お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

その刃の意味を知れ

動乱編完結てーかコミックス20巻発売記念。
VS土方。





 舌打ちをして土方は、寺の門をくぐり、外界へ出た。 左手の刀を見やり、吐き捨てるように溜め息をつく。
 ここも、駄目だった。
  伊東の死で終わった鬼兵隊の攻撃から三日。江戸の名だたる社寺から小さな僧庵まで当たったが、この忌々しい妖刀から解放される術を、誰も持たなかった。
 江戸の中ではもう救いを望めないだろう。近郊………鎌倉か日光辺りまで足を伸ばさねばならない。
 最悪京………いや、遠すぎる。地理的な距離ではない。幕府直属の武装警察とはいえ一介の田舎侍には、敷居が高過ぎるのだ。
 懐から煙草を取り出し、火をつける。馴染んだ苦味のある煙を肺の奥まで吸い込んで吐き出せば、少しだけ憂鬱な気分が薄れる気がした。
「………さて、どうするか………。」
 鎌倉にせよ日光にせよ、日帰りできる距離じゃない。朝早く発てば鎌倉なら可能だが、今は昼過ぎ。そして、一発で呪いを解かねば、また何箇所も回る必要があるだろう。 今の財布の中身では、厳しい。
「金、下ろさなきゃな………。」
 一番近いATMはどこだったか。
 頭の中に江戸の地図を描きながら歩き、やがて橋にさしかかった。
「………?」
 中ほどに、托鉢僧が一人。
 声をかけようかと思った。 住職にもなれない托鉢僧でも、ひょっとしたらということもある。
 今の土方は、藁にもすがりたい一心だった。
「おい。ちょっと」
 尋ねたいが。
 そう続ける間もなく、僧衣がひるがえった。
「んまい棒、血意図!」
「なっ!?」
 一瞬にして、視界が煙に遮られる。が、その端で、黒い裾がはためくのが見えた。反射的に後を追い。
「………っ!」
 体が欄干に乗り上げ、平衡感覚が引っくり返る。 そして煙の向こうに黒い僧衣と水面。
「………助けてきんと雲んんんんんんんっ!!」
「はぁぁっ?」
 次の瞬間、土方は川に墜落した。


(ええええぇぇぇぇぇっっ!? これなんて状況っ!? て拙者なんの悪魔の実も食べてないのになんて試練てかムリムリムリでごさるよ薫殿ぉぉぉ!?)
 いきなり水中で、しかも腕も足も身体中が何かにしがみつかれるような感覚に、土方いやトッシーはパニくった。
 手足がもつれる。体が重い。水中鍛練もこなした土方ではない今のトッシーでは、衣を着たまま泳ぐのは難しかった。
 何か捕まるものを………とさ迷った視線が、黒い袖から出た白い腕を見付ける。とっさに手を伸ばし。
「げぶっ。」
 強烈な肘鉄を食らう。
 衝撃で思わず息を吐き出し、水を飲み込んだトッシーは、ますますその白い腕にすがろうとし、殴る蹴るの反撃を食らう。 二人、もみくちゃになりながら岸に辿りついたのは、大分流されたとこだった。
「あ、危なかった………霊界探偵になるところでござった………。」
 息も絶え絶えになりながら、トッシーは呟いた。
 濡れた着流しが酷く重い。裾から絞ろうとして、初めて自分の右手が握っているのが自分の裾ではないことに気付く。 次いで。
「っ!」
 金属の擦り合わさる音を立てて、錫杖が目の前に突き付けられる。そしてそれ以上に、鋭く突き刺さる視線。
「手を離せ、芋侍。」
 背筋の底が、凍るほどに冷えつく。その震えは電流のように、背骨をかけあがった。 摩擦でも起こしたかのようにそれは血液を沸騰させ、身体中を熱が駆け巡る。
「………誰が離すかってんだ。最高の獲物の尻尾をつかんだってのによぅ。」
 この男を前に、へたれたヲタクではいられない。
 高揚した戦意はいとも簡単に呪いを凌駕した。
 切長の瞳が鋭く土方を見据える。熱くはない、むしろ凍りつくような殺気を乗せて。長い黒髪も漆黒の僧衣も濡れて艶を帯び、まさに濡れ羽のようだ。
 ≪狂乱の貴公子≫桂小太郎。
 左手の袖を土方に掴まれたままだというのに、その姿にはほんの僅かにも焦りはない。
「尻尾じゃない、桂だ。離せ。」
「判ってんだよ、ンなこたぁ。離さねぇっつったろ?」
 動けば、目の前の錫杖が土方の顔面を突くだろう。それを承知で、土方は片膝立ちになった。予想通り錫杖は突き出され、避けた土方の左頬をえぐる。
「っつっ!!」
 ひりつくような痛み。堪えて土方は、桂の袖を引っ張った。引き倒す勢いで体重を乗せたが、バランスを崩しかけながらも桂は持ちこたえた。錫杖が振り下ろされる。それを土方は、鞘に収まったままの刀で受ける。
 重い衝撃が、左腕から身体中に走った。
 左では支えるのに心許ない。かといって右手を添える為には、桂の裾を離さなくてはいけない。
 左腕にかかる圧力を流そうとした瞬間。
 逆に桂の方が、錫杖を引いた。
「なっ?」
 そのまま押し切って土方にダメージを与えるなり、右手を使わざるを得ない状況に追い込むなりすると思っていた土方は、完全に虚を突かれた。次の瞬間、思いっきり右手を(正確には右手の掴んだ袖を)引っ張られ、我に返る。
「離せっ。このっ、しつこい腕めっ、叩っ砕くぞ!!」
「叩っ砕くなんて日本語ねーだろうがっ!」
「言語とは生き物だ、日々成長するモノだっ!!」
 あの桂が、焦っていた。
 今更、とも思うがそれ以前に、信じられない思いで土方は桂を見る。
「………なんだよ、俺の迎撃が予想以上で臆したか?」
「そんな訳があるかっ! 貴様、よくそんなモノを手にしていられるな、おぞましいっ!!」
「そんなモノ?」
 桂の視線は土方の顔を凝視していた。
 敵から視線を逸らさない。それは戦いの時の常だが、なぜだかそれ以上に、別の何かを直視しないようにしている、ようにも思えた。
 まさか。
「………。」
「何をする貴様嫌がらせかっ!!」
 左手の刀を、突き付けるでもなく鞘からも抜かず、桂の方に差し出す。それだけで桂は、露骨に嫌悪を示した。
「人の嫌がるモノをわざと近づけるとは、不調法だなこの芋っ! 狗っ! 鈍感っ! だから貴様等はもてんのだっ!!」
「俺等がもてるかどーかはテメェに関係ねーだろっ! てかお前、これが何だか判るのかっ!?」
「そんな禍々しいというか、いやもっとねっとりネチネチした妖しい気を放つモノが妖刀だと、判らん訳ないだろうっ!?」
 土方は、目を見開いた。
 まさか、この刀が妖刀だと、見ただけで判るとは。
「………テメェ、妖刀に詳しいのか?」
「詳しい訳ではないっ! ………すると、噂は本当だったということか。」
「噂?」
「真撰組鬼の副長が、妖刀に取り付かれたと。」
 土方は、小さく舌打ちをする。
 桂ほどの大物が所有する情報網は、確かに大きいだろう。それにしても、もうその耳に入るほど、妖刀の話は広まっているのか。
「その結果、ヘタレになっただのヲタクになっただの不能になっただの雨の日は無能だの、水を被ると女になるだの。」
「んな訳あるかああぁぁぁっ!!」
 思わず絶叫した。
「どこのどいつだんなデマ流しやがったのはっっ!?」
「出処を洗うと、皆真撰組内部に繋がったのでな。真実か情報操作か、判断がつかなかったが。」
(総互かあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!)
 土方を陥れることに関しては並々ならぬ才能と何より情熱を持った小悪魔ならぬ魔界の総統の顔を思い浮かべ、土方は拳を握りしめる。
「………どうやら、情報操作のようだな。」
 桂の言葉に、土方は我に帰った。
 今は沖田への怒りに燃えている時ではない。目の前の獲物を、確実に捕えるべき時だ。
「どっちだろうが、テメェに関係ないだろう、桂。」
「関係ならあるさ。」
「何?」
 底冷えのするような眼差しで、桂は土方を見た。 正しくは、土方の左手の≪村麻紗≫を。
「貴様が妖刀を手にしたというのは事実なのだ。まさかそれを、生涯の相棒にする気ではなかろうな。」
 ここまで敵意のこもった眼差しを、桂が向けたことがあっただろうか。 本気を出した雄敵に、逆に土方は苛ついた。
「………だったらどうするよ。」
 この敵意を引き出したのは、自分ではない。
 左手の、妖刀という存在だ。
「だとしたら、愚かとしか言いようがないな。ただ良く斬れる刀等と言う、可愛らしいモノではないのだそれは。いずれ身を滅ぼす、それを承知でその刀を帯びるか。そんな、ただ力のみを求めるようでは、真撰組の底も知れたな。」
「何だとっ!?」
「そうであろう。妖刀がもたらすものは狂気だ。それに呑まれれば、待つのは破滅のみ。抑えようとしても、狂気はいずれ貴様を蝕む。そんな愚か者が副長を務められるのだから、真撰組も所詮愚か者の集まりか。」
 眼差しとは裏腹に、桂の口調は静かだ。
 そんな桂を、土方は睨みつけた。
 そんなことは、既に知っている。
 もたらされた狂気のおぞましさも。その先の破滅も。
 何も知らなかった頃ならともかく、何を好きこのんでこんなモノを使う気になるか。
 けれど。
 目の前の此奴に、それを打ち明けるつもりなど、土方にはない。
「狂気………ね。上等じゃねぇか。」
 口の端を、上げてみせる。桂は目を瞬かせて、眉をひそめた。
「確かに、愚かかもしれねー。だが、妖刀だなんだっつても、結局刀じゃねぇか。刀の本分は、祟ることでも呪うことでもねぇ、斬ることだろ?」
 一度は、確かに喰われた。また喰われるかもしれない恐怖がつきまとうのは、事実。
 しかし、その呪いをねじ伏せたことも、また事実。
「………本当に、愚かだ。貴様は。」
 すっと眼を伏せ、桂は呟いた。
 次いで、ものすごい勢いで左腕を払う。慌てて右腕に力を入れたが、僧衣の袖は半ばから破れ、そして桂は土方から距離を取った。
「しまっ………!」
 そのまま逃げられる。
 そう思い、土方は立ち上がった。走ろうとして、桂がその場から動いていないことに気がつく。
「桂?」
「抜け、土方。」
 言葉と同時に、桂の姿が迫った。錫杖がうなる。とっさに後方へ飛んでかわす、その腹ぎりぎりを、音を立てて錫杖の切っ先が薙ぎ払われた。
「テメェ………っ?」
「抜かぬなら、それでもいい。鞘ごと叩き折るまでだ。」
 狙いは≪村麻紗≫か。そう理解した瞬間、次の一撃が来た。
 抜く間もない。鞘ごと受け止める。鍔迫り合いになるかと思いきや桂は引いて、もう一度錫杖を振り下ろした。
 これも鞘ごと受けてから、それが二撃めとまったく同じ箇所を狙ったことに気づく。
「な………何でテメェはこいつを狙うっ?」
「確かに貴様の言うとおり、妖刀と言ってもつまりは刀だ。良く斬れる、な。そんなものを、幕府の狗に持たせておくわけにはいかんっ!」
 成る程な。
 知らず、笑みがこぼれた。嘲笑、いや苦笑に近い。
 何故か、頭の中のもやもやが、薄れた気がした。
 右に飛んで、構え直した。桂はすぐに追う。速い。此奴の身が軽いことなど、土方は嫌と言うほど知っている。
 土方は抜いた。
 白刃が閃き、右腕いや体中に、重い衝撃が走る。火花が散った、と思った。
 それでも。
 ≪村麻紗≫は振り切られ。
 上半分を斬り落とされた錫杖が、シャンと涼しい音を立てて、河原に落ちた。


 桂は、手元に残った錫杖の左半分を見つめた。呆然としているのかもしれない。
 今度こそ、捕らえるチャンスだったろう。けれど、土方も動けなかった。身体中が、痺れている。
「まさか、斬鉄すらやらかすとはな………。」
 小さく呟き、桂は土方の側による。そして肩で息をする土方の、右腕を取った。
 握られた≪村麻紗≫の刃に、指を走らせる。
「おいっ?」
「しかも、刃こぼれすらしておらん。つくづく厄介な刀だ。」
 忌々しげにそう呟き、捨てるように土方の手を払う。そして、後ろを向いて、斬り落とされた錫杖の上半分を拾う。
 追いたいのに。
 痺れた身体が、それをさせない。
 桂相手に斬鉄ができたのは、この刀のためと思い知る。並の刀では折られていた。それほど、強烈な一撃だった。
「………どういうつもりだ、桂。」
「折ることができん。これで今、俺にその妖刀をどうにかする術はなくなった。」
 口調は忌々しげなくせに。振り向いた顔は、どこまでも涼しい。
「これが貴様の答えなら、もう知らん。」
 これって。
 つい意地で反撃してしまったが、桂はそれを土方の強い決意と取ったらしい。今更、「いや意地とノリで斬鉄やっちゃいました」とも言えず、土方は桂を見つめる。      

「せいぜい、呑まれぬようにするんだな。」
 妖刀に呑まれた者の末路は、見るも無惨だから。

「え?」
 空耳かと思った。
 痺れる身体を押して土方は桂に手を伸ばそうとし。
 ぽいっと投げられた黒い丸い固まりを、反射的に受け止める。
「なっ!?」
 どこかに放り投げる間もなく。
 それは爆発した。





                         ~Fin~

 
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by wakame81 | 2007-10-05 02:00 | 小説。  

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