お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

あしたはくるから・弐

何文字書いてるんだ自分………(爆)



 晋助が川に落ちたのは、もともと誤って流してしまった手ぬぐいを拾おうとしたからで。
 そしてその手ぬぐいは、小太郎のものだった。
 だから、小太郎がそのことを気にするのは、まぁ仕方ないと、銀時も思うわけだけれど。
「………おーい。」
 すずりをしまって縁側に戻って、まだ小太郎が筆を片し終えておらず、それも晋助の筆を持ったままぼーっとしているのを見たら、さすがにおいおいと思う。
 小太郎の前に回って、目の前で手のひらをひらひらと振ってみる。………反応はない。
 小さく舌打ちをして、銀時は再度手のひらを振ってみた。
「もしもーし。ヅラくんー?」
「ヅラじゃない、桂だ。」
 反射的に、ではあったが、いつものやりとりが帰ってきて、銀時は少しほっとする。
「どしましたー。俺一人じゃ大変だろってわざわざ片付けにオコシいただいて、ヅラの世界に逃避中ですかー。」
「なんだその世界は。そんな世界なんか存在しないし、あっても逃避しない。」
 どうやら返答もまともだ。
「それよりお前はどうなんだ。ちゃんと片付け終わったのか?」
「終わりましたーヅラがぼけーーーっとしてる間に、もうとっくにな。」
「………。」
 ばつの悪そうな顔で小太郎は手元の筆に一瞬眼を戻す。
「こ、これは筆がちゃんと乾いているか、一つ一つ念入りに確認していたんだ! ほら、しめったままだとカビが生えてしまうだろうっ。」
「夏に縁側に半日干しといて、まだしめったままってどんな筆だよ、どれだけしっとり水分保湿ですかコノヤロー。」
「陰干しなんだ、万が一ってこともあるだろう! お前の頭みたいにすぐに乾いてぴんぴんはねるようなものじゃないんだ!」
「テメ言ったな? 逆だよ逆なんだよ雨降っただけで湿気ふくんで余計に手がつけられなくなんだよその苦労も知らねーくせに知ったかぶんじゃねぇっ。」
 双方本気でにらみ合う。
 普段なら、にらみ合いながら舌戦第二ラウンドが始まるのだったが。今日はその前に、小太郎がふっと目をそらした。
「………すまない。」
「………………。」
「片付けに、来たのにな。」
 そう言って、小太郎はまだ縁側に並んでいた筆を集め始めた。
「ま、いーけどよ。」
 どうも、調子が出ない。
 頭をぼりぼりかきながら、銀時はつぶやく。
 手伝いはしない。すれば、小太郎がまた怒るか落ち込むかするだろうことが、わかっていたから。
 集中すれば、手際のいい小太郎は、すぐに片付けを終えた。「それじゃ」と言って、草履を履く。
「………送ってってやろっか?」
 その言葉は、ぽろりと銀時の口からこぼれ落ちた。普段は言わない言葉に銀時は口を押さえ、小太郎は眼を瞬かせる。
「いや、その………てーか暗いし? じゃなくて、たまには夜の散歩とかもいっかなーってさ。ほら、紫式部も言ってたじゃんか。夏は夜が涼しくていとか。」
「紫式部じゃない、清少納言だ。それに涼しいから夜がいいじゃない、一番風流な時間だからだ。。」
 呆れたように訂正する小太郎。銀時はむりやり話をそらす。じゃなくて、戻す。
「いーんだよ細かいことは。とにかく、ちょっと散歩ってのもありかなーっとか。」
「夏の夜には怪談がつきものだったな。」
 話をそらし返した小太郎に、思わず銀時は頬を引きつらせ、固まる。その様子を見て、小太郎はにっと笑った。
「平気だ、俺は。暗いのなんか、太郎の散歩で慣れてるし。それに、ちょっとよりたいところがあるから。」
「よりたいところぉっ?」
 我ながら、すっとんきょうな声が上がったものだと銀時は思った。まじめな堅物の小太郎が、寄り道などと珍しい。
「晋助のところに、手ぬぐいを忘れてきた。」
「あー………ってかさ、あれ血止めに使ってどろどろじゃん。今取りに行くの? 明日どうせ持ってくんだろ?」
 確か晋助の母が洗ってくれてたと思うが、さすがにまだ乾いてはいないだろう。それは小太郎もわかっているはずだ。
 銀時の目を見て、しっかりうなづいたのだから。
「でも。」
 と、小太郎は続けた。
「俺はまだ、晋助にありがとうって言ってないんだ。」
 そう笑顔で言われてしまったら。銀時に止める理由も手段も、なくなる。
「………んじゃまぁ………また明日な。」
「あぁ、また明日。」
 手を振って、小太郎は戸口に手をかける。
 また明日になれば、いつも通りの小太郎に会える。きっと、晋助にも。
 銀時はそれを、疑っていなかった。


 程なくして、松陽が帰ってきた。
「ただいま銀時。………おや、いい匂いだね。」
「お帰りー。もうすぐ飯できるから。」
 大根の葉と豆腐を煮た鍋に味噌を溶きながら、銀時は松陽を出迎えた。麦飯ももうすぐ炊ける。そうしたら、漬け物を出して、夕餉ができあがる。
「手伝おうか。」
「いいっ。先生が手伝ったら食べもんが食べもんじゃなくなるっ。」
 慌てて銀時は、台所兼土間から松陽を追い出した。
 この先生はものすごく頭が良くて教えるのも上手で先の見通しなんか平気でしてこっちの考えてることなんかお見通しの癖して、それが家事それも料理となると、てんでダメになる。火が通るのを待つ間書物を広げて夢中になって、焦がすどころかぼやになりかけたことも、料理中に化学の実験を始めてとんでもない代物を作り出したことも、十や二十じゃきかない。
 そうならないように、自分が食事の支度は一手に引き受けてるのだ。出来心でせっかくの夕食を台無しにされては困る。
 味噌を溶いたところで火を落とす。麦飯の吹きこぼれも落ち着いてきた。茶碗を出そうとしたところで、奥から松陽の声がした。
「おや。ちゃんと筆とすずりも片付けてくれたのだね。銀時一人で?」
「んーん。小太郎も。」
 吹きこぼれが収まった。火を落として、しばし蒸らす。
「さっきまでいたんだけど。晋助のとこよるって、帰ってった。」
「晋助の所へ?」
「そうだよ。会わなかった?」
 何気なく、そう言っただけだった。それに対し、松陽が何も応えないことに銀時は不思議に思い、奥の部屋をのぞく。
「………先生?」
 いつになく深刻な顔の松陽に、ためらいながら名を呼ぶ。
「………いや、まさかそんな筈は。」
 松陽は小太郎と会っていない。
 直感でそう思う。
「先生。」
「銀時。ちょっと出かけてくる。すまないが、夕食は先に食べていてくれるかい?」
 そう言って松陽は、再び家を出て行く。
「って………。」
 少しためらってから、銀時も家を飛び出した。


 小太郎の家と晋助の家とどっちに向かおうか一瞬迷う。それはほんの一瞬で、すぐに銀時は小太郎の家に向かった。
 晋助の所によらなかったとしたら、途中で母親か姉に会って、晋助のところに行くのをあきらめたのかもしれない。そうだといい。
 家にいることさえ確かめられればいい。できれば、早いうちに。
 銀時はそう考えながら、田んぼの細いあぜ道を走る。遠回りなんてしていられない。後で怒られてもいいとばかりに、人の家の庭先を走り、垣根を乗り越え、飛び降りる。
 その先に、小さな影がいた。
「えっ?」
「うわっ。」
 ぶつかりそうになった相手の顔を見て、銀時は目を疑った。
「晋助っ? おめーなんでこんなとこにっ?」
「銀時………っ?」
 晋助は後ずさって逃げようとした。その腕を反射的につかんで。手に握ったものに気がつく。
「おめー、これ。」
「………あのバカが忘れて帰るからいけねーんだよっ。せっかく俺が拾ってやったのに。」
 小太郎の手ぬぐいだ。さわるとやはり、まだしめっている。
「明日でもよかったんだけど、拾ってやったのに置いて帰られるのはむかつくじゃねーか。」
「それでわざわざ、安静にしてろって言われてんのに抜け出してきたってか?」
 晋助は、そっぽを向いて口をとがらせる。
 バカだなーとか一瞬思ったが、すぐにもっと大きな事実に銀時は気がつく。
「………じゃぁ、ヅラはおめーん家に行ってねーんだな?」
「来てねぇよ。とっくに帰ったんだろ?」
 見つかったら怒られる(それも松陽に)のがわかっているのか、晋助はそわそわと辺りを見回す。
 小太郎の家は、ここからすぐ近くだ。
 いつもは夕餉でどの家も戸の中にいるはずの時間なのに、今はやたらと人の話す声が聞こえる。それも、おそらく家の外で。
「何か、あったのか?」
 いつもと違う様子に晋助も気づいて、そう尋ねてくる。
「………ヅラはさっきまでうちにいた。それから、おめーん家に行くって帰ってった。でも先生は、おめーん家から帰ってきて、ヅラと会ってないって言ってる。」
 淡々とした声で、銀時はそう話した。
 晋助の顔が青ざめる。きびすを返して、走り出そうとする。銀時はつかんでいたままの腕を、ぐいっと引っ張った。
「何すんだっ。」
「どこ行くんだよっ。安静にしてろって言われんじゃねーかっ。」
「してられるかっ。」
「落ち着けよ、ヅラ家に帰ってんかもしんねーだろっ?」
「だったら何であいつんちがこんなにざわついてんだっ。」
 言い返せずに銀時は黙った。
 晋助は息をついて、幾分か落とした声で続ける。
「さっき、先生と親父が話してんのを聞いたんだ。城下で、子供が神かくしにあう事件が増えてるって。」
「神かくし………。」
「神かくしなんてそんなもんじゃねぇ、かどわかしだ。」
 だから松陽は、帰ってきたばかりなのにまた出て行ってしまったのだ。
 息を飲む銀時の手を、晋助は振り払おうとする。手から逃れようとする晋助の腕を、慌てて掴みなおす。
「テメェっ。はなせっ。」
「一人でどうするってんだっ。」
「うるせぇっ。」
 咆えるように晋助は叫んだ。色素の薄い瞳が、焦りと怒りに燃える。
 今ここで、こいつに出会えてよかったと、銀時は頭の片隅で思った。晋助がこうやって、感情的になるから、逆に自分は冷静になれる。
「アテがねーだろ。」
「だからってっ。」
 晋助が睨む。そのまなざしを、銀時はまっすぐ正面から見据えた。
「落ち着けよ。俺に考えがあるんだ。」




                                 ~続く~
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by wakame81 | 2007-09-09 21:59 | 小説。  

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