お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

イレギュラー・ホリデー

1月21日は、薩長同盟が結ばれた日なので、「ライバルが手を結んだ日」と記念されているそうです(笑)。
とゆーわけで、土方&桂さん。いや、他に、「桂さんのライバル」みたいな人が見あたらなくて(爆)。






 泣く子と地頭には勝てない。
 土方の頭の中を、そんなことわざがぐるぐると回っていた。


 久しぶりの休日だった。
 朝一番の沖田の襲撃をかわし、朝二番も退け、朝三番がやってきたところで業を煮やして沖田を一番隊と共に屯所から放り出した。これで落ち着けると思いきや、トッシーを召還するような第四の罠が部屋に仕掛けられていた。
 いい加減疲れてきたのと、折良く10時を回っていたので、今から出れば少し早い昼飯にありつけると思い、遠出して新しい店を探そうと思った。
 そんなわけで、かぶき町から少し離れた商店街をぶらついていたところ。
 狭い路地を行く自動車を避けたら、おもちゃ屋の店先でロケットの模型を眺めていた男の子にぶつかり、謝るついでに「親はどうした?」と聞いたのがまずかったのだろう。
 それまでおもちゃに夢中で、親とはぐれたことに気づいていなかったらしいその子供は、あたりをきょときょとと見回した後。
「お”か”あ”さ”ん”~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ。」
 思いっきり大声で、泣き出したのだ。


「泣きてぇのはこっちだよ………。」
 子供の目の前で煙草を吸うわけにもいかない。
 いらいらと頭を掻きむしりながら、土方は呟いた。
 と言っていても始まらない。
「おい。」
 未だ泣きやまない子供に、何度目かの問いかけをする。
「お前、名前は?」
「う”わ”ぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「家どこだよ。ここら辺なのか?」
「お”か”あ”さ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん”!」
「親とここまで来たのか?」
「う”わ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”!!」
「………………。」
 埒があかない。
 ついでに、さっきから泣きわめく子供のおかげで、道行く人からの視線が痛い。おかげで、抱き上げて交番へ移動することもできない。下手したら誘拐犯に間違われそうだ。
 パトカーを呼んだほうがいいだろうか。いや、確か、代々木方面で事故だといって出払っていた。こっちに来るまで時間がかかる。
(ていうか、こいつの母親さっさと通りかかれ………っ。)
 これだけ目立っているのに、子供の名を呼んでかけよる人がいない。探してないのだろうか。
(まさか、捨て子ってワケじゃないよな。)
 そんな、イヤな予感を感じ始めた頃。
「全く、何を泣かせているんだ芋侍。」
 薄鼠の袖の先から伸びた白い腕が、ひょいっと子供を抱き上げる。
「てめ………っ!!」
「そんな怖い顔で睨みつけるから、童が泣きやまんのだ。おおよしよし、怖かったろう。ほうら、高いたかーい。」
 そう言って、子供をかかえた腕を高く伸ばす。手慣れた様子。泣きわめく子供や土方に対し、動揺しない涼しい顔。
「桂っ!」
「だから目をつり上げるな。」
 平然とした顔でその指名手配犯は土方を見据えた。


 高い高いでは泣きやまない子供を、今度は抱きしめて、あやすように背中を叩く指名手配犯を、土方は苦虫を噛み潰した顔で見つめていた。
 土方が何をやっても泣きわめくだけだった子供は、未だしゃくりあげているものの、だいぶ大人しくなっている。
「おい芋侍。」
 片手でひょいひょいと土方を呼ぶ。
「何だよ。」
「こっちに来い。」
「何様だテメェっ?」
「何様じゃない、桂だ。今俺は手が離せんのだ、貴様がこっちに寄ってしかるべきだろう。」
 偉そうな口調で告げられる。ムカっと来たが、確かに桂の言うとおりだ。
 舌打ちをして、土方は桂の側に寄った。
「童の首に、紐が引っかかっているだろう。引っ張り出せ。」
 偉そうに、と言ってやりたい。が、声を上げるとせっかく泣きやみそうになった子供がまた泣き出しそうなので、それは堪える。
 せめて睨みつけてやりながら、土方は言われたとおりに紐を引っ張りだした。結んで輪にしたその紐に、紙がくくりつけてある。
「迷子札だ。そこに、おそらく童の名や親の連絡先が書いてある。」
「そんぐらい俺だって知ってる。」
 迷子札の存在を知っていて手を出せなかったのは、泣く子の勢いに気圧されただけだ。
 口の中でもごもごと言い訳をしながら、書かれている電話番号を確かめる。
「………おい。これって、俺がかけるのか?」
「当たり前だろう。俺は手がふさがってると、何度言ったら判る。」
 舌打ちもう一つ。
 懐から携帯電話を取り出して、番号をプッシュする。
「おい、これ携帯じゃなくて家の番号じゃねぇか?」
「見てない俺が知るわけなかろう。とっととかけろ。」
 呼び出し音が空しく鳴る中、そんなやりとりを小声でする。30回ほどコールを鳴らしたあと、土方は電話を切った。
「どうすんだよ、誰も出ねぇぞ。」
「暫し待つほかあるまい。迷子札を見た者が自宅に電話をかけることに思い至れば、母親も家に戻るだろう。」
「待つってどれくらいだよ。」
「さぁな。それより芋侍。」
 桂は視線を子供から離して、通りの向こうへと投げかけた。
「あそこの自販機で、何か買ってこい。」
「お前どこまで俺をこき使う気だっ?」
「大声を立てるな。いたいけな童に何かを買ってやる度量もないのか?」
 身長は同じくらいのはずなのに、見下ろされてる気がした。
「………ったく。そいつの親が見つかったらみてやがれ。」
「俺にはそば茶で頼む。」
「お前の分まで奢ってやれるかっ。」
 小声で怒鳴ってから道を渡ろうとした土方は、そこで足を止めた。桂へと振り替える。
 ………まさか、とは思う。
 過激派テロリストだったころから桂は、民間人を、それも子供を巻き込むような事件は起こしていない。無血革命を掲げた今なら、尚更。
 けれど。
(まさかな。)
 視線が交わる。
 最初、動かない土方をきょとんと見ていた桂は、やがて口の端を持ち上げて笑った。
「仕方ない。今童を抱えているから、あまり早くは動けぬぞ。」
「何?」
「俺が、童を連れて逃げるやもと疑っているのだろう?」
 土方は返事に詰まった。反射的に否定しようとして、けれどそれが図星であったから、じっと桂の顔を見据えて口を開く。
「あぁ。」
「だから、仕方ないと言っている。さっき言ったとおり、俺は走れぬからな。」
「あ?」
「共に行けば、それも杞憂に終わるだろう?」
 拐かすかと疑われて。それでも平然と、桂は答える。
「………あの車、あそこで停まるな。なら今のうちだ、行くぞ。」
 むしろ土方を先導するように、桂は歩き出した。


 買ったブラックのコーヒーを口にする。缶コーヒーだとある程度飲んで隙間を作らないと、マヨを入れて土方スペシャルにすることもできない。面倒に思いながら、傍らの桂を見やる。
 子供をかかえた桂は、ゆらゆらと身体を左右に揺らしている。
 先ほどから静かになった子供は、覗いてみれば寝息を立てていた。
「………迷子のくせに、のんきなもんだな。」
「泣き疲れたのだろう。」
 そう、子供に眼差しを落とす桂の顔は、酷く穏やかだった。
 こんな顔もできるのか、とふと思う。
 江戸を騒がせたテロリスト、≪狂乱の貴公子≫。天人がもっとも憎み、警戒する男が。
 そう考えると、さっき余計な疑いをかけたことを、申し訳なく思い始めてしまう。
(えぇいっ!)
 頭を振って、雑念を払った。
 ヤツはテロリストだ。天人や悪党狙いとはいえ、破壊活動を行った。
 どんな悪どいことをしても不思議じゃない。
 そして、自分は警察の、それも副長だ。ヤツを捕らえる立場にある。
 二人してのんきに茶をすすっている今の状態が、異常なのだ。
 思い切ってコーヒーを煽った。空になったそれをゴミ箱へねじ込み、空いた手を桂に伸ばす。
 桂がこっちを向いた。
 咎めるようなその視線に、思わずたじろぐ。手を少しだけ引っ込めると、切れ長の瞳から険が薄れた。
「せめて、母親と連絡が取れるまで待て。」
「………あぁ。」
 素直に頷く。子供のことを考えたら、今はそうするしかなかった。
 舌打ちをしながら前を向こうとして、桂の眼が丸くなっていることに気づいた。
「………存外、素直だな。」
「そうする以外にねぇだろ。誰のせいだ。」
「誰のせいでしゅかね~?」
「止めろその赤ちゃん言葉。」
 さっきから苛つくことばかりだ。煙草を吸いたい。いや、焦ってコーヒーを飲み干すんじゃなかった。マヨを摂取すれば、まだ苛々も小さかったろうに。
「しかし、安心した。」
 もう一度コーヒーを買おうかと考え始めた土方の耳に、そんな言葉が届く。
「………何がだよ。泣く子も恐れる真選組副長が、迷子に手を焼いてんのがか?」
「それもあるが。」
「あんのかよ。」
 やっぱりむかつく。土方はコインを入れ、コーヒーのボタンを押した。
「俺を、警戒したろう。」
 取り出し口に落ちたコーヒーを拾おうとした手を、止めた。顔を上げ、こっちを見下ろす桂の顔を見つめる。
「腑抜けたのではないようだ。」
「お前………。」
「そうでなくては、抑止力にはならぬ。」
 言ってる意味がわからない。というより、桂がそれを喜ぶ必要性がわからない。
 真選組の力が削がれることを、桂はむしろ喜ぶ立場にいるのではないか。
「お前は、俺等の敵だろう?」
 そう問いかける土方に、桂は笑いかける。
 先ほど、腕の中の子供に向けたのと同じような、とても穏やかな眼差し。
 戸惑いつつも、土方はその笑顔をただ見つめる。
 ゆっくりと、桂の口が開かれた。
「もう一度、童の家に電話を入れてはどうだ。だいぶ時間が経っている。」
「あ、あぁ。」
 つい流されて、土方は携帯電話を取り出した。プッシュしてから4回目のコールの途中で、電話が取られる。
『もしもしっ?』
「真選組だが。」
『真選組ですかっ?』
「そちらのご子息を迷子として保護している。現在地を言うので、迎えに来て欲しいのだが。」
『本当ですかっ、ありがとうございます!』
 泣きそうな声で応じる母親に、今いる場所を伝える。すぐに迎えにいくと言って切れた電話を閉じながら、桂の方に振り替える。
 その腕に、子供の身体が滑り込んだ。
「おい?」
 虚をつかれた土方の前で、桂はひらりと塀の上へと飛び乗って見せる。
「ではな、芋侍。」
「ちょっ、待てっ!」
 慌てて叫ぶが、追うことは腕の中の重みが許してくれなかった。軽い身のこなしで桂は土方の前から姿を消す。
「~~~~~~。」
 腕の中で、それまで眠っていた子供がむずかるように声を上げた。きょとんとした眼で土方を見上げる。やがて、親とはぐれたことを思い出したのか、大きな目が潤み始めた。
「だぁぁ、泣くな! もうすぐ母ちゃんが迎えに来てくれっからっ!」
「………ほんと?」
「おぅ、本当だぞ。ほら、ジュース買ってやったから、飲め。」
 腕の中から滑り下りた子供は、土方の差し出した缶ジュースを受け取った。開けてやれば、嬉しそうに笑って口をつける。
 やがて迎えに来た親は、ぺこぺこと頭を下げながら、子供を抱いて帰って行った。
「………ったく。」
 時間を見れば、すでに一時を回っていた。まだ昼飯も食っていない。とんだ休日だ。
「何のつもりだったんだ、あの野郎………。」
 苛々の素は去ったが、まだ落ち着かない。
 その原因を作ったヤツの後ろ姿を思い出しながら、土方は何時間ぶりに煙草に火をつけた。






                       ~Fin~
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by wakame81 | 2008-01-21 23:09 | 小説。  

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