お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Home Sweet Home

京次郎編完結記念。ネタ降ってきたので急いで書き上げました。
待つ人たち。

ちなみに、さっき言ってた「京次郎生存説」は、あの後もう一度読み返してやっぱりお亡くなりになってそうだったので、撤回させてください(爆)。
しかし、それにしても、銀さん顔穏やかだなー(偏見)。





 タタン、と。
 窓ガラスを叩く音がしたような気がして、桂はネギを切る手を止めた。顔を上げ、窓ガラスに目を向ければ、確かに水滴が着いていて、そしてそれは小さな音と共に少しずつ増えていく。
 小さく溜め息をついて、包丁を置いた。手を洗い、玄関へと向かう。
「二人とも、降りだしたぞ。中へ。」
 引き戸を開け、外の子供たちにそう声をかけたが。
「平気アル。」
「大丈夫です、お気になさらず。」
 子供たちは、振り返らずにそう答える。
「日も落ちた。冷えるだろう。特にリーダー、女子が体を冷やしてはいけない。」
「うるせーヨ。私がどこで待とうと、私の勝手アル。」
 こちらを見ようともしない、頑とした態度に、桂はほとほと困り果てる。
「すみません、桂さん。でも、僕たちここで待ちたいんです。」
 少しだけ振り替えって、新八がそう言った。
 申し訳なさそうな、けれど瞳は強い決意をたたえている。
「………仕方ないな。」
 溜め息と共にそう呟き、桂は一度屋内に引っ込んだ。少しして、銀時の羽織と毛布を二つずつ持って出てくる。
「せめてこれを羽織れ。風邪を引かせたら、俺が銀時に叱られる。」
 差し出されたそれらを、子供たちは素直に受け取った。それを確かめて、桂は中へと戻る。
 勝手知ったる程でもないが、浴室へ向かい、湯を張る準備を始める。
 屋主はきっと、ずぶぬれになって帰ってくるだろうから。


 その知らせを神楽から受けたのは昨日のこと。
 後をエリザベスに任せて万事屋を訪れてみれば、確かに銀時の一大事だった。
 左肩と脇腹に銃創。背中にかさがけに斬られた痕。何より、体の自由を蝕む毒に手を焼かされた。
 泥とゴミで汚れた傷を洗い消毒し、水を吐く程飲ませて体内の毒を流し出す。
 その手当てに、一日を費やして。
 やっと一息ついてから、事の次第を聞き出した時は、怒りや驚きを通り越して、ひたすら呆れた。
「お前が無茶をするのは昔からだが、まさか極道に手を出すとは。」
「好きで出したんじゃねーよ、依頼なの依頼。仕方ねーだろ。」
「そんな輩から依頼を受けるのが間違いだと言ってるんだ。白い粉を運ぶ依頼だったらどうするつもりだ、製菓工場に持って行ったところで、お前の好きな甘味になるわけではないぞ。」
「仕方ねーだろ、来いって言われて言ってみたら極道だったんだよ、行った先で断られるかってんだコノヤロー。」
「そういう時は、先に依頼主の素性を確かめるのが常識だろう。非常識なのはその天パだけにしろと、何度言ったと思っている。」
「うるせー、天パは非常識じゃありませーん。石原良純とか小池さんとか、天パの有名人は多いんですー。」
「練り物全権大使か。どちらかというとアレは眉毛の方が強調されているが。まさか貴様、RYO=2ウィルスの保菌者となっていないだろうな。」
「なるわきゃねーだろ銀さんの眉毛のどこが繋がってる、どこがカモメ眉毛だってんだーっ!」
「あのー。」
 放っておいたらどんどんずれていく会話に、新八が割り込んだ。
「それじゃ、組長さんは、僕らが依頼を受けたときから、息子さんに会うのは不可能だったってことですか?」
 新八の顔を見やってから、桂は銀時へと視線を向けた。
 銀時は、わずかに視線を新八からずらしている。もちろん、神楽からも。
「組長さん、ずっと息子さんの名前を呼んでました。鬱蔵はいないのか、やっぱり来ないのかって。」
 新八の顔が伏せられる。その後を、神楽が継いだ。
「死んじゃったとき、クミチョーすっごく淋しそうだったアル。泣いてなかったけど、きっと泣いてたアルよ、銀ちゃん。」
「銀さん。」
 優しい子等だ。桂はそう思う。
 一度会って、数回言葉を交わした、依頼主であるだけの極道者に、ここまで感情移入してしまっている。そう言えば、この子等も、親と死に別れているのだ。他人事には、思えないのだろう。
 けれど。
「だが、組長殿は既に亡くなられた。」
 低い声で、そう言った。子供達が、風を切る勢いで桂に向き直る。
「その京次郎とやらの言いぐさではないが、あの世で親子は再会できただろう。」
「ヅラっ?」
「桂さんっ!」
「それより銀時。考えるべきは、お前の今後だろう。」
 咎める子供達の声にも構わず、桂は銀時に向き直る。
 組長は死んだ。けれど、これで終わりではない。
「お前は、事情を知っている。お前が生きていることが判れば、奴らは必死になって口を封じに来るだろう。子供らも、巻き込まれるかもしれんぞ。」
 やられる前に、なんて芸当ができる男ではない。それは、桂が一番よく知っている。
 けれど、このままにしておくわけにもいかない。
 何かしらの手を打って、せめて子供達やその周囲の人間を巻き込むことがないようにしなければ。
「どうするつもりだ。」
 重ねて問いかける。
 それまで、視線を誰からも外していた銀時は、深く息を吐いて、頭をかきむしった。
「新八ぃ。」
「はい?」
「おめー、依頼人から金もらってきたか?」
 こんな時に、何を。
 桂も、新八も神楽もそう思ったが、誰も話を遮ろうとしなかった。戸惑いながら、新八は答える。
「はい。依頼は果たせなかったんだからって全額もらうのは断ろうとしたんですけれど、いいから受けとっとけって。」
「そーか。」
 銀時は、顔を上げた。
 普段の死んだ魚のような目に、光が宿っている。
「銀さん?」
「銀ちゃん?」
「だったら、依頼は完遂しなきゃだよな。」
 にっと笑う。
 桂は、嫌な予感がした。
「銀時、お前何を。」
「息子を目の前に連れてこいって依頼だったじゃねーか。そいつを果たさなきゃって言ってんだよ。」
「銀さん、鬱蔵さんはもう亡くなってるって。」
「鬱蔵はそうだろーがよ、もう一人馬鹿息子がいんじゃねぇか。」
 桂は、息を飲んだ。
「まさか、京次郎とやらの前に、顔を出す気か?」
「おーよ。」
 その笑う顔に嫌な影はなく、やられる前に叩きつぶすつもりでないことは見て取れた。だが。
「銀ちゃん、何するつもりアルか?」
「京次郎をオヤジの墓の前にひっぱってってやる。アイツが本気で、育ての親を欺いて、兄弟みてーに一緒に育った鬱蔵を殺ったってんなら、墓の前で土下座させてやるさ。」
 まるで、まだ裏があるかのような銀時の言葉に、桂は目を見張った。
 実際に京次郎とやりあったのは銀時だ。相対して初めて判る何かを、感じ取ったのかも知れない。けれど。
「銀さん、その怪我でいくつもりですか?」
 新八が不安そうに尋ねた。
「おー。もう治ってるし、平気平気。」
「もうって、やっと毒が抜けたばかりなんですよ!?」
「こんなもん、ほらアレよ。セルとの戦いに比べたら全然よ?」
「あれ悟空死んだじゃないですかぁぁぁっ。」
 新八のツッコミに、銀時は耳を塞ぐ。
「やっぱりマダオに任せてはおけないネ。」
「僕たちも行きます!」
「お前達!?」
 勢いよく立ち上がった神楽と新八に、桂は声を上げた。
「これがどれだけ危険なことか、判っているのか? そこらのちんぴらや芋侍を相手にするのとは違う、情け容赦のない輩なのだぞ!?」
「情けなんて、ご飯にかけても美味しくないネ。かけられる必要はないアル。」
「覚悟の上です。僕たちだって、修羅場を少しはくぐってきてるんですから。」
「しかし。」
 なおも言葉を重ねようとした桂を遮るように、銀時が両手を挙げた。右手を神楽の肩に、左手を新八の肩に乗せる。
「悪ぃけど、おめーらは留守番な。」
「銀ちゃん!」
「銀さん!」
 子供達は非難の声を上げる。それを、視線一つで銀時は止めた。
 不敵に持ち上げられた口角。けれどその眼は、どこか優しい。
「極道モンってーのは、大人の読み物でしょーが、十八禁でしょーが。少年ジャンプには載ってませんよー。」
「少女マンガ舐めるなコラ、今時の少女マンガは大人向けエロマンガもびっくりのエロアル。」
「十八禁だとか関係ありませんよ、僕らは万事屋銀ちゃんでしょうっ?」
 子供達は、なおも言いつのった。
 二人の肩に乗せられた手に、力がこもる。はっとして、子供達は銀時を見つめた。
「そう、俺達は万事屋銀ちゃんだ。だから、おめーらにここで待ってて欲しいんだ。」
 眼差しに乗せられる、それは信頼。
 それを感じて、新八も神楽も、何も言えなくなる。
「ってことでヅラ、こいつら頼むわ。」
「ヅラじゃない、桂だ。………銀時。」 
 それまで三人のやりとりを見守っていた桂は、静かに銀時の名を呼んだ。
「んー?」
 銀時の眼が細められる。
 懐かしい、顔だった。
 攘夷戦争時代、何度もその顔を見た。
 自分だっていっぱいいっぱいのくせに、何でも抱え込もうとするときの、顔。抱え込んで、潰されそうになって、それでも大丈夫だと言い切ったときの顔。

(まったく、お前は。)

「潰れるなよ、銀時。」
 ため息と共に小さく笑えば。
「おー。銀さんを信じなさい。」
 懐かしい顔で、銀時は笑った。


 出がけに夕飯のリクエストを聞いたら甘味パラダイスと答えられたので容赦なくそれを却下し、神楽や新八と吟味した結果選ばれた鍋の準備はできた。
 風呂も沸かした。
「二人とも、寒くはないか。」
 何度目かの声かけをしに、玄関の引き戸を開く。二人は変わらず、首を思いっきり振った。
 玄関を覗くたびに着るものや羽織るものを差し入れるので、子供達はかなり着ぶくれていた。それでも、二人の頬は真っ赤になっている。
「………風が出てきたな。」
 運良く、玄関側に吹き込んでくるような向きではないが、寒さは先ほどより増した気がする。桂は引き戸を閉め、二人の横に並んだ。
 湯飲みを手渡し、急須からお茶を注ぐ。
「ありがとうございます。」
「さすがヅラ、私の舎弟だけあるネ。」
「熱いから、気をつけるのだぞ。」
 あれから、だいぶ時間が経った。それでも、銀時が帰ってくる気配はない。
「………二人とも。彼奴は数々の戦場をくぐり抜けてきた男だ。極道が何百人集まろうと、後れを取る奴ではない。」
「そんなこと、判ってます。」
「今更ネ。銀ちゃんが遅いのは、どうせまた早売りジャンプ探してるからアル。」
 余計な言葉だったか。桂は眼を細める。
 銀時の強さを、信じている。
 けれど、それと心配しないということとはまた別。
「………困った雇い主だな。お前達にこんなに心配かけて。」
「もう慣れたネ。」
「桂さんよりは、ましですよ。」
「俺が?」
 急にお鉢が回ってきて、桂は目を丸くした。
「散々探しても、待っても、無駄なんじゃないかって思わされるよりはずっとマシです。」
「そのくせエリーの中から出てくるんだから、最悪アル。」
 あの時のことか。
 返す言葉もなくして、桂は子供達を見つめる。
「ま、過ぎたことはいいですけど。」
「今度やったらあんなもんじゃすまさねーからナ、覚悟しとけヨ。」
「そう………だな。」
 あの時。
 銀時も誰も巻き込むことができなくて、それならいっそと単独で動いたが。それが、子供達に今以上の心配をかけていたのかと思うと、今更ながら申し訳なくなってくる。
「今度は、気をつけるよ。」
「気をつけるじゃなくて、しないでください。」
「まったく判ってねーナ。人間大砲にしてぶっ飛ばすぞ。」
「ああ、すまない。」
 それから話は、寺門通の新曲や、秋の新作ドラマの感想や、んまい棒のもう販売されてないフレーバーなど、他愛のない内容に移った。
「ココアとかキャラメルとか、今のチョコバーやキャラメルと違うんですか?」
「違う。今売られている製品は、長さも短く、中にその味のクリームが入っているが、かつてのココア味やキャラメル味は、長さも他のものと同じで、クリームも入っていなかった。」
「じゃぁ、今のクリーム入りのチョコバーになって、銀さん喜んだでしょうね。」
「そんなのより、酢昆布味が出てないことが不思議アル。製造元は売り上げをアップしようという気がまるでないネ。」
「酢昆布味か。酸っぱい系統なら、梅おにぎり味があったが………リーダー?」
 桂の話の途中で、神楽は急に立ち上がった。羽織っていた毛布が落ちるが、それを気にしようともせず、手すりに身を乗り出す。
「リーダー、濡れてしまうぞ。」
「神楽ちゃん、危ない………っ?」
 桂と新八の目の前で、神楽の身体は手すりから外へと滑り落ちた。慌てて手すりに飛びつく二人だったが、身の軽い少女はくるりと一回転し、雨に濡れる道路に着地する。
 ほっと息をつく桂。そして、神楽の向かった先の、白い人影に気づく。
「桂さん、あれ。」
 顔を輝かせる新八に、桂は頷いた。
「行っておいで、新八君も。」
 神楽の落としていった傘を拾って渡す。一瞬きょとんとした新八だったが、すぐに頷いて階段を駆け下りていく。
 降りきったところで合流する三人の姿を、桂は眼を細めて見つめた。
「………まったく、ずぶぬれではないか。馬鹿は風邪を引かないと言うが、万が一子供達に伝染ってしまっては大変だな。」
 小さく憎まれ口を叩きながら、桂は家の中へと戻る。
 バスタオルを準備して、それと風呂の温度を確かめねばいけない。子供達にも、熱いお茶を淹れなおしてあげたい。
 彼らのために、やることがいっぱいある。
 それが、どことなくこそばゆかった。





                              ~Fin~

  
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by wakame81 | 2007-10-23 00:17 | 小説。  

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