような声。
 土方は再び舌打ちし、踵を返した。
 全てが、忌々しかった。


「やはり、ここにいたか。」
 からっぽのベッドの前に立ち尽くしていた土方に、そう声がかけられた。規則正しい足音が近づき、すぐ後ろで止まる。
「いい加減、職務に戻ってもらいたいものだがな。土方君。」
「………仕事、してんじゃねーか。」
 舌打ちをして振り返る。土方の苛立ちのこもった眼差しに、伊東は冷ややかな眼で応えた。
「≪白夜叉≫への事情聴取と聞いていたが。」
「してきたさ。成果は全くだったがな。」
「だったら、こんなところで油を売っている暇はないだろう?」
「部下が上司見舞って何が悪ぃってんだ。」
 土方の視線は再び、誰もいない室内へと向けられた。サイドテーブルに置かれた大量のバナナの籠。枕脇のエロ本。少しだけ開かれた窓から風が入って、エロ本のページをめくる。少し雲行きが怪しくなってきた空に眉をひそめ、近づいて窓を閉めた。
「局長が重傷で現場に立てない今だからこそ、副長の君がしっかりしなくてはいけないのではないかね?」
「しっかりしてるさ。」
「僕には全くそうは見えないね。必要な指示は皆僕が出しているじゃないか。」
「オメーの方が闇の世界に詳しいからだろ?」
「君が素人出身だからといって、何も知らないままにしておけるほど、世の中は甘くないのだよ。土方副長。」
 名を呼ぶ声音に、嘲りが乗る。振り向いて睨みつけた視界の端に、薄青の管頭衣が飛び込んできた。
「あ、トシ! 伊東先生も!」
 右腕を三角巾で吊った近藤が、二人の顔を見て声を上げた。少し覚束ない足取りで、こちらに寄ってくる。
「何だ、いつ来たんだ? すまんな、待たせちまったようで。」
「いや、別にちょっと寄っただけだし。」
「うんこが中々出きらなくてさぁ! やー三日分はやっぱり量があるなぁ。俺いっつも快便だからさ、こんなにうんこ出なかったのって研修の時ぶりじゃね? あーしかし全部出してさっぱりしたぁ。やっぱうんこ三日も溜めんのは体に悪いなぁ。」
「連呼してんじゃねぇっ! ったく、恥ずかしいだろアンタって人はっ!」
「そうか? 看護婦さんはいっぱい出ましたねーって褒めてくれたぞ?」
 得意そうに笑う近藤に、土方は眉間を押さえる。………良かった、元気そうだ。
「大した回復力だ。」
「いやーそれほどでもっ。頑丈なだけが俺の取り柄ですからなっ。」
 野太い笑い声が廊下に響き渡る。二部屋ほど階段寄りの病室から出てきた、見舞いとおぼしき中年の女性の二人連れがこっちを見て顔をしかめた。それを見て、慌てて土方は「近藤さん、声が大きいっ」とたしなめた。
「あ? そうかすまんな。ところで総悟は?」
 土方は返答に詰まった。思わず視線が近藤からずれる。
 近藤の問いに答えたのは、伊東だった。
「………彼ならまだ、意識が回復しない。先ほど篠原君から報告を受けた。」
「そっかー。アイツも大怪我してたからなぁ。」
 その言葉に、土方は絶句する。
「心配だなぁ。」
「君は、自分の心配をまずするべきだ。いつまでも局長が不在では、隊務に差し支える。」
「そうですな。はっはっはっはっはっ。」
「だから近藤さん、声でけぇって。」
 笑う近藤の一瞬の陰りを、土方は見逃さなかった。
 右肩に受けた傷は、神経を損なっている。傷口が安定次第リハビリが始まる予定だが、それでも以前のように動くようになるかは五分。剣を握れる可能性は、一割にも満たない。このまま現場に戻れないかも知れない。
 その傷を与えたのは、沖田なのだ。


 事件の鍵を握っている桂の監視を解いてまで、山崎を目黒コーポの調査に向かわせた甲斐はあった。
 黙示録の戦い、その最終局面だったという熊野決戦の、≪結社≫側の最終兵器≪獣≫。副長室でその研究書類に目を通していた土方は、ため息をついて胸ポケットに手を伸ばす。煙草をくわえ、火をつける。肺の奥まで苦い煙を吸い込み、大きく吐き出す。
 専門用語は判らなかった。だが、幾つか腑に落ちた事もある。
 ≪ヨハネの黙示録≫に綴られた御使いと悪魔達。その中に名を連ねる、≪大いなる獣≫。それを模した最終兵器。作戦の要であった≪獣≫は、途中で破壊されないように恐ろしいほどの超快復力を備え、邪魔するモノを排除するために高い戦闘能力と聞く者すべてを恐怖に陥れる「咆哮」と呼ばれる力を与えられていた。そして、作戦の鍵となる、「開扉」という能力。
「………異界を開く? なんのことだか。」
 この≪獣≫が、沖田だというのだ。
 未だに信じられない、いや信じたくない。けれど、信じなくてはならない証拠がある。
 サリエルと闘りあった時、沖田は重傷を負っていた。至近距離で確かめたワケではないが、指一本動かすのがやっとの、下手したら命に関わる状態だったはずだ。
 それが、あの数字が現れたとき。
 全ての傷が、塞がったのだ。今、病院で眠っている沖田には、髪一筋の傷もない。
「………何だってんだ、一体。」
 九年前の熊野で、何があったのか。
 ≪獣≫であったはずの沖田が何故ミツバの弟となり、真選組に入隊できたのか。国技館から撤退するとき、サリエルは「真の≪獣≫が復活なさった」と言っていた。なら、沖田は≪獣≫ではないのか。
 なら、あの数字とあの回復力は。
 そして、彼女は。
「知ってたのか………? ミツバ。」
 傍らの剣に、視線を落とした。鞘に収まったそれは、根本から一尺ちょっとのところでぽっきりと折れている。そこから姿を現した彼女は、暴走する沖田を止めた後陽炎のように消えた。
 死んだはずの彼女が、どうやって。
「なんで………。」
 残り少なくなったたばこを灰皿に押しつける。
 息を大きく吐き出したが、このもやもやが消えない。舌打ちをして次の一本を取り出す。さっきから、ずっとこれの繰り返しだ。山になった灰皿の脇には、握りつぶされた空の箱が何個も転がっていた。
 そこへ、ノックの音。
「入れ。」
「失礼します……てうわっ?」
 新しい書類を持って入ってきた山崎が、白い煙に包まれた部屋に大声を上げた。
「何やってんですか副長っ? 一瞬火事かと思っちゃいましたよ。うわ、ケムっ。煙い煙すぎですこの部屋っ。」
「うるせー、とっとと報告しやがれ。」
 咳き込みながら窓を全開にしていく山崎に当てこするように、大きく紫煙を吐き出してやる。雨音が大きくなり、冷たい風が室内に入り込んできた。
「はい。ていうか、大きな収穫は無かったんですけどね。あの夜の、人造天使達の目撃証言はまだ出ていません。本当に忽然と現れ、忽然と姿を消したって感じで。落とした人造天使を解析していたチームの報告によると、ステルスみたいな技術が使われてるみたいですから、その為かと。」
「人造天使の流通経路は掴めたのか?」
「それもまだです。使われてる材料は表社会では出回ってない異端科学の産物が主で、そこからも辿らせたんですが、どうも。異端化学産業の関係者によると、人造天使をはじめとする自動人形の製造技術は黙示録の戦いで≪結社≫の崩壊とともに消失したとか。今出回ってる自動人形は、それ以前に作られたものか、とても自動人形とは言えない紛いものばかりだそうですよ。」
「音楽プロデューサーつんぽからは何か辿れたのか?」
「それも行き詰まってまして。彼があの事件の首謀者だったってマスコミらに感づかれないようにすると、どうしても強引な手に出れないんですよ。」
「そうか………。」
 土方は考え込む。
 つんぽイコール≪結社≫の幹部という事実は、寺門通のスキャンダルにも繋がる。化け物に憑依されたお通は被害者という見解の元、彼女をこれ以上傷つけないように配慮はしてきたが。
「そうも言ってられねぇな。多少強引な手に出てもいい、手がかりは少ねぇんだ。つんぽの裏を片っ端から洗え。」
「………判りました。」
 少し複雑な顔をしたが、山崎は頷いて部屋を出て行った。
 猶予はない。≪結社≫が何を企んでるのかは知らないが、早く突き止めなくてはならない。そうでなければ奴等の次の手を止めることもできないし。
 沖田の処遇も決められない。
「……………ちっ。」
 舌打ちをして、たばこを消す。次の一本には手を伸ばさず、天井を仰いで眼を閉じた。




                               ~続く~
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by wakame81 | 2008-06-20 22:48 | 小説:ギンタマン  

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