お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Signal is all Red:2

山崎と沖田のやりとりだけじゃつまらないので話を膨らませたら、膨らみすぎました。
ちなみに、一週間遅れで雛祭りの話です。………若布の婚期がっ(爆)






「な、何のつもりなんだっ?」
 厩の影に連れ込まれ、山崎は焦る。
 美女は山崎に構うそぶりを見せず、辺りをきょろきょろと見回した。その眼がどこか鋭いことに山崎が気づくと、美女もやっと山崎を見据える。
「こちらこそ、驚いたぞ。まさか、お前がこんな事をしているとはな。」
 言われて山崎は、今の自分の姿を思い出す。思わずうろたえると、美女はくすくすと眼を細めて笑った。
「や、笑われる筋合いはないからなっ。アンタこそ、何でこんなところにっ?」
「いや、似合っているぞ。」
「ふざけるなよ、かつっ。」
 ら、と続けようとした口は、伸びてきた手に塞がれた。白く、細い指。けれど掌には、やっぱり剣だこがあり、外見に反してさほど柔らかくはない。
「やはり、気づいていたか。」
 笑う声は止んだが、その口端は小さく持ち上げられたまま。その、弧を描く口元を彩る紅に、山崎は思わず目を奪われる。
「だが、他言無用だ。」
 その言葉とともに、ヅラ子、いや桂の掌が山崎の口を解放する。離れていく手を、山崎は掴んだ。
「何のつもりで、ここに来たんだ。」
 声を潜めて、問い詰める。
 他言無用なんて、よく言えたものだ。山崎は桂を捕らえる立場にある。それが、どんな場面でも。
 たとえ、ここに桂が姿を現した理由が平和的な、あるいはプライベートなことでも、山崎は応援を呼び桂を捕らえなくてはならない。
「答えろよ。」
 理由なんて、いらない。けれど山崎は、それを問うた。
 その矛盾に気づいたのだろう、桂も、少しだけ眼を見開いた。そしてゆっくりと眼を細め、口を開く。
「敢えて言うなら、後学のためだな。」
「後学って、江戸城になにかするつもりなのかっ?」
「俺は何もせぬよ。」
 涼しい顔で、桂は答える。
「それに、後学というのはそういう意味ではない。知的好奇心を満たす、というのが一番正しいな。」
 山崎は息を飲んで、目の前の麗人をまじまじと見つめた。
 桂の言うことは、当てにならない。相手はテロリスト、そして自分は対テロリストの為に存在する組織の一員だ。そんな自分に、行動目的なんてばらすわけがない。
「信じられぬ、というならそれでいい。人を呼ぶのもお前の勝手だ。だが、もし今ここでそれをするなら。」
 桂の顔が近寄る。
 慌てて手を離して逃げようとするが、逆に手首を捕まれた。自分よりも細い腕なのに、山崎はそれを振りほどけない。
 桂の手は山崎の腕を掴んだ。山崎より少しだけ背の高い身体が、しなだれるように山崎の動きを封じる。
 きれいな白い顔が、頬を擦りあわせられるほどに近づく。
 耳元に、その紅い口が寄せられる。

「あのことを、ばらすぞ?」

「なっ?」
 驚いて山崎は身を離した。細い腕を掴み、引き離す。桂は抵抗もせず、数歩退がった。
 真っ赤になった山崎の顔を見て、桂の唇が薄く笑みの形を取る。
「その様子では、取引成立だな。」
 そう笑う桂に、山崎は抗う気力もなかった。


 城内へは入らずに、招待客は奥の庭園へと通された。
 濃紅、雪白、薄紅。三色の梅がまだ色彩の少ない庭園を彩っている。まだ枯草色の芝生に緋の敷き布が敷かれ、その上に鎮座するは七段の雛人形。一つ一つの人形が成猫よりも大きいその雛壇に、客達は感嘆の声を上げる。
「うわーーー、大きいアル。姐御、これ一個でご飯ですよ何個買えるアルか?」
「一個じゃダメね、せめてお内裏様とおひな様はセットにして売らないと。」
「さすがお妙さん、モノの見方が鋭いですなっ。」
「売っぱらうこと前提で見るなっ。近藤さんも褒めてんじゃねーよっ。」
 土方のツッコミが飛ぶが、「えー」と悲しそうに答えたのは近藤だけで、神楽もお妙も「すまいる」の女の子達も無視して雛壇について感想を言い合っている。
 そこへ。
「神楽サンっ。」
 響いた声に、神楽は振り向いた。
「そよちゃんっ?」
「よかった、来てくれたんですねっ?」
 薄桃色の大振袖の少女が、髪と簪の花飾りをゆらして駆けてくる。それまで雛壇に夢中だった神楽は、土方が制止するのも聞かずに少女に駆け寄った。思いっきり抱きしめるかと思いきや、ふわり、と親友の背中に手を回す。
「久しぶりネ、元気してたアルか?」
「えぇ、神楽サンも元気そうで………。」
 久しぶりの再会に、そよ姫は涙ぐんだ。身体を起こした神楽に、お妙がハンカチを差し出す。それで涙を拭ってやると、そよ姫もにっこりと笑った。
「今日は、本当によく来てくれました。お寿司も蛤のお吸い物も雛あられもたくさん用意しましたから、どうぞ楽しんでくださいね。」
「お寿司じゃーーーーーーーーーーーーっ!!」
 そよ姫が後ろを振り向くと、女中達がいそいそとお膳を運んでくる。それを見た神楽が、親友の手を取ったままその列へと突進していった。


 そんな感じで始まった雛祭りパーティーは、各々勝手に楽しむ形式になってしまった。
「お姫さんのためだっつーなら、チャイナとせいぜい志村妙だけ呼びゃすむ話だったんじゃねぇか?」
 そう土方は呟く。庭園では禁煙のため、声音に若干苛立ちが含まれている。
 そのイライラ声のためではないが、山崎は土方の意見に積極的に反応はしなかった。そんなことより、もっと気になる事がある。
「………何してるんですか?」
 一応、仕事のため、相手がアレではあるが敬語で話しかけた。
「見て判るだろう。並びが正しくないから直しているのだ。」
 問われた桂は、大きな雛壇によじ登ろっていた。
「内裏雛は、内裏での宮中の並び方を模している。古来より、左側が上位の位置であり、帝と皇后を模した雛人形も、そのように、お内裏様を向かって右に並べるのが正式なのだ。天人襲来以後、その文化の影響を受けて雛人形の並びを逆にしてしまった。しかしこの俺の目の前で、そんな理不尽なことを許すわけにはいかん。」
「ちょ、待ってくださいっ!!」
 慌てて山崎は桂を羽交い締めにして止める。
 雛壇に登った桂と山崎は、当然のことながら周囲の注目を集めていた。この上、変なことを口走らされたら、自分で自分の正体ばらしてしまうではないか。
「離せ山崎、俺はこれを見過ごすわけにはいかん。」
「見過ごしてくださいっ。てかどっちの並びでも構わないって日本人形協会は言ってますからっ。」
 必死に叫ぶ。
 桂は山崎を見やって、ちっと舌打ちをした。
「この俺がいるというのに、古き良き日本の伝統文化を守れんとは………っ。」
「守るのは他の時にしてくださいっ。」
 不満そうな桂を、雛壇から引きずり下ろそうとする。が、まだ桂は、「三人官女の位置が悪い」とか「五人囃子の向きがちょっと」とか言いながら、人形をいじくっている。
 やっとのことで降りてきた桂に、神楽が寄ってきた。んまい棒チョコバーをねだられ、手を引かれ、そよ姫やお妙(ゴリラ退治中)の側へと向かう。
(うわー………。)
 美女二人と美少女二人。
 目の保養だし、それ以前に見ていて微笑ましい(背後に倒れたゴリラは除く)。
 が、その素性を考えると、これほど背筋が寒くなる組み合わせもない。
 ため息をつきながら、山崎は視線で桂を追う。桂がもし何かをするつもりなら、真っ先に自分が気づかなきゃいけない。桂の正体を知っているのは、ここでは自分一人なのだから。
「なんつーか、すげぇ組み合わせだなぁ。」
「うわぁぁぁぁっ!?」
 いきなり後ろを取られて、山崎は飛び上がった。尻餅をついて振り返れば、そこにいたのは視線を桂たちに向けた沖田。
「やー、こんな組み合わせ、滅多に見られるもんじゃねーぜぃ。」
「そ、そうですか?」
 立ち上がって芝を払う。沖田の言う意味が読めない。冷や汗が背中を伝う。
「徳川のお姫様と胃袋ブラックホール娘が一緒にいるたぁなぁ。」
「二十三訓で見たでしょう………。」
 ほっとしかけた山崎だったが。
「あの女かい?」
「はい?」
「この前思い出してた女。」
 心臓が、止まるかと思った。
 取り繕うこともごまかすこともできず、ただ呆然と沖田を見上げる。
「あの女、だろ?」
 沖田が視線を、桂たちから山崎へと下ろす。口の端を持ち上げて、声音は少し楽しげで。
 けれど、眼が笑ってない。
「確かに、梅の花が似合いそうな美人だよなぁ。それも紅梅が。やー江戸にあんな美人がいるなんて、思わなかったぜぃ。」
 そよ姫もどこで知り合ったんだか。
 視線は再び、桂たちへと戻された。
 見れば桂は、そよ姫や神楽に、うんちくを垂れている。
「雛あられは、江戸ではこのように餅米を蒸して炒ったものに砂糖の衣がけをしたものが多いが、上方の方では醤油や塩などのあられせんべいを、丸くしたものなのだ。」
「甘くないのですか?」
「それじゃ、銀ちゃん食べられないアル。」
「あぁ、甘くない。だから、初めて江戸の雛あられを見たときは、感激のあまり涙していたな。」
「まぁ、銀さんらしい。」
 かわいいお花がバックに飛びそうな、微笑ましい光景。
 けれど、それを見つめる沖田の視線に、山崎はぞっとする。
「沖田隊長………。」
「山崎は、どこであんな美人と知り合ったんでぃ?」
 もう一度視線が向けられて、思わず山崎は顔をそらした。
「えーっと、結構前だったからどこだったかなー? 潜入捜査の時だったのは覚えてるんですけど、ほら潜入捜査俺多いですからっ。」
「へーぇ。あんな美人との出会いを忘れるとは、結構山崎も野暮なんだなぁ。そんなんじゃ、ふりむいてもらえねーぜぃ?」
「お、俺は別にっ、ふりむいてもらいたいとかじゃっ!」
 そんなの御免だ、冗談じゃない。山崎は本心からそう叫ぶ。が、沖田は納得していないようだった。顔を近づけ、山崎をじっと覗う。
「その割には、もう泣きそうな顔であの女見つめてたけどなぁ?」
 そりゃそうだ。
 男の姿でならともかく、女の姿の桂は、否応なくあのことを思い出してしまう。
 思い出したくないのに。
 触れた肌の感触も。ささやく声音も。苦しそうに潜められた眉も。それでも細められた瞳も。

『おまえは、やさしいのだな。』
『日本の夜明けのためだ。決まっておろう?』

 その、言葉も。

「山崎ぃ。」
 にやりと笑う沖田の顔が、すぐ至近距離にあった。
「お前が別に、アイツに惚れてんじゃなければ。」
 耳元に口を寄せられ、ささやかれる。先ほど、桂が山崎にしたように。
 見透かされてるんじゃないかという不安。底知れない恐怖。未知のものを本能で避けるような恐れ。
「俺が。」
 けれど、ただ背筋が凍るだけ。
 女装してるのは、それが似合っているのは、桂も沖田も変わらない、のに。
 熱が、違う。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
(………冗談じゃないっ。)
 沖田の言葉よりも何よりもその事実が恐ろしくて、山崎は悲鳴を上げながら沖田から離れた。辺りで雛祭りを楽しんでいた女の子達や隊士達が、何事かと山崎の方を向く。
「あ、いえ、何でもないんでっ。」
「山崎と沖田隊長かぁ。」
「どーせまたいぢめられたんだろ。」
「姫様、何も心配はいりませんよ。」
 隊士達はよくあることと思い、流してくれたようだ。ほっとした山崎は、つい視線で桂を追い。
「………あれ。」
 その姿がどこにも見えないことに、やっと気づいた。




                              ~続く~
[PR]

by wakame81 | 2008-03-09 22:55 | 小説。  

<< Signal is all R... Signal is all R... >>