お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

BOLERO

リク小説「万斉と桂で芸大もしくは音大パロ。+×はどちらでも。」

設定として、
「桂=打楽器コース(教職課程)、万斉=音楽・音響デザインコース、銀時=指揮者コース、高杉=弦楽器コース(チェロ)」銀&高いないけど(爆)
「全コース横断型ゼミ「演奏会実習ゼミ」で、みんな同じゼミに所属」このシステムは、洗足学園大学のものを参考にしました。




 世間では名曲と認められていて、もちろん自分も聞くのは好きだ。けれど、演奏しろと言われたら御免こうむりたい。そういう曲は、誰にもあると思う。
 たとえばトランペットなら、楽器の仕組みが今とまったく違うバロック時代の、細く低く繊細な音を求めてくるメンデルスゾーンの「結婚行進曲」なんかそうだと思う。弦楽器では、(これは好みもあるだろうが)20世紀以降のいわゆる現代クラシックの前衛的な音楽は、肌に合わないという人もいるだろう。
 ラヴェルの「亡き女王のためのパヴァーヌ」なんか、ホルンのあの高音域でのピアニッシモは確かに試練だ。やり遂げた高校時代のクラスメイトには本当に拍手を送りたい。
 そして、自分だったら。
 三楽章のティンパニ以外の出番がほとんどない、チャイコフスキーの「交響曲第六番『悲愴』」の、練習の手持ちぶさたは苦痛だった。が。
 それとは対極に、この曲はあると思う。
「ほう。桂がファーストスネアか。」
「あ。」
 目の前に広げていた楽譜が、ひょいと持ち上げられた。
「河上。」
「誰がやるかと思っていたが、やはりな。」
「予測してたのか?」
「他に引き受ける者もいるまい。」
 カフェテリアの目の前の席に座り込んだ河上万斉は、桂から取り上げた譜面を覗き込んだ。右手の二本の指がテーブルの上で、描かれたリズムを叩く。
 テンポはゆるやかに。四分の三拍子で、リズムは二小節のみの記載で事足りる。
 これを、約15分かけて、テンポを崩すことなくクレッシェンド(徐々に大きく)していく。考えただけで気が重い。
「長いな。」
「15分あるからな。」
「譜面をめくる暇があるか?」
 ぺらり、と次のページをめくる。桂はぬるくなったお茶を飲み干して、ケータイを取り出した。
「めくる必要はない、暗譜するさ。それより、スコア(総譜)がほしい。」
 メールをチェックする。新着はない。ケータイを閉じて、万斉へ向き直る。
「河上、持っているか?」
「おや、坂田から借りると思っていたが。」
「昨日から捕まらないんだ。絶対まだ寝てる。それか、慌ててこっちへ向かっているか。」
 この時間なら、一限の授業直行だ。そもそも、学校に来ているかわからない。待っていては、いつ手に入ることやら。
「拙者も使うのだが。」
「わかってる、コピーだけさせてくれ。」
 万斉はバッグを開き、分厚いスコアを取り出した。受け取って、ぱらぱらとめくる。
「コピーしてくる。貸してくれ。」
「構わぬよ。その間に、授業に出てくる。」
「もう行くのか? まだ時間あるだろう。」
「早く行かねば、席がなくなるのでな。」
 そう言い、万斉は立ち上がる。
「桂は一限はないのか?」
「俺は今日は三限から。少し練習しようと思ってな。」
「良い心がけだな。」
「しなきゃ、こんな曲できないだろう。」
 スコアに目を落とす。借りれたはいいが、すぐ返すつもりだった桂は今度は返却に困る。
 その困惑を顔に出したつもりはなかったのだが、万斉は頷いて口を開いた。
「練習室が借りれたら、部屋番をメールしてくれ。一限が終わったら、取りに行く。」
「………すまないな。」
 そう言うと、万斉はひらひらと手を振って去って行った。


 それまでカッチコッチとテンポを刻んでいたメトロノームが、音を消し、不規則に揺れて途切れた。ぜんまいの巻きなおしだ。大きく息を吐き出して、桂はスティックを練習台に置く。
 手が、腕が疲れている。手首をぶらぶらさせて、コリをほぐす。
 スネア(小太鼓)に限らず、打楽器を奏でるには楽器を支える以上の力はいらない。余分な力を込めれば、音が濁る。
 だから、これだけ疲れているということは、力が入りまくりということだ。
「………参ったな。」
 一人つぶやいて、メトロノームのぜんまいを巻きなおす。振り子の針を止めたまま、肩を回す。そして二本のスティックを片手で握り、くるくると回す。
 両手でそれをやってから、改めてスティックを構えた。
 メトロノームはまだ動かさない。肩までスティックを振り上げ、力を入れずに振り下ろす。
 重力に引っ張られ、スティックは練習台を打つ。
 打楽器の、最初の基礎。
 それを繰り返していると。
「桂?」
 ノックもせず入ってきた万斉は、首をかしげて声をかけてきた。
「河上。授業終わったのか。」
「あぁ。………ずっと基礎錬をしていたのか?」
「まさか。力を抜きなおしてるだけだ。」
 手を止めて、借りたスコアを万斉に渡す。受け取った万斉は、桂の肩越しに覗き込むようにして、メトロノームに目を向けた。
「随分とアナログなものを使っているな。」
「電子のだと、どうもやりにくい。振り子がないとな。」
「桂らしい。」
 くす、と万斉は笑った。
「スコア、ありがとう。助かった。」
「いや。………苦労しているようだな。」
 万斉の視線は、メトロノームから、譜面台の上のスコア(コピー)に移った。
 何ページもの楽譜をのりで繋いだそれは、離れて置かれた二本の譜面台に、端と端を洗濯バサミで止めて旗か洗濯物のように広げられている。
「これでは見づらいだろう。折りこめばいいものを。」
「それじゃ、めくれない。」
「拙者がめくってやろうか?」
 そう言って練習室に入ってきた万斉を、桂は目を丸くして見つめる。
「河上、二限はないのか?」
「あぁ。」
 万斉は頷いて、譜面台からスコアをおろした。1ページ1ページ、丁寧に折り目をつけていく。
「あ、俺が。」
「いい。お前は手首を柔らかくしておくがいい。」
「すまない、河上。」
「各パートの練習風景を見るのも、大事な勉強なのでな。」
 話すうちに、スコアはアコーディオン状に折りたたまった。譜面台をよせ、その後ろに万斉はつく。
「それでは最初から、どうぞ。」
 メトロノームがテンポを刻みだした。
 桂は頭の中で、リズムを刻む。そしてメトロノームにあわせて息を吸い、スティックをわずかに浮かした。
 曲は、ピアニシシシシシモから始まる。
 音を最小限に控えるために、実際に楽器で奏でる時は、音の響きにくい打面の端を打つ。だから桂は、練習台の端を狙い打った。
 二小節、三小節。それが積み重なって、1フレーズ。
「桂。」
 スコアを追っていた視界に、黒い腕が割り込む。気づいたときには右手を押さえられていた。
「河上?」
「力が入りすぎている。」
「………。」
 桂は、大きく息を吐いた。
 疲れか。それとも緊張か、プレッシャーか。
 練習でこれでは、本番に力を抜くなんてできるわけがない。何とかしないと。
 そう考えていると、万斉の手が、桂からスティックを取り上げた。
「河上。スティックを。」
「少し休んだほうがいい。」
 スティックを机に置いた万斉の腕はメトロノームに伸び、重石を一番下まで下げる。束縛から開放されたメトロノームは、速いテンポで左右に揺れだした。
「次の授業までまだ時間があろう。休憩した方がいい。茶でよければ、奢るが。」
 提案、の形をとっているが、有無を言わすつもりはないのだろう。サングラスの奥の瞳が、そう語っている。
「今から張り詰めていては、本番までもたぬぞ。第一一人でやるより、他の者と合わせたほうがいいと、この曲については思う。」
 肩をすくめ、息を吐き出す。
 了承のサインを受け取って、万斉は頷いた。
「桂が倒れては、この曲は崩れてしまう。ペース配分には、気をつけてほしい。」
 万斉の言葉は本心だろう。サウンドクリエイター志望として演奏会実習ゼミに加わる彼にとっても、今度のコンサートは成功してほしいのだろう。
 けれど。
「河上は、俺に甘すぎる。」
 ため息とともに、そう口にする。
「俺は、お前の期待には添えないぞ。」
 頭ひとつ分高いところにある、万斉の顔をじっと見つめた。彼の瞳は、濃い色のサングラスに隠され、今の桂に窺い見ることはできない。
 万斉は何も言わず、ただ口の端を持ち上げ。
 握ったままだった桂の右手首に、唇を落とした。



                                 ~Fin~
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by wakame81 | 2008-02-17 20:55 | 小説:音大パロ  

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