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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

~Melody of the Dusk~暮れる十二夜と邪視の御使い~・3

ちなみにこの話、「沖田を掘り下げる」話でした………(過去形)




 翌28日。
 伊東、沖田が指揮をとる、御苑不審死体遺棄事件捜査本部は、ぴりぴりとした空気に包まれていた。
「おはようございます。………。」
 逃げたい。 本部に顔を出した新八が、ついそう思ってしまうくらい。
「あー、眼鏡かい。」
「おはようございます、沖田さん。………伊東さんは?」
「報告とかで、近藤さんと一緒に松平のとっつぁんのとこでさぁ。」
 そう言う沖田の顔は、どこか不機嫌そうだった。
 捜査が進まないせいだろうか。新八は、昨日の会見を思い出す。
 結論から言って、得るものの少ない会見だった。
 事件が六本木の吸血鬼らの仕業と見る者は多い。覚えのない疑いをかけられないように、捜査に協力をしてほしい。
 そう言う伊東の要請は、「私、代理なもので~」というカトリさん(仮)の態度で、話を上に通す以上の確約を得られなかった。こちらが行き詰まっていることを暴露したようなものだ。
「………伊東さんは、犯人が吸血鬼だと思ってないみたいですね。」
「まーなぁ。」
 つまらなそうにガムを噛みながら、沖田は答える。
 やつらが犯人なら、こんな風に死体を放置する訳はない。いつもなら、見つからないように処分する。それを、発見させるように、しかも他のやつらのテリトリーに捨てるなんて、有り得ない。 アンダーグラウンドのルールも知らない、年若い妖魔ならならともかく。
 そう伊東は、帰り道に説明した。
 理屈は通る。新八にも、理解できた。
「じゃあ、そういう、ルールをわきまえないやつの仕業だと?」
「可能性は、吸血鬼どもよりあらぁな。」
 しばらくガムを膨らまして遊んでいた沖田だが、やがて味のなくなったそれを紙に包んでゴミ箱に放った。ポケットをあさって、「なんでい、あれが最後かい」と呟く。
「口寂しいんですか?」
「伊東さんが帰って来るまで暇だしなぁ。」
「チョコでも食べます?」
「んー。」
 差し出された手に、新八はいくつかのチョコを乗せた。 ひとつが早速沖田の口に放られる。
「うわ、甘。」
「あ、すいません、姉からもらったもので。」
 自分もひとつ口に入れた新八の顔を、沖田はマジマジと見つめる。
「………なんですか?」
「いや。」
 二つ目のチョコの包みを開きながら、沖田は呟く。
「そうだよな。世間様のねえちゃんは、甘いモンが好きだよな。」
「人それぞれじゃないですか?」
「………そだよな。」
 もぐもぐと、沖田はチョコを口に入れる。
「沖田さん?」
「や、俺の姉上の差し入れつったら、激辛せんべいばっかだったから。」
「沖田さん、お姉さんいたんですか?」
「ああ、」
 沖田はうなづく。
「いた、なぁ。」
 新八ははっと口を押さえた。ことが過去形で語られる、その意味に気付いたからだ。
「す、すみません。」
「や、いいさ。」
 残ったチョコをポケットにしまって、沖田は答える。
「久しぶりに姉上のこと話したけど、なんかあまり辛くなかった。」
 その言葉に、新八は沖田を見つめる。
「あまり、お姉さんのこと思い出したりしないんですか?」
「てか、そんな暇ねぇし。」
 沖田は笑う。
「………たまには、思い出すといいって、父が言ってました。亡くなった人も、淋しくないからって。」
「そうかぃ。」
 偉そうなことを言ったかなと、新八は沖田をうかがう。沖田は平気そうな顔で笑った
「じゃ、もちっと思い出したりするかぁ。」
 そう笑う顔は、いつものマイペースな顔よりも柔らかそうに見えて。
「お姉さんのこと、大好きなんですね。」
 覚えがある感情に、新八も口元を綻ばす。
「まぁな。俺には姉上しかいなかったから。」
「え?」
「どこの誰とも判らない俺を引き取って育ててくれたんだ、感謝してもしきれねーよ。もちろん、それだけじゃねーけど。」
 思いもかけず込み入ってきた話に新八がうろたえかけた時。
「待たせてすまなかった。」
 ドアが開いて、伊東が戻ってきた。
「あー、遅かったじゃないですかぃ。」
「………二人目の検死結果があがってきたのでな、もらってきたんだ。」
 そう答えて伊東は、紙の資料を沖田に渡した。
「もう結果出たんですかぃ。」
「急いで上げさせた。」
「二人目っ?」
「今朝未明にな。」
 聞き覚えのない話に大声をあげた新八に、伊東は向き直った。
「被害者は、高校生ですかっ?」
「いや。」
 たったそれだけの答え。新八はほっとして、そして少し俯いた。
 犠牲者が出てるのに、高ちんじゃないことだけを確認して、それで充分なんて。亡くなったのが誰かは知らないが、その人にだって心配してくれる人はいるのに。
 自己嫌悪に陥る新八を余所に、ぱらぱらと、沖田は用紙を流し読みしていく。その様子を見て、伊東は口を開いた。
「………今日はやけにやる気があるな。どうした。」
「ちょっと悪かないことあったんでねぃ。」
「ほう。」
 伊東の視線は、新八に向けられる。慌てて顔を上げた新八は、言って構わないか迷ったが、沖田が何も言う様子がないので、素直に口を開いた。
「沖田さんのお姉さんの話を、聞いていたんです。」
「ミツバさんの?」
「知ってるんですか?」
 新八は目を丸くした。
「知ってるも何も、彼女は有名だぞ。」
「そうなんですか?」
 新八は聞き返す。有名、というのは、警察、あるいは退魔業界のことだろうが、新八はそれには詳しくない。
「ミツバさんは腕利きの治癒術師で、真選組の立ち上げ時にも協力してくれた人なんだ。僕は直接会ったことはなかったがね。」
「へぇ。」
 沖田を見やる。さっさと検死結果を読み終えた沖田は、心持顔を紅潮させていた。
「まあ、話せば長くなる。詳しい話はまたの機会にして、行くぞ。」
「ちぇっ。」
 と舌打ちをしたのは沖田だ。ちょっとおどけたように頬を膨らませて見せる。 が、それだけで。
「そんじゃあ、行きやしょうかい。」
 その言葉に促され、新八も席を立った。


「断る。」
 そう、竹を割ったように、きっぱりとはね除けられた。
「妖魔狩りなどと協力して、妾に何が得られると言うのじゃ?」
 沖田や伊東とは違う、色素の薄い肌と髪。射抜くような瞳。孔雀の尾羽であしらえた扇子を手にした佇まいはとても優雅だったが、冷酷な印象がどうしても拭えない。
 ≪孔雀姫≫華陀。
 新宿でも最大の勢力を誇る、中華系妖魔の長。
 その妖艶で冷たい眼差しに一瞥され、新八はすくみ上がる。
「気に障るのではないか? 犯人は、貴女の庭で狩りを行った。代々木公園は確かに吸血鬼の狩り場の境目で貴女のテリトリーでは無いかもしれないが、二人目の犠牲者は違う。新宿のネットカフェに寝泊まりしていた日雇い労働者だ。」
 伊東は怯まず、華陀を見据える。
「このまま狩りが続けば、貴女と貴女の組織の威信が堕ちるのではないか?」
「そなたらには、関係のないこと。」
 ゆっくりと、華陀は口の端を持ち上げる。
「妾の領域が荒らされるとて、そなたらなどに協力すれば、それこそ妾の面目が丸つぶれじゃ。話は終わりじゃ、去ね、狗共。」
「随分と気の短いおばさんだねぃ。」
 沖田の言葉に、新八はぎょっとする。
「口の足らぬ童だこと。」
 華陀は沖田をちらりと見て、鼻で笑って見せた。新八の隣で、小さく沖田は舌打ちする。
「喰えねぇおばさんだぜ。」
「沖田さんっ。怒らせてどうするんですかっ。」
「相手のペース崩せりゃ、つけいる隙もあんだろ。」
「聞こえておるぞ。」
 じろりと睨まれる。沖田は「へーい。」と呟くだけだ。これでは新八の心臓が保たない。
 咳払いをして、伊東は話を仕切り直す。
「遺体の状態や被害者についての情報は、我々真選組が握っている。犯人がどうやって被害者と接触したのか、判らねば対策のしようもないのでは?」
「そんなもの、無くとも構わぬ。我らとて、千里眼の持ち主など飼っておる。見張らせれば、良いだけのこと。」
「人の出入りの最も多い、新宿という街を?」
「妾の故郷に比べれば、狭いものよ。」
 ダメだ。
 新八はそう感じた。
 犯人を特定するほどの情報を、真選組は有していない。妖魔がどれだけこの国に存在するか知らないが、その数すら掴みきってはいないのだ。まして、人の姿を模して人間社会に紛れている者までいるというのに。
 隣人が、妖魔かもしれない。
 それすら、是とも非とも、真選組は言い切れないのだ。
 だからこそ、妖魔組織の総元締めである華陀や六本木の王に協力を得ようとする伊東の策は、方向こそ良かったものの、決め手に欠けていた。
 このままでは。
「………お願いしますっ!」
 ソファから立ち上がり、膝をつく。突然の新八の土下座に、伊東も沖田も腰を浮かした。
「新八君っ?」
「お願いします、協力してくださいっ。僕の友達が行方不明なんです。いなくなったのは三日前なんです。もう三日も経ってるのに、何の手がかりもないんです。もし、この事件に巻き込まれていたら、早く助けてあげないといけないんですっ!」
 三日間ため込んだ不安を、一気に吐き出す。
 姉からの連絡を受けてから、ちりちりと刺すような不安は消えない。むしろ、大きくなっていくだけで。
 もう、背中どころか全身針で突き刺されているように思う。
「お願いですっ!」
 床に額をこすりつけんばかりに、新八は頭を下げる。
「………そなた、真選組ではないな。」
 やおら、華陀は口を開いた。
「友のために、土下座すら厭わぬか。ふふ、思い切りの良い事よ。ただ条件だけを並べてふんぞり返る狗共とは、確かに違うの。」
 華陀の声音に、笑いが含まれる。
「万事屋の仲介者、であったな。」
 頭を下げたまま、新八は頷く。額が床をこする。
「面を上げよ。そなたの心意気に免じて、狗共の申し出、考えてやらぬこともないぞ。」
「それじゃぁっ。」
「ただし、賭けに勝ったならじゃ。」
 華陀は、悠然と微笑んだ。





                              ~続く~

by wakame81 | 2007-12-31 02:54 | 小説:ギンタマン  

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