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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Signal is all Red:1

リク小説「山崎と桂。気づいた沖田がちょっかいを掛けるというか、山崎をいじめる(笑)沖田が、山崎or桂もしくは山崎+桂の、なにに気づいたのか、というのはおまかせ」

+じゃない、×だ(爆)。






 あの声が、こだまする。
『言っただろう。』
『罠だって気づかなかったってのは聞いたよ、でも、』
『日本の夜明けを見るためだと。』

『山崎。すまぬ………ありがとう。』



 近藤が今日も、お妙にふられたらしい。
 えぐえぐ泣きながら、土方に事の顛末を訴えている。
「それでねそれでねトシぃ、せっかくお花屋さんにメッセージカードつけてもらったのに、お妙さんたら照れてるのか、びりびりに破いてゴミ箱にポイするんだよぉぉぉぉぉぉ。」
「いやそれ、照れじゃねーから近藤さん。」
「照れだもん、贈った花束の方は受け取ってくれたもんっ! そんでもってお店のところに飾ってくれたもんこの前の梅の花だってっ!」
「店の備品扱いじゃねーか。」
 隊士は皆慣れたもので、うっとうしい泣き言を全部土方に押しつけたと言わんばかりにそれぞれの仕事をしている。調査の書類を見てもらおうと、土方が解放されるのを待っていた山崎は、ふと近藤の言葉に耳をぴくりと動かした。
 近藤が先日買い求めた紅梅の枝は、それは見事なものだった。枝振りも良かったし、何よりほころびかけた蕾の鮮やかな紅色といったら。
 ただそれは、お妙のような二十歳前の女性に贈るには少し大人っぽすぎたかもしれない。それだったらもう少しだけ歳のいった、たとえば。
(………何思い出してんだ俺ぇぇぇぇぇぇっ!?)
 できることなら二度と思い出したくないはずの出来事が脳裏によみがえり、慌てて顔を伏せる。熱くなる顔を、誰にも見咎められないようにとの切実な願いは、けれど。
「なーに耳まで真っ赤にしてんでぃ。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 残念なことに、最悪な相手に見つかっていた。背後から耳元でささやかれ、山崎は飛び跳ねる。
「お、沖田隊長っ!?」
「何でぃ山崎。」
 広いその部屋にいた全員の注目が集まる中で、沖田はにやりと笑った。
「どこの女のこと思い出してんだ?」
「おおおおおお女じゃないですよ沖田隊長変なこと言わないでくださいっ。」
「ふーん。近藤さんが『梅の花』って言ったあたりで耳動かしてたから、てっきり女だと思ったんだけどなぁ。」
 鋭い。あまりの沖田の鋭さに、山崎は冷や汗を垂らす。
「女じゃなかったら、男かぁ?」
「はぃぃぃいいいいいいっっ!?」
 今度こそ、息が止まるかと思った。声を裏返らす山崎の様子を見て、その場にいた隊士達が、ひそひそと小声でささやきあう。
「おおおおおおおおおおお男なわけ、ななななないじゃないですかぁぁぁっ。」
「その動揺っぷりが怪しいんだよなー。梅で思い出す男かぁ、どこのオカマなんでぃ。」
「オカマなんかじゃないですよっ。」
 慌てて否定してから、山崎はさらに焦った。
 誰を思い出してたなんて、言えるわけがない。
「第一、梅で男連想できるわけないじゃないですかっ!」
「うむ、ザキの言うとおりだっ!」
 何故かそこへ、腕組みをして頷きながら、近藤が間に入る。さっきまで腹心に泣きついてたとは到底思えない。
「梅と言ったらお妙さんっ。なんせ、梅の花言葉は『あでやかさ』だもんなぁっ!」
「そ、そうですよね局長っ。」
 渡りに船とばかりに飛び乗ったのがまずかった。
「ザキィィィィっ! お前、お妙さん思い出してたのっ? お妙さんで真っ赤になってたのっっ? ダメだぞ、いくらお前でもお妙さんは渡さないっ!!」
「別にお妙さん思い出してたワケじゃないですぅぅぅっ!!」
 山崎をがっくんがっくん揺さぶる近藤。矛先が自分からずれたのを良いことに煙草を取り出した土方を始め、隊士たちもそれぞれの仕事に戻る。
 その中で。
 沖田だけが、冷たい眼差しで、山崎を見ていた。


 三月三日。雛祭り、或いは上巳の節句。
 貴族子女の人形遊びと人形(ひとがた)による祓いの儀が江戸初期に一つに融合したこの行事は、幕府の倹約令や天人の襲来によっていろいろと変化はあったものの、今でも江戸中の家では季節の楽しみとして行われている。もちろん、江戸城でも。
 いつもはささやかに行われていた徳川本家のお雛祭りは、今年は将軍茂茂公の、「妹を喜ばせてあげたい」という願いの元、彼女の友人達を呼んでの祝い事になった。
 当然、城下からの出入りがあると言うことで、真選組に警備の命が下ったわけだが。
「「「「「「何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」
「何って、警備用の衣装に決まってんだろう?」
 それを見て絶叫した副長以下の隊士たちに、平然と警察庁長官・松平片栗虎は告げた。
「とっつぁんっ! 冗談じゃねぇぜこんなの聞いてねぇぞっ?」
 代表して、副長・土方が抗議した。そうだそうだ、と他の隊士達も叫ぶ。
「普段の制服でいいじゃねーかよ、何だってこんな格好しなきゃいけねーんだっ!」
 ちなみにその格好とは。
 春らしく鮮やかな、色とりどりの、慎ましやかなくるぶし丈から可愛らしい膝上丈までのさまざまな振り袖。
「何でって、決まってんだろぉ? 会場は大奥だぞぉ? 将ちゃん以外、男子禁制の場所だぞー?」
 大奥。それは、時の将軍以外の男子が立ち入ることを禁じられた、華やかな女の園。
 禁断の楽園に、思わず隊士達は息を飲む。
「今大奥にいんのは、そよ姫とその世話役だけだけどなー、そこにむさ苦しい男共を入れるわけにもいかんだろぉがよぉ。」
「だったら別の場所でやればいいだろっ?」
「んーなわけにゃぁいかねーよ。そよちゃんは純粋培養、箱入り娘の天然記念物だぞ? お外に出したら汚い空気で倒れちまうだろー。」
「一回家出したことあんだけどな………。」
 土方の呟きは、見事にスルーされた。
「それに、この祝いには、うちの栗子も招待されてんだ。そこにお前らみてーなむさっ苦しい野郎どもを近づけるワケにいかんだろぅがよ?」
 娘に近づく不届きな野郎は斬ってみじん切りにしてばらして捨ててさらして宇宙に流してやる。そんな凄味を利かせた片栗虎の眼差しに、隊士たちは冷や汗を流す。
「だ、そーですぜぃ土方さん。ここは一つ、諦めましょうや。」
 土方の側に、沖田が寄って耳打ちする。
「ま、マヨラ13の正体がばれてもいいってんなら別ですけどねぃ。」
 その言葉に土方は言葉を詰まらせた。が、それでもまだ抗うように、近藤の姿を探す。
「まぁそういうことなら仕方ないなっ!」
 見れば近藤は、すでにノリノリで淡いピンクのミニな振り袖に身を包んでいた。


「ゴリ代ですぶへらっ!」
 当日。
 登城してきた招待客にそう自己紹介した近藤は、鋭い右フックに空を飛んだ。
「何汚らしいもん晒してんだあぁぁ!」
「違うんですお妙さん!これは仕事という深い訳が。」
「どこの世界にゴリラの女装しなきゃならない仕事があるっ。」
「いや本当なんです、俺たちは今日、雛祭りの警備を。」
「うるせぇ黙れ近寄るなああぁぁぁっ!」
 部下としては止めなきゃならなかったが、見るに耐えないものを相手してくれてるのでとりあえず見て見ぬふりをしていた土方たちは、お妙の後からやってきた顔触れを見て、うんざりする。
「おいとっつぁん。」
「ん~なんだ?」
「なんで「すまいる」の連中が来るんだよ。」
「んん~招待したからに決まってんだろぉ?」
「呼ぶのはそよ姫の友達だっつったろ!?」
「固いこと言うなよ土方ぁ。将ちゃんも喜ぶし、何より彼女たちは場を盛り上げるプロだぞぉ?」
「けどよ、」
「パパ~~~(はぁと)」
 そこへタタタっと軽やかに駆けてきた阿音が片栗虎に抱きつく。
「今日は御招待ありがとう~(はぁと)」
「私情てんこもりじゃねぇかっ!」
 叫ぶ土方を、阿音は胡乱げに見つめた。
「………あなた、まさか。」
「土方じゃねぇ、マヨ子だ。」
 とっさに偽名を名乗る。
 ちなみに今の土方は、紺地に桜の花びらを散らせた振袖に、ツインテールのウィッグをつけている。
「あら、でも。」
「マヨ子だ。」
「阿音ちゃんー。今日はそういう事にしといてやってくれよ~。」
言い出しっぺの片栗虎が割って入った事で、阿音も納得したようだ。
 一方で。
「きゃ~かわいいっ!」
 萌葱色の振袖に薄紅の帯を絞め、頭にピンクの細いリボンをつけた沖田が、「すまいる」の女の子たちに囲まれていた。
「沖田くん、似合う~。」
「きゃ~もっとお化粧させてみたい~。」
「ダメよ、あまりやりすぎたらこの子は似合わないわよ。」
「や、どーもどーも。」
「沖田隊長、じゃなかったサド美さんダメですよっ。」
 そこへ慌てたように女の子たちの輪に入り、沖田を連れだすのが一人。
「簡単に正体ばらしちゃダメですって! 俺ら一応極秘任務ですよっ?」
「なんでぃ、ザキのケチ。」
「俺のことまでばらさないでくださいよっ!」
 小声で、けれど強い口調でたしなめる山崎だったが、すぐに沖田共々「すまいる」の女の子達に囲まれる。
「ねぇねぇ、あなたも真選組の人でしょ?」
「ウィッグつけちゃって、かわいいっ。」
「お化粧はもっと薄い方がいいんじゃないかしら? 直してあげようか?えーっと、………大西さん?」
「山崎ですっ、じゃない、ザ」「ジミーでぃ。」
「沖田隊長~~~~~~っ。」
 沖田と女の子達に遊ばれていた山崎だったが、ふと入り口付近が騒がしくなったことに気づき、そちらへと目を向ける。
「グラ子でーすアル。」
「パー子でーす。」
「パ、パチ恵です。」
「何やってんだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 土方の物理的ツッコミが、パー子とパチ恵に炸裂する。跳び蹴りを食らった二人は、門から外へと転がり出た。
「何オメーらこんなとこまで来てんだ、女装してまでっ! ここは大奥だぞ、野郎厳禁だぞっ?」
「あーら、どこかで見た顔かと思ったら、多串くんじゃないのー?」
 やばいバレた。
 土方の背中を、冷や汗が落ちる。
「多串いうな、俺はマヨ子だ。」
「やだ、どっからどこ見ても多串くんじゃないー。あ、違った多串ちゃん?」
「多串じゃねーっつってんだろ、てかちゃん付けするな気色悪いっ! とにかく出てけっ!」
 起き上がろうとするパー子を足蹴にする土方に、パチ恵が申し訳なさそうに口を挟む。
「いえ、僕らもこんな格好したかなかったんですけど、今日は神楽ちゃんが。」
「あぁ? チャイナ娘がどうしたってんだ。」
「そよ姫さまから雛祭りパーティーの招待状をもらいまして、でも一人でお城は不安だっていうから僕ら付き添いで。」
 その神楽は、やたら化粧をテカ塗りした顔で、沖田と睨み合っている。
「ぷぷーっ。サドお前変な顔アルなーっ。」
「てめーこそ、白塗りモアイかと思ったぜぃ。なんだこれ石膏か?」
「失礼アルね。女の化粧にケチつけるなんて、乙女心の判らない男ネ。」
「乙女心なんていう可愛いモン持ってたのかよ? ブラックホールな胃袋しかねぇと思ってたぜぃ?」
「身体の奥にサド魔界への入り口持ってる奴に言われたくないアル。」
「………アレのどこが、「一人じゃ不安」だって?」
「う”………。」
 言われてパチ恵は押し黙る。
 結局、男は立ち入り禁止という大奥の規則の前に、パー子とパチ恵は引き下がった。
 そして、二人と入れ替わるように門へと現れたのが。
「ヅラ子だ。」
「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええっっっ!?」
 山崎の絶叫に、辺りにいた全員の視線が集まる。もちろん、ヅラ子と名乗る絶世の美女も。
「どーしたんだ、ザキ江?」
 尋ねてくる人間サンドバックもとい近藤に、答える余裕もなかった。
 どうして。
 なんで、こんなところに。
 ていうか、なんでその格好っ?
 頭の中でその疑問がぐるぐると回る。視線は、長い黒髪を左肩でゆるく結び、その身を濃紺の振り袖で包んだ美女から離れようとしない。
 きょとんとした眼で山崎を見つめていた≪彼女≫は、やおらにっこりと微笑む。その笑みに、思わず見とれかけ。
 そして、大股で近寄ってきた美女に、思わず逃げそうになった。
「松子ではないか、久しぶりだな。」
「えええええぇぇぇっ?」
 話しかけられたことに驚いた隙に、腕を取られた。 しまった、これでは逃げられない。
「こんなところで会うとは、奇遇だな。松子も雛祭りぱーてーに招待されたのか?」
「いや、その、ていうかっ。」
「こんなところで立ち話も何だな、どこか落ち着いたところで話そう。積もる話がたくさんあるのだ。」
 そう言って、ヅラ子は山崎の腕を引っ張る。
「ちょっ、待ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~。」
 フェイドアウトする山崎の悲鳴を連れて、ヅラ子は道をどんどん突き進んでいった。
 何なんだ、と呆れたように眺める土方、ほのぼのと見送る近藤と対照的に。
「なーに余所向いてるアルか、試合放棄アルか、不戦敗カっ。」
「うるせぇチャイナ。」
 沖田は眼を細めて、消えた二人の後ろ姿を見つめた。



                           ~続く~

by wakame81 | 2008-03-09 22:52 | 小説。  

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