人気ブログランキング | 話題のタグを見る

お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

君想ふ唄~2月7日~

てる彦誕生日。
こっちは本腰入れて書いてました。てる彦くんより誕生日の記憶薄いジミーって(笑)。






「ただいまー。」
「「「HappyBirthdayてる彦くん!!」」」
 店のドアを開けると、複数の野太い声とクラッカーが鳴り響く。
「うわー、すっげぇ! ホントにオカマばっかだぁ!」
「きもーい!」
「きもいとか言う口はどの口かなぁぁぁ?」
 初めててる彦の家(正確にはかまっ娘倶楽部店内)に来た学友たちが、さっそくお定まりのことを口走り、西郷ママに睨まれている。
 ホステス達の化粧は、いつにも増して気合いが入っていた。よっちゃん達何度か来た事あるメンバーも、あまりの濃さに若干引いていた。さすがに、感想を素直に口にするほど愚かではなかったが。
「ママ、子供達怯えてるわよー。」
「怯えちゃってカワイイのは判るけどー。」
「でもホントかわいいわねぇ。どう? お姉さんと遊ばない?」
「もみ恵、アンタこそ怯えさせてるから。」
 子供達にオカマの洗礼を授けるホステス達を抑え、西郷ママは奥の座敷へと道を開く。
「今日は、てる彦のために来てくれて、どうもありがとうね。」


 座敷の机に所狭しと並べられたごちそうの山に、子供達は目を輝かせた。
 上座にてる彦が座り、他の子達も思い思いの場所に座る。開いたところをホステス達が埋めた。
「あれ、まだ席空いてるよ?」
「誰か来るの?」
「ちわーっす。」
 そこへタイミングよく、店のドアが開く。店先の「本日貸し切り」の張り紙を見ていた子供達は、不思議そうに顔を合わせた。てる彦だけが嬉しそうに腰を浮かす。
「おにいちゃんっ!」
「どーも、万事屋でっすー。」
「本日はお招きにあずかりま」「ごちそうアルーーーーーー!!」
 眼鏡の少年の挨拶を遮って、桃色の髪の少女が座敷席に駆け込んできた。入り口近くにいたよっちゃんの顔が青くなる。
「すっげーー、美味そうアルよ銀ちゃんっ!」
「神楽ちゃん、まだ食べちゃダメだよっ。今日は他の子達もいるんだからっ。」
 眼鏡の少年新八に止められ、神楽は特大オムライスに伸ばそうとした手を渋々引っ込めた。
「あ、よろずやの。」
「白髪のにいちゃんだー。」
「誰がじいさんですかコノヤロー、人の外見見て笑う子はろくな大人になりませんよー。」
「いたたたたたたたたっ。」
 白髪と言った子を目敏く見つけ、万事屋店主銀時はこめかみぐりぐりをしかける。
 そんなこんなでやってきた三人も席に着いた。が、空席はあと二つ。
「ねぇおにいちゃん。」
「あん?」
「もう一人のおにいちゃんは?」
「さー? どっかでかくれんぼでもしてんじゃねーの?」
「えーなんだソレー。」
 事情を知らない他の子達から笑い声が上がる。てる彦だって、笑いたかった。銀時もソレを狙って軽い口調で言ったに違いない。
 主賓の自分が暗い顔してはいけない。何とか口端を持ち上げようとしたとき。
 フッと、店内の電気が消えた。薄暗い中、11本のろうそくを灯したケーキが運ばれてくる。
「時間よ、始めるわ。」
 西郷ママの合図で、野太い声の「ハッピーバースデートゥーユー」が始まった。子供達の高い声もすぐそれに加わる。
 歌い終わりと同時に、てる彦はろうそくを吹き消した。拍手とともに電気が再び灯され、パーティーが始まった。


 たくさんのごちそうは、あっという間に(若干一名の手によって)空っぽになった。それからプレゼント贈呈や、UNO大会がおやつをつまみながら行われた。
「ドロー2。」
「ドロー2っ。」
「ドロー2☆」
「ドロー2アル。」
「ドロー4、黄色で。」
「ドロー4、緑よん。」
「ドロー4、黄色ー。」
「ドロー4、んー青?」
「マジでーっ?」
 そんなコンボに新八が沈没したりする最中。三度、ドアが開く。
 今度入ってきたのは、白くて大きくて、つぶらな瞳の妙ちくりんなイキモノだった。子供達から、驚きと笑いの歓声があがる。てる彦も立ち上がって、その白ペンギンに駆け寄った。
「よかった、来てくれたんだねっ。」
『遅くなってすまない。』
 その後ろを見て、いるはずの姿がないことに気がつく。
「あっれー、エリー、ヅラはどうしたアルか?」
『ちょっと、鬼ごっこを。招かれたのだから参らねば失礼に当たるからと、自分だけ先に来ました。』
「……そう。」
 嬉しさが、それだけで半減する。が、せっかく来てくれた客人にそんなことを気づかせてもいけない。てる彦は顔を上げ、笑った。
「エリザベスさんだけでも来てくれてありがとう。」
『これは、プレゼントです。』
「うん、ありがとうっ。」
「てる彦ー、次お前の番だぞー。」
「あ、今行くよっ。」
 ゲーム卓に駆け戻って、緑の数札を出す。それからエリザベスの方を向くと、西郷ママや、いつの間にかゲームから抜け出した銀時と、なにか話をしていた。


 やがて暗くなり、学友達は帰って行った。UNO大会は今度は「オトナの部(はぁと)」(ビリ上がりがゲゲボカクテルを飲む。新八、神楽、てる彦の場合は一位上がりでお菓子進呈)へと突入していった。
 お菓子に釣られて本気モードの神楽と、オトナの余裕を見せるホステス達のガチバトルになった結果。かまっ娘倶楽部の店内には、ゲゲボカクテルにノックアウトされた夜の蛾たちの屍累々が転がっていた。
 時計が、夜の九時を告げる。
「………おそいなー………。」
 やっと静かになった店内で、てる彦は一人呟く。
「なーにがよ。まだまだ宵の口じゃねーか。銀さんまだまだいけますよー?ウォェッ。」
「顔真っ青ですよ、銀さん。」
「んじゃ、次はこのお菓子を賭けるアルよっ!」
「神楽ちゃん、それてる彦くんへのプレゼントの一つじゃないっ!」
 神楽の手から慌ててお菓子詰め合わせを救出する新八に、てる彦は笑う。
「ごめんねてる彦くん。」
「ううん。」
「ちぇー新八のけちー眼鏡ー。」
「ちょっと待てぇぇぇっ。何それ眼鏡って罵声なのっ?」
「いいよ、神楽ねえちゃん、一緒に食べよう。」
「ほら見るアルよ新八。てる彦はオメーよりちっちゃいのに、器はでっかいアル。これが男の器ってやつヨ。それもわかんねーのか駄眼鏡。」
「あーはいはいすいませんでしたぁぁぁ! てる彦くんも、ごめんね?」
 神楽はさっそく袋を開けた。新八が新しいジュースを持ってきて、大人達と宇宙怪獣の屍の中、子供だけのささやかなパーティーが始まる。
 ちらりと、もう一度時計を見た。九時二十分。
「………………おそいなー。」
「桂さんが?」
 おやつのカ○ルを詰め込んで喉を詰まらす神楽の背中を叩く新八の顔を、てる彦はまじまじと見つめた。
 時々会うときと、変わらない、落ち着いた顔。それは、神楽も。
「新八にいちゃんや、神楽ねえちゃんは心配じゃないの?」
「んー。」
 困ったように、新八は笑う。どう説明したらいいのか、判らないというように。
「まぁ、絶対とは言い切れないけどね。でも、あの人の場合、心配してもきりがないじゃない。」
「ヅラが、そこら辺のヤツに捕まるわけないアル。私の部下にそんな軟弱モノはいらないネ。」
 二人の顔を、てる彦は交互に見つめる。
 二人は、自分よりも桂と会うことが多い。彼の強いところも、たくさん知っている。もちろん、自分だって知らないワケじゃない。
 けれど。
「もしもってことだって、あるじゃない………。」
 その「もしも」が起きたのは、ほんの2、3ヶ月前だ。
 まさかと思われた、桂小太郎の投獄。本人はあっさりと脱獄して、西郷ママの誕生日にも姿を見せてくれた。それがまた、今度は取り返しのつかない形で起こったって、不思議じゃないのだ。
「もしもの時は、その時ネ。」
「その時は、僕たちだって手伝うよ。」
 気負うことなく神楽も新八も口にした。
 てる彦も知っている、それがどんなに大変なことか、二人だって理解しているのに。
「それにね。ほら。」
 新八に促されて、てる彦は振り返った。そこには、「うぇ~~気持ち悪っ」と青い顔をした銀時がソファの肘掛けにもたれかかっている。
「銀さんがああしてのんきにしてるんだから、大丈夫だよ。」
「………え?」
「ヅラが本当にやばいことになったら、銀ちゃんが黙ってないネ。銀ちゃんが本気になったら、ヅラだってイチコロヨ、ひと思いに成仏できるアル。」
「神楽ちゃんそれ励ましになってないからっ。桂さんイチコロにしてどうするのっ。」
 てる彦は改めて、肘掛けから床にずり落ちた銀時を見つめる。

 自分を助けてくれた腕。
 自分に勇気をくれた言葉。
 自分と自分の大好きな人を、解ってくれた眼差し。今それは、死んだ魚通り越して本人が死にそうになっているけれど。


 そこへ、またドアが開いた。
「すまぬ。カスどもが予想外にしつこくてな。」
「おにいちゃんっ。」
「遅くなってすまない、てる彦君うわっ?」
 外衣を脱ごうとした桂の身体に、思いっきりしがみつく。黒い外衣は冷たく、そしてほこりっぽい。どことなく、火薬臭い気もする。
「てる彦君?」
「………うん。」
 ここへ来るまでに彼は、どれだけの苦労をしたのか。いや、それは今日でなくても起こることで、彼にとって特別なことではないのは判っている。
「ヅラ、遅かったアルな。酢昆布あるカ?」
「神楽ちゃん、主賓より先にものねだっちゃダメだよ。」
『桂さん、ご無事で。』
「んん~~~、ヅラ子ぉ?」
「あらやだ、もうこんな時間? すっかり寝ちゃったわ。」
「みんな、ヅラ子が来たわよぉ。」
「うぇぁ~~~キモチワリぃ。いちご牛乳………と。」
 西郷ママの声に、寝ていたホステス達も目をこすって起き上がる。やっと来た最後の客に、それぞれが挨拶し、てる彦にもよかったわねと声をかける。
「よ、ヅラぁ。」
「ヅラじゃない、桂だ。まったく、主賓放って寝こける奴がいるか。」
 頭の上で繰り広げられたやりとりに、てる彦はほっと息を吐いた。

 これが、今日一番の贈り物。



                       ~Fin~

by wakame81 | 2008-02-07 22:51 | 小説:君想ふ唄  

<< ~Melody of the ... 第92話。 >>