お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

月のらせん

十三夜のお話。高杉メイン、攘夷戦争末期。………しまった、つい先日あんなこと言ったくせに、桂さんがいない(爆死)。

ちなみに、十三夜とは、十五夜の次の、月齢13日のお月様のことで、両方見ないと縁起が悪いそーです。






 どこまでも黒に近い藍色は、その一点へ向かって、わずかに色褪せていく。
 その中心に浮かぶ、白い輝き。
 太陽の照り返しとは思えないほど、それは強く。周りに燐光すら放って。
 「真珠のようじゃ」と、今はもういない悪友が喩えたことがある。
 それを聞いたとき、真珠なんてモノを見たことのない自分は、賛同しなかった。それは、今も。
 あの光を見て思い出すのは。




 囲まれた。
 偵察の報告から、高杉はそう判断した。
 囲みを突破しなければ、隊は全滅だ。包囲網はおそらく、とてつもなく厚い。残されたこの人数で突破できるか、その保証もない。
 この地方で残っている攘夷軍は、鬼兵隊だけ。最後に残って悪あがきを続ける愚か者共を討滅するために、天人軍は集まりつつあった。いや、もう合流はなったのかもしれない。
(最後?)
 頭を振る。
 最後の訳がない。
 あんな情報は、間違いに決まっている。それか、天人の情報操作だ。

 ≪白夜叉≫を有し、≪狂乱の貴公子≫に率いられた部隊が、全滅したなどと。

「高杉さん。」
「どうしましょう、高杉さん。」
 部下達が、不安そうに自分を見る。皆、一様に疲れきった顔をしていた。
 少しずつ、けれど確実に近づいてくる終わりを、皆も感じ取っているのだ。
「どうもこうも、ねぇだろ。」
 あえて、口の端を持ち上げて見せた。かすかに白い歯を見せる。人相が悪く見えると散々説教された笑い方だが、不敵なそれが逆に活力を与える場面もあると、高杉は知っている。
「闇に乗じて、奇襲をかける。生憎今夜は満月だが、欠けるのを待つわけにもいくめぇ。一斉射撃の後、討って出る。」
 はたして、どれだけ生き残れるか判らない。
 包囲の厚みがどれほどのものか、自分たちはそれすら正確に掴めていないのだ。或いは、全滅すら。
 それでも。
「生き延びるぞ、絶対だ。死んで奴らの思い通りには絶対させねぇ。判ったな。」
 潔く。なんて御免だった。


 月が。昇ろうとしていた。


 弾薬を使い果たしても構わない。むしろ惜しむな。
 その命どおりに放たれた弾幕は、血と悲鳴と硝煙の匂いを天人軍に叩きつけた。
「………突撃ぃっ!!」
 号令と共に、全軍が走り出す。包囲のただ一点を、楔となって貫くように。
 その先頭に、高杉は立つ。
 我に返った天人共が、慌てて獲物を振り上げ、或いは薙ぎ払おうと構える。それをさせる間も与えず、高杉は腕ごと天人を斬り捨てる。
 上がる血飛沫と悲鳴。
 吹き出す鮮血を浴びる。血生臭い、獣のような匂いに高杉はわずかに顔をしかめ、けれど剣を振るう手を止めない。
 自分より遙かに体格の良い天人の懐に飛び込み、急所を貫く。或いは斬り払う。他の天人が高杉の姿を捉える前にたった今斬り捨てた死体から離れ、また新たな敵を薙ぎ払う。
 長く肉を斬り、脂にまみれ、血に濡れれば、刃は鈍る。高杉の刀は名刀に数えられる良いものだったが、それでも限度はある。
 斬れなく、なる前に。
 いや。斬れなくなっても。
 できうる限り、天人を屠る。できるのならこの場にいる全ての天人を。
 それすら可能かも知れないと思わせる、修羅のような姿。
 ≪紅蓮鬼≫。
 その姿に、天人は恐れおののき、道は拓ける。
 はずだった。


 右腕に、焼けるような痛みが走った。撃たれたと気づいたのは、次の瞬間だった。
 狙撃か。
(こんな暗闇の中で!?)
 目をこらした。暗闇で視界が効かないのはこっちも同じだ。だが、比較的遠くに見える天人の頭部が、不自然に四角い。
 暗視スコープだ。
 高杉の周囲には、獣じみた天人の姿はなかった。
 狙い撃ちされる。そう悟った瞬間、その狙撃隊の方へと向かって突撃する。
 第二撃が来る。奇跡的にそれは外れた。続く、仲間の悲鳴。舌打ちをする間もなく、射撃音と悲鳴が上がる。
「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっっっ!!」
 敵陣へと躍り込む。懐にさえ入ってしまえば、銃など恐るるに足りない。ここにいるのは敵ばかり、遠慮する必要はない。当たるを幸い、剣を振り回す。狙撃隊はあっという間に混乱に陥る。
 このまま、全てを。
 そう思った瞬間、背中が泡だった。ばっと右前方へ飛ぶ。次いで風を切る音と共に、巨大な戦斧が振り下ろされる。
 黒い小山のような、巨大な天人。暗くて、その全容すらよく見ることができない。
(暗い?)
 違和感が走った。
 そうだ、先ほどから視界が暗すぎる。今宵は満月なのだ、もっとも明るいはずの夜に、ここまで視界が効かないわけがない。
 全容が判らずとも、頭部と身体のつなぎ目くらいは判る。斧を振り回す手に刀を突き刺した。ひるむ隙に、脇差しで首を突き、そのまま押し斬る。倒れる天人から飛びずさって距離を取り、そして空を仰いだ。

 月は、なかった。

「なっ………!?」
 絶句する。
 次の瞬間、銃声が響き、左肩と右脇腹を銃弾が貫いた。


 その後のことは、よく覚えていない。
 無我夢中で走り抜いた。刀はとっくに折れ、脇差し一本で敵陣を突破した。
 後に続く者はいなかった。
 たった、一人で。
 戦場を離れた茂みに、転がり込む。
 ………そうだ、一人だ。
 戦場を抜けても、合流するはずだった部隊はもうない。
 銀時も。
 小太郎も。
 もう、いない。

 空を仰ぐ。
 不自然に欠けた、白い淡い輝きが、ぽっかりと浮かんでいる。
「………なんだ、そこにいやがったのかぁ。ヅラぁ。」
 落ちていく意識の中で。
 自分の名を呼ぶ懐かしい声を、確かに聞いたような気がした。


「晋助。」


 名を呼ばれ、振り返る。
 闇に溶けそうな黒い髪、黒い衣服。幾分か潜められた、本来は高い声。
「一人で月見でござるか?」
 のんびりとした口調で声をかけてきた部下に、高杉はニッと笑った。
 刹那の既視感。
 けれど、目の前の男は≪彼≫ではない。見間違いかけた自分が、可笑しくてたまらない。
「甲板に行かぬのか? 皆が酒盛りをしているでござるよ。」
「俺がどこで月を見ようと、勝手だろ。」
「武知殿が良い酒を手に入れてきたのだが………このままでは皆に飲み尽くされるでござる。辛党として、それは見過ごせなかろう?」
「さぁな。」
 瓢箪の中の濁酒を一口煽って、高杉はまた空を見上げた。
 視線の先、限りなく黒に近い藍色の空に浮かぶのは、淡い輝き。
 左弦の曲線が右弦に比べて平坦な、十三夜の月。
「旨い酒を飲むには、それに合わせた風情ってモンがあるだろう。浮かれた馬鹿騒ぎの中で飲む気はしねぇよ。」
「左様でござるか。」
 万斉が、側に寄った。
 手にしていた杯を、高杉へと差し出す。それを手に取れば、とっくりから透明な酒が注がれた。
 一息に煽る。………成る程。味に癖があって強い、高杉好みの酒だ。
「晋助。」
 とっくりを奪い取れば、万斉は口をへの字に曲げて見せた。
「何だ、テメェがそんな顔をすんのか。」
 自分と同じように、他人と馴れあおうとしないくせに。特に、酒の席では。
「ま、仕方ないが………最後の酒だったのでござるが。」
「知るか。俺に寄越したテメェが悪い。」
 ククっと喉で笑ってみせる。そしてまた、空の輝きへと視線を戻した。
「………そんなに月が好きとは、知らなかったでござる。」
 わざとらしいため息と共に、万斉がそう呟いた。
 あっちへ行け。
 そう視線に込めて睨みつけるが、万斉はどこ吹く風で月を見ている。
「十五夜の月は、愛でなかったでござろう? 片月見は縁起が良くないでござるよ。」
「俺達の存在こそが、不吉なモンだろ。それに、満月は不安定であまり好かねぇ。」
「そうでござるか?」
 不思議そうに首をかしげる万斉を無視して、高杉は杯を酒で満たした。
 揺れる水面を眺める。海面に落ちた月の影は、どうやら小さな杯には入りきらないようだ。ふっと嗤って、一息に飲み干す。
 揺れる海面の影と違い、空の月は変わらず、ほのかな光を放っている。
「満月なんざ、いつ欠けるか判らねぇだろう。」
 けれど、十三夜は欠けることはない。
 形は、不完全だけれど。
 完全になろうと、あがくその姿。


 ………本当に、月はテメェに似ている。


 まるで月と杯を合わせるように、右手を高く掲げ。
 そして、杯を空にした。





                         ~Fin~
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by wakame81 | 2007-10-23 19:22 | 小説。  

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