お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

薄氷に立ち、遠く吠える:前

コミックス22巻発売記念。モンハン編、真選組にとっつかまった桂さん。
組の皆さんが壊れています、閲覧にはお気をつけください。






 オフ会に行ったはずの近藤たちが、何故か桂小太郎を逮捕して帰ってきた。
 急な朗報に隊士たちは驚き、そして喜び浮かれる。幹部三人のドライバー化という悲しい事件の直後だったからなおさら、その喜びは大きかった。
 けれど。
 真選組成立当初から桂を追っていたはずの、当の近藤たちの顔は浮かないままで。
 桂を牢につなぐ手配をした後、近藤はため息をつきながら松平の下へ赴き、沖田は部屋に閉じこもり。土方だけが、厳しい顔で桂と向かい合った。

「いいザマだなぁ、桂。」
「貴様こそ、なかなか似合っているではないかドライバーが。」
 連行された後、手錠を後ろ手に繋ぎなおされた桂は、涼しい顔で土方に答えた。ドライバーという体型上、後ろに手を回された今の体勢は少なからず痛みを与えるはずだが、それを微塵も感じさせない。思わず土方は、手錠がちゃんと填まっているのか確認する。
「………へっ。そんな減らず口を叩けるのも今のうちだぜ。」
「そうだな。大体一週間というところか。」
「何がだ。」
「今までの幕府のお役所仕事や今の真選組の状況を見る限り、俺の引渡しにはそれくらいかかるだろう。」
 桂の腕をつかんで引き寄せる。手錠に引っ張られ、かすかに桂の表情は歪んだ。
 鉄格子の外側から、土方と桂の様子を見物していた隊士たちに、どよめきが走る。
「オメー、何を企んでやがる?」
「何を、とは?」
「とぼけんな。腹の中のもん、洗いざらい吐け。」
 桂は思案顔で、牢の前でたむろしている隊士たちを見やる。そして、「おい、そこの。」とうち一人に声をかけた。
「そこの、哀れな毛根の死滅したあとを恥ずことなく晒した侍らしい芋侍。」
「俺のことかぁぁぁっ! ていうか褒めてんのか貶してんのかわかんーよっ!」
「そんなことはどうでもいい、とにかくこっちに来い。」
 呼ばれた原田はぶつくさ言いながら、それでも言われたとおりに牢の中へと入る。
「………うむ。不幸な髪質を偽ることのない、潔い良い頭だ。」
「いやこれ、剃ってんですけど。」
「謙遜することなはいぞ、ふははははははははは。」
「ってなんでお前そんなに偉そうなんだよっ?」
 見守ってやっていた土方が怒鳴る。視線だけは一度土方に向けるものの、涼しい顔で桂は原田を見つめた。
「………何だ。」
「貴様、俺を殴れ。」
「はぁ?」
 目を見開く原田に、桂は続ける。
「みぞおちあたりがいい。思いっきり殴れ。」
「いや、みぞおちってどこ………。」
 迷った眼で原田は土方を見た。土方も、桂の意図が読めるわけではなかったが、後押しするように頷いてみせる。
「………じゃ。」
 腕まくりして、肩を振り回す。そして構えた。
 鈍い音とともに、ボディーブローが桂の腹に打ち込まれる。強い衝撃に桂は顔をしかめ。
「うげろげろげろげろげろげろげろ~~~~。」
「うっわ吐きやがったコイツっ!」
 リバースされたものに、原田も牢の外の隊士たちも大慌てになる。顔を真っ赤にさせて、土方は桂の腕を思い切り引っ張った。ドライバー姿だと、襟首がないのがやりづらい。
「何のつもりだオメーっ!」
「何って、腹の中のもの全部吐けと言ったのは貴様だろう。」
「意味がちげーよっ!」
「ふぅ、すっきりした。やはりシビレ生肉は火を通したほうがいいな。感謝するぞ芋侍。」
 危うくリバースを引っ掛けられそうになった原田だったが、桂の笑顔にそっぽを向いて「うるせーな。」と呟く。
「あぁそれと、口の中が酸っぱくて気持ちが悪い。うがいしたいのだが。」
「知るかっ! おい、誰かこれ片付けろっ!」
 土方の指示に、山崎がいそいそと新聞紙とモップを持ってくる。
「つーか、本当に何のつもりだっ?」
「だから、吐けといったのはそっちだろう。」
「そうじゃねーっ!」
 桂の顔を引き寄せ、睨みつける。隊士たちのほとんどが恐れる土方の憤怒の形相だったが、桂は恐れる素振りすら見せない。
「………何で俺たちに捕まった。何を企んでやがる。」
「何でも何も、オフ会に行ったら貴様が手錠を填めたんだろう?」
「俺たちがいるのを判っていて、オフ会に顔を出した理由を言ってんだよっ。」
「まさか罠とは思わなくてな。」
「嘘つけぇっ!」
 思わず土方は桂を殴り飛ばした。リバース掃除に従事していた隊士たちが、驚いた眼で土方を見上げる。
「俺らがあそこにいたことを、オメーは知ってたはずだぞっ。それを、罠だと思わなかっただとっ!? ふざけるのも大概にしろ、真選組なめてんのかぁっ?」
「舐めてなどおらぬ。芋侍など、舐めたところでうまくもなんともない。」
 倒れた桂の腕を、土方は掴んで引っ張りあげた。空いた右拳が強く握りしめられる。
「ふ、副長っ。容疑者への暴力は一応ジュネーブ条約で禁止されてますっ。」
「ジュネーブ条約が禁じてんのは容疑者じゃなくて捕虜への暴行だろーが。それにこいつは、暴力じゃねぇ。」
 止めに入った山崎に、土方の眼差しが向けられた。
「尋問だ。」
 瞳孔開いたなんてもんじゃない、血走った眼に山崎は怯む。
「マスコミに知られたら大騒ぎになりかねん事を止めに入った部下に、それは酷ではないか?」
 静かな桂の声が、諌めるようにかけられる。土方は拳を持ち上げ、桂の目の前にかざして見せた。
「副長っ。」
「オメー、自分の立場を判ってんのか?」
 これ以上ふざけるつもりなら、もう一度殴る。その意思を乗せた眼差しで、凄んでみせる。
「明日をも知れねぇ身なんだぞ? 引渡しを待つまでもねぇ。取調べ中に≪病死≫なんてのは、よくあることだと思わねぇか?」
「この上なく、判っているつもりだが。」
 桂は口の端をゆっくりと持ち上げた。その笑みは、いっそ優しげにも見える。
「攘夷戦争に加わった、いや侍としてあろうとした時から、いつ死が訪れようとも不思議ではない。覚悟など、とうにできている。」
 清々しい笑みだった。
 武器もない、腕も封じられ、逃亡はおろか土方の振るう暴力を防ぐ手立てすらないというのに、ほんの僅かな動揺も見られない。
「………ンのっ!」
 激昂にかられた土方の拳が、桂の頬で鳴る。殴打されて、桂の顔は背けられた。黒髪が舞い、その白い顔を隠す。
「やっぱり判ってねーよオメーは。」
 低い声で、土方は告げる。
「物分りのいい顔しやがって。それで潔いつもりかっ?」
「物分りのいいつもりはないが。」
 ゆっくりと、桂は顔を上げた。静かな琥珀が、土方を見つめる。
「俺は俺なりに、美しく生きた。今ここで死しても、悔いはないと思える程度にはな。」
 殴られた際に口内を切ったのか、口の端に血がにじんでいる。
 それでも桂は、笑むことをやめない。
「テメっ、」「副長ぅぅっ!」
 もう一度握り締めた拳を、山崎が抑えた。他の隊士たちにも、動揺のどよめきが浮かぶ。
「………ちっ。」
 舌打ちをして、土方は桂から手を離した。突き飛ばすと細い体はよろめき、すとんと地に落ちる。
「これで終わったと思うなよ、オメーの企みなんざ、すぐに聞き出してやるからなっ。」
「その前にうがいと、蕎麦を頼む。」
「うちは蕎麦屋じゃねぇっ。」
 吐き捨てて土方は牢から出た。恐れるように周りを取り巻く隊士たちに鋭い眼を向け、一喝する。
「何見てんだ見世物じゃねぇっ。藤堂、こいつ見張っとけっ。他の者にはおって警備体制を伝えるっ、判ったら散れっ!」
「はいぃぃぃっ!」
 震え上がった隊士たちが、その場から離れる。
「山崎、俺たちも行くぞ。牢を閉める。」
 そう、原田に促されるまで、山崎は隊士と土方と、そして桂を途方にくれたように見比べていた。


「警備のローテーション?」
 部屋でお気に入りのアイマスクをつけて寝っ転がっていた沖田は、警備体制の書類を持ってきた山崎に眼もくれずに呟いた。
「はい。土方副長からです。」
「山崎ぃ。俺の代わりにやっとけや。」
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええっ??」
 布団まで敷いて完璧熟睡体勢だった沖田の言葉に、山崎は仰天する。
「か、桂の監視ですよっ?」
「そんで?」
「沖田隊長、桂の拷問楽しみにしてたじゃないですか。」
「んーーー。」
 ごろん、と寝返りを打ち、沖田の背中が山崎に向けられる。
「興味ねぇや。」
「そんな………。」
 山崎は困り果て、そして眉をひそめた。
 マイペースで気まぐれな沖田が、必ずと言っていいほどやる気を示すものがある。桂に関する事柄は、そうだったはずだ。生き生きと、そして嬉々として≪狂乱の貴公子≫を追っていたはずだ。
 それが。
 土方の尋問に立ち会うでもなく、布団まで敷いている。山崎が来るまでは完全に寝入っていた。
 普段アイマスクはつけていても、意識は恐ろしいほど研ぎ澄ませている沖田が。
「近藤さんは?」
「松平のおやっさんのところへ行ったまま、まだ戻りません。」
「ふーん。」
 そう言ったきり沖田は、掛け布団を頭からひっかぶる。もう用はないと言いたげに。
「………………。」
 両手をぎゅっと握り、山崎は口を開いた。
「沖田隊長。オフ会で、何があったんですか?」
 沖田は答えない。
 わざとらしいいびきまで聞こえてくる。
「ゲーマー星人に関する情報交換しに、行ったんでしょう? なんで桂を連れ帰ってくるんですか? ゲーマー星人の情報は、どうしたんで」「うるせぇなぁ。」
 気づく間もなかった。
 鼻先に刃の切っ先が突きつけられる。目の前のそれがなんなのか理解するのに数秒要し、そして悲鳴を上げて山崎はのけぞる。
「おおお沖田隊長っ?」
「うるせぇなぁ、みじん切りにすっぞ?」
「ひぃぃぃぃぃっ?」
 正座したまま後ずさり、距離をとる。青ざめた山崎を見やる沖田の視線は一瞬鋭くなったが、すぐにまた眠そうなものになる。
「………気持ち悪ぃ。寝る。」
「お、沖田隊長っ。」
 もう一度名を呼ぶが。
 布団に包まった沖田が、答えることはなかった。




                              ~続く~
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by wakame81 | 2008-02-24 11:26 | 小説。  

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