悲しいかもしれないお知らせ。
今週木曜は、夜勤ですorz。デスマーチの影響を受けましたので、アニメ感想は金曜深夜になります。
そんなデスマーチの間をぬって、なんとか投稿できました。
沖田&桂さん。沖田いないけど、沖&桂と言い張る(爆)。
原作で、沖桂にGoサイン出たけど、まだ若布の中では絶滅危惧種なんだい。
桂花美人さまへと飛んで、十二月お題「蒲団」からご覧ください。
サイト公開は終了なさいました。ありがとうございました!
今、幾時だろうか。
頭のてっぺんまでかぶった蒲団を持ち上げて外を見ようとした。途端、入り込んできた冷たい空気に、思わず蒲団を下ろす。
密閉された空間の中でゆっくりと息を吐けば、温かい空気がゆっくりとめぐる。
そのぬくもりに浸りながら、もう一度桂は蒲団の外へと顔を出そうとした。持ち上げるのではなく、今度は少しずつずらしながら。
冷え切った空気が、蒲団から覗いた顔に触れる。
戸板を閉め切った部屋の中は、まだ暗い。一年で一番日の短いこの季節、外が暗いからといって、まだ早いとは限らない。明るくなる頃にはもう遅いのだ。
体内時計が確かなら、そろそろ起きる頃だ。そもそも、早いに越したことはない。
起きなくてはならない。
蒲団をはねのけて。
「………………。」
少しだけ覗かせた顔を、またぬくもりの中に潜らせる。
眠気も、さることながら。
このぬくもりは、手放しがたい。
(起きなければ。)
やることは、今日もたくさんある。
京の様子を探らせていた同志が、今日江戸入りするはずだ。連絡を取らねばいけない。
定期の会合もある。
新しく出資をしてくれるという商人との会談もある。
時間があれば万事屋へ行って、甘味と酢昆布を届けなくてはならない。いや、用件は攘夷への勧誘だ。
北斗心軒へも、今日は寄れるかもしれない。新メニューができたから食べに来いと言われたのが秋、それから約束を果たせていない。今日こそ、是非果たしたい。
夜にはバイトもある。
何事もなくても、これだけ予定が目白押しだ。
何か……たとえば、真選組に見つかるとか、鬼兵隊について新しい情報が入るとかすれば、予定は狂う。それがどれほどのずれ込みになるか、狂ってみるまで判らないのだから厄介だ。
ずれ込みを最小限に抑えるためには、早いうちから動くに限る。
それを判っているのに。
このぬくぬくとした空間から、脱出することができない。
(起きなければ。)
一日の予定を、もう一度頭の中で確認する。
二度目のそれはあっという間に終わった。ぬくもりの中に居座る理由を、今度は朝食の献立に求める。
米は昨夜の内に研いである。自動たいまーとかいう文明の利器のおかげで、起きてスイッチを入れなくとも、時間が経てば勝手に炊きあがる。
味噌汁の実は何にしよう。葱は欠かせない。豆腐が残っていたはずだ。青菜もあった。彩りを考えると、人参も入れたい。薄く切れば、火の通りは早い。
それと、たくあんがあった。卵もある。じゃこを入れて、卵焼きにしよう。
「………………。」
そこまでくると、これ以上考えなければならないことはなくなってしまう。
それでも、まだ蒲団から出る気力がない。腕を一振りすれば、簡単なはずなのに。
本当に、蒲団というのは魔性のものだ。
ふかふかで、ぬくぬくで。
その心地よさに心奪われてしまうと、簡単に抜け出すことができなくなってしまう。
(起きなければ。)
時間ばかりが、経っていく。
早くしないと、時間はなくなる。ゆっくりと朝食を取り、食後のお茶を楽しむこともできなくなってしまう。
早くしないと。
(奴が、来る。)
「………………えぇいっ!」
勢いをつけて、桂は蒲団をはねのけた。
戸板を開けても外もやはり暗かった。
灯りをつける。
蒲団をたたむ。するとエリザベスも起きてきた。まだ寝ていていいと告げるも、律儀なペットはきちんと自分の蒲団をたたんだ。
二人して、朝食を作る。ちゃぶ台を拭いて、食器を並べる。
テレビをつけて、ニュースを見る。といっても、一般のお茶の間に流れるような情報は、既に手に入れているが。どこまでがマスコミに流れているか、確かめるのも大事な情報収集だ。
黙々と、ご飯を食べる。
食器をかたし、お茶を淹れ、やっと一息をついた。
『今日も、ゆっくり朝ご飯が取れましたね。』
「そうだな。」
いつ来るかと身構えて、身体に入っていた力を、吐く息に乗せてそっと逃がす。
「最近、来ないな。」
まだ熱い茶にそっと息を吹きかけながらそう言えば。
『のんびりできて良いですよね。』
挙がったプラカードに、桂は微笑んでみせた。
朝の襲撃への緊張が、ぬくもりに浸りたい自分へと喝を与えてくれる。
当人にも、目の前の大事な彼にも言えない、それは自分だけの秘密。
(それにしても。)
最近来ないのは、どういう訳だろうと考える桂は知らない。
バズーカ砲を持った少年は、朝の寒さに負けて日課をさぼっていることを。
~Fin~