お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

たららん。

原作50訓~51訓あたり。桂さんと神楽ちゃんと、坂本と。
「神楽」を初めて認識する話………のつもり。

ちなみに、今週木曜も夜勤入りましたorz。






 旧知の馬鹿が、飲酒運転を起こして警察に厄介になった。
 わざわざ身元引受人に自分を指名してきたときは、本当に此奴は馬鹿で阿呆ですっとこどっこいな黒ッコリーだと思ったが、そこはそれ。旧い友人を見捨てるわけにはいかなかったので、世を忍ぶ仮の姿の一つ、宇宙キャプテンの姿を借りて、馬鹿を引き取りに行った。
 もう一人の旧友の家が、壊滅させられたと聞いたのは、その時だった。


「………成る程、全壊一歩手前だな。」
「あっはっはー。やー、酷いことしなぁ。一体誰がこがな事。」
「貴様だ貴様。………全く、乗り物に酔う体質なのだから、飲酒運転くらい控えろ。それ以上脳内アドレナリン放出してどうする。」
『よい子の皆さんは、乗り物酔いする体質でなくても飲酒運転はダメですよ。』
 すかさず画面(?)に向かって忠告を出すエリザベス。さすがだ、公共広告機構に勝るとも劣らないと、桂は一人頷く。
 そして改めて、四分の三壊した万事銀ちゃんを見上げる。
「それにしても、本当にすごい破壊力だ。………そうか、上空からの質量攻撃という手があったか。」
 問題は、そこまでの質量を持った物体を、上空に浮かべる手段だ。
 そこまで考えて、ふとむかついた。
「………この手を使ってこなかったということは、天人共め、俺達をそれだけ舐めていたということか。」
「仕方なかろー。制空権は向こうが握ってたんやき。」
 明るい声で言う坂本を、桂は眉をひそめて見つめた。
 誰もが、目の前に立ちふさがった壁のような天人軍を倒すことだけしか考えられなかったあの時。
 『戦後』なんてものを思い浮かべられたのは、この男だけだった。
 今、桂が思ったことなど、とうの昔に此奴は考えていたに違いない。
『坂田さん、いますかね。』
 エリザベスのプラカードに、桂は我に返った。一階のスナックの脇から二階へと昇る階段に、足をかける。
「もしかしたら、あの少年の実家に身を寄せているかもしれんな。」
「あーあの眼鏡くんかぁ。美人のお姉ちゃんがおるってゆうてたなー。よし、へち行ってみよう。」
「お前は何をしに来たんだ………。」
 ため息をつきながら、階段を上がった。
 玄関跡地に向かったところで、ふと歩みを止める。
「ヅラーどうしたがだ?」
「ヅラじゃない、桂だ。………呼び鈴が無くなってる。」
「おぉっ? そりゃー弱ったのー。」
『普通に入って構わないのでは?』
「よし、行こう。こんにちわー。桂ですけどー銀時君いますかー?」
「あっはっはー金時すまんのー。まさか、万事屋金ちゃんじゃのうてペンネーム使ってたとはー。」
『おじゃましますー。』
 三者三様に声をかけ、万事屋の扉をくぐる。
 人の気配は、奥にあった。
「銀時?」
 そこにいたのは、銀髪の幼なじみではなく。
「あー、ヅラともじゃとエリー。どしたアルね?」
 彼が拾った、荷物の片割れだった。


「………ヅラじゃない、桂だ。」
 銀時が人のことをヅラヅラうるさいから、こんな天人の娘までそれに感化されてしまうのだ。顔を見たら、もう一発殴っておこうと心に決めながら、おきまりの台詞を少女に返す。
「ありー? お嬢ちゃん一人でお留守番かのー? 偉いのー。」
 坂本がずかずかと寄っていって、少女の桃色の髪をわしゃわしゃと撫でまわす。
「うるさいネこのモジャ。てかお前のせいで家壊れちゃったアル、どーしてくれるネ!!」
 その手を振り払ったと思ったら、勢いをつけて坂本は吹っ飛んだ。壁の残骸にぶつかり、床に転がり落ちたところを、さらにエルボーが鳩尾に入る。
「うぎょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 出る、なんか腹から出るぜよーーー!!」
「出すネ、有り金出して万事屋弁償するヨロシ!!」
 マウントポジションを取られてめった打ちにされる坂本。
 とりあえず、少女の言うことに理はあったため、情けない悲鳴を上げるもじゃもじゃ頭を無視する。
 少女の座っていた、万事屋社長の椅子に目をやった。
 四分の三壊したこの建物の中で唯一、奇跡的に無事だったモノ。少女が坂本に飛びかかっていったはずみで倒れたそれを、そっと立て直す。
「ヅ、ヅラぁぁぁー。お願いやき助けてー。」
「ヅラじゃない、桂だ。………君も、気持ちはわかるがそれくらいにしたらどうだ。」
 廃材を振りかざした腕を掴んで止めた。何故かそれが、桂に向かって飛んできて、顔面クリーンヒットする。
「私に許し乞いたかったら、酢昆布100個と食べ物持ってくるアル。」
「100個には足りないが………。」
 エリザベスが首後ろをとんとんと叩いてくれる。それで何とか鼻血を止めて、桂は落とした風呂敷を拾って見せた。
「酢昆布っ!!」
「詫びには足らぬと思ったが、君がこれを好きだと、以前銀時から聞いていてな。」
「栗鹿の子羊羹もあるぜよ。食べんかの?」
 返事する間も惜しんで、少女は酢昆布と羊羹に飛びついた。三個を一気に開封し、羊羹と一緒に頬張る。
 よほど空腹だったのか、三本あった羊羹と20個の酢昆布は、ものの数分で少女の腹の中に収まった。
「ふーーーーっ、生き返ったアル。おかわりヨロシ?」
「あっはっは、相変わらずよお食べるお嬢さんじゃ。」
「生憎、今はこれだけしかない。おかわりと言ったらまた買ってくるしかないのだが。」
「買ってこいヨ。酢昆布200個、それと銀しゃりとご飯ですよもナ。」
 さも当然のように命令する少女に、桂もいささかむっと来た。
「買ってきてもまた、君一人に全て食べられてしまっては、此奴が銀時への詫びができんのだが。銀時はどうした?」
 少女はぷいっと顔をそむけて、また社長椅子の上にひらりと飛び乗った。
 身が軽い。
 さすがは夜兎。………宇宙の三大戦闘民族なだけある。
「金時はどこ行ったがだ? 美人のお姉ちゃんがおるっていう、眼鏡君の実家かの?」
 案内してくれんかー。
 楽しそうに言う坂本にため息をついて、桂は少女に視線を向けた。
「………銀ちゃんは、出かけてるアル。」
「それは見れば判る。で、どこにだ。いつ戻る。」
 ギコギコと、少女は椅子を揺らす。
「お嬢ちゃーん。」
「知らないアル。」
「知らない?」
 桂は、眉をひそめた。
「どういうことだ。」
「銀ちゃん、出て行っちゃったアル。」
 ギコギコ。
 椅子のきしむ音が、やけに響いて聞こえた。
 こちらに背を向けた少女の表情は、見えない。
 告げられた言葉を、口の中で繰り返す。そして、もう一度。
「出て行った………?」
 今度はしっかりと口に出して、繰り返す。
「そうヨ。出て行ったアル。家も壊れちゃったし、思い出せないし、いい機会だからって。万事屋はこれで解散しようって。」
「………金時がそうゆうたがか?」
「そうヨ。私たちの知ってる銀ちゃんは、もういないって。」
 よどみなく告げられた言葉。
 桂は口を開きかけたまま、それ以上の言葉を失う。
 背の高い桂からは、椅子の背の向こうの、桃色の後頭部はしっかりと見えた。
 銀時がいない。
 眼鏡の少年もいない。
 あの大きな犬もいない。
 少女は、ただ一人で。
 独りぼっちで。

 置いていかれた子供。

「ほきお嬢ちゃんは、何しとるんじゃ?」
 坂本の言葉に、我に返った。
「そうだ。あの少年はどうしたのだ。」
「新八は自分ちアル。定春も一緒、新八の家においてもらってるアル。」
「なら、君は。」
 少女は、空を見上げた。
 表情は、相変わらず見えない。
「私は、銀ちゃん待ってるネ。」
 見えないそれが、笑顔に見えた。
 それほど、さっぱりとした声音だった。
「待つ………だと?」
 声が上ずる。引き攣れる。
「銀時を、待つ、だと?」
 自覚しても、どうしようもならない。
「そうヨ。銀ちゃんちはここネ。記憶なくなろーが家壊れよーが、銀ちゃんちはここしかないアル。だから、私ここで待つアル。」
「………いつまで待つつもりなのだ。万事屋を解散しようと言った彼奴を、もういないと言った彼奴を、本気で待つつもりなのか?」
「本気ネ。私、ずっと待つヨ。」
 震える。
 声が。
 指先が。
 拳が。
 腕が。
 身体全体が、震える。
「待っても、帰ってこなかったら。」
「そしたら、迎えに行くアル。行って、殴って、銀ちゃんちがここしかないって、思い出させてやるネ。」
 少女は、右手を空へとかざした。
 開かれた手のひらを、ぎゅっと握りしめる。
「手が離れても、また繋ぎなおせばいいだけのことネ。」

 それは。
 途方もない、願いなのに。

「そうかそうか、じゃったら体力つけなきゃいかんのー。ごんごん食べて、体力つけろ。今持ってきちゃるき。なぁヅラ。」
 ぽん、と肩を叩かれた。
 びくっと身体がはねる。いつもの返答すら、桂はしそびれた。
「どんどん持ってこいヨ。ご飯ですよ忘れんじゃねーぞ。あと、さらさら茶漬けも持ってくるヨロシ。」
「任せときー。」
 坂本は、胸をどんと叩いた。そしてむせかえる。
『大丈夫ですか、坂本さん。』 
「………うへっふ。息止まると思ったぜよー。」
 プラカードを掲げたエリザベスに笑ってみせる。そして、桂にも。
「ほんじゃ、首長ーくして待ってくれのー。」
「早くしろヨ黒もじゃー。」
「あっはっはっはっはー。おんしも天パには厳しいのー。」
 笑いながら坂本は、桂の腕を引っ張った。されるがままに、桂も歩き出す。後ろに、エリザベスが続いた。
『桂さん、大丈夫ですか?』
 階段を下りてから、桂に前に回り込んだエリザベスがプラカードを見せる。
「ヅラー。」
「わっ。坂本、何をするっ。」
 返事のなかった桂の頭を、坂本がいきなり掻き回した。しかも両手で。
「あっはっは。目を開けたまま寝てるき。危ないぜよ。」
 坂本の手を振り払った。乱れてくしゃくしゃになった髪を、手で梳く。
『桂さん。』
「あぁ、大丈夫だエリザベス。」
 やっと、少しだけ余裕を取り戻して、桂は微笑んでみせる。
「あの娘に差し入れをしてやらねばな。米の蓄えは、まだあっただろうか。」
『確か、大丈夫かと。』
「酢昆布も買うてあげんとな。エリザベス、ちっくと買うてきてくれんか? わしらはとさぴか炊いておくから。」
 そう言って坂本は財布を取り出した。
 エリザベスはちらっと桂の方を見た。これ以上の心配をかけないよう、桂は笑って頷く。
 財布を受け取って、エリザベスは歩き出した。
「気をつけるんだぞ、エリザベス。」
「かわいいお姉ちゃんがおっても、ついて行ったらあかんぜよー。」
「お前じゃあるまいし。エリザベスはそんなことはせんぞ。」
 その、白く丸く愛らしい後ろ姿を、坂本と二人して見送る。
 そして、やおら。
「ヅラー。」
 坂本が、名を呼んだ。
「ヅラじゃない、桂だ。」
「おんしとあの子は違う。」
「………………。」
「立場も、背負っちょったがモノも、金時の中の立ち位置も。金時に、求めたモノも。」 大きな手のひらが、また髪を掻き回す。
 今度は、振り払わずに、したいようにさせる。
「金時を諦めたことを、後悔する必要はないぜよ。」
「………そんなことくらい、判っている。」
 髪をもてあそぶ手を、そっと取った。
「ただ。銀時があの娘を側に置く理由が、判っただけだ。」
 すっと、目を伏せた。
 思い出すのは、桃色の頭。
 小さな身体。
 空にまっすぐ伸ばされた手。
「たっぷりと、差し入れを持っていってやらねばな。」
 小さく浮かべた笑みを坂本に向ければ。
「その意気じゃー。ほきこそ、桂小太郎じゃ。」
「ぐぇっ!」
 何故か、ヘッドロックで返された。




                          ~Fin~
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by wakame81 | 2007-10-16 02:54 | 小説。  

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