お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~風薫る唄と運命の喇叭:7

まだ続きます。事件詰め込みすぎ………(爆)。
一応流血注意、としておこうかな。




「お通ちゃわわわわわぁぁぁっっ?」
 腕の中に抱きしめた歌姫の様子を窺おうとして、新八は視線をそらした。化け物が憑いた時に衣服は全部破れている。今のお通が一糸まとわぬ姿のは当たり前だ。
 理性と男の本能の狭間で、目のやり場を探す。
 うろたえる新八を尻目に、桂は己の緋袴の結び目をゆるめた。腰と袴の隙間から白の表着の裾を取り出し、腰紐を解いて脱ぐ。
「汚れているが、ないよりマシだろう。早く医者か治癒術師に診てもらった方が良い。」
「あ、はい。」
 脱いだ表着をお通の裸身にかけてやりながら、桂は小さい声で指示した。
 お通は意識を失っており、ぐったりと新八に身体を預けてくる。息はしてる、脈もある。けれど、あんな化け物に取り憑かれるというのがどれだけ心身に負荷をかけるか。
「ありがとうございます、桂さ」
 お礼の言葉を、桂は聞いていなかった。身繕いをし立ち上がる。その所作は素早く、まるで新八の顔を見ないようにしているように思えた。
「桂さん?」
「新八ぃぃぃ、ヅラぁぁぁぁぁっ!」
「新八君、だいじょーぶかぁっ? お通ちゃんはっ?」
「あのバケモンはどーした。」
 そこへ、神楽、近藤、土方が駆け寄ってくる。
「あ、お通ちゃんは一応無事、なのかな? わかんないです、できれば病院に。」
「そうか。よく頑張ったな新八君。」
 近藤はニカっと笑い、新八の頭を軽く叩いた。そして無線を取り出し、大声で指示を出す。
「おーい、衛生班っ。巻き込まれた一般人を救出したっ。病院への搬送の手続きを頼むっ。」
「で、バケモンは。」
「あっちです。」
 視線で示され、土方は隅田川を見下ろした。夜目にも、川の水がぶくぶくと泡立ってるのが判る。思わず顔をしかめた。手が胸ポケットに伸びようとしているのに気づき、舌打ちをして下ろす。
「死んだのか?」
「えっと、それは。」
 桂さんに聞かないと。
 新八は振り返り、彼らに背を向けている桂を見つめた。
 生暖かい風が、その長い髪を揺らす。まるで、闇を切り取ったような、夜よりも暗い黒。
「………ヅラぁ。」
 身体中に傷を作り、ボロボロになったギンタが桂の前に立つ。走ってきたのか、息が上がっている。
「………悪ぃ、遅くなった。てかヤツらが」
「知っている。」
 低い声で桂は答えた。
 化け物はともかくお通は何とかなったのに、未だ桂は緊張の糸を弛めようとしない。それは、ギンタも同様だが。桂のは特に。
 息苦しさを感じて新八は息を飲む。その空気に、ガガーッとノイズ音が割り込んだ。
『局長、局長っ。』
 上ずった声がノイズと共に響く。今度は無線を持つ右手を顔まで持ち上げた。
「どうした?」
『こちら、一番隊ですっ。手配中の集団誘拐殺人犯と交戦中、増援願いますっ。』
「何ぃっ?」
「おい、総悟はどうしたっ?」
『沖田は重傷、他の隊士もですっ。ヤツは沖田を集中して狙ってますっ。このままじゃぁっ。』
「判った、今行くっ! どこだっ。」
『国技館地下一階ですっ。』
 通信はそこで切れた。唇を噛みしめ、近藤は無線を握りしめる。
「行くぞ、トシ。」
「あぁ。」
 土方は今一度、隅田川に視線を向けた。化け物が気になる、が、凶悪犯も捨て置けない。
「伊東先生にこっちを頼もう。先生は頭が良いから、俺達だと気づかないことも気づいて処理してくれるさ。」
「………だな。」
「救急車はすぐ来るはずだ。心配するなよ、新八君。」
 そう言って走り去る後ろ姿から、視線を桂とギンタへと戻した。ギンタはバツの悪そうな顔で、桂から顔をそらす。
「………いや、そのな? 沖田くんも一人じゃなかったし、サリエルだけじゃなくてミカエルもいたし?」
「いたな。」
 淡々と、桂は答える。
「サリエルにとっ捕まって状況がどうなったか判んなかったし、沖田くんやけにノリノリだったし、とりあえず状況掴んでくるまでここは任せたー、後からきっと追いついて来いよーっていうジャンプ的なノリで、」
「………もういい。」
 しどろもどろの言い訳を、桂は遮った。少しだけ、俯く。
「もう、終わりだ。」
「へ?」
 桂は視線を上げた。見つめる先はギンタではない。道路向こうの、国技館。
「ヅラ、何言って」
 ぐらっと。
 大地が大きく揺れた。
 横に揺さぶられるのではない。根底から、大地の奥底から踏みしめるモノが崩れるような。
「うわぁぁっ?」
 悲鳴を上げて新八はお通を抱きしめた。最初からしゃがみ込んでいた自分ですら、体勢を保つのが厳しい。立っているギンタや桂や神楽は、走っている近藤達は、ていうか救急車は無事かと心配になる。
 幸い、地震はすぐに収まった。川向かいの道路も、車は止まっているが事故とかそういう様子はない。思ったよりは小さかったのかも知れない。
 安堵のため息をつこうとした。それはすぐに、吐き気に変わった。
 なんだ、これは。
 空気が違う。さっきまでの、春と夏の境の瑞々しい夜の大気じゃない。国技館の地獄絵図のような、死臭と血臭と生臭い空気。ここは外で、屍体はなくて、化け物は水の底なのに。
「………大気が、変わってるアル。まさか、霊脈が崩された?」
「マジでか。ってヅラっ?」
 神楽の声も震えている。ギンタも身体中に脂汗を垂らしている。けれど、桂の異変はそれどころではなかった。
 屈められた身体が小刻みに震えている。右腕で身体を掻き抱き、左手は顔面を押さえている。その足下に何かが滴りおちた。夜だからそれは黒く見える、が、血だとはっきり判った。
「ヅラっ。おめーどうし」
 細い顎を掴んで持ち上げ、左手を引きはがしたギンタが息を飲んだ。その手を振り払い顔を背ける桂だったが、今度は神楽に顔を押さえられる。髪の合間から、新八にもそれは見えた。
 桂の、左眼が。
 闇にも鋭い琥珀の瞳が。深い緑色に変貌している。肌も白く、鼻梁も整い、強く結ばれた口も細い眉も何もかもが「桂」として調和の取れた顔立ちの中で、その左眼だけが異質なモノとして存在している。
「………おめー、それ。」
 あのちびの。
 かすれるような呟きが漏れる。
 桂は答えなかった。左眼を隠すのを止め、二つの瞳で前を向き、歩き出す。
 国技館の方へと。
「ヅラっ。」
 伸ばされたギンタの手を、桂は振り払った。
「………どこ行くんだおめーっ。」
「あそこに、いるんだ。」
 静かに桂は答えた。視線は国技館から離さない。
「もう、目覚める。」
「なら、その前に」
「邪魔をするな。」
 きっぱりと桂は言い切った。ギンタは絶句する。再び伸ばされかけた手が止まる。
「ヅラ。」
 変わって桂の腕を掴んだのは神楽だった。強い声音、強い眼差し。何千年も生きてきた、妖魔の長の制止。けれど、それも桂を押し止めることはなかった。
「リーダー。これは俺が望んだことなのだ。」
 少しだけ、視線が落ちる。一瞬だけ何かが揺らぐ。が、再び眼差しが国技館を捉えたときにはもう桂は神楽を見ていなかった。
 細い腕が、小さな手から離れる。歩き出した桂をもう一度、ギンタの大きな手が捕らえた。
「待てよ。」
「離せ。奴が待っている。」
「待ってるって、おめーっ。」
 言葉を捻り出そうと、ギンタは口を開く。
「一人で行くつもりかよっ? アイツが完全に覚醒したら、どうなっかお前も判ってんだろっ?」
「貴様には関係ない。離せ。」
「カンケーねぇだと、ふざけんなっ。俺はお前の」「俺のものだというのならっ、」
 ギンタの言葉を遮り、叫んだ。

「従えっ!」

 ギンタの手から、力が抜けた。その手を桂は掴み、振り払う。
 ギンタにも神楽にも新八にも視線を向けることなく、桂は歩き出した。
「桂さん………。」
 新八の小さな声が追う。けれど、それを受け取ることもなく、桂の姿は道路を渡り、視界から遠ざかる。
 ギンタも新八も、言葉を失った。吐き出したい感情が、ぐるぐると体内で回るばかりで気持ち悪い。
「………はっ。」
 その重苦しい沈黙を、神楽が破った。息を吐き捨て、呆然としているギンタの腰を蹴飛ばす。
「ってーっ! 何すんだこのアマぁっ!」
「何すんだじゃないアル、とっとと追えヨ。」
 ぶすっとした顔でギンタを睨んだ。ギンタはぽかんと口を開き、やがて視線に圧倒されるように顔を背ける。
「関係ない言われたくらいで何アルか。ヅラ一人じゃ叶わないって、お前が一番知ってんだローガ。だったら行って、一緒に殴ってこいヨ。」
「神楽………。」
 見上げてくる空色の眼差しに、ギンタは視線を合わせた。
「とっとと行けヨ。」
「いや、それは困るでござる。」
 穏やかで涼しい声が、響いた。
 封鎖され、車の通らない道路の真ん中。三味線を構えた男が立っている。
「ミカエル………てめぇ。」
「桂にも言われたでござろう? 邪魔はするなと。」
「もっとも、動けやしないっすけどね。」
 その声は空から降ってきた。人造天使と共に空に浮くレミエルが、銃口を新八らに向けている。
 そしてやっと気づいた。
 新八達の周囲を、数多の弦が檻のように張り巡らされていることに。


 かすかに耳に届く呻き声は、仲間のものなのか、自分のものなのか。沖田には既に、判別がつかなくなっていた。
 髪を掴まれ、宙に持ち上げられる。だらりと落ちた手には、バズーカも他の武器もない。左肩から先は既に感覚がない。内蔵がムカムカする。ちょっと息を吐こうとするだけで身体が痙攣を起こして胃液を戻そうとする。それを堪えようと力を込めれば、ヒビの入った肋骨が軋む。顔の下半分を汚した血は、もう止まっただろうか。
「………さて、こんなものかねぇ。」
 口端を歪ませ、サリエルは呟いた。こめかみから流れ、右の≪邪視≫を汚す血を拭う。
「やっぱりあのひとの側で斬り裂いてやった方がいいだろうねぇ。あのひとに返さなくちゃいけないからねぇ。」
 ふざけんな。
 そう吐き捨ててやりたかったが、口から漏れるのはか細い呼吸音のみ。
「じゃぁ、行くかぃ?」
「ふざけんな。」
 低い、野太刀のような声がサリエルを制止した。
「そいつを下ろせ。でもって武器を捨てろ。昨年末の集団誘拐殺人事件、並びに傷害、公務執行妨害の現行犯で逮捕する。」
「総悟ーーーっ。無事か、生きてるかぁぁっ?」
 ゆっくりと、痛みを堪えながら視線を巡らした。
 通路の先に、異端科学の産物≪虎鉄Z=2≫を構えた近藤と、妖刀≪村麻紗≫を抜いて刃をサリエルに突き付ける土方。そしてその後ろに、たくさんの隊士達。
 サリエルに斬られ倒れ伏した一番隊の隊士を、衛生班が傷を見て運ぼうとしている。
 そうだ。彼らは、沖田と共に戦って、斬られた。
 サリエルは捕らえないといけなかった。凶悪犯だ。奴が強いのを承知で、でも背を向けるわけにはいかなかった。それが、職務だ。
 それでも、もっと頭の良いやり方があったかもしれない。沖田には思いつかないが、例えば伊東ならこんなに被害を出さないですむ作戦を思いつけたはずだ。ひょっとしたら、倒れた隊士達の中にもそれを思った者がいたかもしれない。
 それでも。
 狙われてることを承知で、サリエルに向かっていった沖田に付き合ってくれた。沖田の援護のために、サリエルの凶刃に倒れた。そして今、近藤が、土方が、刃を向けている。
 自分のためだけじゃない。職務だ。それは判ってる。
 でも。
「俺と近藤さんとで突っ込む。砲撃隊は援護。奴を追い込め、足を止めろ。いいか、絶対に総悟に当てんなよっ!」
 見捨ててくれて、構わないのに。
「………おやぁ?」
 黙ってそれを見ていたサリエルが、長い舌で唇を舐めた。
「あんた達も、あのひとの贄になりたいのかい?」
 止めろ。
 ふざけんな。
「戯れ言を、抜かしてんじゃねぇっ。」
「総悟、今助けるからなぁっ。」
 近藤が抜刀する。土方が走り出す。それを受けて、サリエルも動く。勢いある近藤の太刀筋も、相手の手を読む土方の勘も、全部サリエルは先読みしている。
 止めろ。
 ふざけんな。
 その人達に、指一本でも触れるな。

 俺の、居場所なんだ。

 どくん、と。
 同調したのは、誰の鼓動なのか。
 目覚めようとする何かが、いる。この地下の奥に。この身体の奥に。
 それは心地よく。懐かしく。しっくりとこの身に馴染む。
(だめ。)
 一瞬だけ聞こえた制止は、誰のものだったか。けれどそれを考える暇はなかった。怒りと、それ以上の破壊衝動が、沖田を飲み込む。
「なっ?」
 感覚を失ったはずの左腕が薙いだ。武器も何も持たないはずの手が、サリエルの肩を斬り裂いた。己を捕らえる手を振り解き、着地する。
「ウグァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
 咆哮。
 その場にいた全員が、目を見張った。サリエルに斬られた制服の裂け目から覗く、沖田の左胸。
 そこに浮かび上がった、≪666≫の数字に。



                             ~続く~
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by wakame81 | 2008-05-13 00:26 | 小説:ギンタマン  

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