お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

祭りのあとに・前

20巻発売記念その2。
「動乱編で出番の無かった桂さんは、いったい何をしてたのか」捏造。



 低い、三味線の音は、止むことはない。
 退室してから少しの間、部屋の前に留まり、その音を聞いた。
 音が荒い。いつものことだが、いつもにも増して。
「………さて。晋助が苛立つ理由は、何でござるかな。」
 幕府の手先に味方した、≪白夜叉≫に対してか。
 しぶとい、狗めに対してか。
 それとも。奴らに興味を持ち、あえて手を引いた自分に対してか。
 ふっと笑うように息を吐き出し、万斉は歩き出す。
 ≪白夜叉≫にやられた傷は、浅くはなかった。万斉的には弦を押さえる左手が無事だったのでこの程度ですんで良かったと言うところだが、戻ってきた彼を武知はぎょっとした眼で迎えたのだった。
 ………たぶん、あれはぎょっとした眼でいいのだろう。
「月も隠れてしまったし。おとなしく早寝でもするべきでござるかな。」
 雲は多い、が、空全体を覆うほどでもない。明日になれば、朝焼けに染まる様が見られるだろう。それを見ながら弦を爪弾くも、また一興。
 そう思い、自室へと向かう途中で万斉は、別の開け放たれた部屋にたたずむ、一人の娘を見かけた。
「………? また子?」
 ふと気になり、部屋の中へ入る。途端、銃口がこちらを向いた。
「………物騒でござるな。」
「万斉………っ?」
 背後に寄ったのが味方であることに気づいたまた子が、目を見開いて呟く。そして、そっぽを向きながら銃を下ろした。
「………シュミ悪いっすね。音も立てないでバック取るなんて。」
「随分とぴりぴりしているでござるな。」
 また子は万斉に視線を合わせようとしない。俯いた顔は、ばつが悪そうに歪められている。
 この屋形船は、鬼兵隊のアジトと言ってもいい。その、己の領域内で、また子がここまで気を張り詰めさせている理由。
 今度のことでまた子に与えられた役割を思い出して、万斉は手をポンと打った。
「桂に、してやられたでござるか。」
「な………っ!」
 思い切り振り向いた表情が、それは図星だと語っていた。
「仕方あるまい。相手はあの≪狂乱の貴公子≫でござる。晋助を相手取るのと同じ、手強い相手でござるよ。」
「アンタだって、≪白夜叉≫にこてんぱんにやられたくせにっ!」
「ははは、これは手厳しい。」
「ははは、じゃないっすっ!」
 顔を真っ赤にして、また子は怒鳴った。拳銃を握る手が、震えている。怒りか、それとも。
「≪狂乱の貴公子≫は、≪白夜叉≫よりも速さに重きを置いた攻撃が得意だったと聞く。いかにまた子が鬼兵隊一のスピードを誇るとしても、逃げ切れる相手ではない。」
 また子の顔は、さらに赤くなった。そして、手の震えが、大きくなる。
 よほどの、恐怖だったらしい。
 狙撃手は、そもそも前線に出るものではない。ロングレンジの攻撃にこそ銃の真価はあり、敵に懐に入られるような場所に、いるべきではない。
 また子はその不利を、獲物を小回りの利く拳銃を選び、自身のスピードを生かして動き回ることで超えようとしていた。事実、並の相手では後れを取らない。
 けれど。
 桂小太郎は、並の相手などではない。
 以前、桂一派と正面切ってぶつかりあった時、また子は夜兎の小娘とやりあって、同じように追い詰められたはずだ。けれど、受けた衝撃は、その時の比ではないようだ。
「あいつ………。」
 絞り出すような声で、また子は呟く。
「あいつ、本気で晋助様のこと狙ってきた………っ。」
 同行した部下から、詳細は聞いていた。
 桂はまっすぐに高杉を狙った。立ちはだかり、銃を連射するまた子を最初は無視していたが、狙い撃ちされることにうっとうしくなったのか、突然彼女に肉薄し、銃を叩き落としたという。
 その隙に高杉は距離を取った。
 高杉も、速さにかけては桂に劣らない。絶対的な距離を取られてしまっては、桂といえど追いつくのは難しい。
 その後、部下たちに遮られ、桂は退いた。が、それまでの鬼気迫る姿は、まさに≪狂乱の貴公子≫そのものだったという。
 また子は、至近距離で見たのだ。
 桂の、本気を。
「斬る、と、言ったからな。有言は実行するか、誠に侍らしいでござる。」
 冷たく、万斉は言う。
 その生き方も、目指すものも。選ぶ術も。
 何より高杉が、≪白夜叉≫よりも警戒する相手。
 実際に、相対してみた時に、気分がどう動くか判らない。が。今は何よりも、『邪魔だ』と思える。
「………次は、させない………。」
 万斉の心を読んだわけでもあるまいが、小さくまた子は言った。
「させない………次こそ、あいつを撃ってみせるっす。晋助様の、邪魔はさせない。」
 顔は、まだ赤い。
 けれど、手の震えは止まっていた。その瞳に、いつもの光が戻る。
 ニっと、万斉は口の端を持ち上げた。
「アレを撃つのは、至難の業でござるが。」
「アンタどっちの味方っすかっ?」


「誰だ。」
 撥を弦に打ち付ける手を止めて、高杉は問う声を投げかけた。もっとも、気配でだいたいの見当はついている。
「失礼しますよ、高杉さん。」
 予想通り。
 入ってきたのは、武知だった。手に何か、書状を持っている。
「春雨から、今後の詳しいことについての連絡です。」
「あぁ。」
 高杉はそう言ったきり。今見るとも、どこに置けとも、言わない。
 今は興味がないのだと悟ったらしい、武知ははーっと息を吐く。
「面倒だとお思いでしょうが、高杉さんが春雨に同行しなかったので、わざわざこんな手間を取ることになったんです。ちゃんと見てくださいよ。」
「気が向いたらな。」
 言って、高杉は弦を鳴らした。無表情だが困っているらしい武知の顔がおかしい。万斉のせいで苛々しがちだった気分が、少しだけ晴れる。
「まったく………。」
 声も表情も、武知はとぼけた男だ。策士として、このポーカーフェイスはありがたいだろう。けれど、武知が呆れていることを、高杉は見破った。
「結果的に奴らの密航は上手くいったんだから、上々だろ? 真撰組は潰せなかったがな。」
「冷や冷やものでしたよ。何故高杉さんが来ないのか、散々嫌み言われました。」
「外交はテメェだけで充分だろ?」
 にやにや笑う。
 武知の出した作戦は、万斉に対真撰組の攻略の指揮を任せ、高杉が密航する春雨に同行するものだった。向こうは、真撰組のみを警戒していた。割り振られた仕事をこなすのなら、それで充分と、武知は思っていたに違いない。
 そこを、春雨への同行を武知一人に任せたのは、高杉だった。
 そして、何をするかと思えば、桂の身辺を洗わせた。桂の持つ情報網と流れ方をあらかた掴んだ高杉は、その網に、わざと触れた。
 自分を囮にして高杉は、桂の注意を引いたのだ。
「わざわざ桂の注意を幕府から逸らす必要なんて、あったんですか?」
「大ありさ。彼奴は俺の動きには敏感だ。真撰組の攻略に動いているのが万斉だけだと見破ったら、それこそ幕府との接触前に邪魔をしかねねぇ。」
「まさか………。」
「紅桜の量産体系をぶっ壊したのが誰だか、忘れた訳じゃあるめえ?」
 武知の顔が、苦虫を噛み潰したようになる。
 正直な話。
 銀時が似蔵を倒したくらいでは、計画は崩壊しなかった。オリジナルを失うだけの話だ。
 あの争乱の中で村田も命を落としたが、それでも量産システムが生きてれば、動かし続けるのは不可能ではなかった。更なる改良は、確かに無理だったろうが。
 それを全て潰したのは。銀時でも、乗り込んできたガキ共でもない。
 似蔵が余計なちょっかいを出したからだと、あの後武知やまた子は悔しがった。ただ桂の注意を引いただけではない。死亡という誤報のため、その存在がまったくノーマークになり、結果桂の狙い通りに事が運んだのだ。
「それでも、高杉さん直々に囮にならなくても良かったでしょうに。」
「春雨の動きが俺に入らねぇのは困るから、真撰組の方は万斉に任せた方がいいっつったのはテメェだろ。そして、餌が俺でないと、彼奴は囮だと必ず見破る。」
 その確信は、あった。
 銀時よりも坂本よりも。
 桂が一番、手強い。

 信頼にも似た、その確信。

「………時々、あなたが誰を仲間に思ってるのか、判らなくなりますよ。」
 ため息と共に、武知はこぼした。
「テメェらだろ? 彼奴等は仲間だとか、そんなもんじゃねぇ。」
「嬉しそうですよ、顔。」
 うろたえることを期待しただろう武知の指摘だったが、高杉はニヤリと嗤っただけだった。




                               ~続く~
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by wakame81 | 2007-10-08 22:10 | 小説。  

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