お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

ゆらゆら。~その裏~

タイトルそのまんま、「ゆらゆら。」の裏話。
「どうしてこういうイベントに、銀さんがいないのか」。






 バイト先に持って行ける程度の荷物でもないので、エリザベスは先に一度隠れ屋に戻り、その包みを取ってきた。
 待ち合わせ場所で待つこと暫し。何かあればすぐに判る、爆発音もカスもとい真撰組の怒号も今は起こらず、だからエリザベスは家康像の前から離れなかった。
 やがて、見覚えのある黒い僧衣と編み笠をかぶった人物がやって来る。
「待たせてすまなかった、エリザベス。」
 その人はまっすぐエリザベスの側に歩み寄って、笠を持ち上げてそう言った。
『大丈夫でしたか?』
「あぁ。途中で真撰組の検問にあってな。遠回りをしてきたのだ。」
 土方や沖田といった手強いメンツと鉢合わせなかったらしく、今日は捕り物に発展せず終わったらしい。
 逃げの小太郎と異名を取る彼がそう簡単に捕まるとも思わないけれど、それでもやっぱり、何かあればと不安に思わないことはないわけで。
 だから、桂の無事な姿を見て、エリザベスはほっと胸をなで下ろした。
「重たいものを持たせてすまなかったな。」
 と、桂はエリザベスの持つ二つの包みのうち、平たい円柱形の方を取る。中身は鉄の桶だ。もう一つ、やたらかさばる風呂敷の中身は折り紙で作った舟なので、大きさに反して重いことはない。
 その、もう一つの包みまで自分で持とうとする桂から、エリザベスは風呂敷を守った。
「エリザベス。」
『大丈夫です。軽いですから。』
「だが。」
『桂さんは、錫杖を持っているから、一つだけで両手がふさがってしまいます。』
 エリザベスの指摘に、桂は左手を見る。
 托鉢僧の扮装をするのに必要で、またいざというときの武器でもある錫杖。
 ゆっくりと息を吐いて、桂はエリザベスの方に向き直った。
「そうだな。すまないエリザベス。」
『いえいえ。』
「では、行こう。」
 そう言って、桂は歩き出した。
 本当は、自分が思い方の荷物を持つつもりだったのだけれど。それをさせる気のないのが後ろ姿から窺えて、軽く肩をすくめてからエリザベスも後に続いた。


 八月十六日。
 お盆の最後の日。
 去年であれば、党のみんなと送り火を焚いたのだが、今年は一人で焚きたいと、桂は言い出した。
 党の活動の一環として、送り火を焚くことはしない、と。
 かつての攘夷戦争で死んでいった者達や、戦後の攘夷活動で命を落とした者達の、追悼を全くしなかったわけではない。会合場所や基地のあちこちに、ナスとキュウリで作った精霊馬は置かれた。桂の隠れ屋にもあったし、各党員の家にも、それは置かれただろう。
 ここ数日、精霊馬に向けての黙祷は何度か行われた。
 けれど、迎え火も送り火も、今年は焚くことをしなかった。
「決起集会に、なってしまうからな。」
 何故焚かないのか、尋ねた党員に桂はそう答えた。
「集会にしてしまわなくとも、志半ばで倒れた同志達の想いは、生きている我々の胸の中にある。それを各々が、思い返すだけでも充分なのではないかと、そう思っただけだ。火を盛大に焚いて、他の武闘派の注意を引くこともないしな。」
 つい先日、無血革命を目標として掲げたばかりだ。
 その少し前には、鬼兵隊が、真撰組とぶつかり合っている。
 総ての攘夷組織や真撰組の注目が集まる中、派手な炎で誤解を招くような行動はしたくない。
 その言葉に納得した党員達の、いったい何人が、桂の本意に気がついているだろうか。

 無血革命。
 その言葉に、党員達は酔っている。
 自分たちは崇高な目的を持っている、鬼兵隊のような武闘派とは違うと。

 かつては自分も過激派テロリストであり。
 そして、分かたれた道のことを今でも憂う彼の心情を。
 いったい何人が、気づいているだろうか。


『万事屋さんたちも、誘えば良かったですね。』
 道すがら、そんなプレートを出してみた。
「銀時たちを?」
 桂は目を瞬かせた。次いで、すっと目を細める。
 唇を薄く引いた、染みいるような笑顔。その顔に、エリザベスは自分が失言したことに気がついた。けれど、何がいけなかったのか、判らない。
 坂田銀時ならば、桂の心情に気がついてくれる。
 それを、エリザベスは強く信じている。党首として党員には言えない、気づかせたくないその心境も、坂田銀時にならば打ち明けられるはず。
 だから、彼とその家族のことを、口に出してみたのに。
 彼らと供にいれば、桂も癒されるだろうに。桂自身も、それを知っているだろうに。
「今日は、誘うのはやめておいた方が良かろう。」
 静かに、桂はそう言った。『なぜです?』エリザベスは尋ねる。
「今日、会ってしまったら、俺は彼奴を攘夷に誘ってしまう。」
『誘えばいいじゃないですか。』
 いつものことだ。
 事ある事に協力を持ちかけ、それをすげなく断られるのは。
「それは、卑怯というものだろう。」
 けれど、桂は首を振った。
「亡き同胞を前にして、それは卑怯というものだろう。」
 染みいるような、静かな笑顔。
 エリザベスは、胸が締め付けられるような思いを感じる。
 彼岸への送り火を前に、銀時がその誘いを断れるわけがない。断ったとしても、それは先々、銀時を苛む。
 桂の心境に、銀時は必ず気づく。
 そして、銀時の望みを、桂は誰よりも知っている。

 変わるなと。
 銀時に告げたのは、桂自身なのだから。

「行こう、エリザベス。日が暮れると藪蚊も増える。そうだ、今のうちに虫除けスプレーをかけておこう。えぇと、どこへやったかな。」
 自分の荷物を漁りだす桂を前に、やっとエリザベスは我に返る。
『ここです。』
 そう言って、口の中からスプレーを取りだした。
「おお、お前が持っていてくれたのか。」
 にっこり笑って桂はスプレーを受け取り、「目に入らないように閉じているんだぞ。」とエリザベスに吹きかけていく。

 自分は、ペットで。
 主人の桂は、自分を庇護するもので。
 一派のナンバー2の位置を確立し、桂を支える立場でありながらも、桂は自分を護ろうとする。
 ペットで、あるならば。
 せめて、誰にも言えない痛みをさらして。
 そうして癒されてくれればいいのに。

(自分は、まだまだみたいです。)

 一番星がもうすぐきらめきだすだろう、夕暮れの空を、エリザベスは見上げた。




                         ~Fin~

 
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by wakame81 | 2007-09-13 09:21 | 小説。  

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