お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

へだてるもの

リク小説。「銀桂が仄かに香る土桂or土→桂で ≪”アキバNEO”または”獄門島”に乗り込んでくる土方≫」
アキバNEOに乗り込まれると、もっとすばらしい某所様の話とかぶるので、全力で獄門島に逃げました。






 獄門島。
 古今東西、手のつけられない悪党共が最後に流れ着く最強最悪の監獄。
 島一つ丸ごと監獄の体を成し、その堅牢な門は一軍をもってしても突破することは不可能と言われる鋼の要塞。一度入ったら最後、二度と陽の光を浴びることは叶わない、この世に現存する冥府。
 その接見室で、土方は長い間待たされていた。
 こんなこの世の果ての孤島に、わざわざ囚人に面会に来ようなんていう物好きは、きっといないのだろう。面会の手続きは関係者の事務処理能力を疑いたくなるほど長く、そして無駄に時間がかかった。いつまでも待たせる係の者を、斬ってやろうかとすら思った。
 そして、辛抱強く待った結果。
「囚人番号はー二○六。中へ。」
「待たせたな。」
 向かいのドアが開き、看守に伴われ、一人の囚人が姿を現す。
 薄汚れた、ボロボロの囚人服。同じく泥と煤のこびりついた手と足に、つけられた手錠と足枷。少しやつれたような頬。
 それでも、人を小馬鹿にしたような口端はそのままに。
「何の用だ、芋侍。」
 桂小太郎は、防弾硝子ごしに土方の前に腰掛けた。
「………随分と、元気そーじゃねーか。」
「おかげさまでな。毎日毎晩、食事と睡眠の邪魔をする奴もおらんし、風雨の心配もなく仕事にも打ち込める。まぁ蕎麦が出ないのは不満だが、こんな環境で三食落ち着いて食べられるのだ、我が侭は言ってはいかんな。」
「そーかよ。」
 獄門島の名を、絶望の代名詞で使う奴もいるという。その中で、ここまで前向きな言葉を紡げる桂に、土方は眼を瞬かせながら答えた。
 やはり、この男はただものじゃない。剣の腕や逃げ足だけではなく、精神の作りが。
「ところで差し入れはないのか? 蕎麦とか、蕎麦とか蕎麦とか。」
「ねーよっ。てかたった今『我が侭はいかん』とか言ったの誰だよっ?」
「我が侭ではないぞ。貴様が差し入れるなら、その好意はありがたく受けるつもりだ。ないものをねだるつもりはないが、あるものに手を伸ばさずに無駄にするのもよくない。もったいないお化けが出るぞ。」
 ため息をついて、土方は手の甲を額に当て俯いた。煙草が欲しい。禁煙だときつく言い渡されたことも忘れて、一瞬左手が懐に入ろうとする。すぐに抑えたが。
「オメー、本当にタフだな………。」
「それで、用件は何だ。」
 問う桂に、土方は顔を上げる。
「………答え合わせだ。」
「何の答えだ? 謎があるなら魔人探偵の所へ持っていくといい。今飢えているらしいからな。」
「監獄の中だってのに情報早ぇーなおいっ。そうじゃなくてだっ!」
 ゴホン、と咳払いをして土方は改まる。
「何でオメーが、オフ会に来たかってことだ。」
 きょとん、と眼を瞬かせた後、桂は口元に笑みを作る。
「それは何度も言っただろう。罠だと気づかなかった。」
「いーや違うな。知っててお前はオフ会に現れ、俺達に捕まったんだ。」
 じろり、と桂を睨む。今更、そんなことで怖じ気づく桂ではないと知ってはいるが。
「何の為にだ? 捕まればこのように収監、下手をすれば死罪となるやもしれぬのに?」
「死罪に、ならなかったじゃねーか。」
 捕らえられれば死罪。てっきりそうなるものだと、土方は思っていた。けれど、捕らえて初めて知った。
 今桂を死罪にすると、天人、幕府、攘夷志士のパワーバランスが崩壊する。
「オメーはそれを、最初から見抜いてた。それに。」
 硝子に顔を近づけ、声を潜めてささやく。
「どうせすぐ、脱獄するつもりなんだろ?」
「何のことだ?」
 桂は首をかしげてみせる。
「脱獄だと?」
「ばっ、」
 慌てて土方は立ち上がる。声が大きい。看守に聞かれたらどうするつもりだ。
「俺は今、この地獄を革命している最中なんだ。脱獄など、するわけもあるまい。」
 平然と、桂は言い切った。土方は桂の背後のドアにいる看守に目をやる。顔はこちらに向けていないが、ほっと息をついた瞬間を見逃さなかった。
 信じられない思いを息と共に吐き出し、椅子に座り直す。
「本気かよ………。」
「当たり前だ。もとより、収監されたなどとは俺は思っていないぞ。」
 どこまで本気なんだ、この男は。
 日本を革命する前に、まずこの、この世の地獄から革命していくとでもいうつもりか。本気でそれができると、思っているのか。
 だが、あの看守の反応は。
「それでだ。答え合わせとやらはこれで終わりか?」
「いや、これからが本題だ。」
 土方は、桂の眼を見据える。
 今はまだ、目的に見合うリスクについて述べただけに過ぎない。
「オメーは、真選組を止めたかったんだ。」
 桂の眼が、わずかに見開く。驚いたようだったが、さて。
「貴様等幕府の狗は、俺一人捕らえた程度で揺らぐような、そんな組織だったのか?」
 そう問う声は、少しだけいつもより低いように思われた。
「オメーが散々、ゲーマー星人をとっ捕まえるのは無理だとか抜かしやがったからだろ。おかげさまで幹部三人、危うくドライバー人生歩むところだったんだぞ。」
「よいではないか。中々お似合いだったぞ。」
「オメーもな。」
 睨みつける。
 あれは、本当に苦しいことだった。土方自身、自分たちがこんなに脆いとは気づかなかったのだ。
「幹部三人のドライバー化。これで意気消沈してたところに、オメーがわざわざ捕まりにきやがったもんだから、隊全体が燃え尽き症候群になっちまった。俺らが諦めたゲーマー星人探しを、それでもやろうっつー奴はいなかったよ。それが狙いだったんだろ?」
 少し俯きながら、上目遣いに視線を向ける。
 桂の表情を探るように。
「多くのドライバー達が、モンハンの世界でゲーマー星人を探してる。≪M≫だって知ってやがったんだ、当の本人達が気がつかねぇワケがない。テメェが追われてるのを知って、のこのこゲームを続ける奴がどこにいる?」
「ここにいるが。」
「追われてんのに堂々と道を歩きやがる阿呆はオメーと高杉だけで充分だっ。」
 机を叩き、怒鳴りつけた。
 桂は、表情を崩さない。わずかに浮かべた笑みは、状況を楽しんでいるようにも思える。
「とにかく。」
 深呼吸をして、土方は続けた。
「お前は身を挺して、真選組を止めた。奴等に、動く隙間を与えてやった。そうして、尻尾を出すのを待ってたんだろ?」
 桂は、小さく息を吐いた。少し目を伏せ、ふふ、と笑う。
「面白い仮定だったな。」
「仮定、だと?」
「だって、証拠がどこにもないではないか。」
 涼しい顔で微笑まれる。土方は返答に詰まった。
「状況証拠だけを突き付けて、相手の自白を待つか? 自白は、それだけでは物証にはならん。そんなことでは、いい弁護士にはならんぞ。口八丁手八丁だけで法曹界を渡っていこうとするにはまだまだだな。」
「俺は別に弁護士になるつもりも、これを罪として起訴するつもりもねーよっ。」
 土方は立ち上がった。硝子に隔てられていなければ、桂の襟首を掴んで引き寄せたかった。
「ただ、オメーの顔を見て、答えたかっただけだ。」
 簡単に破れる硝子ではない。ついた手を強く握りしめる。
 これは、壁だ。
 桂と自分たちを隔てる。
 手を伸ばそうとしても、それを遮る。
 そして、奴はきっと。
「………そうやってオメーは、俺達を騙くらかして、一人でゲーマー星人の居場所を突き止めた。いや、一人じゃねーな。」
 あの男は、きっと。
 この隔てるものの向こうに。
「万事屋も、一緒にな。」


 この男と、共に。


 が。
 それこそきょとんとした眼で、桂は土方を見上げた。
「なんの、ことだ………?」
 切れ長の瞳が、はっきり判るほど丸くなっている。眼をぱちぱちと瞬かせるのも、土方をまじまじと見つめる様も、空とぼけているようには見えない。
「銀時は何も関係ないぞ?」
「んなわけねーだろっ。」
 思わず土方は声を上げていた。
「関係ねーなら何であの場所にいたっ。」
「それはまぁ、後から教えたからな。俺ではないが。お前達とて、俺に教えられてあの場所に来ただろう。」
「じゃぁアレだ、鬼兵隊とぶつかったときっ。アイツらお前に肩入れしてただろっ?」
「アレは、ほら依頼の一環という奴だ。俺ではないぞ、別口だ。それがたまたま、鉢合わせただけに過ぎん。第一、俺とあの腑抜けた天パに今更何のつながりがあるというのだ。」
「オメー初登場の時アイツと一緒にいたろっ? テロ手伝わせようとしたろっ?」
「それは、証拠不十分で不問になったではないか。過去のことをいちいちうるさい男だな。」
「てゆーか全国放送で万事屋んとこに攘夷のお誘いに行ってたじゃねーかっ!」
 硝子を強く殴りつけた。
 看守が止めに入ろうとするが、それをガンくれてかわす。
 肩で息をしながら、もう一度桂を睨みつけた。
 桂はきょとんと土方を見上げ。
「あ。」
 ぽん。と手を叩き。
「やっちゃったー。」などと言って、舌を出してみせた。
「………オメーって奴はよぅ………。」
 力が抜け、がっくりと椅子に座り込む。
 こんな奴に、真選組は今まで煮え湯を飲まされ続けてきたのか。崩壊の危機に、さらされたのか。
「あ、でも、今回のことで関係ないのは本当だぞ。」
 少し早口で、桂は言う。珍しく、焦っているのか。
 大きく息を吐いてから、勢いをつけて土方は顔を上げた。硝子の向こうにあるのは、わずかな笑みを止めた、桂の顔。
 いつもの、表情を消しながらまっすぐにこちらを見る瞳。
「………あの野郎は、お前の何なんだ?」
 ずっと。
 問いたかった、問えなかった言葉を口にする。かすかに、桂は眉を寄せた。
「安心しろ。オメーがここで何を口走ろうが、何も証拠はねーんだ。とっ捕まえるなんてこたぁしねーよ。」
「当たり前だ。」
 脅すのでも。乞うのでもなく。ただ低い声音で桂は言う。
 そして、かすかに眼を細めた。伏せられた表情の中、口元がほころぶのを土方は見て取る。
「あれは、しるべだ。」
 そう答える声音は、とても静かで。
 とても優しい。
「あれの強さを、お前も知っているだろう。あれは強い。何かを護ろうとする時は特に、俺以上にな。」
「だから、しるべ………旗頭に望むと?」
「違う。」
 土方の言葉を、桂は強い、けれど咎めるのではない声で否定した。
「あれほどの力を持つ男が、その手に望まぬ刃を握らずに暮らしていける。それを平和と呼ばずして、なんと呼ぶ。」
 そう言って、また桂は眼を細めた。
 土方が思わず目を奪われるほど、それは優しく。
 そして。

 その笑みは、一瞬で強いものへと変わった。
「まぁどうせだったらその力を、日本の夜明けのために使って欲しい所なのだがな。奴めなかなかうんと言わん。んまい棒チョコバーをもってしても首を縦に振らんとは、奴の根性もだいぶ据わったものだ。」
「んまい棒程度で信念曲げると思ってたのかよオメーはっ。つーか言ってることめちゃめちゃだぞっ?」
「滅茶滅茶ではない。ちゃんと、日本の夜明けのためにどうするかを真面目に論じているではないか。」
「んまい棒での買収のどこがまじめだーーーっ!」
 大声を上げる。
 桂は「真面目ではないか。何が不満だ。」とふんぞり返ってみせる。それを見て、何故か土方は安心した。
「攘夷のこと、まだ諦めてねーんだな。」
「当然だ。諦める理由が何も存在してはいないだろう。」
「こんな所にいても、か?」
「こんな所とは何だ。皆、己の罪に向き合い、それを償い、新しい明日を目指して頑張っているのだぞ。それを何だ、失礼な物言いだな。」
「そういう意味で言ったんじゃねーよ。………悪かった、謝るだから睨むな。」
 憮然とする桂に土方は謝った。
「どうせだったら土下座の一つや二つだな、」
「おめー何様なんだ、てか本当にこれ謝るのお前に対してっ?」
「桂さん。」
 そこへ、看守が近づく。
「そろそろ、時間です。」
「うむ、すまなかったなこんな芋侍のために。」
 促され、桂は席を立った。変わらず長くつややかな髪を翻して土方に背を向ける。そして首だけを、土方の方にめぐらした。
「今度来るときは、差し入れをちゃんと持ってこい。蕎麦が良いが、皆に振る舞うには量がいるな。なんだったらUNOでもいいぞ。」
「お前本当にここで何やってんだよ………。」
「じゃ、バイビー。」
 右手の人差し指と中指をぴっと立てて、桂は去っていった。その後ろ姿を隠したドアを、土方は呆然と見つめる。
「何だよ、UNOって………。」
「桂さんは、お強いですよ。」
 土方をここまで案内してきた看守が、そう口を挟む。
 その顔をまじまじと見つめて、ここは本当に獄門島か?と心の中で土方は問うた。
 外での評価など関係ない。ここでは一囚人にしか過ぎない桂に敬語を使い、恭しく接する看守達。地獄に落とされた、極悪なはずの囚人達を、庇うというよりまるで自慢するような声で語る桂。
 本当に、この地獄を革命するつもりなのか。
 そして。いずれは。
「………本当、恐ろしい男だな。」
 そう呟く声は、かすかに震えていた。武者震いなのかそれとも恐怖なのか、土方自身にも区別がつかない。
 あの男の器は、底知れない。
 近藤が気を許し、沖田が憧れ、山崎が惹かれるわけだ。だが。
「………待ってるぜ、桂。」
 あの男は、きっと戻ってくる。地獄から陽の当たる場所へ。
 もう一度、今度は自分たちの手で捕らえるために。


 防弾硝子に掌を当てる。
 この壁だけではない、重い扉と鉄格子と、そしてもっとたくさんの見えない壁が、桂と土方を隔てている。忌々しい白髪の天パは、土方より近い場所にいて。けれど、やっぱり壁には遮られていて。
 土方の入り込む隙は、充分にある。
 壁の向こう、底のないはずの器にかいま見えたものが、それを証明している。
 手強いが、不必要に恐れることはないのだ。
 桂の消えたドアを一瞥して、背を向ける。
 いずれ戻るだろうあの男を、待ちかまえるために。




 ほころび始めた自分の中のものに、土方はまだ気づかない。






                        ~Fin~
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by wakame81 | 2008-03-02 13:02 | 小説。  

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