お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

イカロスの翼

色々と整理している間に生まれた副産物。
194訓で、あのあと鯱の視線を気にしないで脱出したとゆー設定で。

あんまり黒くならない………あれ?







「まさか、ここでお前と会えるとは思わなかった。」
 そう、薄く口の端を持ち上げる顔には、何の不安も後悔も見えなかった。
「いや、お前がここに来ることを、か。」
 明るく、浮ついた内装の喫茶店。給仕する娘達は、皆丈がものすごく短い小袖に、白い前掛けをしている。あちこちの客席には、じゃんけんをしたり、飲み物に牛乳を注いでもらったり、行き交う女給を目で追ったりと、だらしなく目尻と口端を垂らした男達がたむろしている。
 場違いだ。
 ごついオッサン達に案内されてきた自分も、目の前に座る髪の長い男も。
 15年ぶりに日の当たる場所へ出て、変わり果てた世界に、末吉は酷いカルチャーショックを受けていた。天人の襲来は覚えている。その後の戦争と世界の変移も、後から投獄された者達から聞いていた。けれど、やはり己の目で見るのとは違う。
 何より驚いたのは、末吉を変えるきっかけとなった存在の正体。
「それで、何を頼む。」
 桂はそう言って、お品書きを差し出してきた。
「………は?」
「注文を早くしろと言っているのだ。メイドさんが困っているではないか。ここは品数も豊富だから迷うのは判るが、決めるときにはきっぱりと決断するのが侍というものだろう。悩むなら俺が決めてやる。蕎麦なんてどうだ。」
「ご主人様、ここでは蕎麦は取り扱ってませんと何度言ったら判るんですかコノヤロー。」
 注文を取りに来ていた女給は、ぐーで彼を殴り倒した。何モンだこの女、その人はあの鯱を一撃で沈めた強者だぞ。
 背中に汗を垂らしながら、末吉は茶を頼んだ。
 しつこく蕎麦蕎麦言っていた彼は、女給が去ってからやっとこちらへと向き直る。
「して、何の用だ。」
 末吉の背に、緊張が走る。
「恨み言でも言いに来たか? 俺はこれからバイトがある故、手短に頼む。論弁時間は1分だ、それ以上はダメだぞ。」
「論弁しにきたんじゃねぇぇ!! なんだその発表時間の少なさは!! 手短にもほどがあるだろ!!」
「物事を簡潔にまとめることも、必要だ。無駄にだらだら前置きをおくと、読者がついていけなくなる。」
「前置き長くしてるのはお前だろっ。俺はっ!」
 末吉は、机を叩いて立ち上がった。
「俺を、アンタの仲間に入れてほしいんだ!!」
 言った。
 言えた。
 肩で息をしながら、向かいへと視線を下ろす。
 そして、彼が眼を丸くさせて、きょとんとしていることに気がついた。
「………おかしな事を言う奴だな。」
 女給が茶を運んでくる。それが立ち去ってから、桂は口を開いた。
「おかしな事か? アンタは人手を欲しがってるんだろう? この国を革命するために、もっと仲間が必要なんだろう?」
 桂は、湯飲みを口元まで近づけた。ふーふーと息を吹き付け、少し傾け、「あつっ」とか言って口から離す。
「俺じゃダメか。やっぱ、元犯罪者じゃ信用ならないか?」
「それもあるがな。」
 歯に衣着せずきっぱり言われ、少し末吉はへこむ。
「何よりお前が、それを言いに来たことに、驚いた。」
 やっと一口飲み込んでから、桂はそう言った。
「お前達を裏切って一人脱出した俺を、恨むでもなく仲間にして欲しいというのか?」
 やっぱりあれは、裏切りだったのか。今更ながら、末吉は思う。
「地獄を革命しに来たと言って、一人いなくなった男だぞ。お前達のことなど、始めから何とも思っていなかった。最初から俺は、獄門島を破るためだけに、投獄されたのだ。お前達を救う気など、最初からなかったのだぞ。」
 それを判っているか? そう念を押される。
「………判っちゃ、いないのかもしれない。」
 少し俯いて、末吉は答えた。
「今でも俺は、アンタに救われたと思ってる。俺はアンタのおかげで、自分の罪を見つめ直すことができた。きっかけをくれたのは、アンタだ。アンタがどう思っていたとしても。」
 夜が明けて、向かいの牢に誰もいなかったことに、末吉は心底驚いた。
 ここ数日間、一緒にいたのは誰だったのか。
 夢かとも思った。監獄の皆が、看守も含めて、彼がいたことを証言しなければ、そう思いこんでいただろう。
 彼の牢に掘られていた穴が、彼が脱獄したことを物語っていた。
 一人で逃げた。それは動かしがたい事実。

 それでも、末吉には、彼が己の罪のために天から遣わされたのだと、思えてならなかった。

 それが幻想だとしても。
「アンタとなら、明日を迎えられる。俺は、そう思っている。」
 だから、と。末吉は通路に膝をついた。
「俺を、アンタの仲間にしてほしい。」
 手もつき、額も床につける。
「おい。」
「軽々しく頭を下げるなとアンタは言うかもしれないが、これが俺の精一杯の心だ。頼む、俺をアンタの」
「通路にしゃがみ込むと、邪魔だぞ。」
 その言葉と同時に、後ろから来たワゴンに轢かれた。
「あらご主人様、申し訳ありません~~~。」
 そう言いながら、しっかり身体を乗り越えて通過される。心身ともに耐えがたい傷を負い、打ちのめされる末吉の前に、すっと手が差し出された。
「アンタ………。」
「いつまでもそうしていると、また轢かれるぞ。」
 手を引かれ、立ち上がる。
「お前の志は判った。」
 きれいな顔で微笑まれて。思わず引き込まれそうになる。
「だけどな~履歴がな~この犯罪歴がどうもな~~~。」
「それはっ、もう服役して、罪償ってるから!! 脱獄してきたんじゃないよ俺、恩赦で釈放されたんだよ!!」
「まぁそう言うことにしておいてやろう。」
 信用されてないし。
 ちょっとだけ、末吉はへこむ。やっぱりこの人、犯罪者に厳しい。
「本当にお前の罪が償われたかどうかは、この先の姿勢で見せてもらおう。」
 その言葉に、末吉は顔を上げた。
「じゃぁ………っ。」
「うむ、面接は合格だ。」
 そう言って、桂は末吉の肩に手を置いた。
「次は、試験だ。がんばれよ。」
「は?」



                                     ~Fin~
[PR]

by wakame81 | 2007-12-19 13:15 | 小説。  

<< 第86話。 もぐもぐ。 >>