お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

あしたはくるから・参

子攘夷話。
小太郎捜索中。




 小太郎の家の裏庭からそいつを引っ張り出してきたときの、晋助のがっかりした顔ったらなかった。銀時を信じてついてきたことを、きっと後悔しているに違いない。
「おいおいそんな顔すんなよー。犬は人間の何百倍も鼻がいいとか、先生言ってただろー? きんだいはんざいそーさをなめんなっつーの。」
「だからって、こいつかよ。あてになんのか?」
「ワンっ。」
 白くてふかふかの大きな犬が、晋助の視線に応えるように吠えた。
 だが、舌をだらんと出してハッハッと息をして、まるで遊んでくれろと言いたげな、小太郎の愛犬の太郎の姿に、晋助は不安を感じてしまう。
「ほら見ろ、任せてくれって言ってんじゃねーか。」
「そうか………?」
「ほーら太郎。ご主人様をちゃーんとさがしてくれよー? と、そうだ晋助。ヅラの手ぬぐい貸せや。」
「あぁ? 何すんだよ。」
 渋々ながらも、晋助は手ぬぐいを渡す。受け取った銀時は、それを太郎の鼻先にかざした。
「こーゆう警察犬を使ったはんざいそーさはな、犯人の匂いの残ったものが必要なんだよ。」
「においって。」
 くんくんと、手ぬぐいを嗅ぐ太郎と、得意げな銀時を交互に見る。
「ワンっ。」
 一声吠えて太郎は動き出した。
 期待の眼で手綱を握る銀時と、マジかと目を疑う晋助の前で。
「ワンっ。」
「おい………。」
「あれー?」
 太郎は晋助にじゃれだした。
「そうか犯人はおめーかっ。」
「んなわけねーだろ何で俺が小太郎をかどわかすんだよっ。」
 殴ろうとするげんこつをひらりと避けて、「おっかしーなぁ」と銀時は頭をかく。
「やっぱこいつにはムリなんじゃねーか?」
「んなはずねーって。こいつだって犬だぞ? ちゃんとヅラの匂い追っかけていくはずだって思ったんだけどなー………あ。」
 ふと思いついて、手の中の手ぬぐいを見つめる。
 小太郎の手ぬぐい。
 出血した晋助の血止めに使われて、晋助の血がたっぷりついていた手ぬぐい。
 そして、今まで晋助の手に握られていた手ぬぐい。
「おめーのせいじゃねーか。何自分の匂いしみつかせてんだよ。」
「俺のせいってなんだよっ。」
 状況も忘れて二人はつかみ合いになりかけた。その銀時の右腕を、くん、と太郎が引っ張る。
「え、ちょ、うわっ。」
「おい、銀時っ?」
 太郎に引っ張られて銀時はたたらを踏む。大型犬で力も強いが、全体重をかければ踏みとどまれるかもしれない。そう思った銀時は、すぐに思い直して一緒に走り出した。
 晋助も後に続く。
「おいっ。テメェまさかっ!?」
「そのまさかかもしんねーぜっ?」


 村のあちこち……自分たちにとっては馴染みの深いあちこちを走り回って、今二人は、山の中を疾走していた。
 そこまでの経由が、あまりにも普段よく通う場所ばかりだったので、晋助などは始め「こいつ、俺たちが小太郎の代わりに夜の散歩つれてってるって思ってんじゃねーか」と疑っていたが、松陽の家に至る道でそれを見つけてから、二人の表情は焦りに変わった。

 教本と、松陽から小太郎が借りた本の入った風呂敷包み。

 それを、田のあぜ道に放って、小太郎がどこかに行くわけがない。
 外れてほしいと願っていた不安が本当のものになったことを感じて、二人は太郎を急き立てた。
 そして。
 ほとんど獣道しかない山の中へと至る。
 走り回って、息もろくにつけないで、気を抜いたら倒れてしまいそうだった。ろくな道のない山の中を、ほとんど何も見えない暗闇を、木の根や雑草、石ころに足を取られそうになりながら走る。
 つんのめりそうになりながら、銀時は前を行く晋助を見た。
 小太郎の落とし物を見つけたときから太郎の引き綱を奪い取って、晋助が先導に立った。
 先導と言うより、もはや太郎に引っ張られているような様子に、銀時は荒い息をこらえて口を開く。
「おい………っ、おめ、倒れそうじゃねーか………っ。かわれっ。」
「ざけんなっ。」
 噛みつくように晋助は返す。その瞬間足が木の根に取られ、晋助は倒れ込んだ。
「うぉっ?」
 そのすぐ後を走っていた銀時も、晋助につまづいて転ぶ。蛙がつぶれるような声を上げた晋助の手から、引き綱が抜けた。
「………あっ。」
「テメ………っ、はやくどけ………っ。」
「あ、わりぃ。」
 銀時はそう言って、晋助の上から退こうとするが、疲れ切って息も絶え絶えの体に力が入らない。下敷きになっている晋助が銀時をどかそうと身じろぎするのが休むにのにもうっとうしくて、転がって銀時は移動した。
 遠くで太郎の吠える声がする。
(行かなくちゃ。)
 そう思うのだが、どくどくと脈打ちすぎて壊れそうな心臓と、空気の入ってこない呼吸のせいで、体が動こうとしない。
 知らず閉じて真っ暗になった世界で、心臓の音と息する音だけがやけに響く。
(くそ。)
 肩あたりに、やけにごつごつしたものが当たる。石だろう。固い。そして、痛い。
 どうせ寝るなら、ふとんで寝たい。
 ふかふかとは言えないせんべいぶとんで、風鈴の音と蛙とオケラの声を子守唄にして。
 夜明け前の空が明るくなるまで寝たい。松陽より早く起きないと、あの人がまた鍋を焦がすだろうから、どうせ早起きはしなくちゃいけないけど。
 そして朝餉を片付ける頃になると、まず小太郎と晋助がやってきて(おめーら早すぎなんだよいつも)。ぽつぽつと、他の塾生もやってきて。
 そうやって始まる、いつもの朝。
 でも。
 今ここで寝てしまったら、そんな「当たり前」がなくなる。
 目を開けた。
 どくどくもはぁはぁも、さっきより収まっている。
(よし。)
「行くか。」
「あぁ。」
 体を起こして、小走りに走り出す。
 犬の吠え声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。けれど、きっとこっちだ。太郎はこっちに走っていった。
 まっすぐ進めばそのうち追いつくだろうと思いながら走る二人は、予想より早く大きな犬に追いつく。太郎は、頭を低く地につけるようにして、あたりを嗅ぎ回っていた。
 辺りを見回してみる。
 結構夜目の利く銀時ではあったが、森の中は真っ暗で、望むものなど何も見えない。月が出ているはずだったが、森の上層を覆う梢の屋根に覆い隠されて、淡い光は届かない。
「おい、バカ犬。見失ったのか?」
 いらいらした声で晋助が言う。
 自分たちの頼りは太郎の鼻なのだ。ここまで来たのが無駄足だったら。
 間に合わなかったら。
 もう二度と、あの小言を聞くことも、黒馬のしっぽのような髪を引っ張ることも、まっすぐな眼に見つめられることもないのだとしたら。
 焦りがどうしようもなく体の奥からはい上がってきて。思わず叫びだそうになったその時。
「ウ~~~~~~~~~っ。」
 低く、太郎はうなった。大型犬特有のおっとりさをしっかり備えたこの犬がうなるのを、銀時は初めて聞いた。
 次の瞬間、太郎は鋭い吠え声をあげながら、茂みに突っ込んでいった。続く、男の悲鳴と、何か重たいものが地面に投げ出される音。
 太郎、と後を追おうとして、二人は息を飲んだ。
「小太郎っ。」「ヅラぁっ?」
 投げ出されたというより、大きな犬に飛びかかられて思わず落とされただろうその荷物もとい小太郎に、無我夢中で駆け寄る。
 返事はない。
 寝起きだってもっとしっかりしていたはずの小太郎は、けれど力なくぐったりとしていた。落とされただけでもない、白い顔も地味だけれど質はいい着物も泥で汚れている。その口元は、手ぬぐいで覆われていた。
「小太郎っ、おいバカ、しっかりしろよっ。」
 晋助がぺちぺちと頬をたたく。
 ぴくっと小太郎のまぶたが震える。生きてはいる。それだけに安堵しながら、銀時は口をふさいでいる布を取り去った。
「おいヅラ、大丈夫か?」
 小太郎のまぶたが、ゆっくりと開かれた。焦点の合わない眼で、晋助と銀時を交互に見る。
「………しんすけ……ぎんとき………?」
「テメェ、何やってんだっ。」
 きょとんとした瞳は、体を動かそうとして不意にしかめられた。強く唇をかんで何かに耐える。その白い額に、脂汗が流れた。
 ひどいケガをしている。
 暗くてよくわからないし、血も流れている様子はないが、直感で銀時はそれを悟った。
 同じくそうなのだろう、隣で晋助が歯を食いしばるのを気配で感じる。
 太郎の高い悲鳴が上がったのは、その時だった。
 身構えようとしてその前に、隣にいた晋助が吹っ飛んだ。




                                   ~続く~
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by wakame81 | 2007-09-09 22:00 | 小説。  

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