お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

ノーサイド:後

そういや美少年と美幼女の組み合わせであることに、言われてから気がつきました(爆)






 中庭の池のそばの茂みまで走って、やっと僕は止まった。
 息をつきながら、ふりかえる。
 握った手の先には、白くて細い腕。そして、きれいな人の姿。
「………ごめんなさい。他の道場のひとに、こんなこときいたのをパパ上やおじいさまに知られたら、おこられちゃうから。」
「まぁ、門下生が他流派に教えを請えば、その道場は指導力………教えるのが下手だと言うようなものだからな。」
「パパ上がおしえるのがへたなんじゃないんですっ。ただ………っ。」
 言葉に詰まった。
 僕が女の子で、だから強くなれないということは、だれにも言っちゃいけない秘密。もちろん、この人にだって。
「強くなる方法が、判らない?」
 静かな声でそう言って、その人は池のそばに座った。
「九兵衛君、と言ったね。何故、強くなりたいのか?」
 おいでおいでされて、僕もそのとなりにしゃがみこむ。
「なぜって………みんながそういうから。」
「お前自身は、強くなりたくないのか?」
 ないのかな。
 そう言われて、僕は迷う。
 そんなこと聞かれたのは、初めてかもしれない。
「整理しなくていい。思ったことを話してごらん。」
 その言葉に後押しされるように、僕は口を開く。
「僕の友だちに、すっごく強い子がいるんです。女の子なんだけど。よその男の子にも負けなくて。」
「うん。」
「その子みたいになりたい、て、おもうんです。でも………。」
 ひざを抱え込んだ。コレを言うのは、恥ずかしい。
「でも?」
 その人は、優しく促してくれた。僕はもう一度、言葉をつなぐ。
「………こわいんです。刀が、僕にむかってくるの。」
「そうか。」
 その人は、小さく笑った。バカにされてるんじゃなくて、何だか優しい笑い方。
「誰でも、刃を受けるのは怖いモノだ。真剣であろうと、木刀や竹刀であろうと。」
「あなたも?」
「そうだ。特に、神道無念流は胴狙いに弱いことが江戸中の道場に知られているからな、打たれないように逃げるのが必死だよ。」
 信じられなかった。
 あんなに強い………北大路をあっという間に倒すような人が、刀が怖い?
「だが、ただ怖いあまりに目をつぶってしまうと、迫る刃が見えなくなる。それでは、やられてしまう。恐怖を抑え、立ち向かうことが大事なのだ。」
「こわいのを、がまんするってことですか?」
「ただ我慢するのとは少し違うな。その先を見るというか。」
 少し考えてから、その人は立ち上がる。辺りを軽く見回して、落ちていた小枝を拾った。
 短いそれを軽くふって、一緒に立たせた僕の頭に当てる。
「今お前は、ただ黙って俺に打たれた。もう一度叩くから、今度は何とかしてごらん。」
「なんとか?」
「避けるでも、この枝を止めるでもいい。もちろん、敢えて打たれても構わない。ほら、行くぞ。」
 もう一度その人は、枝を振る。ゆっくりだったので、僕は右に出てそれを避けた。すると、その人の体が横を向いたまま僕の前に来る。
「そこでお前が攻撃をすれば、俺は体の向きを変えねばそれを避けられない。お前が枝を止めても同じ、受けられた枝を手元に戻さねば俺は打たれる。敢えて打たれるのもそう、枝を振り切った俺に隙ができるから、お前は攻撃できる。だが。」
 僕の方へとふりかえった。もう一度その人は、枝を構える。
「目をつぶっていたり、ただ我慢して打たれているだけでは、攻撃はできない。そういう事だ。」
 パパ上やおじいさまの言葉よりもそれは、僕の中にすとんと落ちる。
「それができたら、僕も強くなれます?」
「後は、童の努力次第だかな。」
「ほんとに? だって僕は、」
 男の子じゃない。武士に、なれない。
 下を向いてしまった僕の頭に、そっと手が置かれる。大きくて細くて、あたたかい。
「強くなろうと思う者が努力をすれば、必ず強くなれる。そこに、身分や男女の違いなどない。」
 その言葉に、僕は顔を上げた。
「ほんとう、ですか?」
「本当だ。俺とて、生まれは武士の家ではないからな。」
「そうなんですか?」
 その人は、しゃがみこんで僕と同じ高さに視線をあわせてくれた。
「そうだ。だが、それでも童が見込んでくれるほどには強くなれた。俺の知り合いには、生まれがどことも知れない馬の骨だが、俺よりも強い奴がいるぞ?」
 おどろきすぎて、僕は一歩後ずさった。その人はにっこり笑って、ぽんぽんと僕の頭を叩く。
「童は、侍というのが何か、判るか?」
「侍………武士のことですよね。」
「違うぞ。」
 その人は、得意そうに笑った。
「武士にも、酒に溺れる者もいる。身を持ち崩す者もいる。日々の暮らしに事欠いて、刀を手放す者もいる。稽古をさぼり、堕落する者もいる。一方で、農民や町人の中にも、その魂を認められ、刀を帯びることを許される者もいる。」
 難しい言葉だったけれど、その人の言いたいことは、何となく伝わってきた。僕はじっと、次の言葉を待つ。
「農民は精魂込めて田畑を耕し、実りをもたらす。職人は地道な作業で、様々なモノを作り出す。それらを商人が、日本中に行き渡らせる。己の職に誇りを持ち、そして大切な、譲れないモノを持っている者は皆、刀を持っている。」
「刀を?」
「そう。ここにだ。」
 そう言って、その人は、自分の胸に手を当てた。
「皆、ここに一本の刀を持っている。これを錆びつかせるか研ぎ澄ますかは、その者次第だ。」
「………僕にも、ありますか?」
 恐る恐る尋ねる。
 その人は、力強くうなずいてくれた。
「もちろん。俺に、強くなる方法を問うてきた童には、立派な刀があるぞ。」
 その言葉に、僕は嬉しくなった。
 妙ちゃんみたいに強くなれる。いや、強くなる。
 それまで、憧れでしかなかったものが、少しだけだけど、近づいた気がした。


 その人は、一年もしないうちに江戸を去った。
 次に僕がその人を目にしたのは、攘夷戦争が終わった後。町中に張られた、手配書だった。
 その人が強くなりたかった理由を、幼い日、最後に僕は聞いた。
『護りたい、と思ったからだ。時代のうねりから、人々の誇りを。胸の中の、刃を。』
 そう語られた理想を、その人はまだ、護り続けている。
 けれど時代は、その人にとって厳しさを増している。天人だけでなく、今や幕府からも追われる身となってしまった。
 その先鋒と、先日知り合った。
 妙ちゃんをめぐっての戦いだったけれど、万事屋や彼らのおかげで、僕は過ちに気づいて、そして何かから解放された。
 気持ちのいい、人たちだった。けれど、あの人を捕らえようとする人。あの人の、敵。
 好きだと思う人たちが、己の刃に殉じた上で敵対するのは、とても辛かった。
 できる、ことなら。
 そう思うのは、むなしい夢だろうか。


「多分、俺達こうしてラップとロックを融合することで地球平和を訴えていたと思うんだ。」
「お上も革命家もアテにならん。真の平和はミュージックで勝ちとるものだ。」
 今。
 僕の目の前に、夢見た光景が広がっている。
「やるなら今しかねーZURA♪ やるなら今しかねーZURA♪ 攘夷がJOY♪ JOYが攘夷♪ ふざけたYOUに俺が天誅!」
「ちょっとちょっと待って!! ねェ待って! わかんない、合わせづらい。それから攘夷って何!?」
 二人は今、記憶がない。互いの立場も、自分のこともわからない。戻ってしまえば、夢は夢へと帰る。
 けれど。
「だからそこは『天誅』じゃなくて『御用改めである!』の方がいいって!!」
「長すぎるだろうが!!」

 それでもその夢は、確かにここにあった。



                         ~Fin~
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by wakame81 | 2008-01-14 20:46 | 小説。  

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