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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

君想ふ唄~9月4日~

誕生日特典があるココスのほうがよかったかなと思いつつ、母校の近くにあったのはガストなのでつい(爆)。安いしね!






 気を遣ってくれているのは判る。それが、嬉しくないわけじゃない。むしろ逆だ。
 だが、その気遣いが、逆に泣きたくなるときもある。
 誰もいない教室に戻って気はしたが、それでもなぜだか、泣くのは気が引けた。
 泣く場面じゃない。
 笑って、礼を言う場面だと、理解しているからだろうか。
「………文化祭、か。」
 隣のクラスでは、まだ電気がついていた。他のクラスもそうだ。迫る本番に向けて、どこのクラスも準備で忙しいのだ。
 今年、自分のクラスが文化祭に何をやるのかを、近藤は知らない。
 近藤だけじゃない、土方も、沖田も、おそらくクラスの全員が。
 文化祭へのクラスの参加は強制だったが、担任の銀八はそれを判っていて、あえてクラスでは何もやらないと言い出した。

『強制されなくてもやるヤツは有志でやりゃぁいいし、やらねーヤツはさぼってばっかでどうせブーイングばっかりなんだ。だったらやる必要ねーだろ。メンドーだし。』

 それでも、クラス参加の体裁は整えなくてはいけなかったから、何かしらの企画は出したはずだ。けれど、それを誰も知らない。
 あの銀八が一人で準備をするとも思えないけれど、実行委員に企画が通っている以上、何かは出したはずだ。それを知っているのは、銀八と、企画代表者として署名をさせられた桂だけか。
「………なんか、さびしいな………。」
 一年の時から、ずっと風紀委員で、文化祭当日も、準備期間も、忙しかった。クラス企画になんか、協力できなかった。
 今年何をやるにしても、近藤が手伝えないのは変わらないのだけれど。
「せめて、お妙さんの企画くらい、手伝いたかったなー。」
 詳細は知らないが、模擬店をやるらしい。クラスの女子の半数が、それに参加してる。
 他にも何人か、有志で参加しているらしい。それか、クラス企画がないぶん、各部活で出している企画に力を入れているか。
 銀八の言うとおりだ。強制でなくとも、やる気のあるヤツはやる。
 まっさきに動き出したのは、お妙だった。
 美人で。
 優しくて。
 面倒見が良くてクラスの姉御的存在で。
 そして、こんなバイタリティがある。
 好きだと、思う。
「………お妙さん………。」
 ひょっとしたらと思って、自分の机やロッカーを漁る。………自分の私物以外のモノは、入っていない。
「………ひょっとして、渡し忘れたとかー。」
 淡い期待の元に、お妙の机に手を入れようとした、その時。

 がらららっ。

 音を立てて、教室のドアが開く。
 近藤は3メートルくらい一気に飛び退った。


「うわぁぁぁお妙さんすいませんそんなつもりじゃぁぁぁぁっっっ!」
「近藤………?」
 入ってきたのは、桂だった。後ろにペットの白ペンギンを連れている。………そういえば、文化祭まで、同伴登校が認められていたっけか。
「明かりがついていると思ったら、お前か。何をしているんだ?」
「………いや、忘れ物を………。桂は?」
「俺も、忘れ物だ。」
 近藤の奇声や行動を、気になったというそぶりは見せず。桂はまっすぐに、自分の席へと向かった。その後ろを、白ペンギンが続く。
 机の中から、一枚のプリントを取り出す。そして鞄を開いて、ペンケースを取り出した。
 何かを書くらしい桂が気になって、横からのぞき込む。
「2年A組企画『ややウケの金メダル』………? なんだこりゃ?」
「申し込み締め切りが今日に早まったと、屁怒呂くんに教えてもらってな。急いで戻ってきた。」
「急いでって、まさか家からか?」
「いや、音楽室から。」
 何か部活をやっていただろうかと、近藤は考える。そういえば、屁怒呂と親しいことと言い、桂のことを何も知らない。
 桂はきれいな字で、必要項目を埋めていく。
「エリザベスって、アイツと一緒にか?」
「当然だ。」
『ネタも結構決まってるんですよ。』
 ペットと一緒に登校し、ペットと一緒に漫才グランプリに出る。ここまで変なヤツとは、知らなかった。
 去年同じクラスだった沖田は桂と話すことが多いが、自分はちゃんと話すことが少ない。
 そう思うと、この変わったクラスメイトを、まじまじと見つめてしまった。
 色が、白い。
 顔立ちも、整ってると思う。そういえば去年は沖田と二人で女装させられていた。
 普段切れ切れと言っている髪も、こうしてみれば似合っていると思う。よく、神楽やお妙が結って遊んでいる(羨ましい)。
 成績も、確かよかった。悪いのは英語くらいか。外国語に聞こえて頭がこんぐらがると、弟(お妙の)に話していたのを聞いたことがある。
 運動もできる。
 まじめで、教師たちの信頼もある。学級委員を務めるくらいだし。
 変なペットを溺愛しているけれど、個性派揃いのZ組ではかわいい方だろう。
 本当に。
「もったいないよなぁ………。」
「何がだ?」
 ぼんやりとした思考をつい口にしていたことに気がつき、近藤は口を押さえた。すでに遅かったようだが。
「いや、その………お前の髪。」
「髪が、どうした。」
「俺達や先生に目をつけられてまで、何で伸ばすんだ………?」
 それさえなければ、非の打ち所がない優等生なのに。
 あの文化祭顧問だって、授業中の桂を見ればわかる。髪なんて些細なことと思えるくらい、まじめな姿。
 髪型一つで余計な偏見を持たれるのは、本当にもったいないと思う。
「………近藤は。」
 少し考えるそぶりを見せて、桂は口を開いた。
「どうして、髭を剃らないんだ?」
 返ってきたのは、答えではなくさらなる問いかけ。
「どうしてって………。」
 深い意味はない。
 体毛の濃い自分の体質のせいだと判っている。けれど。
「まぁ、それが俺らしいってことなんだろうな。」
「長谷川くんも、そう言っていた。サングラスがないと自分ではない、と。」
「あー、らしいなぁ。」
 おかげで高校生に見えず、アルバイト探しにも苦労しているらしいクラスメイトの顔を思いだして、近藤は思わず笑いそうになった。
「俺も、そうだ。」
 笑わなかったのは、続けられた桂の言葉のため。
「髪を伸ばし続けるのは、俺にとって大事なことなんだ。近藤たちには、些細なことに思えるかもしれないけれど。」
 そう言って、胸元へと落ちる髪にそっと触れる。俯せた表情は見えず、桂が今、どんな顔でそんな事を言ったのか、近藤には見当もつかない。
「だから。切ってなどやらない。」
 顔を上げた。
 そこにあるのは、いつものような無表情の桂の顔。
「桂………。」
「それでは、先に失礼する。」
 今までのやりとりはなんだったのか。そう言って、桂は席を立った。歩き去ろうとする背中を、近藤は呆然と見送る。
「近藤。」
 ドアのところで、名を呼ばれてはっとした。
「今俺が言ったことは、気にするな。」
「え?」
 気にするなと、言われても。
「………それと、やっぱり髭は剃った方がいい。女子に不評だ。それこそもったいない。志村姉だって、きっと。」
 顔だけ振り向いた桂と目があった。
 桂は、笑っていた。

「誕生日おめでとう。」

「桂………。」
 何で知って、と言いかけた。考えてみれば、夏休み前からお妙にプレゼントをねだっていたのだから、クラス中が知っていて当然だ。
「明日T字髭剃りを持ってきてやる。それで剃れ。頑固な長い髭も一発だ。」
「………っ、お前こそ、髪を切れっ。」
「嫌だ。」
 それだけ言って、桂は白ペンギンと共に教室を出て行った。
 後に、近藤一人が残される。
「何なんだ………。」
 一人で呟いて。それから、笑いがこみ上げてきた。
「変なヤツ。」

 お妙の机を漁るのはやめた。
 明日、もう一度プレゼントをねだろう。



                         ~Fin~

        

by wakame81 | 2007-09-18 10:15 | 小説:君想ふ唄  

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