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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~春呼ぶ宴と月への讃歌・3

書き途中だったのがうっかりミスで消えるむなしさよ………orz






 新八にかけられていた嫌疑は、土方の弁護でひとまず収まった。
 そして、新八の≪眼≫のことを知る土方に頼み込み、中華街の中に共に入ることにも成功したのだが。
「万事屋と桂が?」
 ここに来た理由を正直に話した新八は、土方の反応に戸惑う。
「桂のやろう、何企んでやがる。」
「企んでるなんて、そんなっ。桂さんはギンさんや神楽ちゃんを心配して来てくれただけですよっ。」
「判ってるよ。何もテロに関係してるとは思ってねぇ。」
 普段は観光客で賑わうだろう道を、土方と新八は北へ向かう。他に誰も、何も通る気配はない。
「ただ、≪出雲≫から手紙が来たってことは、これが妖魔がらみのテロだって奴は最初から知ってたって事だろ。それでも動いたってことは、俺らをまったく信用してねぇって事さ。」
「それは………。」
 先ほど、山崎に向けた桂の言葉を思い出す。つい、眼が泳いでしまうが、土方は気にしてないのか気づいてないのか、新八の様子につっこむ気配はない。
「まぁ、手前の退魔能力を持たない俺たち真選組は、≪出雲≫や桂みてーな古参の連中から見たら素人に過ぎないんだろうがな。」
 言いながら土方は、腰の刀に眼をやった。
 妖刀だというそれは、先ほどのキョンシーのような妖魔だけでなく、実体を持たないモノにも退魔の力を持つという。逆を言えば、妖刀がなければ、土方は一般人も同じだということだ。
「土方さん………。」
「妖魔連中になめられっから、退魔能力を持った伊東のほうが局長に向いてんじゃねーか、っていう意見もあるくらいだしな。だがそれじゃ、意味がねぇんだ。」
「意味、ですか?」
「あぁ。」
 煙草を口にくわえ、マヨ型ライターで火をつける。一息煙を吐き出してから、土方は続ける。
「たとえばお前、桂の力を見たことあるか?」
「はい。」
 年末に見た、彼の太刀筋と破壊的な光を思い出す。
「アレは、妖魔を祓う能力だって奴は言ってるがな。当然、人間に対してもダメージを与えることはできる。一般人から見たら、妖魔も能力者も同じようなもんなんだよ。」
「そんなっ。」
 思わず新八は声をあげた。
「桂さんはそんなんじゃ、同じなんかじゃありませんっ。」
「それは、お前が、生の桂や万事屋やチャイナ娘を知ってるからだろ? でもそうじゃねぇ奴の方が、ずっと多いんだ。」
 黙り込む新八を横目で見てから、土方は紫煙を空に吐き出す。
「それに、≪黙示録の戦い≫で世間に妖魔の存在が知れたときの排斥運動で、≪出雲≫は擁護に回ったからな。中立立場で、排斥に反発する妖魔の暴発を抑えるのもやってたのは俺は知っているが、世間はそうは見ちゃくれねぇ。どうしても、あっち側に見ちまうんだよ。」
 桂の言っていた、闇の世界。
 その隔たりを、また感じる。
「だから、真選組の局長は、近藤さんじゃなきゃならねぇ。妖魔でも能力者でもねぇ、普通の人間でなきゃならねぇんだ。≪出雲≫とは違う、人間の味方だってことを知らしめるために。」
「土方さん………。」
 新八はまじまじと、土方を見つめた。
 彼の矜持を、強く感じる。
 確かにそれは、桂などにはもどかしく感じるだろう。闇の世界のルールを、無視せざるを得ないこともあるだろう。

 けれどそれは、土方なりの。

「おかげさまで、余計に妖魔連中には警戒されてっけどな。ここの連中も、内輪もめだから手を出すなとか抜かしやがって。」
「え?」
 急に話題が方向転換し、新八は面食らう。
「ここの連中?」
「横浜中華街を本拠地とした、中国系の妖魔派閥さ。≪孔雀姫≫とは協力体制を組んでるが、それとは別の派閥との小競り合いだとか言ってきやがった。………一般人にどれだけ被害出たって思ってんだ。」
 土方の口調に、苦々しいものが混じる。
 真選組が中華街への入り口を固めるだけだったのも、土方が単独で動くのも、そのせいだということを新八は悟る。
 そして、話に夢中になっていたために、反応が遅れた。
 ぞわりと総毛だった時には、新八は土方に突き飛ばされていた。その土方を、うなる大剣が張り飛ばす。
「土方さんっ。」
「いい、平気だ。」
 上手く妖刀を盾にして直撃を防いだ土方が立ち上がる。一瞬新八は体の力を抜くが、土方の前に立ちはだかる巨体に息を飲んだ。
「ほう。ワシの一撃を受け流すとは、大したものだ。」
 日本の武者のような鎧に身を包み、身の丈もあろうかと思える大剣で武装した大男が声を振るわせる。土方は刀を構えなおした。
「そっちこそ、いい度胸じゃねーか。この俺に殴りかかろうなんざな。」
「ワシにそれを言うとは、余程の手練と見た。名を名乗られよ。」
「何だ、度胸があるんじゃなくて、ただ物を知らねーだけか。特殊警察・真選組副長、土方十四朗の名くらい聞いたことあんだろ?」
 大男は首をかしげる。
「いや、覚えがないな。」
「あぁっ?」
 土方は苛立った声をあげた。眉間にしわが寄る。けれどその口端は、ニヤリと持ち上げられた。
「丁度いい、ここで覚えておけっ!」
 言うなり土方は斬りかかった。大剣が唸りを上げて振るわれる。それを身をかがめてかわし、土方は刀を逆袈裟に払う。かわそうとしなかった大男は、刃が鎧に食い込むのを見て表情を変えた。
「何ぃっ?」
「どうしたよ、余裕消えてんぞっ?」
 さらに振り下ろす。今度は鎧のつなぎ目とその下の肉を断ち切る。
 大男は呻き声をあげて後ずさる。それを追う土方に再度大剣が迫る。土方が横に飛んでかわす間に、大男は距離を取った。
「すごい………。」
 新八は息を飲む。
 大男も弱くはないことは、大剣が振るわれるたびに空圧で亀裂の入る建物や道路で判った。けれど土方は、その大男の剣をかわし、あるいは受け流し、そして着実に重装備の大男にダメージを与えている。
 土方の強さに眼を奪われていた新八は、不意に大男が笑ったことに気づいた。そして土方の後ろにもう一つの人影。
「土方さっ」
 新八の言葉をかき消すように、銃声が鳴り響く。至近距離で撃たれたそのニ発の銃弾は、土方の右肩と左わき腹を貫いた。
「土方さんっ!」
 倒れ伏す土方に駆け寄ろうとした新八の前に大男が立ちふさがる。一瞬怯むがそれでも突っ込もうとした新八の左即頭部に、鈍痛が走って体ごと吹っ飛ばされた。
「よくやった、岩慶丸、≪レミエル≫。」
 大男と土方を撃った影。その他に三人目の足音と声が響く。
「真選組の副長か。局長と参謀が出張っていなければ、これで余計な邪魔も入らず、≪玉兎≫を狩れるというもの。」
「ぎりぎりで急所かわされたっすからね。コイツまだ生きてるっすよ?」
 若い女の声が応える。土方を撃った影だ。
「止めを刺すなら。」
 女はそう言って、銃口を土方に向けた。痛む頭を押さえながら、新八は片手を伸ばす。
「やめ………っ。」
「へぇ。」
 銃口は土方に向けたまま、女は新八へと向き直った。
「岩慶丸に殴られて、まだ意識があるなんて。アンタ手加減したっすか?」
「武器も持たぬ一般人に、本気など出さぬ。」
「まぁいいけど。」
 女は、三人目の男へと視線を向ける。
「陀絡。こいつ、どうするっすか? アタシ達のことばっちり見られたけど。」
「見覚えがある。確か、万事屋の関係者だ。」
 陀絡と呼ばれた男は、ふむ、と顎に手を当てて考える。
「………使えるな。よし、連れて行け。」
 陀絡がそう言うと、闇の中から数人の人影が現れる。どれも一様に、陀絡のように耳が尖っている。
 その妖魔たちによって、新八は縛り上げられた。
 陀絡はそれを見届け、満足そうに空を見上げる。
 うっすらと雲がかかり、星が瞬く空。月は出ていない。
「カウントダウンだ、≪玉兎≫。≪龍穴≫と≪月への道≫は、今宵より我々≪春雨≫のものとなる。」
 謡うように陀絡は言う。
 その陀絡を、≪レミエル≫が一瞬、冷ややかな眼で見やった。
「行くぞ。」
 陀絡の号令に、一同は歩き出す。
 血を流して倒れたまま動かない土方に、新八は必死でまなざしを向ける。
(誰か。)
 そう、祈るようにつぶやいた新八は、次の瞬間眼を疑った。

 土方の側にたたずむ、白い和服の女性の影。
(誰………?)
 薄茶の髪のその女性が、屈み込むように膝をつく。

 不思議といやな感じがしない。
 それだけを確信して、新八は意識を手離した。




                               ~続く~

by wakame81 | 2008-02-10 01:52 | 小説:ギンタマン  

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