お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

サボテンの花

リク小説。「近妙。できれば近藤さん視点で、局長が少しでも報われる話」

………報われてるのか?






 早いところではもうチューリップが並ぶ。
 赤とかピンクとか、まだ開ききらない蕾のような花束を抱え、近藤は恒道館の門を叩き。 放射器が吐きだした炎で炭と化した。
「お妙さん! 大変です、何者かが門に罠を! これは我々を引き離すCP9の陰謀にあべしっ!」
「っち、しぶといわね。」
 炭パンもとい近藤を右フックでKOしたお妙は、「新ちゃん、お塩ー。」と弟に呼び掛ける。
 すくっと立つその姿は女神もかくやと思うほど凛々しく、弟に向けられたかんばせは咲き誇る薔薇よりも艶やかで美しい。
「お、お妙さん! 俺は《新たな血族》の陰謀にも負けません! その証に、これを! お妙さんの美しさにも及びませんが………!」
 そう言って近藤は、炎から死守した一本のチューリップを差し出した。
「あら。」
 その可憐な花に、お妙も目を向ける。他の花は皆燃えてしまい、これが最後の一本。つまりこれは、近藤の愛の結晶。
 お妙の白魚のような細い指が、チューリップの茎に触れる、その瞬間。
 椿でもないのに、蕾はがくから折れて丸ごと落ちた。
「「………。」」
 近藤の顔が引きつる。お妙はにっこりと微笑んだまま、拳を握り締めた。

 はっと気がつき、毛布を跳ね上げる。
「あれ?」
 跳ね上げてから気づいた。毛布?
 一瞬夢かと思ったが、それはすぐに寒風が吹き飛ばしてくれた。隙間風ではない。見渡せば、そこは恒道館の門の前。
「………あれ?」
 毛布に目を落とすと、端っこに、『返却は万事屋までお願いします。志村新八』とメモがピンで留められている。
「新八くん………。」
 とりあえず感動しておいて、もう一度近藤は辺りを見渡す。
 日はすっかり暮れ、もう夜になっている。吹き付けてきた風に思いっきり体を震わせ、ついでにくしゃみを一発、二発。
「う~~~、さぶい。」
 ケータイで時間を見る。思ったより時間は経っていない。
 立ち上がり、背伸びをし、肩をこきこき回す。毛布を丁寧にたたんで、小脇に抱える。
 そして。
「お妙さ~~~~ん、今あなたのナイトが行っきまっすよ~~~!」
「うるさいゴリラ!!」
 どこからともなく飛んできた植木鉢が、近藤の頭を直撃した。


 黒こげ、たんこぶ、体中に青あざ。
 それでも慣れた風情で、スナック「すまいる」の黒服は、席に通してくれた。指名を尋ねる声に大声で「お妙さん」を連呼する。
 出されたお冷に手をつけず、そわそわとお妙を待っていた近藤だったが。
「こんばんわ~。」
「おたっ!………。」
 挨拶をしながら隣に腰を下ろした顔を見て、肩を落とす。
「お妙、今手が離せないので、ヘルプできました阿音です~~~。やだ、そんなにがっかりしないでよぉ。」
「あ、どーもぉ………。」
 そうか、忙しいのかお妙さんは。
 そんなことを思いながら、ほぼ条件反射で頭を下げる。
「近藤さんにつくのは初めてよね。何かあったら、何でも遠慮なく言ってちょうだい。」
「あ、はい。」
 そりゃそうだろうなぁ。あれだけ可憐で美しい、さながらこのかぶき町に舞い降りた天使、掃き溜めに鶴のような人だもんなぁ。人気あるよな、忙しいよな。あ、別に「すまいる」の他の子が掃き溜めとかじゃなくて、今のは言葉のあやっつーか。
「何飲みます? 阿音、ドンペリとか飲みたいなー(はぁと)」
「あ、えーっと。」
 ドンペリかぁ、実はあれあんまり口にあわない、つーか俺やっぱりビールの方が好きだなー。あーでもお妙さんとなら、飲んでもいいなー。一杯のドンペリのグラスから、ハート型のストロー二本でとか、いいなー。
「あ、無理にドンペリでなくてもいいのよ。ロマネ・コンティとかでも全然かまわないから。むしろ、そっちのほうがいいかな(はぁと)」
「うーん。」
 ろまね・こんてい? コンテストかなんかか。ろまね、ってことは、とてもロマンチックなコンテストなんだろうなー。お妙さんにぴったりだ。絶対お妙さんなら優勝だ!! それにしてもお妙さん、遅いなー。
「てーか話聞いてんのかぃぃぃ!!!」
「いだだだだだだっ、抜ける抜けるハゲになるぅぅぅぅぅぅ!!!」
 両手で髪を鷲づかみにされ、やっと近藤は目の前の阿音に向き直った。
「それじゃ、改めて、何飲みます?」
「えーっと。」
 ぐぎゅるるるるるるるるるるるるるるる………………。
 周囲の音を掻き消して、その音は鳴り響いた。阿音だけでなく、近くの席にいた客やホステスまでもが、こちらを振り返る。
「………先に、何か食べるものお願いします。」
「はい、バナナ盛り合わせ入りまーすっ。」
「え、なんでバナナだけっ? フルーツ盛り合わせじゃないのっ?」
 絶叫する近藤の前に、さっそくバナナを盛り付けた大皿が五枚ならんだ。

 それから一時間。
 ひたすらバナナとバナナシェーキを口にしていた近藤は、話の合間に首を伸ばした。
 お妙の姿は、まだ見えない。
「ちょっとぉ、まーたよそ見して。」
 頬を膨らませて、阿音が咎める。
「これで十三回目よ?」
「あ、ごめんなさい。」
「もぉーっ。」
 ぷーっとふくれっ面をして、唇を尖らす。そして俯きながら上目遣いで近藤を見つめる。その表情が、ふっと和らいだ。 
 さっきから「手相を見る」と言われ預けていた手を、ぎゅっと握られる。
 ドキンっと心臓が跳ね上がった。脈拍がどんどん上昇し、顔がかーっっと茹で上がる。
「そんなに、お妙が待ち遠しい?」
「え、いやそれはそれであれでなんていうかあれでねっ?」
「隠さなくても、判るわ。」
 阿音の眼差しが、真剣なものになる。
「お妙のこと、本当に愛してるのね。」
 ぼわっと耳から湯気が吹き出た。
 日ごろ自分で叫んでいることだが、改めて他人の口にあがるとどうも気恥ずかしい。
「でも。」
 阿音は少しだけ、顔をよせた。まっすぐに、近藤を見つめる。
 やはり巫女なのだと、思う。それほどに、今自分を見上げてくる彼女は神々しい。
「あの子と結ばれるのは、難しいわ。」
「え………。」
「判るの。私には。」
 下された神託が、頭の中でぐるぐる回る。
「あの子と出会ってから、近藤さんの気は乱れてるわ。それが周囲から悪い気を呼んで、さらに乱している。乱れた気は近藤さんだけじゃなく、周りの人も巻き込んでいく。連載開始以来、ずっと不幸なことが続いているでしょ?」
 不幸。
 そう言われて、近藤の頭に過去のことがフラッシュバックする。
 失った仲間。失った親しいひと。
 そして、大事な弟分の涙と、もう一人の弟分の激情に耐える背中。
「その気の乱れを祓うのは、不可能に近いわ。でも、私の言うとおりにすれば、それができる。」
 阿音の言葉は、不思議な余韻を伴って、近藤の中に入り込んでいく。
 思わず飲んだ息と共に体内へ入り込み、肺へ、そして胃へも侵入していく。臓腑をかき乱し、そしてさらに奥へと。
「まずは、ドンペリを三本ほど。」
「すいません、トイレ行ってきますっ!!」
 急に催してきた便意に、思わず阿音の手を振り切って立ち上がった。


 漏らさずにすみ、ほっと息を吐きながら個室を出る。
「………ふぅ。」
 すぐにその吐息は、疲れたものへと変わった。
 自分が不幸、てのはかまわない。お妙のためなら、どんな不幸にだって耐えてみせる。いや、彼女の笑顔が見られるのなら、それは不幸じゃない。
 けれど。
「俺、どうしよう………。」
 がしがしと、頭をかきむしる。
 アイツらに、不幸を撒き散らすのはいやだ。
 いや。
「………………違う。」
 頭から手を離し、ぎゅっと拳を作る。
 厠で全部出し切ったのは、ある意味よかったのかもしれない。入る前とは違う、吹っ切った感覚に、やっと近藤は立ち戻る。
「阿音さんに、言わなきゃいかんな。」
 そう呟いて、近藤は厠を出た。
 ところで。

 ぐわっしゃーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!

 派手な音とともに、でっぷり太った身なりだけはいい男が吹っ飛んできた。慌ててよけた近藤の、数ミリ左をかすめて厠に突っ込む。
「このアマぁっ。」
「坊ちゃんに何しやがんだぁぁっ!」
 目を向ければ、頭の色がやたらカラフルな男が二人、がらがら声で叫んでいた。
「あらごめんなさい? 汚い手がお尻に触ろうとしてきたから、ゴミ虫かと思ってびっくりしちゃって。」
(お妙さんっ!!)
 男たちの向こう側、観音様のような微笑でそう言う姿に、近藤は目を見張る。
 ていうかあの(ぴー)、よりにもよってお妙さんのお、お、お、お尻を触ろうとしただと!! あれは自分のようなお尻じゃない、はぁとの形をした、まさに愛の天使が座るクッションだぞ!! この野郎、こうしてくれる!!
 と、吹っ飛んで気絶している男に蹴りを入れていると。
「汚い手だぁ!? ふざけんな、坊ちゃんはいつもフローラル高級泡立て石鹸しか使わない、磨き上げられた手だぞ!!」
「しかも、石鹸だから中性だ、地球に優しいんだぞ!!」
「撤回しろ、このアマっ!」
 男たちの手がお妙に伸びる。
 慌てて駆け寄ろうとした近藤の前で、男たちは一瞬で宙を舞い、脳天から床に叩きつけられた。
 その武勇に呆然と、いや革命軍を栄光へと導く勝利の女神を崇めるように見つめた近藤の襟が、振り返ったお妙に掴まれた。
「え?」
 と思った途端、視界が180度回る。受身を取って脳天や首への直撃を避けたのは、ひとえに条件反射によるものだ。
「ちょっ、お妙さん俺ですあなたの近藤ですべぶっ!」
「あーら、髭だらけの野蛮な顔でいかにも犯罪起こしてそうな人相だったからつい間違えちゃった(はぁと)」
 平然と笑いながらお妙は、踏み潰した近藤の顔から降りる。
 そんな笑顔も小悪魔ちっくでキュートだ。
 そう思っていると。
「ふ、ざけやがってぇぇぇっ!」
 気絶していなかったのか、男の一人が、傍らのテーブルを掴んで立ち上がる。その手の先には、「すまいる」名物「焼酎溶岩割り」。
 溶岩のように煮えたぎったお湯で割られた焼酎のグラスを、男の手が掴み。
 反射的にお妙を押し倒した近藤の背中に、ひりついた激痛が走った。


 本当に痛いと、悲鳴を上げる余裕すらないんだと、近藤はぼんやり思う。
 周囲の女の子たちの悲鳴が遠い。
 せめて、腕の中のこのひとだけは。そう願い、脂汗をかきながら顔を上げた近藤の目に。

 飛び込んできたのは。いっぱいに見開かれた眼に溢れんばかりの涙。

「………っ。」
 名を呼ぼうとし、激痛に息を呑んだ近藤を、お妙は。

 げしっ。「べぶぅっ!?」
 投げ飛ばさん勢いで横にどかし、成功した反撃に引きつるような笑いをあげていた男を一撃で沈める。そして、振り向きざま倒れていた近藤の胸倉を引っつかんで、横綱すらしのぐような張り手を食らわせた。


「だぁぁぁぁっ、しみるしみるトシもっと優しくぅぅぅっ!」
 数刻後。
 「すまいる」から連絡を受けてやってきた隊士たちに男たちは捕らえられ、ひどい火傷を負った近藤は屯所へと連れ帰られた。
「優しくったって、どうしたってしみるモンはしみるんだ。だったら一思いにやっちまったほうが楽だろ?」
「ダメですぜ土方さん。もっとじっとり、端っこからつっつくように塗らねぇと、痛いのが持続しねぇでさぁ。」
「ヤメテ総悟ぉぉぉっ!! ………ってい”た”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!」
 特性の薬を塗り、ガーゼを当て、うつ伏せだった体を起こして包帯を巻く。その一連の作業の間ずっとわめきっぱなしだった上司に「終わったぜ。」と告げ、土方は薬箱を閉じた。
「しっかし、酷ぇ話だよな。」
「うむ!! お妙さんに乱暴を働こうとした不届き者は、ぎっちり説教くれてやらなきゃなっ!」
「そっちじゃなくて、あの女のほうだよ。」
 涙目になりながらも拳を握り締める近藤を一瞥し、窓際へ行った土方は煙草をくわえる。
「近藤さんが身を挺して庇ったってのに、礼もなしで張っ倒しただけかよ。」
「それはアレでさ、土方さん。」
 のんびりと寝そべり、アイマスクをおでこに装着して沖田が口を挟む。
「今ハヤリの、ツンデレってやつでさぁ。」
「ツンデレにもほどがあるだろ、どんだけツン部分多いんだよっ? むしろツンツンじゃねーかっ!」
「世の中、すぐデレるのが氾濫しまくりですぜ。デレは0.001%でいいんでさぁ。」
「少ないわぁぁぁぁぁっ!!」
 二人のやり取りを眺めていた近藤は、息を吐いて肩を落とした。
「何だよ、近藤さん。」
「そんな気にすることありやせんぜ。ハリネズミだと思えばいいんでさぁ。それかサボテンか。」
「いや、な?」
 困ったように目尻を落として、近藤は笑った。
「俺一人なら、不幸なんかじゃないって言えたんだけどな。」
 お妙に近寄ると、乱れた気が近藤だけでなく周囲を混沌に落とす。
 土方や沖田や隊士達に、その不幸が飛び散るのはいやだ。まして、彼女にまで。
「「なーんだ、そんなことか。」」
 その言葉を聞いた土方と沖田は、異口同音に応えた。
「俺は少なくとも、今が不幸だとか思ったことはねぇですぜ。」
「たとえ不幸だとしても、それはアンタが原因じゃない。俺自身が間違えたか、こいつのせいだ。」
「………ちっ、ばれたか。」
「沖田とりあえずその俺のぬいぐるみを針山にするのは今すぐ止めろ。」
 沖田の裁縫セットから無残な針山を救出して、一本一本針を抜いてやりながら、土方は続ける。
「隊の奴らだってそうだ。もし自分が不幸だと思ってるやつがいても、近藤さんのせいにするような奴ぁいねぇ。………アイツだって。」
 遠くなる眼差しを隠すかのように、土方は窓の外へと煙草の煙を吐き出した。
 沖田は、抜かれた針を、今度はトッシーが大事にしている美少女キャラのデフォルメぬいぐるみに突き刺している。
「お前ら………………。」
 思わず近藤は、涙ぐんだ。
 そこへ。
「局長ー。お手紙届いてますよー。」
 明るい声で、山崎が部屋へ入ってくる。
「お妙さんからです。」
「なにぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 音速を超えるスピードで、山崎の手から手紙を奪い取った。
 そーっとそーっと、封筒を破らないように、封を開く。
 デレか、ついにきたのかお妙さんのデレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
 期待して開けると。

『請求書。抱きつき代100万円』

 がっくりと、膝をつく近藤。
 うろたえる山崎。
 つまらなそうにあくびをして転がる沖田。
 そして土方は、やれやれと言わんばかりに、紫煙を吐き出した。

「つーか、金運が下がってんのは当たってるよな。」




                              ~Fin~
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by wakame81 | 2008-02-18 23:31 | 小説。  

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