お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

月と三弦:後

文字数わかりませんが、おそらく長くなりすぎました(爆)。一太郎じゃないと、文字数わからないのが不便です。






 実際に音として起こすのはさておき、曲の大体の流れをつかむのは早かった。
 楽譜と同じく、大まかな動きのメモが踊り子部隊に配られる。それでだいたいの動きは皆覚え、細部を、振り付け師が三味線隊と交互に教えに来た。
「そうではないでござる。」
 桂はじめ数人を一緒に舞わせていた振り付け師は、三味線を鳴らす手を止めた。
「ヅラ子殿、そこはもっと手首をやわらかく。」
「こうか?」
「違う、こうでござる。」
 扇を手に取り、振り付け師はふわりと動かして見せた。手首の返しが柔らかい。まるで、羽根が風に浮くかのように。
「こうか?」
 振り付け師の手元をじっと見ていた桂は、その動きを真似て動かしてみた。余分な力を抜いて、手首を返す。
 他の踊り子たちから、歓声があがった。しかし、振り付け師は首を振る。
「いや、まだ硬いでござる。」
「えー、そうかしら?」
「今のすっごく、上手だったじゃないのー。」
「アタシには無理よー、まだできないわ?」
 不満を漏らしたのは、他の踊り子たちだった。
「ていうか、ヅラ子にばっかり厳しすぎるんじゃありませーん?」
「エラ美殿。」
 手首をぶらぶらさせて力を抜いていた桂は、たしなめるような声音で先輩の名を呼んだ。
「俺ができないのには変わりない。かばってくれるのはありがたいが、これは俺の問題故。」
「でもヅラ子。」
「俺が受けた挑戦だ、受けたからにはこの桂、じゃないヅラ子、成し遂げてみせよう。」
 桂は挑戦的な眼を振り付け師に向けた。
 息を吐いて力を抜き、扇を持ち上げる。
 流れるように腕を動かし、手首を返す。
「………違う。」
 そのパートを最後まで舞い終える前に、桂の手を振り付け師が取った。
「こうでござる。」
 桂の背後に回りこむ。
 影のように身体を寄せ、己の腕を桂のそれに這わせ。細く長い桂の手の上から包み込むように手を重ねる。
 黄色い小さな叫びが、姉さんたちからあがった。
 ゆっくりと、振り付け師は桂の腕を動かす。
「力を抜くでござる。それでは、手取り稽古にならぬ。」
 桂は背後の男へと振り返った。サングラスの奥の瞳を、捕らえようとする。
「力を抜くでござる。」
 桂の眼差しを向けられてなお、振り付け師はそう指示した。
 桂は首を返し、正面を向く。
 ゆっくりと息を吸い、そして吐く。
「そう、そのように………。」
 力を抜いた桂の腕を、振り付け師は引いた。正面から横へと引ききったところで、手首を返す。
「そう、そのように。」
 そこから1フレーズ分の舞を、手を握ったまま舞ってみせる。
「このように、でござるよ。」
 振り付け師は手を話した。もう一度、と告げられ、桂はゆっくりと舞った。
「そう、その調子。」
 軽い拍手とともに、振り付け師はそう褒める。そして、再び桂の背後に身を寄せた。
「この舞は。」
 耳元に口を寄せ。声を低くしてささやく。
「お主をイメージして作ったものでござる。お主ならこの動きができると、信じていたでござるよ。」
「………俺がいないときは、どうするつもりだ?」
 黄色い声が高まる中、平然と桂は問うた。
「そのときは、そのときでござる。」
 振り付け師は口端を持ち上げて笑った。
 狐が笑えばこんなだろうと、思わせるような笑みだった。


 一週間後。
 《かまっ娘倶楽部》新しい芸の、お披露目の日。
 舞台直前の桂の周囲には、憂鬱な空気が漂っていた。
「ヅラ子、大丈夫よ。」
「今まで練習してきたじゃない。その成果をぶつけるときよっ。」
「あれだけがんばったんだもの。ヅラ子は本番にも強いし、とちったりしないわよ。」
「はい、深呼吸ー。」
 結局ソロでやることになった舞に緊張していると思ったのだろう、姉さん達が励ましの言葉をかけてくれる。無論、桂の心を占めるのは、初舞台への不安などというかわいらしいものではなかった。
「彼奴、来るのか………。」
 リクエストしてきた張本人だ、来ないはずがない。
 恥ずかしいとは思わない。ただ。
「………彼奴のために舞うと思われるのは癪だな………。」
 半ば意地のような、感情を覚える。
「だいたい、ねだれば何でもやってもらえると思ったら大間違いだ。そうやって甘やかすから、我慢の利かない子供ができる。願いをすべて却下するのもだめだが、無尽蔵に与えてばかりというのも子供のためにならん。」
 とはいえ、店全体を巻き込んでしまっている。いまさら、「奴を甘やかさないために中止で」なんて、言えるわけがない。
「ヅラ子殿。」
 柔らかい声で呼ばれ、振り返る。
「身体が硬くなっているでござるよ。」
 店を開いているときには滅多に現れない振り付け師の姿を認める。
「どうしたのだ?」
「それはこちらの台詞でござる。緊張してるでござるか?」
「いや………。」
 説明するのも面倒で、桂は曖昧に答える。
「拙者のすべてを、ヅラ子殿に教え込んだ。初舞台とはいえ、失敗されては困る。」
「余計に緊張するようなことを言うな。」
 口の端を持ち上げ、素直な観想を口にする。そして、そして、時計を見上げ、「時間だ。」とつぶやいた。
「ヅラ子殿。」
 舞台へあがろうとした桂の手が、それより大きな手によって取られる。
「おまじないでござる。」
 そう言い、振り付け師は手首に唇を落とした。


「………何してやがんだテメェ。」
 舞台の成功を見届け、裏口からふらりと外へ出た万斉を、低い声が出迎える。
「おや、舞台は見なかったでござるか? せっかく、お主のリクエストに応えたというのに。」
 翡翠の単眼が万斉を睨みつける。が、万斉は飄々と答えを返す。
「あんな真似しろと誰が言った。」
「かわいらしいことに、緊張しているようであった故、おまじないをかけただけでござる。」
「テメェ、」
「まるで原石のような御仁でござるな、桂は。」
 高杉のそばにより、万斉はささやく。
「磨かぬ今のままでも存分に美しい。晋介が手を加えようとせぬのも判る。が、拙者はプロデューサーであるのでな。」
 今現在の主人を覗き込むように、視線を向ける。
「磨いて得るものがあるなら、磨きたくなる性分なのでござる。」
 不遜な部下を、高杉は見上げた。鋭い眼差しは、サングラスを貫いて万斉の眼を捕らえる。
 ククっと、高杉は喉を振るわせた。
「テメェに磨けるような、そんな珠じゃねぇよ。」
「ほう?」
「あれは地中から掘り出されたり、海中で作られたようなもんじゃねぇ。」
「では、何でござるか?」
 万斉の問いに、高杉は答えなかった。
 ただ、ぬばたまの空を見上げただけだった。


 《かまっ娘倶楽部》へと戻った万斉は、接客で忙しいはずの桂が裏口にいたことに、僅かに眉を寄せた。
「ヅラ子殿? どうしたでござるか?」
「休憩だ。」
 扉の奥から聞こえてくる喧騒からするに、まだまだ客足はつきていないはず。その時分に、持ち場を離れるなど。ますます訝しげに、万斉は眉を寄せる。
「高杉には、会えたのか?」
「何のことでござるか?」
 きょとんとした顔のまま、万斉は首を傾げて見せた。
「隠すならかまわんが。」
 そう言い、桂は踵を返す。そして扉に手をかけ、振り向いた。
「俺を監視するなら、剣だこは隠したほうがいいぞ。河上万斉殿。」
 微笑みながらそう告げ、桂は店内へと戻る。
 閉じられた扉を見つめ、万斉は「やれやれ。」と息を吐いた。
「確かに、簡単に磨けはせぬようだ。」
 空を見上げる。
 そこに浮かぶは、半円に近くなった、淡く白い輝き。
 けれど、いつか。
「人は貪欲なものでござる。いずれは月さえも、己の手に落とすであろう。」




                                  ~Fin~
[PR]

by wakame81 | 2008-02-16 09:17 | 小説。  

<< BOLERO 月と三弦:前 >>